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第2話 愛が生まれた日 2013・11・11
11月11日
飛鳥井の家族は慌ただしく動き回っていた
瑛太は家族を連れて一足先に出て行った
家族は康太や榊原に何一つ勘付かせる事なく
イベントを進めていた
一生は瑛太に頼まれ弥勒の道場を訪ねた
弥勒は一生を出迎えて笑っていた
「わざわざ訪ねてきた御用を受け賜ろうか」
「弥勒、協力をして戴きたいのですが……」
そう言い一生は封筒を差し出した
「俺の精一杯です
物凄く少ないですが……お願いします」
一生が差し出すと弥勒は
「康太の事なんだろ?お願いは?
なら金は受け取らぬ」
「………弥勒……」
「我は金の金額で動きはせぬ
たとえ少しでも誠心誠意我が要るなら我は動く
そして康太の事なら我はお金は受け取りたくはないのだ…」
そう言い封筒を一生の胸ポケットに押し込めた
「康太と伊織の挙式を当日まで内緒で進めたいのです
サプライズです!
康太は勘が良いから……気付くだろう…
俺達や飛鳥井、榊原の家族は内緒にして当日驚かせたいと思ってます
協力して貰えませんか?」
一生が言うと弥勒は本当に嬉しそうに笑った
「我も参列して良いか?
紫雲も参列したいと言うだろう……」
「良いですよ参列して下さい
ご夫妻でおみえですか?」
「あぁ…妻も康太の花嫁衣装は見たかろう…
お邪魔にならぬ様にでよい
我等も見て構わぬか?」
「良いですよ!と俺は言ってます
瑛太さんも多分弥勒に頼めば参列したいと言うだろうと言ってました
参列して康太の幸せを祝ってやって下さい」
「………ありがとう……」
弥勒は目頭を抑えた
「腕によりを掛けて康太に気づかせはせぬ!」
弥勒に保障され一生は帰って行った
準備万端整えて
後は当日、康太と榊原を連れて行けば良いだけとなった
榊原は会社に行く支度をしていた
康太はPCを見ながら何やらやっていた
一生は榊原に
「旦那、午前中ちょっとだけ時間をくれねぇか?」
と問い掛けた
「午前中ですか?
何かあるのですか?」
「瑛太さんには言ってある」
「解りました
康太も?」
「あぁ、一緒で構わない」
榊原はニコッと笑い
「なら良いです。」
と答えた
「旦那、車は置いて行ってくれ」
「解りました
康太、行きますよ」
榊原は部屋に鍵を掛けると康太を呼んだ
康太は榊原の横に行くと抱き着いた
電車とバスを乗り継ぎ、向かう
榊原と康太は一生の後ろを何も言わず着いて来ていた
「たまには電車も良いよな」
電車に揺られ康太が言う
「たまには良いですね
自分で運転しなくても動くと言うのが良いですね」
榊原も呑気に返して笑っていた
一生は最後まで気が抜けなかった
なんたって康太だから……
「伊織、このまま終点まで乗って行きたい」
やはり爆弾発言して笑ってるからタチが悪い
流石とそれは榊原は止めた
「……康太、終点は止めときましょう
帰るのが大変だと想いますよ?」
「終点、横浜じゃねぇのかよ?」
「…………違いますよ
大宮とかあっちの方だと想いますよ」
「………まぢかよ……なら止めとく…」
康太を納得させて電車を降りた
そこからは徒歩で向かった
真っ白な建物が目に眩しかった
一生はその建物の中へ二人を招き入れた
榊原の姿を見付けると慎一は寄って来た
「伊織、此方へ」
「え?康太とは別なのですか?」
「着がえる間だけです
我慢出来ますよね?」
「…………着がえる間だけなら……」
「なら来て下さい!」
慎一は有無を言わせず榊原を連れて行った
一生は康太を控え室に連れて行った
控え室には式場のスタッフが康太を待ち構えていた
康太を見付けるやいなや腕を掴んで支度に取り掛かる
まずはメイク
康太の髪を上げて基礎化粧品を塗りたくる
「一生ぃ~あんなんだよ!これは!」
叫ぶ康太を「大人しくなさい」とスタッフは黙らせた
「康太、少しだけ我慢しろ
そしたら旦那は世界一喜ぶと想うぞ」
康太は訳が解らなかった
康太の顔にメイクが施されてゆく
流石、プロの仕事
康太はどこから見ても、清楚な女性へと変貌を遂げてゆく
メイクが終わると、今度は着付け
康太の服を脱がせ
「うわぁ~一生ぃ~」
と康太が叫んでも、なんのその!
