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第51話

  「ん、む、ぅんん……」 「シャッターチャンス」  接写する形に、スマートフォンが口許を舐める。 「撮るな」  顔の前に手を立てながら、仁科はいくぶん後ろにずれた。といっても行動半径は、たかが知れている。  引き綱になぞらえた乳首を摑み寄せる、というやり方で天板の(へり)につれ戻された。どくり、とペニスが脈打つと同時にタコ糸が食い入った。 「ぅ、ふぅう……っ!」  我ながら鼻白むほど甘ったるい声が、空気を震わせた。おまけに蜜がしみ出して、とろとろと茎をつたい落ちる。  おかげでタコ糸が湿り気を帯び、いちだんとペニスにからみついて、独特の痛みをもたらす。  細切れになって、もげ落ちたペニスのイメージが浮かぶと、かえって下腹部がざわめく。てかてかと光る鈴口を戸神に見とがめられれば、嫌みを言われるのは確実だ。  それとなく掌でペニスを覆うと、自然と視線が流れた。  置き忘れられたっきりの殻割り器。くすんだ銀色のそれが、ダイヤモンドのように燦然と輝いて見える。  戸神は乳首攻めひとつとっても斬新な技を編み出し、その効力のほどを仁科の躰で確かめてみることにためらいがない。  再び殻割り器で乳首を挟まれて、パン生地をのばす要領でひらべったくなったところに安全ピンでも刺されたら、新しい世界が開けるかもしれない──。  なまけるな、と言いたげに怒張が唇を出たり入ったりする。 「ん、むぅ、んん……」 「チンタラやってたら永遠に終わらないぞ」  そうだ、くだらない妄想に耽っている暇があるなら戸神をイカせることに専念するのが賢明だ。解放されたければ結局、それが早道なのだから。  仁科は眼鏡を押しあげると、あらためて雄に唇をかぶせた。  ところでプール開きを迎えて以降、体育の授業は水泳が主体になる。ちなみに二年A組は今日の三、四時間目が体育だった。見学を願い出た生徒がいた、という報告は特に受けていないから戸神もひと泳ぎしたのだろう。  そして水着から制服に着替える前にはシャワーを浴びたはず。だが塩素の匂いが、茂みにほのかに残っている。

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