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第4話 愛が生まれた日 2015・11・11
11月10日
康太は花菱百貨店へと来ていた
道明寺達也が「どの様な商品をご所望ですか?」と笑顔で傍にやってきた
「道明寺、久しぶりやん!
元気だったかよ?」
「はい!元気です!
この時期のご来店は伴侶様のプレゼントに御座いますか?」
「おう!伊織に似合いそうなの頼む」
「畏まりました!
ご要望は何かありますか?」
道明寺が問い掛けると慎一は紙を渡した
「これが伴侶様のご所望ですか?」
『システム手帳
PC
Yシャツ
スーツ
カフス』とあった
道明寺は店員を呼び寄せると、商品を持って来るように言った
「システム手帳でしたら、最新のを御用意できます
PCも最新のモデルを御用意しております
スーツやカフス類でしたら伴侶様の採寸が残っておりますので、そちらから御用意できます」
道明寺はそう言い店員に持っていく来させた商品で説明し始めた
慎一の胸ポケットが震えて……
慎一はその場から離れて電話に出た
「はい!御用ですか?」
『康太は何処にいますか?』
「花菱百貨店です」
『何階にいますか?』
「7階、総合受付にいます」
『では、そこへ向かいます』
「あの……たんじ……」
と言ってる矢先に電話は切れた
慎一は康太の所へと向かった
「康太、伊織が来ます」
慎一が言うと康太は「………今年もかよ?」とがっくし肩を落とした
「………伊織……ですからね」
慎一はそう言った
一生と聡一郎は、うんうん!と頷いた
道明寺は笑っていた
「ご本人様に内緒なら……どれか決めて戴けるのでしたら、梱包して配達させますが?」
「………内緒にしてぇけどな……
もう来やがった……」
康太は榊原が早足で歩いてくるのを見ていた
榊原は康太を見付けると駆け寄って来た
「康太、何か欲しいのがあったのですか?
僕に言えば何でも買ってあげます!」
さぁ言ってご覧なさい
……と榊原は甘く囁いた
「オレは伊織の誕生日のプレゼントを買いに来たんだよ!
本人が来ちまったら……プレゼントにならねぇじゃねぇかよ?」
「康太……今年も僕はリボンをつけた君で十分です!」
「今年はリボン着けねぇぜ?」
「………え?嘘……楽しみにしていたのに……」
「今年はサプライズだかんな
伊織、お前帰れよ!」
「………康太……」
榊原は悲しそうな顔をした
こんな顔されたら……何も言えなくなる
「………伊織……誕生日プレゼント、何が良いよ?」
「僕は君だけで良いです」
「じゃなくて……商品だよ!」
榊原はテーブルに並べられた商品を見た
重厚感があるシステム手帳を手に取り
「使い勝手良さそうですね?」
と道明寺に問い掛けた
「今年の売れ筋商品です」
「康太、僕はこれが良いです」
「なら包装して貰って持ってくか?」
「明日、君の手から貰います
奥さんからのプレゼントです……
凄く嬉しいです
せっかく花菱にいるのですから、服を買ってあげましょうか?」
「普段着?」
「モコモコのコートです
可愛いの道明寺さんに頼んであるのです」
榊原が言うと道明寺は店員に
「榊原様の取り置き商品を持ってきて下さい」と命令した
店員は取り置き商品を取りに走った
そして袋に綺麗に梱包した袋を持ってきて道明寺に渡した
「伴侶様、こちらです!」
袋を手渡して貰うと、榊原は康太に袋を渡した
「………伊織……オレは誕生日プレゼントを買いに来た……」
「僕は愛する奥さんにモコモコのコートを買いに来たのです!
