6 / 38
第6話 初夢 2015
2015年 新春
康太は……初夢を見た
前の初夢は……正夢になった……
まさか……結婚式を挙げれるだなんて……想わなかった
今年の初夢は……
正夢にはならねぇよ!
康太は叫んで起きた
ぅ……ぅぅ……
痛い……
ぁ……こんな痛みに堪えてるのか?……
あぁっ……狂いそうに痛い……
全身汗だくで……
痛みに耐えていた
榊原は康太の手を握っていた
「奥さん……愛してます」
「……ぅ……オレも……ぁ……愛してるかんな……」
康太は苦しげに答えた
榊原は康太の背中を撫でた
そしてお腹を撫でていた
看護師が病室にやって来て
康太の様子を伺う
「……陣痛の感覚が短くなって来ましたね」
脈取り、バイタルを見る
「オペ室に入りましょうか
久遠先生が待ち構えています」
榊原が康太を支えて……オペ室に向かう
オペ室には久遠が待ち構えていた
「………こんなの……初めての症例だからな……」
久遠は困惑していた
榊原は久遠の手を取り
「久遠先生!宜しくお願いします!」
と頼み込んだ
オペ室のベッドに寝かされた
康太は大きくなったお腹に手をやった
榊原との愛の結晶が……
お腹に宿っていた
十月十日……
康太はお腹の子を……慈しんだ
夢のような日々だった
「……ぅぅッ……あぁぁ……」
痛みを堪えて……声が漏れる
榊原は妻の手を握り締めていた
「これより帝王切開を行います」
久遠は術着を着てオペ台の前に立った
「……そもそも…俺は産婦人科の医者じゃねぇのによぉ!」
久遠は悪態は付きながらも……
康太のお腹の中から……
2人の愛の結晶の我が子を取り出した
「おめでとうございます
立派な男の子の誕生です」
康太は赤ちゃんの股間を確かめた
「…おお!本当に男の子だ!」
赤ちゃんとご対面した榊原は上機嫌だった
康太は飛び上がった
はぁ……はぁ……汗だくになり……
周りを見渡した
飛鳥井の康太と榊原の寝室だった
「………夢だよな……恐ろしい……」
康太はため息をついた
「康太、どうしたんですか?」
榊原に肩を抱かれて……
康太は榊原から離れようと距離を取った
「………康太……」
榊原が近寄る
康太がその分遠ざかる……
狭いベッドの上では……壁に追いやれ……
身動きが取れなくなった
「どうしたんですか?」
「……来るな……伊織……」
「何で……ですか?
もう僕の事が嫌いになりましたか?」
康太は首をふった
「なら……何故ですか?」
「………ゆ……夢を見た……」
「初夢ですね?
どんな夢だったのですか?」
康太はプルプル首をふった
「康太……?」
「………伊織と暮らし始めて……見た夢……覚えてる?」
「結婚式を挙げたのですよね?」
康太はコクッと頷いた
「正夢になりましたね!
僕達は結婚式を挙げれました」
「………こ……今年は正夢にはならねぇ……」
「何でですか?」
「こ……子供……」
「子供?いますね5人の子供が」
「……違う!子供を産むんだ……」
「………誰が?」
「オレが……」
康太は俯いた
「僕の子を産む夢を見たのですか?」
康太は頷いた
「性別は?」
「男の子だった……」
「正夢になると良いですね」
「………無理だって…伊織……
オレ……男……」
「奇跡がおきたら妊娠するかも知れませんよ?」
康太はプルプル首をふった
後退る康太の足を掴み
榊原は嗤った
「妊娠するまで頑張りましよう!奥さん」
「無理だってば……伊織…」
ズリズリッ引き寄せられ……
足を開かされた
榊原は足の間に体躯を滑り込ませ
「僕の子を生んで下さい奥さん」
榊原はそう言い康太の中に挿入した
榊原の熱に……
翻弄される
熱くて……溶けそうになり……
意識は焼け落ちた
家族で迎えるお正月
康太はニコニコと笑っていた
源右衛門が流生を撫でていた
「じぃじ、にゃでにゃでちて」
流生は源右衛門のゴツゴツした手が大好きだった
「流生は撫で撫でが好きだのぉ~」
源右衛門が流生を撫でながら言う
「りゅーちゃ、じぃじのおててちゅき」
流生はニコニコと笑っていた
音弥が「じゅるい」と割り込み、源右衛門に歌を歌ってあげた
最近の音弥は源右衛門に歌を歌って聴かせるがお気に入りだった
「音弥は歌がうまいのぉ~」
源右衛門は音弥を撫でた
「じぃじにまたきかちぇるね!」
お歌の好きな音弥は何時も歌を歌っていた
翔は源右衛門の傍に黙って座っていた
太陽と大空は源右衛門のお膝に座っていた
「………我は……この命を擲って……この子達を護る」
源右衛門はそう言って子供達を抱き締めた
「りゅーちゃ、じぃじらいちゅき」
流生はそう言い源右衛門の頬にキスした
「じゅるい」
音弥も源右衛門にチューした
源右衛門は笑っていた
幸せそうに笑っていた
太陽と大空も源右衛門に左右からチューした
康太は翔の背中をポンッと押した
翔も源右衛門にキスした
「……かけゆ……じぃじちゅき」
寡黙な翔が言葉にした
康太は笑って我が子を見守っていた
家族で迎えるお正月
源右衛門がいて
清隆や玲香
瑛太と京香
そして仲間がいて
子供達がいる
康太は幸せだった
愛する男と過ごせるお正月だったから……
来年も……
再来年も
ずっと……
ずっと……
皆といさせて下さい
康太の願いだった
家族の願いだった
あけましておめでとうございます
本年も宜しくお願い致します
飛鳥井康太
2015・1・1
ともだちにシェアしよう!