ドレスを着せてゆく
純白の下着を付けてドレスを着せる
胸がない分……コルセットで締め上げブラジャーにシリコンパッドを入れる
康太のトランクスを剥ぎ取ると……
康太は股間を隠した……
スタッフは手際良く純白の下着をはかせ花嫁を作ってゆく
康太はショックだった
まさか……女性に……見られるなんて……
それを見て良いのは榊原だけだった
「一生ぃ……オレもうお嫁に行けねぇ……」
康太の台詞に苦笑する
「…………大丈夫だ!
お前は立派な花嫁になれる」
お嫁に行けねぇ……と言う台詞あたり康太らしい
康太に純白のドレスを着せると
ロングの腰まであるストレートの黒髪のウィッグを付けた
そして純白のレースを被せ顔を隠した
「出来上がりました!
お式まで少しお待ちを!」
スタッフは花嫁を椅子に座らせ出て行った
スタッフが出て行くと
「………一生……」
と名を呼んだ
「何だ?康太」
「オレ、どこから見ても花嫁なんだけど?」
鏡に映る姿は……
どこから見ても花嫁だった
そこに聡一郎がやって来て花嫁の出来上がりを確認に来た
「凄い!流石はプロですね」
一生と慎一は瑛太を伴って、この式場に来た
ここは白亜のチャペルがある結婚式場
瑛太は結婚式場のスタッフに男同士ですが結婚式を挙げさせたいのですが……
と相談した所、快く引き受けてくれたから総てを話し
段取りを付けて貰ったのだ
スタッフは、控え室に来るのが男だと知っていた
それでもプロの仕事で『花嫁』を作ってゆく
スタッフは胸をなで下ろしていた
男にしか見えない風貌だったら……
ウェディングドレスを着せる前に逃げ出したくなるから……
こんなに普通の女の子より可愛いなら許すわ!
腕によりをかけなくっちゃ!
と頑張ったスタッフの成果だった
「今頃伊織も支度が整っていると想いますよ?」
聡一郎は楽しそうに言った
慎一に連れられた榊原は部屋に入るなり女性スタッフに取り押さえられ
服を脱がされ………吐きそうな顔をした
慎一は危ないと…
「伊織、耐えて下さい
康太と挙式を挙げたいのなら耐えて下さい」
と励ました
榊原は嬉しそうな顔を慎一に向けた
「康太と挙式を挙げれるのですか?」
信じ切れずに慎一に問いかける
「……貴方の着る服です」
慎一はハンガーにかかる服を指さした
「堪えます!
僕は何があっても堪えて見せます!」
榊原はそう言い大人しく着せ替えられた
康太が夢で見た、純白の燕尾服を着た榊原の出来上がりだった
着せ替えが終わると榊原は康太はどの部屋ですか?
と問い掛けた
「挙式前に花嫁には逢えません」
この式場は控え室が花嫁と花婿とは違う階にあった
挙式前に花嫁には逢わせない為だった
「………逢えないのですか…」
榊原はがっくし肩を落とした
そこに一生がやって来た
「おっ!バッチシ出来上がってるな」
「一生、僕達は全く知らなかったのですが……」
「サプライズだからな!
瑛兄さんからのプレゼントだ!」
一生の言葉に榊原は驚愕の瞳を向けた
「………義兄さんが?」
「あぁ。瑛兄さんが旦那にプレゼントするサプライズだった
だから二人には気付かせないで進めて来た」
「………勘の良い康太に知らせずに?」
「………それが一番苦労した」
「一生……ずっと願っていました……」
「瑛太さんは知っていた
伊織の悲願をそろそろ叶えてやらねば頑張って飛鳥井の家の為に生きてくれてる伊織が可哀想ですからね…
って言ってた」
榊原は泣きそうになるのを堪えた
「旦那、おめでとう」
なのに一生は……凄く嬉しそうに言うから……
「………一生……」
と涙が零れた
「泣くな…旦那…」
「僕は幸せですね
理解してくれる仲間がいて、兄弟がいて親がいる…」
「旦那が頑張って来たからだ!
