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第7話 初夢 2016

2016年 1月1日 一年の計は元旦にあり と言われる元旦 榊原は眠っていた 康太はお尻が痛くて……起きていた 愛する男の眠る顔を見ていた どんな夢を見てるんだろ? 初夢? 見れたのかな? 今年は榊原は初夢を見たのかな? 気になる…… 気になりだすと止まらない…… 榊原の顔をじっと見て至福の時を送る いい男だな 遥か昔から…… 変わらず凛々しい顔をしている 遥か昔は…… その瞳に自分は映してはくれなかった 見て欲しくて こっちを見て欲しくて…… その瞳に自分を移して欲しかった 伊織…… 伊織…… 夢の中にオレはいる? 伊織の夢の中でも……オレはいるのか? じっと顔を見ていると榊原がニコッと優しく笑った そして「愛してます…」と笑った 優しく囁いた……『愛してます』に嫉妬…… 蕩ける程の優しい笑顔で言うなんて…… 「愛してます」 夢の中の自分が羨ましい どんな夢を見てるんだろ? 伊織…… オレの夢を見てる? 目の前にオレがいるのに? 毎年、榊原の夢を見て来た その夢に榊原が嫉妬したのを… 不思議な想いで見ていた 夢の中でもいなかのだ……      ・・ 生身の自分だけを愛して欲しいのだ   ・・ 自分だけを…… 愛して欲しいのだ 初夢を見ていた時の榊原の気持ちがやっと解った 夢の中だって嫌なのだ…… なんという独占欲…… それでも……自分だけを見て欲しいのだ 愛してる伊織…… 呟き榊原に口吻けた 抱き返してくれない腕が…… 康太を哀しくさせる 「夢の中のオレは抱き締めるのに……」 康太は呟いて泣いた その涙が…… 榊原の顔に落ちた 泣くつもりなんかなかった でも……泣けてくるのだ…… 夢の中でもオレを愛してくれ…… そう思ったが…… 夢の中で…愛しているという榊原なんか見たくない… 相手が自分でも…… 妬ける…… 顔にポタポタ冷たい滴が落ちて…… 榊原は目を醒ました 目の前の康太は目を瞑って哀しそうに泣いていた 榊原は康太を抱き締めた 「どうしたの?康太……」 「伊織……」 「怖い夢でも見ましたか?」 「………そんなんじゃねぇ……」 「なら何で泣いていたんですか?」 「………夢の中でも…… 伊織が……愛してますって言うのは嫌だ……」 榊原は笑って康太を強く抱き締めた 「君の夢を見ていました」 「………夢の中のオレは幸せそうだった?」 「ええ…炎帝は僕に優しく微笑んでました…」 榊原は……炎帝の夢を見ていたのだ 自分だと解っていても…… 「炎帝に愛している……って言いませんでしたね…… 湖にいる君に……ずっと愛してます……って言いたかった…… そう想って来たからですかね…… 今年は初夢で見ました……」 「………それ……本当に聞きたい…… 夢の中の炎帝が聞けて… オレは聞けねぇなんて嫌だ……」 康太は榊原の胸に顔を埋めた 榊原は康太の頭を優しく撫でた 「魔界に行きますか? 龍になって時空に乗って君を魔界まで連れて行きます」 「魔界に行ったら……青龍の家の前の湖の前で言ってくれる?」 「良いですよ 君の欲しいだけ言ってあげます」 康太は榊原を強く抱き締めた 「服を着て屋上に行きますか?」 「うん……」 康太は榊原から離れた 榊原はベッドから下りると康太に服を着せた そして自分も服を着ると寝室を出た 屋上に上がり……龍に姿を変えると康太を頭に乗せた 「捕まってて下さいね」 榊原に言われて康太は鬣にしがみついた 龍の頭に乗って時空を超えた… 懐かしい景色が見えると、康太は口笛を吹いた 「青龍、下ろしてくれ…」 青龍は康太を地面に下ろすと、人に姿を変えた 「青龍、青龍の服に着替えて湖の前で立っててくれ」 炎帝はそう言うと駆けて来た天馬に乗り込んだ そして駆けて行った 青龍は一緒に飛んできた風馬に乗り込み、青龍の家を目指した 青龍は魔界の自分の家へと向かった ドアを呪文で開くと……… 家は……リフォームが終わっていた キッチンが出来て…… 寝室もちゃんとしたのに変わっていた 湖が見える窓は変わらずにあったが…… ピアノはダイニングキッチンの片隅に追いやられていた 青龍はクローゼットを開けると、青龍の服に着替えた 蒼い着衣は足首まである長い服だった 何時も炎帝に逢った時に着ている服に着替えて湖へと向かった 湖にはスワンが優雅に泳いでいた 「君も来ていたのですか?」 