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第89話
「う……ぐぐぅ……っ!」
攻め入ってこられる角度が変わり、熱塊になじみきっていない箇所が攣 れる。
仁科は腰をくねらせて、ずり上がった。力任せに引き戻されて、花芯がほとんど真上を向いたところに打ち込まれると、吹きこぼれた雫が臍 に溜まる。
「先生が満足するまでつき合ってたら、ぎっくり腰になりそうだし。そろそろフィニッシュと
いくか」
「ぁ、ああ、ああぁあああっ!」
猛りが大蛇に変化 して、幽門の先にまでのさばり返る──。
深奥のさらなる奥を嬲りのめされて、そんな光景が脳裡をよぎった。体重をかけて戸神がのしかかってきたせつな、ふっと意識が遠のいた。
仁科は、くたりと両手を投げ出した。
「寝転がったとたん居眠りこかれて、ムカつくんだけど?」
そう冷たく言い放つと、躰を離した。内壁が蠢いて追いすがっても、一顧だにしないでつながりを解く。
もうひと泳ぎすれば救命ボートに乗り移ることができる、というところまで来ている遭難者を打ち捨てていくように。
あとには、ぽっかりと口をあけた後孔が残された。深紅をベースに、とろろの白さが興趣を添えて、一幅の絵のような光景だった。
「ひどい、ああ……ひ、どい」
内壁が、やるせなげにひくつく。仁科は思わず陰門をまさぐった。このさい贅沢は言っていられない。これ以上、蛇の生殺しを味わわされるくらいなら指をねじ込んで自力で昇りつめるまで。
だが、いくら切羽詰まっているとはいえ、ためらいが先に立つ。
やれ、と戸神が命令してくれれば話は簡単なのに、こういうときに限って彼は知らんぷりを決め込む。
花芯に指をあてがったまま途方に暮れていると、床に引きずり下ろされた。尻餅をつき、その衝撃で秘処が甘やかに疼く。あえぎ声がこぼれ、頬をつままれた。
「昔は、お肌の曲がり角って言い方をしたらしいな。アンチエイジングに協力してやるよ。眼鏡を外して、ただし高濃度の蛋白質で結膜炎にかかるのが嫌なら目をつぶっておけ」
ひと呼吸おいて、おごそかに言葉を継ぐ。
「ひざまずいて顔をあげろ」
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