投げ出さずに来たから迎えられる日だ」
「………君は本当に僕を泣かすのが上手い……」
一生が榊原の涙を拭う
そこに清四郎と真矢と笙が顔を見せた
清四郎は「よく似合ってます」と感嘆した
真矢も「おめでとう伊織」と涙を拭いながら言葉にした
笙も「伊織、本当に良かったな。」と声を掛けた
「父さん……母さん……兄さん……」
後に続く言葉が……嗚咽で消えた
「泣くな旦那……」
一生が榊原を抱き締めた
清四郎が榊原の顔を綺麗に拭いてやった
「花婿が泣き腫らした目なんてしてたらダメでしょ?」
「………出て来るのは……止められません……」
真矢も榊原の涙を拭い
こんな泣き虫な子だったのかしら……と思った
気が付けば……親と距離を取っていた
口を開けば辛辣な言葉を投げかけて来る
何時しか真矢は……榊原に近寄らなくなった
この子は……どんな風に育ったのかしら……
泣きたい時に……泣けもせず……どんな風に……
真矢は顔を覆い……泣き出した
「母さん……泣かないで下さい」
清四郎が妻を抱き寄せた
「ごめんなさいね…色々想ったら泣けて来て……」
榊原は真矢に頭を下げた
「母さん……僕は良い子ではなかったですから…
親孝行もしてませんでした…」
「伊織…貴方は良い子よ」
真矢は涙を拭った
「母さん…僕は貴方達と距離を取ってました…
まさか僕も……貴方達とこんな風に向き合えるとは想いもしませんでした
今……僕は……こんなにも幸せです……
父さんや母さん……兄さんに祝ってもらい
飛鳥井の家族に祝って貰い……
式まで挙げれるのですから……」
清四郎と真矢は榊原を抱き締めた
「康太を幸せにしてあげて下さい
そして君も幸せにしてもらいなさい」
清四郎は息子の頬に口吻を落とした
「誰よりも幸せになりなさい
私達は何時までも側にいますからね」
真矢も榊原の頬に口吻を落とした
一生は、涙を堪えて……控え室を後にした
そして、康太の控え室に向かう
ドアを開けると飛鳥井の家族がいた
源右衛門は「美しいぞ康太!」と豪快に笑っていた
清隆は「お嫁に出したくないです……」と本音をポロリ
瑛太も「私も……お嫁には出したくなかったです」と本音を吐露する
玲香は「往生際が悪すぎる…」と漏らした
康太はウェディングドレスの裾を捲り上げ椅子に座っていた
「瑛兄、嫁に出したくねぇなら、あんでこんなサプライズすんだよ!」
と拗ねていた
「伊織を想えば……私は君を嫁に出すしかないじゃないですか
堪えて君を支えてくれる伊織を想えば……
応えてやりたいと想う……」
瑛太は苦しい胸の内を明かした
康太を支えて堪えて……我慢する
全身全霊かけて康太を守ろうとする榊原を想えば……
榊原の悲願を叶えてやるしか……
榊原に応えられなかった
「………まさか……瑛兄がオレにこれを着せるとはな…」
康太はボヤいた
「君は誰よりも榊原伊織の妻ですよ」
最大の賛辞を貰い、康太は笑った
「花嫁衣装は着ても、オレは飛鳥井にいるけどな…」
康太が言うと瑛太は
「ええ。君が飛鳥井を出るなら兄も共に行きます」
さらっと言った
兄付きの花嫁なんて……
誰も欲しがらないやん……と康太は想った
「康太!父も着いて行きます!」
…………余計貰って貰えないやんか!
