5 / 16

第5話

 その結果、服を奪われ自由を奪われ最後には……声まで取られてしまったけれど。 「……っ!!」  這っている内にいきんでしまい、バイブが少し外へと動いて、前立腺をダイレクトに叩くように刺激した。 ――苦しい、もうっ。  このままアナルの異物を出して、走り去ってしまいたい。もし仮に……自分が彼の恋人でも、こんな畜生(ちくしょう)以下の仕打ちに耐えられる筈が無いだろう。  ハッ、ハッ、とまるで本物の犬のような息をしながら、結構な時間を掛けてボールの前へと這い寄ると、圭太はボールを口だけで咥え身体を背後に反転させた。 「圭太、おいで」  月の照らす光の下、彼がゆっくりと手招きをする。  きっと微笑んでいるのだろうが、顔ははっきりと見えなかった。 ――今……だ。  ボールを吐きだし、立ち上がって、後ろの茂みに逃げ込めば……裏に通用口があるって、前に聞いた事がある。 ――早く、早くしないと。 「おいで」  遠くから響く和斗の声に、身体がビクリと反応する。 ――やめ、違っ……。  調教されてしまった身体が勝手に動き出そうとするが、圭太は何とか手足を踏ん張り進もうとする身体を止めた。 「圭太?」  優しい声。  なぜずっと、友達のままでいさせてくれなかったのだろう?  なぜ……逃げようと思っているのに胸がこんなに苦しいのだろう?  混乱した心と身体は別のベクトルを向いていて、判断ができず新たな涙がポタリポタリと芝生を濡らす。 ――何で、こんな……。  自分で自分が分からない。こんなに酷い状況なのに、逃げだす事もできなくて……和斗の方へも戻れない。 ――ど……して。  頭はもうグチャグチャで、どうすればいいか分からない。  行き詰まり、顔を上げられずに俯き肩を落とした圭太は、だからゆっくりと近づいて来る足音にさえ気づけなかった。

ともだちにシェアしよう!