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第4話
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陸上部だったくらいだか、脚の速さには自信がある。
だから……ボールを見せられ首輪に繋がるリードがカチリと外された時、朦朧としていた意識は戻り、これはチャンスだと圭太は思った。
「ほら、圭太」
見上げた先、和斗がボールを放り投げる。
結構な距離飛んだそれは、芝を囲むように植えられた樹木の手前に転がった。蛍光色で作られているから月夜でも、見失う事はなさそうだ。
「行っておいで」
「………」
声を受け、圭太は重たい身体を引き摺りボールの方へと這い始める。
尚もアナルではバイブが細かく震動を続けていて、一歩手足を出す度それが快楽のツボをツキリと刺激するけれど……声を上げればまた電流が身体の中を突き抜けるから、それだけはしてはいけない。
――もう少し、離れたら……。
ボールの場所まで辿り着いたら、立ってそこから逃げ出そう……と、考え圭太は必死に進む。
ここに連れて来られてから、どれくらいの時間が経ったか実際には分からないが、これを逃したら今度はいつチャンスが来るか分からない。
「……っ!」
進むたび、腰から背筋を快感が突き抜けて、先走りが尿道口から垂れているのが分かるけれど……今の圭太にそれを気にする余裕なんて全く無かった。
首輪は鍵で固定されていて、取り外す事はできないが、外に行けばどうにでもなるし、この際裸を気にしていては、一生ここから出られない。
――親友、だった筈なのに。
いつ歯車がこんなに狂ってしまったのか?
名のある企業の御曹司で、有名私立高校に通っていた露田和斗と、夜間の公立高校へ通っていた圭太の二人が偶然にも知り合って、他の誰よりも仲良くなった。
同性愛者で男しか好きになれないのだと打ち明けられ、多少驚きはしたけれど……それでも和斗が好きだったから、友人としてはそんな重大な心の秘密を打ち明けてくれた事の方が、素直に圭太は嬉しかった。
『圭太、圭太は俺のこと……好き?』
『好きだよ。親友だろ? お前の為ならなんでもするよ』
あとから思えばなんて浅はかな返答をしてしまったのだろう?
大学を卒業して社会人になった矢先、二人で酒を飲み交わし、泥酔した圭太が起きるとここに閉じ込められていた。
御曹司で外見も良く、人間的にも嫌味が無くて本当にいい人物だった彼がこんなことをするなんて……考えてもみなかったから、圭太は酷く驚いたし、抵抗もかなりした。
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