着て下さいね!それでデートして下さいね!」
榊原は幸せそうに笑っていた
康太はシステム手帳を梱包して貰い、支払いは慎一に頼んだ
慎一は康太に渡されてるカードで支払った
花菱百貨店を後にすると、皆でファミレスに向かった
榊原はご機嫌で運転していた
「康太、僕は君がいてくれれば、それだけで幸せなのです!」
「オレも……伊織さえいれば良い…」
デレデレの甘々の空気が車に広がる…
榊原の車に乗るものはいなかったから、二人の世界でも誰も困らないが……
一生は前を走る車を見て……
「……ピンクいわ……」と呟いた
聡一郎が「あの二人は何時もでしょ?」と呆れて言った
「あんなにベッタリ一緒にいて飽きねぇのかな?」
一生はボヤいた
聡一郎は「あの二人に飽きるなんて単語はないでしょうね!」とキッパリ言った
「……だろうな……」
「それよりも康太に頼まれたの用意したんですか?」
「おー!バッチしな!」
「それだけは当日まで内緒ですよ!
普通……誕生日プレゼント買ってる所に来ますかね……
更に……モコモコのコートをプレゼントするなんて……どっちが誕生日か解ったもんじゃない……」
聡一郎がボヤくと一生は
「………旦那は釣った魚には餌を与えすぎなんだよ………」
と現実を告げた
「………羨ましく想いますがね……
僕なら……裸足で逃げ出しますね……」
聡一郎は……執着な恋人を思い浮かべて……呟いた
「……言うな聡一郎……
康太が幸せなんだから……言ってやるな…」
「……ええ……康太が幸せじゃなかったら……
僕は黙っちゃおきません!」
「聡一郎……口出すな……」
「出しませんよ?」
聡一郎はそう言い……一生の手を握り締めた
一生は聡一郎の頭を撫でてやった
慎一はファミレスに向かった
店内に入ると兵藤が大学の仲間と食事中だった
康太は無視して席に着いた
「伊織、オレ、ハンバーグで良い」
「野菜も付けますよ?」
「大盛りにして二人で分けようぜ」
「良いですね!」
榊原は呼び出しベルを呼んでオーダーした
一生や聡一郎、慎一も注文した
そしてメニューが運ばれて来ると、康太は榊原に問い掛けた
「今日は別行動の筈なのに……あんで来たんだよ?」
「仕事も片付いたので君に逢いたくなりました
僕は何時だって君といたいのです」
「………伊織……」
甘い……
甘すぎて……
消化不良起こしてしまう……
「旦那、今は食べる事に集中しなはれ!」
「してますよ?」
「………今夜はエッチ禁止でっせ?」
「………え?嘘……」
「明日の誕生日まで取っておきなはれ!」
「………そうでしたね
明日は僕の誕生日みたいですね
小学生の頃……僕は誕生日が嫌いでした……」
榊原は意外な事を口にした
「あんでだよ?」
一生は首を傾げて問い掛けた
「ポッキー&プリッツの日ですからね……
僕のポッキーを食べさせろと迫られて……
大変な日なので……嫌いでした」
一生は言葉もなかった……
「伊織は昔からモテたかんな」
横を向くと康太が不機嫌そうな顔をしていた
榊原は慌てて「昔の事です!」と取り繕った
「今は君だけです
愛してます奥さん!」
砂糖の上に蜂蜜をぶちまけ、黒糖もかけちゃいました……と言う甘さだった
榊原は膝の上に康太を乗せて、キスの雨を降らせそうな勢いの榊原を止めて……
ファミレスを後にした
榊原は車の中でも「君しか愛せません!」と囁いた
「………伊織……」
康太は榊原の胸に顔を埋めた
一生は……そっとしといてやりたいが……
飛鳥井の家に帰ると、発破をかけた
「康太、翔達がかえってくる
今日中に仕上げねぇとダメじゃん」
一生に言われて康太は顔を上げた
「そうだった!
こんな事してられねぇ!」
そう言い立ち上がった
「康太、何をするのですか?」
「翔達と作るもんがあんだよ!