玲香は「………嫁に行くなら母も共にいこうぞ!」と泣きまくりで……
玲香の貰い涙を瑛太も受け……清隆も泣いていた
「………だから、オレは飛鳥井を出ねぇってばよぉ!」
康太は叫んだ
だけど…………
聞いちゃいなかった
「お時間です!」
式場のスタッフが控室まで迎えに来る
互いの両家の顔見せは省いた
知らぬ中でないから顔見せは省き挙式を挙げる
その後お色直しを1回
披露宴でする
どのカップルも挙げる挙式の形態を取ってやりたかった瑛太の想いだった
榊原はバージンロードを歩き神父の前で花嫁を待つ
祭壇には神父が立ち式の進行を見守っていた
チャペルの鐘が鳴り響く
祝福した鐘の音が響き渡る
この式場に決めたのは、このチャペルがあったから
瑛太は祝福の鐘を鳴らしてやりかったのだ
瑛太は、神父の前に立つ榊原に
「挙式の後は披露宴です
ウェディングドレスの康太を掴まえるのはNGですから」
と釘を刺した
榊原はがっくし肩を落とした
「その変わり……」
瑛太は榊原に耳を貸せと指で合図した
榊原の耳にヒソヒソ ゴニョゴニョと耳打ちする
榊原は笑顔で瑛太に礼を言った
何処までも榊原を熟知した瑛太なればこそ、導き出せた答えだった
榊原は笑顔で花嫁を待っていた
康太は………父清孝と瑛太にエスコートされて扉の前にいた
「あんで、二人なんだよ!」
康太が文句を言う
瑛太が「譲りたくないのです」と言った
清隆も「私も譲りたくないのです」と言った
ならば、花嫁の左右に並びエスコートする
式場側の苦肉の策だった……
ギューギュー絞められて……康太は苦しかった
ブラジャーが痒かった
パンティを脱ぎたかった……
これを言うと榊原が跳びあがり……喜ぶけど……
それに耐えるのは……
「やっぱし愛だな」
と康太は呟いた
榊原伊織の為にだけ着る
純白のウェディングドレスだった
でなきゃ誰が着る
着せた側から脱ぐだろう
しかし……何故……気付かなかったのか……
康太は不思議だった
全く……家族や一生達からは、気配が窺えなかった
こんな事は珍しい……
こんな当日連れて来られるまで、気付かないなんて…
でも良いか……
榊原が喜ぶなら
誰よりも榊原伊織の妻でありたいのは康太だった
榊原伊織のモノだけでいたい……
そう願って止まないのは康太だった
愛している……
榊原伊織だけを
青龍だけを……
カタチだけでも認められ妻になれるのを
誰よりも欲していたのは……
康太だった
伊織……
王子みたいにカッコイイんだろうな
あの日みた初夢みたいに……
カッコイイんだろうな
榊原へと想いが行く
愛して止まない夫の姿をこの瞳に焼き付ける
一生に一度
愛する人と挙げる
その願いなら……
康太にもあった
ドアが開かれ
花嫁がバージンロードを静かに歩いてゆく
ヴェールを被った花嫁が花婿に向かって
歩いてゆく
榊原はバージンロードの向こうを歩いてくる花嫁に釘付けだった
清隆は「…………嫁に出したくないです……」と泣いていた
瑛太も「……何時でも帰って来なさい」と言っていた
康太は挙式の後も飛鳥井にいるのに…
泣きながら……帰って来なさいと言っていた
「幸せになりなさい康太」
清隆は子の幸せを願った
「誰よりも幸せにして貰いなさい康太」
瑛太は愛して止まない弟の幸せを願った
バージンロードを歩いて花婿の傍に行く
花婿は待っていた
優しい笑顔で……
幸せを隠せない笑顔で花嫁を待っていた
清隆と瑛太は花婿に康太を渡した
「幸せにしてやって下さい」
清隆が涙を流しながら言う
榊原は「はい!幸せにします」と約束した
「誰よりも愛してやって下さい」
瑛太が榊原に康太を託す
「はい!誰よりも愛します」
榊原は絶対の言葉を瑛太に返した
清隆と瑛太は参列者の席に戻った
参列者の席にはこの日の為にだけに集まった人が来てくれていた
康太は弥勒を見つけると……
納得した
何も気付かずに……来るのは誰かの力がなくば有り得なかったから……
参列者の席には安曇勝也、三木繁雄、戸浪海里、蔵持善之介、相賀和成、神野晟雅と小鳥遊智、弥勒夫妻、紫雲夫妻もいた
そして………車椅子に座った須賀直人がいた
静まり返った式場に神父の声が響く
「榊原伊織、貴方は飛鳥井康太を生涯の伴侶として愛し抜くと事を誓いますか?」
