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第90話
左右にくつろげられた学生ズボンの前立てから垣間見える下草は、生えそろって数年足らずとあって薄めだ。
ところがイチモツは獰猛な様相を呈し、且つ、今の今まで奥園で暴れまわっていたことを物語って湯気を立てて見える。
赤黒くそそり立って、なんとも悩ましい。ごくり、と仁科は生唾を呑んだ。
どくどくと脈打っている様子では、見せびらかすだけ見せびらかしておいて後は次回のお楽しみ、とファスナーをあげるのは戸神といえども無理だろう。
「聞こえなかったのか。眼鏡を外す、ひざまずく、そして顔をあげる」
仁科は、のろのろと言われたとおりにした。独裁者然とした戸神のことだ。彼が恣 にふるまうことができる体位でもって崩落を迎える気でいるに違いない。
そう推測したのだが、雲行きが怪しい。
独特の苦みが味蕾に甦り、顔をしかめた。また、口淫で最後を締めくくるつもりなのかもしれない。いや、戸神は二番煎じのやり方でお茶を濁すのをよしとしないだろう。
必ず、あくどい趣向を凝らすはず。
と、コンドームが取り去られた。どぎついピンク色であったものが、内壁で研がれて微妙にくすみ、とろろも付着しているそれが胸元めがけて飛んできた。べちゃり、と乳首に張りついたあとで落ちた。
仁科は反射的にコンドームをつまみあげ、しかし冷めきらぬ自分のそこの温もりに眉をひそめた。
かたや戸神は、やや腰をかがめた。臍を叩くほどの、いきり立ちぐあいに苦労しながら自身を押し下げ、仁科の眉間に照準を定めた。
発射準備が整い、屹立そのものがひとまわり膨張したかのようだ。
本物の銃口よろしく、鈴口が禍々しくぎらつく。
それはもちろん幻聴だが、かちり、と撃鉄が起こされる音が確かに耳朶を打った。
逃げろ、逃げろ! と頭の中で警鐘が打ち鳴らされ、それでも仁科は物欲しげに硬直を見つめたままだった。
先端が眼前に迫り、そこでようやく危険を察知した。
腰を浮かせ、しかし時すでに遅し。
びゅくっ! と熱液が放物線を描いて襲いくる。ぎょっとして、ひきつった顔をめがけて。
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