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第88話

「あれは嫌、これは嫌って、うるさいよ」 「ぅ、あ……ぐぐ」  舌の裏側に位置する、ぴらぴらとそよぐ粘膜をひっぱられた。  仁科は、えずいた。咄嗟に指に嚙みつき、戸神が指を引っ込めるが早いか唇を(とざ)した。  溜飲が下がったのもつかのま、戸神がこれ見よがしにくだんの指をねぶるさまに最奥がざわつく。  ごくごく微弱な快感さえキャッチするレーダーが全身に設置されているように、口中にえも言われぬ余韻が残っている、と脳が判断を下したためだった。  と、乳首をひしがれた。身をよじれば、さらに強く揉み込まれる。 「ぅ、あああ……ぅ、ああぁっ!」  悶絶寸前の状態にあるところに、それをビー玉になぞらえたように乳首を爪繰るのは反則だ。振動が躰の芯に響いて瞼の裏を閃光が走る。  切っ先がスイートスポットを打ち叩いていくふうに腰を揺すりたてれば揺すりたてるほど、不完全燃焼に終わるばかりなのに、かくかくと跳ね狂って止まらない! 「さっき、勝手にしごこうとしたな。生徒は授業中に気分が悪くなっても教師に許可を求めなきゃ保健室にも行けない。貴明もマスをかくときは、ちゃんと申告するんだ」    ふぐりを(たなごころ)におさめると、ぐしゃっといくぞ、いくぞ、と匂わすように珠をもてあそびながら笑いかけてきた。 「『はい、今後はおっしゃるとおり必ず申告いたします』──復唱しろ」 「交換……条件……だ」  仁科は息も絶え絶えに答えた。とろろを塗り込められて以来、どれほどの忍従を強いられてきたことか。  なまくら刀で躰を切り刻むような真似はやめて、いいかげんトドメを刺してくれてもバチはあたらない。タンクが空っぽになるまで、射精()して射精して、射精し尽くしたい。  戸神が目をすがめた。一拍おいて、その目が何かを企むふうにきらめいた。 「交換条件を呑んであげる。ひとつ貸しだ」  恩着せがましくそう言うと、つながりはそのままに仁科を天板に押し倒した。そして下肢をVの字に割り広げ、左右の足をそれぞれの肩に担ぎがてら、ぐっと前にのめる。

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