「誓います!」
「飛鳥井康太、貴方は榊原伊織を生涯の伴侶として愛し抜く事を誓いますか?」
「はい!」
二人の愛が揺るぎないと確証した返事だった
神父はそれを見届け微笑んだ
「指輪の交換をして下さい」
神父は二人の前に銀色に輝く指輪を差し出した
光り輝く指輪の小さい方を取ると
榊原は康太の薬指に、指輪をはめた
康太は榊原の薬指に、指輪をはめた
「では、誓いの口吻を」
榊原は康太のヴェールを上げた
そして、その唇にそっと唇を合わせ
そして離れた
康太は榊原に見とれて見上げていた
その瞳は……キラキラ輝いて榊原だけを映し出していた
榊原と康太は教会の発行する結婚証明書にサインした
それで結婚式は無事終わりとなった
新郎新婦が式場を出るとライスシャーが降り注いだ
その中を康太と榊原は、皆に祝福され歩いた
康太は榊原を見上げ、涙した
幸せすぎるから……
榊原は花嫁の肩を引き寄せた
康太はブーケを須賀に渡した
「何時か乗り越えられたら……
幸せな家庭を築け……」
そう言い康太は須賀にブーケを贈った
須賀は笑顔で
「ええ。何時か君達の様に祝福され式を挙げたいです」
そう言った
その瞳は前を向いていた
相賀が「綺麗ですよ」と賛辞を述べた
戸浪が「お幸せに。」と祝辞を述べた
三木が「嫁に出したくない」と親の心境だった
善之介は「康太の花嫁姿を見れて嬉しいです」と喜びを述べた
神野が「羨ましい程幸せでいてください」と言った
同性の恋人を持っていて……
此処まで出来るカップルは少ない
憧れだった
安曇が「嫁には出したくない父親の心境です…」とやはり零した
弥勒は眩しそうに康太を見ていた
「おめぇが一枚噛んでたら詠めねぇわ」
康太は笑った
弥勒夫妻と紫雲夫妻は何も言わず
康太の晴れ姿を目に焼き付けていた
康太は笑顔で
「ありがとう」
と伝えた
新郎新婦は披露宴のお色直しの為
スタッフに連れられ別室へと向かった
今度はピンクのウェディングドレスを着せられた
榊原は黒の燕尾服を着せられた
まさか……披露宴まであるとは想わなかった榊原は焦った
本当の男女の挙げる挙式と変わらなかったから……
瑛太はご祝儀は受け取らなかった
時間がなかったから引き出物は用意出来なかったから
ご祝儀は不要だと言って笑っていた
とても幸せそうな笑顔だった
披露宴では花嫁はピンクのウェディングドレスを着て
新郎は漆黒の燕尾服に身を包んでいた
瑛太が選んだ衣装だった
この日の為だけに瑛太は購入した
貸衣装なんかで式を挙げたくなかった
披露宴会場のドアが開かれると
花嫁と花婿が入場してきた
淡いピンクのウェディングドレスに身を包む康太は美しかった
漆黒の燕尾服に身を包む榊原は、やはり王子みたいだった
雛壇に座らされ、披露宴が始まる
宴会好きの飛鳥井は飲めや歌えの大騒ぎだった
事前に両親に向けてスピーチは用意してなかった
ぶっつけ本番で榊原はマイクを渡された
「………え?本気ですか?」と聞き直す程に驚いた
式の進行は緑川一生
一生は「想った事を言えばいい」
と榊原に言った
マイクを持ち榊原は想いを伝える
「今日は本当に素敵なサプライズをありがとうございました
本来なら僕達は男同士……挙式など夢のまた夢の話でした
でも何時か……康太にウェディングドレスを着せたかった
カタチある証を遺したかったのです…
その望みも叶いました……
瑛太義兄さん……本当にありがとうございました
ご出席いただいた皆様
本当にありがとうございました
僕達は……本当に幸せ者です
父さん…母さん…僕は妻を得ました
本来なら許されない……関係の僕達を許してくれ……
見守って下さり本当にありがとうございます」
後はもう言葉にならなかった
榊原はマイクを康太に渡した
「瑛兄、ありがとう
伊織が一番喜ぶ誕生日プレゼントだった
父ちゃん母ちゃん……本当にありがとう
オレをこの世に生み出してくれてありがとう
オレは幸せだ
こんなに皆に祝福されて……
式に出席してくれた皆様にも心よりお礼を申し上げます
本当にありがとうございました」
康太も涙を流し……深々と頭を下げた
榊原は康太を抱き締めた
そして肩を震わせて……泣いた
こんな幸せ……
皆が……祝って支えてくれたから迎えられた日だった