決して覗いちゃダメだかんな!」
康太はそう言い応接間を出て言った
榊原は「………鶴の恩返し……ですか?」と呟いた
康太が羽根をむしって布を織ってる姿を想像して、榊原は微笑んだ
一生は「……旦那……康太にそれを求めるな…」と呆れて言った
聡一郎は「康太なら羽根をむしりまくり羽根だらけにして慎一に織って貰いそうですね」と笑った
子供達が「「「「「とぅちゃ!」」」」」と言い、応接間に入ってきて抱き着いた
「お帰りなさい、翔 流生 音弥 太陽 大空!」
榊原は子供達の名前を呼び抱き締めた
流生が「とぅちゃ りゅーちゃ ぎゃんびゃる!らから、きゅるにょらめ!」と先に釘を刺した
翔が「りゅーちゃ はやきゅ!」と急かして応接間を出て行った
榊原は「何してるんですか?」と尋ねた
一生は「それは当日まで待ってろ!」と言い取り合わなかった
榊原の誕生日前夜
榊原はワクワクとして当日を想った
飛鳥井に来て迎える誕生日は優しさに満ちて……愛があった
榊原は当日を夢見て……瞳を瞑った
康太……僕は君がいてくれるだけで……
毎日が特別で幸せなのですよ?
子供達と一緒に子供部屋に向かった康太は翔に
「とぅちゃ ばれてにゃい?」と聞かれた
「大丈夫だぜ!翔」
流生が「とぅちゃ おろろくかにゃ?」と笑った
「絶対に驚くぜ!」
音弥が「とぅちゃ よろきょぶかにゃ?」と心配そうに言った
「お前達に貰って喜ばねぇ訳がねぇ!
ぜってぇに喜ぶぜ!」
太陽が「ちょうらと、うれちぃ」と笑って
大空が「とぅちゃ らいちゅき!」と康太に伝えた
康太は「ひなとかなも頑張ったからな!
ぜってぇに喜んでくれるさ!」と頭を撫でた
流生が「はじゅめりゅの!」と言うと
机の上に画用紙を出した
そして仕上げては行く
流生が「はんちゃむ とぅちゃ」と、どこで覚えたのか……そう言った
康太は笑っていた
音弥が「かじゅ……かぁちゃ……」と言うと
一生が「康太、此処は俺が見てるから、もう良いぞお前!」と部屋を出て行けと告げた
「………オレ……見てなくても良いのかよ?」
康太は淋しそうに呟いた
翔が康太に抱き着いた
何も言わず……抱き着いていた
康太は笑って翔の頭を撫でた
「翔、大丈夫だ!
ちゃんと仕上げろよ!」
翔はコクッと頷いた
流生が「かぁちゃ……」と泣きそうな顔で服を引っ張った
「オレは伊織の所にいるかんな!」
「ぎょめん……かぁちゃ……」
「流生、格好良く描くんだぞ?」
「りゅーちゃ ぎゃんびゃる!」
康太は流生の頭を撫でて、子供部屋を出て行った
流生は一生を見た
一生は「さぁ、仕上げるぞ!」と発破をかけた
「かじゅ だちて!」
流生に言われて一生は出した
子供達はせっせとクレヨンだらけになり仕上げにかかった
年に一度の【とぅちゃ】の誕生日!
子供達は気合いが入っていた
太陽は「ちな……のろ きゃわいた」とジュースの催促をした
大空が「きゃにゃ おかち ほちい」とおやつの催促をした
一生は笑ってキッチンに行きジュースとお菓子を持ってきた
「描き終えねぇと食わせねぇぞ!
こぼしたらパアになるんだからな!」
一生はどや顔でそう言った
子供達は「かじゅ おに……」と言った
翔は「おに……かけゆ……おにぎゃり ほちい」と言いお腹がキュルキュル鳴いた
一生はキッチンに行きおにぎりを握って戻ってきた
仕上げて皆でおにぎりとお菓子を食べて
ジュースを飲んだ
誕生日当日
朝から慎一は忙しそうに動き回っていた
真矢も飛鳥井に来て慎一を手伝っていた
明日菜も来ていたが……
美智留はイタズラ盛りで、匠は乳飲み子だから源右衛門の部屋で過ごしていた
笙も慎一を手伝っていた
聡一郎は応接間で飾り付けをしていた
玲香はプレゼントを取りにお出かけ
瑛太は聡一郎を手伝っていた
「瑛兄さん、画鋲!」
言われると取ってやり、あまり戦力にはならないが、手伝うという気持ちが有り難かった
総ての飾り付けを終えて、料理も出来上がった
玲香が帰宅し、清隆も帰宅し 清四朗もロケから戻ると、全員が揃った
夜になるも兵藤が美緒と共にやって来た
人が揃うと、慎一は料理を運び込んだ
全員がソファーによる座ると瑛太が立ち上がった
「今日は我が弟、伊織の誕生日にお集まり頂き、本当に有難う御座います!」
とシャンパンを掲げた
「伊織の誕生日を祝って、乾杯!」
瑛太が言うと応接間にグラスを重ねる音が鳴り響いた
「おめでとう伊織」
康太もそう言い榊原とグラスを重ねた
カキンッと言う音が響き、榊原は嬉しそうな顔をした
そしてプレゼントが榊原に渡された
清隆からは「熱海辺りでゆっくり温泉に入ってらっしゃい!
