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第5話
その結果、服を奪われ自由を奪われ最後には……声まで取られてしまったけれど。
「……っ!!」
這っている内にいきんでしまい、バイブが少し外へと動いて、前立腺をダイレクトに叩くように刺激した。
――苦しい、もうっ。
このままアナルの異物を出して、走り去ってしまいたい。もし仮に……自分が彼の恋人でも、こんな畜生 以下の仕打ちに耐えられる筈が無いだろう。
ハッ、ハッ、とまるで本物の犬のような息をしながら、結構な時間を掛けてボールの前へと這い寄ると、圭太はボールを口だけで咥え身体を背後に反転させた。
「圭太、おいで」
月の照らす光の下、彼がゆっくりと手招きをする。
きっと微笑んでいるのだろうが、顔ははっきりと見えなかった。
――今……だ。
ボールを吐きだし、立ち上がって、後ろの茂みに逃げ込めば……裏に通用口があるって、前に聞いた事がある。
――早く、早くしないと。
「おいで」
遠くから響く和斗の声に、身体がビクリと反応する。
――やめ、違っ……。
調教されてしまった身体が勝手に動き出そうとするが、圭太は何とか手足を踏ん張り進もうとする身体を止めた。
「圭太?」
優しい声。
なぜずっと、友達のままでいさせてくれなかったのだろう?
なぜ……逃げようと思っているのに胸がこんなに苦しいのだろう?
混乱した心と身体は別のベクトルを向いていて、判断ができず新たな涙がポタリポタリと芝生を濡らす。
――何で、こんな……。
自分で自分が分からない。こんなに酷い状況なのに、逃げだす事もできなくて……和斗の方へも戻れない。
――ど……して。
頭はもうグチャグチャで、どうすればいいか分からない。
行き詰まり、顔を上げられずに俯き肩を落とした圭太は、だからゆっくりと近づいて来る足音にさえ気づけなかった。
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