清四郎は立ち上がると榊原と康太を抱き締めた
真矢も立ち上がり二人を抱き締めた
そして席に戻ると飛鳥井の家族が二人を抱き締めた
戸浪や相賀、善之介、安曇、神野と小鳥遊も
次々に康太と榊原を抱き締めた
康太は車椅子の須賀の側に行くと
須賀を抱き締めた
榊原も須賀を抱き締めた
「無理させたな」
康太が須賀に言う
「いいえ、こんな素敵な挙式に参列出来て
本当に生きてて良かった……
でなきゃ口惜しくて……未練ばかり残りました
康太、誰よりも幸せになって下さい」
「須賀も幸せになれ
誰よりも幸せになれ
それがお前をこの世に引き留めた……
俺の願いだ……」
「………康太……」
須賀は泣いていた
熱い滴が頬を濡らす
「キャンドルサービスの準備を」
とスタッフに呼ばれリボンが施されたキャンドルを二人で持った
皆のテーブルを回りキャンドルの炎を灯してゆく
テーブルを回る二人は誰よりも幸せそうで
輝いていた
両家の両親に花束を贈呈して滞りなく式は終わった
記念写真を撮って、その結婚式の総ての行程が終わった
お昼を挟んで行われた挙式は4時間ちょっとだった
午前10時に挙式を挙げ
午後12時から披露宴を行い
4時間ちょっとの結婚式は終わった
新郎新婦が来客のお見送りに正面玄関に向かい見送る
皆に祝福の言葉を贈られ、お礼を告げて来客を見送った
弥勒は康太を抱き締めた……
紫雲も康太を抱き締め泣いていた
須賀を連れて来たのは相賀だった
戸浪と三木には次逢う約束をして見送った
来客を見送って控え室に行くと
康太は更にメイクを整えられた
やっとこさ脱げると思ってた康太は
「あんだよ?脱げねぇのかよ?」
と文句を言った
瑛太が控え室に現れ
「康太、新婚旅行は大阪です
行きたかったんでしょ?」
と言った
「ありがとう瑛兄
今日は本当に嬉しかった」
「綺麗ですよ……康太」
「……まだ脱いだらダメなのかよ?」
「そのままの格好でホテルニューグランドまでお送り致します
予約は取ってあります。
副社長にはこの格好で行くのも伝えてあります」
「………瑛兄……」
「脱いだら伊織が悲しみますよ」
ウェディングベールの変わりに髪に花をあしらい可愛い髪型へと変えてゆく
「御用意出来ました」
スタッフが言うと瑛太は肘を差し出した
康太は瑛太の肘を軽く掴んだ
ドレスの裾を上げて貰い歩きやすくなっていた
康太は瑛太にエスコートされ榊原の元へと向かった
榊原は玄関ホールで康太を待っていた
瑛太にエスコートされて来る妻に目を奪われた
瑛太は笑顔で康太を渡した
「私がホテルまで送って行きます
翌朝ウェディングドレスを片付ける箱を持ってホテルに迎えに来ます
着替えはどうしますか?」
「慎一に持って来る様に頼んで下さい」
と言い寝室の鍵を瑛太に渡した
「慎一に後で渡しておきます
では明日の朝まで、ゆっくり過ごしなさい」
そう言い瑛太はゆっくり歩き出した
駐車場まで向かい瑛太の車の後部座席へと康太を乗せる
榊原はその横に乗り込んだ
それを見届けて瑛太は運転席に乗り込み車を走らせた
「義兄さん…本当にありがとうございました」
榊原は瑛太にお礼を言った
「伊織、新婚旅行に兄も行って構いませんか?」
「ええ。義兄さんだけでなく皆さんご一緒でも構いませんよ?」
「伊織、私は康太の伴侶が君で良かったと想います
普通、新婚旅行にについて行こうとする家族は敬遠されるのですが……伊織は康太の総てを受け止めて守ってくれる
本当に君には感謝しても足らないです
飛鳥井の家から康太を出せない……
そんな条件なのに康太や家族に尽くしてくれます
そんな頑張ってる伊織に兄からの細やかなプレゼントです。」
「………義兄さん……」
「式場では我慢させました
もう我慢しなくて良いです」
瑛太は笑ってそう言った
瑛太の車はホテルニューグランドまで向かい
車寄せに車を停めると、副社長が出迎えてくれていた
慎一が連絡を取ってくれていたのだ
車から降りる花嫁を見て副社長は
「とてもお美しいです」
も賛辞を述べた
「こちらへ」
副社長自ら二人を案内して歩く
ホテルに居合わせた人達は急に現れた新郎新婦に目を輝かせた
美男美女のカップルに……
どことなく「お幸せに!」と声がかかった
康太はニコッと微笑み頭を下げた