行ける日に予定を入れて行けば良い様になってます!」と言い旅行の目録を貰った
玲香からは「二人で食事でもしてらっしゃい!」と言いディナー券を貰った
瑛太からは「皆……考えるのは同じなのですね……君達は少し忙しすぎました!
なので康太の好きなホテルニューグランドで少し休んでらっしゃい!」と言いホテルニューグランドの宿泊券を手渡した
京香からは「伊織、普段着なのだ!」と言い服を貰った
慎一からは「康太とペアのマフラーです」と言い貰った
聡一郎からは「伊織、君へのプレゼントは康太とお揃いのセーターです!」と言いセーターを貰った
一生は「旦那、機能的なキーホルダー、欲しがってたろ?」と言いキーホルダーを貰った
隼人は「伊織、長男からのプレゼントなのだ」と言われて箱を貰った
開けてみると……キラキラしたフィギュアがあった
これは……どう見ても康太の方のプレゼントだと、榊原は想った
「………これは?隼人?」
「兵長、特別モデルなのだ」
「………これは……康太へですよね?」
「伊織の欲しいのは想像が付かなかったのだ…
なら康太の欲しいのを伊織にプレゼントする
すると康太が喜べば伊織も嬉しいだろう………
と、考えたのだ……
このフィギュア……特注なのだ……」
と隼人は苦しい胸の内を明かした
榊原は苦笑した
康太はフィギュアを掴み目を輝かせていた
「すげぇ……めちゃくそ欲しかったヤツだ…」
と呟いた
榊原は「………欲しかったのですか?」と問い掛けた
「……ん……めちゃくそ欲しかった」と答えた
「……欲しいのは僕に言いなさいと言ってるでしょう?」
「フィギュアは買ってくれねぇかんな!
買ってくれねぇヤツは言わねぇ様にしてるんだ!」
康太はフィギュアをスリスリしていた
笙は「今度、見掛けたら買ってきます」と康太が可哀想になって言った
真矢も「伊織が買ってくれないのなら私に言いなさい康太」と慰めた
康太はニカッと笑って
「オレの欲しいのは貢いでくれる奴がいるかんな!大丈夫だ!」と答えた
清四朗は哀しそうな顔をして……
「……誰なのですか?その人は……」と問い掛けた
「三木繁雄!」
意外な名前を聞いて清四朗は真矢と顔を見合わせた
「繁雄はゲームやフィギュア
オレの欲しいのを買ってくれるかんな!
心配しなくても大丈夫だぜ!」
「………余計心配です!
伊織!貴方は愛する人の欲しいのも買わない愚か者なのですか!」
と真矢は榊原に問い掛けた
明日菜が「お義母さん、伊織の誕生日ですよ?」と宥めた
「………明日菜……だって……」
真矢は泣き出した
康太は困った顔をした
榊原は康太を抱き締めた
「僕が買ってあげます
これからは僕に言って下さい!」
「大丈夫だ伊織
繁雄が買ってくれるかんな!
昔からそう言う事になってる」
康太はニコニコしていた
三木繁雄と康太との切っても切れない関係……
恋愛でも……愛ではないが……
絶対の関係があった
隼人はクシュンと言う顔をした
「………伊織……ごめんなのだ……
オレ様……伊織の欲しいのをリサーチすれば良かったのだ……」と謝った
兵藤は隼人を抱き締め
「隼人気にするな!
