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第70話

 頭をもたげったきりのペニスが、夕闇が迫りゆくなかで妖しく光る。その下につづく太腿は生白いのに対して、靴下は濃紺で室内履きも同系色。  恥を知れ、と己を罵る仁科と、切羽詰まっている、と開き直る仁科がせめぎ合う。  第一、ここで戸神がへそを曲げることがあれば、彼はキャビネットの鍵を持ったまま下校してしまうに違いない。  置き去りにされた仁科は悲惨だ。痒みに身悶えしながらスラックスと下着を取り出すべく、キャビネットの扉と格闘するのだ。  背後で衣ずれがすると、甘みと苦み半々に胸がときめく。  とろろをぬぐい取って、果てのない苦しさから救い出してほしい。いっそのこと、すりこぎを突き入れてぐちゃぐちゃとかき混ぜてくれてもかまわない。  だが、相手は仁科を焦らしぬくことにかけては天才的な手腕を発揮する戸神のことだ。  今も背後に立ち尽くしたっきり、いっこうに動こうとしない。  ──いちいち『ああしろ、こうしろ』と言わなきゃダメなわけ?    先ほど、そういうふうにけなされた理由がわかった。こうしてほしい、ということを具体的に言わせる肚なのだ。  下卑た科白を何度も言わせたくせに、まだ満足できないというのか。  仁科は首をねじ曲げざま眉間に力を込めた。  自分では戸神を()めすえたつもりだったが、なまめかしい目つきに、戸神が思わずというふうに生唾を呑み込んだ。  さしずめ、ご褒美というところか。といっても、しなやかな指は尾骶骨に触れたとたん遠のいた。  仁科はたまらず、せがんだ。 「……搔いて、くれ……ケツ、マンコを」  ひと呼吸おいて指が舞い戻ってきたものの、双丘の割れ目を撫で下ろしていく途中で折り返す。  まだるっこしさに細腰がくねると、故意にそうしているとわかるやり方で同じことを繰り返す。  乳首がしこり、ワイシャツに輪郭が浮き出る。タコ糸の締めつけられて、ペニスが珊瑚のような赤みを帯びる。

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