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第39話

「ん、んん……んん」 「乳首はカチカチか……さすがドM」  戸神が手柄顔で言い放った。指を引き抜くと攻守ところを変えるふうに、あるいは自らの功績を讃えるように乳首をねぶる。  このとおり舌で掘り起こす必要がないまでに乳首が尖ったのは、この乳首が並外れていやらしくできているからだ──。  そう、ほのめかす体で乳首を甘咬みしながら、あどけなく笑み崩れた。  そうやって巧みに怯えた視線を捉えておいて、ぴちゃぴちゃと、わざと派手な音を立てて舌をつかう。  形のよい頭が胸元で蠢く。猫がミルクを舐めるような音が高まれば全身がいっそう火照り、仁科は甘みを増した吐息を逃がしながら横を向いた。  よそ見をした罰、といいたげだ。かりり、とクルミの実をせせる要領で乳首を歯でこそげた。そ  れから戸神は仁科に回れ右をさせた。ネクタイをほどいて両手を自由にすると、 「躰がほぐれたところで次の授業だ」  仁王立ちになって腕組みをした。  成長途上にある肢体は、ひょろりとした印象が(まさ)る。その(みず)やかな体軀に王者の風格すら漂わせて、戸神は仁科を射すくめた。 「放課後が期限のをきちんとやってきたかどうか調べる。調理台の上で四つん這いになって、足を開いてみせろ」    課題、と呟いて仁科はうなだれた。ワイシャツの衿をかき合わせて、せめて胸を隠したいのは山々だが、勝手なことをした、と難癖をつけられて再び殻割り器の餌食にされる恐れがあって果たせない。  そのくせペニスときたら、しごいてほしげに揺らめく始末で、何万回自己嫌悪に陥っても追いつかないほどだ。  舌打ちが轟いた瞬間、反射的に肩をすぼめた。しっかりしろ、と仁科は自分を叱り飛ばした。  おれはいやしくも教師で、増長ぶりも(はなは)だしい生徒を正しい道に導く義務がある。 それにしても時と場合に応じて仮面をかぶり分けるこの生徒は、なんて悪の華的な魅力に満ちあふれているのだろう……。  咳払いひとつ、 「戸神、前回につづいて今回のことも胸にたたんでおく。おとなしく下校しなさい」  ことさら鹿爪らしげに語りかけるはしから一蹴された。蟻地獄に落ちて、なす(すべ)もなく貪られるのを待つのみの自分。  そんな情景が脳裡に浮かんで総毛立つ。

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