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第72話
「ん、ん、ぅふ……」
苦痛という篩 にかけられて残ったものは、倒錯的な快感だ。
現にひねりを加えながら乳頭を引っぱられても、理知的な顔は嫣然とほころぶ。雪肌が匂やかに汗ばむ。
エコヒイキと抗議するように内奥がうねりはじめて、動きの鈍い指にじゃれつく。
「ん……んん、痛い、つれて痛い。頼む、そっとやってくれ」
「うるさいなあ。貴明が搔け搔けって、しつこいからこんなところを搔いてやってるのに我がまま言うな」
とろろをぬぐうどころか、逆に筒全体にまぶすように指がずぶずぶと沈む。
ごくごく薄いゴムでできているにもかかわらず、手袋に皺が寄るさますら感じ取れるようで、仁科は反射的に神経を研ぎ澄ました。
先日に較べると幾分マシだが、やはり異物感は強い。今、隘路を遡ってくるのは中指で、指の腹は背中の側を向いている。
反対側……ふぐりの真裏あたりをまさぐってもらえないだろうか。確かそこに魅惑の突起が息づいているはず。
もう少し右、右だ……捉える寸前、指は遠ざかっていった。
仁科は知らず知らずのうちに詰めていた息を吐いた。また、焦らす作戦なのだ、と戸神を恨めしく思う。
だが、例の突起を爪繰られることで快感を貪るような自分の浅ましい面を直視するのが怖い。
そこをこすってくれと、ねだってこさせるのが戸神の狙いだ。誰がその手に乗るか、と唇を嚙みしめても、
「う……ひぃっ……!」
内側で痒みが爆発すれば、びくっ、びくっと腰が跳ねる。
タコ糸がその真価を発揮して、亀甲紋様がペニスに鮮やかに浮かび上がる。
「ガマン汁がじゃじゃ漏れ。パッキンがイカれてるチンポは、こうしないとね」
指の腹が鈴口にぴたりとかぶさった。そのうえで内壁を爪繰ってこられると、蜜が行き場を失って下腹部が重苦しい。
仁科は呻いた。しゃがんでしまいたいところだが、そうした場合は即座になんらかの形で罰せられるに違いない。
天板にしがみついて躰を支えると、内奥を行きつ戻りつするほうの指がポッチをかすめた。
「……ああぁ、ん、ぅ!」
「おかしい」
怒気をふくんだ声が耳朶を打つ。つられて首 をめぐらせた瞬間、襞が反時計回りに巻き取られた。
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