繁雄の貢ぎ癖は今に始まってない」
「………そうなのだけど……」
「それより伊織の誕生日だぞ!」
「そうなのだ!一生、アレを!」
隼人が言うと一生は立ち上がった
一生は子供達を立たせると、榊原の前に立たせた
流生が「とぅちゃ!」と叫んだ
翔が「たんびょうび おめれとう!」とペコッと頭を下げた
音弥が「とうちゃ ぷれじぇんと」と元気よく言うと
太陽が「よういちまちた!」と言った
大空が「うけちょっちぇ、くらちゃい!」とペコッと頭を下げた
一人ずつ手にしていた画用紙を榊原に渡した
クルッと丸めてリボンがしてある画用紙を、榊原は一人ずつから受け取った
流生が「りゅーちゃ ぎゃんばっちゃ」と訴えて画用紙を渡した
榊原は受け取って「ありがとう」と言い頭を撫でた
翔も「かじゅ みちぇもらっちゃ!」と苦労したと訴えて渡した
「翔、嬉しいです」と画用紙を貰った
翔の頭を撫でてると太陽と大空が
「ちな ぎゃんばっちゃ!」
「きゃにゃ ぎゃんばっちゃの!」
と言い榊原に画用紙を貰った
榊原は二人を抱き締めて……「ありがとう」と言い頭を撫でた
音弥も「おとたん へたくちょ……れも、ぎゃんばっちゃ!」と泣きそうな顔をして言った
「はちゅばっれい とぅちゃ」
と音弥はお歌もプレゼントしてくれた
榊原は「嬉しいです」と言い頭を撫でた
康太が「見せてくれよ!」と言うと榊原はリボンを解き、画用紙を見せてくれた
どの子も榊原を描く横に康太も描いていた
一生は「とぅちゃ描けって言ったのによぉ……
こいつらは「とぅちゃにょ よきょにら かぁちゃ いりゅにょ!」と言いやがって……」
と笑って説明してやった
画用紙の中の【とぅちゃ】は【かぁちゃ】と仲良く並んでいた
笑顔だった
この子達の目から見た自分達が、こんな風に映っているのか……
と榊原は嬉しくなった
「………ありがとう……」
榊原は涙を拭きながら……子供達を抱き締めた
どこから見ても……父親だった
瑛太は清四朗達と飲み始めた
玲香も真矢や美緒と仲良く飲んでいた
子供達はケーキを食べて……
口がベタベタだった
日付が変わる前に康太が「トイレに行って来るわ!」と言い席を立った
少し経ってから聡一郎が席を立った
一生も「聡一郎……遅ぇな……」と席を立った
榊原は康太を待っていた
心配そうな顔になり……ソワソワし始めた
真矢は「トイレ位ゆっくりさせてあげなさい!」と榊原を窘めた
「………でも……長すぎじゃないですか?」
「伊織!」真矢は榊原を叱った
榊原は康太を想って……ソワソワしていた
聡一郎と一生が応接間に戻って来ると
「旦那、康太がもう寝るって言ってる
部屋に行ってやれよ!」と言った
「体調……悪いのですか?」
「康太は言わねぇからな……
旦那、様子を見に行けよ!
プレゼントはリビングのソファーの上に置いとく!」
「頼みますね一生!」
榊原はそう言い立ち上がると寝室に急いだ
康太……欲しいものなら何でも買ってあげれば良かったの……
康太はゲームに漫画が大好きで、ハマるとフィギュアを欲しがる
棚を作って康太のコレクションを並べてあげるようにしよう……
榊原はそう心に決めた
本当は……他の男になど……
買わせたくはないのだ……
康太が他の男から貰うたびに……嫉妬で……
康太を酷く抱いてしまう……
悪循環だ……
榊原は寝室に行くと鍵をかけた
「康太……」
部屋は……真っ暗……だった
「……寝ちゃったのですか?康太……」
「伊織、薄暗い照明だけ付けろよ……」
言われて榊原はナイトテーブルの上の照明だけ付けた
するとベッドの上に座っている……
清楚な女の子がいた
真っ白なワンピースを着て……
ストレートの長い髪は……ベッドの上に流れていた
何処から見ても……清楚な少女……だった
「伊織 誕生日おめでとう……」
そう言いニコッと笑った
榊原はベッドの上に乗ると……
康太を抱き締めた
「…………康太……君の欲しいモノなら何だって買ってあげます………
だから……僕だけに言って………」
康太の唇に触れた……
淡いピンクの唇が……艶めいていた
「オレの欲しいのは伊織だけだ……」
「………欲しいフィギュア……あるなら言って下さい……」
「……伊織……」
気にしていたのか……
「………伊織は漫画やゲーム知らねぇやん……」
「それでも探して君に買ってあげられます…」
「なら伊織に買って貰うな……」
「君の趣味の数々を納める棚を……作らせます」
「……伊織?」
「愛してます奥さん……
こんなに可愛いなら……外に連れて行けば良かった……」
「伊織の為だけに着たんだ!
