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第47話
「小三のときの担任がキレやすいタイプでさ。宿題を忘れてきた生徒を授業中、ずっと教室の後ろに立たせといて大問題になった。けど、半世紀前なら教育熱心な先生って褒めそやされてたと思わない?」
凶星といわれるシリウスを思わせて、双眸がきらりと光った。戸神は学生ズボンのサイドポケットからタコ糸をひと巻、取り出した。
くにゅくにゅと穂先をいじりながら、もう片方の手でタコ糸を器用に繰り出していく。
いけぞんざいにペニスを引っぱられた。手綱を引かれたように、仁科は、戸神と向かい合う形に膝立ちになった。
「あのさ、最近は男子も料理するのが常識。〝男子厨房に入るべからず〟とかって古い、古い」
なあ? と相槌を求めてくると、茶目っ気たっぷりに片目をつぶってみせた。
大根を桂むきにするような、大胆さと繊細さを併せ持つ指づかいで、ペニスの輪郭を撫であげて撫で下ろす。
「俺も最近の男子のひとりだし、チャーシューに関しては豚肉の塊からつくるくらいの凝り性。意外な特技だろ?」
台所に立ち慣れていることを裏づけて、手際がいい。もがく仁科を鈴口を爪繰っていなすかたわら、亀甲模様を綾なすようにペニスにタコ糸を巻きつけていく。
仕上げにタコ糸の端と端をちょうちょに結び合わせると、戸神は尊大に言い放つ。
「『帰りの会の時間まで立っていなさい』が決まり文句だったヒス担任を見習って、俺も厳しくいく。こいつを……」
タコ糸をくぐらせたために瘤状になっている箇所がいくつかある。裏の筋とひとまとめに、そこをひっかいた。
「俺の許可があるまで勃たせておくんだ」
「勃たせ……」
仁科はある意味、ユーモラスな装飾がほどこされたペニスを呆然と見下ろした。
〝許可〟とやらが出るのは三十分後かもしれないし、一週間後かもしれない。それにしても、やりたい放題に人を苛んでおきながら、それでも手ぬるいと言い切る?
戸神は、何手も先を読んで駒を動かす棋士のごとく大局的な視野に立って、新手の淫技を繰り出してくる。
なるほど、タコ糸はゆるめに巻きつけられている。だがペニスが蜜をはらむにつれて、ぎりぎりと食い込んでくる寸法だ。
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