瑛太はフロントで手続きをすると帰って行った
「康太様、こちらのお部屋に御座います」
副社長がカードキーでドアを開けた
「当ホテルから細やかな御祝いが御座います
ディナーのお時間は午後8時で構いませんか?」
「ええ。構いません
ありがとう御座います」
「お似合いです!お二方は
お幸せになって下さい」
「ありがとう御座います」
「では、ごゆっくり」
副社長は頭を下げると、部屋を出て行った
部屋に二人きりになると榊原は康太を抱き寄せた
「やっと君に触れます……」
そう言い榊原は康太の顔を上げさせた
見上げる康太の瞳が潤んでいた
「康太、幸せにします!」
「ん。オレも伊織を幸せにする」
「綺麗ですよ奥さん……」
頬に触れた手を康太の背に回し……
キツく抱き締めた
「伊織も格好良すぎて……ドキドキする…」
「君のですよ
僕の総ては君のです」
「ならオレの総ては伊織のだ」
「奥さん…ドレスを着たまま……」
「何処でも良いぞ
我慢させた分埋めてやる」
「義兄さんがリボンをくれました
ドレスを脱いだら……リボンで君を飾ります」
「ん。伊織の好きにして良い」
榊原は康太を寝室に連れて行くと……
窓際に康太を立たせた
「ドレスの裾を持ってて下さい……」
榊原はドレスの裾を持ち上げると康太に持たせた
ついつい内股になってしまうのは、仕方ない
榊原はしゃがむとドレスの中に顔を突っ込んだ
「……奥さん……もう感じてますか?」
白い純白のパンティを押し上げた康太の欲望の象徴に触れた
「………ゃ……触らないで……」
「イッちゃうからですか?」
榊原は笑った
パンティを下げて双丘を開く
榊原の舌が硬い蕾を舐めてゆく
指を挿し込むと蕾は硬く慎み深く閉じていた
禁欲の日々は康太の蕾を硬く閉じさせてしまっていた
ペロペロ舐めて指で掻き回すと緩んで解れる
榊原は根気に康太の閉じた蕾を解した
窓際に縋りついて康太は喘いだ
「……ぁん…ぁぁっ……伊織……挿れてぇ…」
「ドレスに気を付けて下さいね
このドレスは須賀が妻を得た時にプレゼントします
誰よりも幸せな君の着たドレスですからね…験担ぎです」
だから汚すな……と榊原は言う
康太はドレスを掴んで耐えた
ガクガクする足で……ドレスを持つ
榊原が後ろから挿入してくると堪えきれず……
ドレスの裾を離しそうになった
「奥さん……愛してます」
「あっ……あぁっ……オレも…愛してる……」
喘ぎは愛を紡ぎ出し、康太は榊原に愛してると言い続けた
「康太……君の中……気持ち良すぎです……」
締まる秘孔が榊原を締め付ける
蠢く様に締め付けられ……
榊原も絶頂へと上ってゆく
榊原は康太の中に総てを注ぎ込んだ
ガクッと崩れる康太を抱き上げ、榊原はベッドの上に座らせた
榊原の指が、康太のドレスを脱がしてゆく
器用に康太のドレスを脱がすとソファーの上に大切に置いた
榊原も服を脱いだ
漆黒の燕尾服を脱いでゆく
康太はそれを惜しそうに見ていた
慎一に頼んで写真は沢山撮っておいて貰った
だけど……ずっと見ていたな……と思う
榊原はみとれてウットリする康太を抱き締めた
その手にはリボンが握られていた
綺麗なピンク色のリボンだった
榊原はそのリボンを康太に巻き付けた
グルッと巻き付け背中に大きなリボンを結んだ
康太は今年もベッドの上に正座して
「ふつつか者の妻ですが末永く……きゃっ……」
また今年も……宜しくお願いします……と言う前に押し倒された
「康太……可愛すぎます……」
榊原の昂ぶりが当たって熱い
康太は榊原にニコッと笑った
「死ぬまで愛して
死んでも愛して……」
榊原は康太の唇に執拗な接吻を送り貪った
「君と僕は未来永劫離れられない……
僕から離れるなら息の根を止めます
………君のいない明日など……僕は要らない…」
榊原は狂った様に康太を求めた
乱暴に体躯を開かれ……繋がる
それさえも刺激に変換され榊原の愛を感じた
「……ぁぁん……はぁん……激しすぎ……」
「止まれません……」
榊原は汗を滴らせ腰を使った
ずっと繋がって……
一つになって溶け込んでしまいたい
「康太……今日はもっと奥へ僕を挿れて……」
もう無理……と康太は悲鳴をあげる
だが榊原はもっと奥へと康太の中へ……奥へと突き進んだ
何時もより長い……