清楚な服でデート……出来てなかったろ?」
「素敵です…だから今年はリボンじゃないと言ったのですね……」
康太は正座をすると三つ指を着いた
「何時までもお側に置いて下さい!」
榊原は康太を強く抱き締めた
「………何時までも……未来永劫……傍にいて下さい!」
榊原はそう言い、康太に口吻けた
「今年は最後まで言えた」
えへへと康太は笑った
愛しい……
こんなに愛せる人とは……
未来永劫……出会える気はしない
「僕のために……着てくれたんですか?」
「そう!伊織の為だけに着た…」
「触って良いですか?」
「良いぞ!お前のだ……好きなだけ触って良いかんな!」
榊原はスカートの中に手を入れた
「下着……どうなっているのですか?」
「伊織が好きな……下着……はいてみた……」
康太は頬を赤らめて……言った
榊原はスカートを捲り上げた
すると白い清楚な下着が見えた
「康太……もう勃ち上がりかけてます……」
小さくて窮屈なパンティを押し退けて……康太は勃起しかけていた
「………伊織が触るからだ……」
「僕が触ると……こんなになっちゃうんですか?」
榊原は康太に接吻した
執拗に口腔を犯され……咀嚼出来なかった唾液が顎から伝って流れた
「………んっ……伊織……」
榊原は康太をベッドに押し倒すと……
「スカート、持ってて下さい」
と言った
康太はスカートを捲り上げて……裾を持っていた
榊原はパンティに上から康太の性器に口吻けを落とした
「……もう……お顔が見えてますよ?」
「……伊織……脱がして……」
「恥ずかしい……シミで濡れて来ました」
そう言い下着の上から舐めた
その感触に康太の性器は完勃ちになった
「……ぁん……うぅん…伊織……イキたい…」
「まだ駄目です……早過ぎます…」
「ねっ……乳首……触ってくれないのか?」
「自分で触ってみて下さい」
榊原が言うと康太はワンピースのボタンを外した
そしてはだけた胸に手を這わせ……
乳首を摘まんだ
「伊織の手が……良い……」
榊原は指は……パンティの隙間から……秘孔に潜り込んだ
「……伊織っ……ゃ……吸って……」
「下のお口と乳首……どちらを舐めて欲しいですか?」
「……選べない……」
「なら下のお口は今舐めて……
乳首は挿れてから舐めてあげます」
榊原はそう言うと康太の脚を抱えて折り曲げた
パンティを捲って秘孔に舌を這わすと……康太の体躯はピクンッと跳ね上がった
指を増やして行き、舐めて濡らす……
康太の秘孔は石鹸の匂いがした
「僕のためにお風呂に入ったのですか?」
「聡一郎が磨き上げてくれた…」
「着付けも彼が?」
「そう!聡一郎がやってくれた
一生は荷物を持ってきて聡一郎の手伝いをしていた」
「凄いサプライズです!
