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第38話

 頭が混乱する。仁科は乳首を揉みつぶされて密やかに喘ぎ、ペニスに包皮をかぶせなおされて顔をしかめた。 「う、……う、あああっ!」  警戒心が薄れた瞬間を狙い澄まして、今いちど平手打ちをみまわれた。手型がくっきりと浮かびあがり、双丘がいちだんと華やいだ。  それは、あざといアフターケアだ。戸神に寄りかかるふうに膝がくだけ、すかさず乳首をついばまれると下腹部が甘やかにざわめく。  あたかも〝仁科貴明マゾヒスト説〟を裏づける有力な情報を提供するように。  仁科はうろたえ、身をもぎ離した。すると戸神は乳首をこね回してきながら、顎をしゃくった。  スマートフォンは、いつの間にか学生ズボンの尻ポケットからガス台へと移動していた。そのうえ録画モードに設定されている。  ペニスに異状をきたしたくだりは、すでに録られたあとだろう。悪あがきと承知の上で、あわてて背中を向けた。  ずるがしこい戸神のことだ。二重、三重に保険をかけておくに決まっている。  たとえばパソコンに転送して、彼の姿にモザイクをかけるなどの編集作業を行う過程で、こんな面白い映像を独り占めにしていてはもったいない、と考えたが最後、推して知るべし。  事あるごとに思い知らされる。生殺与奪の権を握っているのは、(ひげ)といっても濃いめの産毛にすぎない教え子だ──と。 「俺もドジだなあ、スパンキングで突き指した。の手当てを頼む」  痛めた、と称する右手の人差し指が朱唇を割る。  口腔をかき混ぜられて仁科は震えた。もっと硬くて太いもの……怒張で掃きたてられた感触が舌に甦るとぞくぞくするだなんて、自分はそんなに暗示にかかりやすい性質(たち)なのか?    とはいえ爪の付け根の段差が舌に引っかかる感じが曲者だ。カリクビが、愉悦をもたらす突起をこすりあげていくさまを連想して内壁にさざ波が走る。

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