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 今、自分に覆い被さっている和斗という名の青年は、誰もが名を知る財閥の御曹司という生い立ちで……そして自分はどこにでもいるごく普通の……と言うよりは、それよりいくらか貧しい部類に入っている、所謂(いわゆる)庶民だ。  圭太自身は両親をすでに亡くしており、保険金と夜間高校に通いながら働いた資金と奨学金とで国立大を卒業した。  和斗と知り合ったのは高校生の頃だったが、私立に通うお坊っちゃんという認識だった圭太だから、こんなに仲良くなるなんてことは当時夢にも思わなかった。 ――一生、仲良く出来るって思ってたのに……。 「ここ、小さくなってる」 「くぅっ……やめろっ! 離せ!!」  恐怖に縮んだペニスを掴まれそれをまじまじと見つめられ……羞恥のあまり圭太の肌が薄紅(うすくれない)に染まってゆく。 「初めてだから怖いんだね?」 「違うっ、和斗、俺の話を聞いて! 俺はこんなこと望んでないっ、何か勘違いさせたんだったら謝るから……だから……あうぅっ」  萎えたペニスに舌を這わされ、言葉は途中で呻きに変わる。 「あっ、やっ、和……やめっ!」  今まで性経験がないから、直接的な刺激に圭太は体を捩って逃げようとするが、がっちり腰を掴まれているから身じろぐ事すら出来なかった。 「んっ……は、離せっ!!」  動くたび、カシャリカシャリと拘束具が音を立て……腰の辺りから疼くような感覚がせりあがってくる。  最初はペロペロ亀頭の辺りへ舌を這わせているだけだったが、快感に慣れぬ圭太のペニスが僅かに兆しを見せた途端……彼は大きく口を開いて丸ごとそれを頬張った。 「あっ……やぁっ!!」  圭太の体がヒクヒク跳ねる。  咥内へと入ったペニスは彼の巧みな愛撫によって見る見るうちに形を変え……上下に扱くような動きと、尿道口を拓くように蠢く器用な舌使いによって、すぐに爆ぜてしまうくらいの高みにまで引き上げられた。 ――なん……で?  自分の体が分からない。気持ちは少しも伴わないのに体中が熱を帯び、同じ男の手管によって達しそうになっている事が信じられずに圭太は震えた。 「ほら、圭太の体は正直だ。俺の事……好きだからってこんなに震えて蜜を垂らしてる」  達するかと思った刹那、ペニスから口を離した和斗がうっとりとそう囁いてくるが、圭太は左右に首を振る。 「そんなんじゃないっ、こんな……縛って思い通りにしようなんて……和斗は……狂ってる!」 「狂ってなんかいない。そうやって、圭太が素直になれないから……大事な圭太にこれ以上、嘘を吐かせたくないから」 「それが狂ってるって言うんだっ。俺は嘘なんか吐いてない! ホント、これ以上されたらお前を嫌いになる。だから……ひっ、ああっ!」  激痛が体を突き抜け、言葉は悲鳴に形を変えた。

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