これが一番嬉しいです
今年は……リボンの君を見れないのかと……
残念に想っていましたが……
僕の見たがった清楚な格好をしてくれたので……嬉しかったです
この格好の君と街を歩けないのが心残りです……」
「この服……汚さなかったら……着て出掛けられる……
そしたら手を繋いで歩ける……」
「……康太……嬉しいです……でも汚してしまうので……クリーニングに出さないといけませんね」
「……伊織……欲しい……」
「まだ……我慢して……」
榊原は秘孔を舐めて念入りに解した
指と舌でグチュグチュになるまで柔らかく溶かせる………
榊原は康太を起こすと、膝の上に乗せた
「僕を抱き締めてて下さい」
「ん……伊織……愛してる」
「僕も愛してます」
榊原は康太の中へと挿入を始めた
パンティを脱がしてくれれば良いのに……
捲っただけで挿入されて……康太の性器は窮屈そうに……半端に下着から出た亀頭が締め付けられていた
下半身だけ露わにされて犯されるのは……
何度犯っても恥ずかしい……
「伊織……奥……もっと奥……」
突いて掻き回して欲しい……と訴えると……
榊原は抽挿を、早めた
「………あぁっ……イイっ……そこ……」
「ココ……君の好きな処でしたね……」
好きな場所を引っ掻いて掻き回すと……
康太は仰け反った
榊原は康太の乳首を吸った
すると腸壁が蠢き……締め付け……榊原の肉棒に纏わり付いて……煽動した
「………伊織……イクっ………ねぇ……イッていい?」
「僕もイキます……次に奥まで挿入した時に……」
イッて下さい……と耳朶を甘噛みしながら……
榊原は囁いた
奥までズンッと貫かれ……康太は射精した……
榊原も腸壁に白濁を飛ばした
痙攣した肉棒を締め付ける様に蠢かれ……
榊原は力を取り戻した
「……ぁっ……あぁっ……待って……パンティ脱がしてくれ……」
榊原は一度抜くと……康太の下着を脱がした
榊原も前だけ寛げて性器だけ出した状態で、ズボンと下着を脱ぎ捨てた
そして服を脱ぐと、康太のワンピースも脱がしてやった
ブラを外すと……窮屈だった締め付けから解放されて……
康太はブラの跡をポリポリ掻いた
色気はない……
でも愛しい存在だった
「掻いちゃダメですよ……」
「かいーんだよ……」
「続き、しますよ?」
「ん!乳首を吸ってくれよ……」
榊原は康太の乳首を舐めて吸った
「伊織……指……挿れてくれよ……」
榊原は康太の秘孔に指を挿し込んだ
乳首を吸われて……秘孔を掻き回されると……
康太の腰が揺れた
「……伊織の……流れて行くだろ?」
「ええ……何度でも注いであげます」
「なら……挿れて……」
「君の好きなだけあげます」
榊原は康太の脚を肩に担ぐと……
挿入した
ズボッスボッと抜き挿しすると……白い泡が立った
「……あっ……あぁっ……イイっ……気持ちいい……」
康太は悶えていた
榊原は余裕が出来た分、ゆっくりとグラインドさせて掻き回した
康太は結合部分に触れた
「……繋がってる……」
「ええ……君と一つに……繋がってます」
「……一つに溶ければ良いのに……」
何時も想う
離れていたくなんかない……
榊原は康太に接吻し
「何処までも溶けてしまえば良い……
僕も想います……でも康太……
一つになれないから……
こんなに求め合うのです……
離れているから……こんなにも愛し合えるのです……」と囁いた
「………オレの命……」
「………僕の命……」
二人は隙間もなく抱き合い……求め合った
来年も……
再来年も……
未来永劫……愛してると言い続けます
意識を手放す瞬間……
囁かれ……康太は微笑んだ
欲望の限り康太を抱いて……
精液を掻き出すと、榊原は康太を胸の上に抱き上げた
君だけの特等席です
榊原は康太の耳朶を甘噛みして囁いた
愛してます
君以外愛せません……
榊原は康太を強く抱き締めた
愛の詰まった誕生日
榊原は幸せな気分を味わっていた
翌朝、目を醒ました康太と浴室に向かい
中も外も綺麗に洗い上げて、湯船に浸かった
「痛くないですか?」
「ん……挟まってる感じはあるけど、痛くはねぇかんな大丈夫だ」
「康太……欲しいモノはちゃんと僕に言って下さい……」
「………でも伊織……漫画やゲーム知らねぇやんか……」
「それでもね……君が欲しいのなら買ってあげます……
誰かに買って貰わないで……」
「貰うのはNG?」
「………貰うのは構いません……
でも欲しいモノを誰かに言う位なら……
ちゃんと僕に言って下さい!