そこを擦られ……康太は意識が朦朧とした
「……ゃ……深い……ぁん…ぁぁん……」
「君を愛しすぎて……狂いそうです……」
「オレなんてとっくの昔に伊織に狂ってる……」
康太は榊原の背中に腕を回した
汗で滑る背中を抱く
強く……強く……抱いて……離さない
榊原は康太の足を抱え
康太と手を繋ぐ
指が白くなるまで……硬く握る……
榊原はラストスパートをかけた
激しく貫かれ……激しく体躯が揺れる
「………伊織……奥に……奥にかけて……」
「良いですよ
君の好きな場所にかけてあげます……っ……」
榊原は腹筋を引き締める震えた
康太の奥深くに飛沫を感じると
康太も榊原の腹に総てを吐き出した
「康太、初夜です
夫婦になって初めて迎える夜です」
「………ん、伊織……嬉しい…」
「まだ終われませんよ?」
「………伊織の好きにして良い
オレの全部は伊織のモノだ
オレの総ては青龍のモノだ」
榊原は康太の中から抜くと康太を俯せにした
高くお尻上げさせ榊原は愛しい秘孔を舐め始めた
蕩けた康太の秘孔は……蠢き紅く艶めいていた
捲ると赤い腸壁が煽動していた
榊原の舌が舐めあげると歓喜して震えた
愛しい康太そのものだった
「僕のが……出て来てます」
そう言い榊原は舐めた
指を突っ込まれ掻き回されると……
物足りなさを訴えて榊原の舌を咀嚼しようと取り込む
「君のココ……物欲しそうですよ?」
「……ぁぁっ……オレは何時もお前が欲しい……」
「では君が満足するまで頑張ってみます」
そう言うと榊原は康太の中に押し入った
康太の体躯を持ち上げると膝の上に下ろした
背後から繋がり……榊原の膝の上に座らされる
深く繋がり……榊原に串刺しにされて、康太は仰け反った
榊原の肩に康太が仰け反ると、榊原は執拗な接吻で康太の唇を塞いだ
接吻はそのままで、激しく貫かれ……
体躯がガクガク体躯が揺れた
榊原の欲望の続く限り……
康太は激しく求められ……意識を失った
榊原は気を失って寝ている康太を抱き上げバスルームへと向かった
大きなジャグジーにお湯をためて
たまる間に康太の体躯を洗う
中を掻き出し洗っていると康太は目を醒ました
「伊織…」
「気が付きましたか?」
「……ん…ごめん…」
「何で謝るんですか?」
「伊織の誕生日なのに……
最後まで付き合い切れずに気絶した…」
「気にしなくて良いですよ?
僕は君がいてくれるだけで良いんです
君を抱いて、君と繋がり
同じ時間を刻む
君の体内にも僕を刻む
それを感じていたいだけです」
「伊織……愛してる」
「僕も愛してます。奥さん」
榊原はそう言い康太を抱きしめた
康太の体躯の中も外も綺麗に洗うと
康太が榊原の体躯を洗ってくれた
ゴシゴシ力任せに洗うのは痛いけど……
康太の愛だった
この子は……きっと今まで自分の体躯も力任せにゴシゴシしていたのだろう
と苦笑する
「伊織、腹減った…」
康太は榊原を洗うと空腹を訴えた
「ディナーの時間です
も少し待ってなさい」
「オレ…ドレスしか着るもんねぇじゃんか…」
「着替えは明日の朝しか来ません
バスローブで構わないでしょ?」
「………何か恥ずかしい…」
バスルームから出て髪を乾かしバスローブを着せられた
康太にはデカくて…肩がずり下がって来る
「君はベッドにいなさい
僕が出ますから……」
こんな艶めいた康太を誰にも見せたくなかった
副社長の約束した8時ピッタリにディナーは運ばれた
副社長からのカードが添えられていた
給仕は手早く支度をして、部屋を出て行った
榊原はベッドルームまで康太を呼びに行き
ディナーの席に着いた
榊原はカードを康太に渡した
カードを開くと
『ご結婚おめでとうございます
お二人のお姿を拝見させて戴けて喜びも一塩でした
末永くお幸せに…それだけをお祈りしております』
と書かれていた
「大切にしまっておきますね」
榊原が言うと康太は頷いた
二人で寛ぎの一時を過ごす
美味しいディナーを食べて、夢も見ないで眠りについた
榊原と康太の愛が……
新たに始まる
一生忘れられない誕生日になった
愛が生まれた日
それは本当の愛がカタチになって遺った
愛しき日々となった
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