君のフィギュア、増えてきたので棚を造らせて並べようと想っています」
「……え?特注……で、造るのか?」
「ええ。君のコレクションを並べるので、下手なモノでは納得出来ません!」
「……伊織……使わねぇ部屋に置いとけば良いって……」
「……でも君は……コレクションを見に行くでしょう?
ならば何時もリビングで見てれば良いです」
「………伊織……ありがとう……
おめぇの誕生日だったのに……」
オレは貰うばっかりだ……と康太は呟いた
「僕は君から愛を貰ってます
君しか欲しくないので……君だけで良いのです」
優しく口吻けされて康太は榊原に抱き着いた
「伊織、逆上せる……」
「では、出ますか?」
「おう!応接間はどうなってるか……見ねぇとな……」
榊原は言われて「………あ……宴会……でしたね」と思い出した
「……大変だろうからな見に行かねぇとな」
康太が言うと榊原はお風呂から上がった
髪を乾かして服を着せると、自分の支度をした
「康太、掃除と洗濯しちゃうので待ってて下さい!」とリビングのソファーに康太を座らせた
ソファーに座っていると一生が顔を出した
「よっ!愛され疲れかよ?」
「だな……昨夜は盛り上がった……」
清楚な女装に榊原が飛びつく様が目に浮かぶ……
一生は「応接間……死屍累々……だぜ?」と報告した
「……んなに壮絶か……」
「真矢さんが泣いて……玲香さんが吠えて……美緒さんが笑いまくって……
瑛兄さんが飲みながら……眠っていた
何か……凄かったな……」
説明を聞いても……解らなかった
「それは何よ?」
「………話したとおり……すげかった……って話し……」
「……なら……まだ皆……寝てるか?」
「……起きれねぇと想う……」
榊原が掃除と洗濯を終えると康太を背後から抱き締めた
「奥さん、辛くはないですか?」
「大丈夫だ伊織
それより……下、死屍累々だってよ?」
「………見に行きますか?」
「おー!」
「康太、抱き着いて下さい!」
康太はソファーの上に立つと、榊原に抱き着いた
榊原は康太を抱き締めて頬にキスを落とした
一生は………あまりの甘さに……居たたまれなかった
応接間に行くと……やはり死屍累々……の山だった
「……あれ?若旦那……いつ来たよ?」
死屍累々の山の中から戸浪海里を見付けると声をかけた
「日付が変わる頃に来させて貰いました
君達は……寝室に引き上げた後だったので……
皆さんと飲んでいました……」
二日酔いの戸浪は辛そうだった
「悪かったな若旦那…」
「良いのです!それよりもプレゼントです」
戸浪はそう言いプレゼントを榊原に渡した
「若旦那…ありがとうございます……」
榊原は信じられない想いで一杯だった
慎一がやって来て
「皆さん、朝食を食べましょう!
二日酔いに聞くスープと味噌汁、両方作りましたので……お好きな方を食べて行って下さい
それでも治らない方は二日酔いの薬もご用意しております」
慎一に言われて一人ずつキッチンに連れて行く
康太は兵藤を見つけて……こそばかした
「……ゃ……止めろ……」
兵藤は腰をよじって抵抗した
「なら、オレの目覚めキスをお見舞いしてやんよ!」
と、ウチューと兵藤に口吻けた
兵藤は何とか抵抗して……
「伊織!てめぇの妻を何とかしろよ!」と叫んだ
榊原は康太を兵藤から引き剝がした
「め!」
榊原に言われると康太はお口直しのキスを榊原に送った
「腹減った……」
康太が言うから榊原は康太をキッチンに連れて行った
キッチンには子供達も起きていた
「お!みんな元気かよ?」
康太が聞くと
「「「「「げんち!」」」」」
と五人は声をそろえて言った
飛鳥井の何時もと変わらぬ朝だった
何時か……
子供達が総てを知ったら……
そう考えると……
不安で仕方なくなる
でも……果てへと繋げた明日を怖がってる暇なんかなかった
果てへと続く
それがこの世に生まれた定めなのだから……
康太は笑っていた
今 を味わい噛み締める
そして皆も歩き出す……
君に還る場所へと……
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