青龍が声をかけるとスワンがクワッと鳴いた 暫く待つと、炎帝が最後の日に着ていた…… 炎帝の服で走って来た 「青龍……待たせた」 「その服……」 「あぁ……初めてお前とベッドの上で抱き合った日の服だ……」 炎帝に似合っていた深紅の衣装は…… 当時に引き戻されて…… 青龍は刹那くなった 青龍は炎帝を引き寄せると…… 強く抱いた 強く…… 強く…… 抱き締めた 「愛してます炎帝」 夢と同じ様に…… 炎帝は嬉しそうに笑った 榊原も優しく笑った 康太はその顔を見て…… 夢を見てる時の顔だ………と想った 「この命が尽きても…… 未来永劫……君を愛すと誓います」 そう言い優しく口吻けられた 夢を見ている様だった 炎帝の心残りは…… 愛されずに過ごした炎帝時代だった…… 幾ら体躯を繋げても…… 貰えなかった言葉だった…… 炎帝は青龍を見つめた そしてその瞳から……涙を流した…… 哀しかった記憶が…… 塗り替えられていく 寂しかった想いが… 塗り替えられていく 「………青龍……夢みてぇだ……」 「夢じゃないです炎帝」 「………ずっと言われたかった…… 愛してるって……聞きたかった……」 「愛してます炎帝 何度だって言います 君が聞きたいだけ言います」 抱き合う2人を祝福する様に……スワンが鳴いた 「お前達……何時帰っていたんだよ?」 静まり返った空間を引き裂くような声がした だが青龍は炎帝を抱き締めたまま振り返らなかった 炎帝も青龍の胸に顔を埋めて…… 愛する男の匂いを嗅いでいた 「おい!無視すんな!」 怒った男は2人を引き剥がした 「あにすんだよ?黒龍」 「わざわざ、炎帝の服着て……抱き合ってるな」 黒龍は弟も見てみた 青龍の衣装を着て……青龍は立っていた まるで……昔のように…… 静かに青龍は蒼い衣装を着て立っていた 「兄さん……邪魔しないで下さいませんか?」 「………何しに魔界に戻ったんだよ」 黒龍はふて腐れてそう聞いた 「炎帝に愛してるって言う為に魔界に来ました 昔……僕は……炎帝に愛してると言いませんでしたからね…… それだけが……心残りだったのです 炎帝の悲しい記憶を…… 愛してるって抱き合う僕との記憶に変えたかったので……魔界に来ました」 「………愛してるって……言う為だけに?」 「いけませんか?」 「………悪かった……邪魔した 帰る時に声をかけてくれ 勝手に帰ったりしないでくれ」 「解りました 後で声をかけます」 青龍はそう言うと炎帝に口吻けた 黒龍は足早にその場を立ち去った 「夢と同じ事が出来ました…… 初夢が正夢になりました」 「青龍……愛してる……」 「炎帝……僕の家に来て下さい…… 嫌ですか? 朝まで抱き合っていたから辛いですか?」 「青龍……連れて行って……」 青龍は炎帝を抱き上げると…… 青龍の家へと向かった 青龍に抱き上げられたまま、青龍の家の前に立った 「炎帝、ドアを開けて…」 言われて炎帝はドアを開けた 青龍は家の中へ入ると、寝室へと向かった ベッドの上に炎帝を置くと……上に重なった 「この服……あの日の服ですね……」 初めてベッドの上で愛し合った日に着ていた服だった 翌朝、着替えて家を出た 閻魔はちゃんと保管しておいてくれたのだ 炎帝がいない日々も…… 何時帰っても良い様に…… 掃除して保管していてくれてのだ 「青龍に……愛してるって言って貰うなら…… やはりこの服を着て聞きたかった……」 「愛してます炎帝 未来永劫、僕は君しか愛しません」 唇が下りてきて……重なった 舌が挿し込まれて……搦まる舌が…… 口腔を暴れて縺れて搦まった 青龍は炎帝の服を脱がせた 朝まで抱いていた体躯は…… 紅い花が散らばり……乳首は尖っていた ちゅっと尖った乳首を吸うと…… 炎帝の体躯は震えた 「青龍の服も脱いで……」 言われて青龍は炎帝を離すと立ち上がった ボタンを外して……蒼い長衣を脱いだ 長衣の下は……何も着けていなかった 聳え立つ青龍の性器に……瞳は釘付けになっていた 「………青龍……まだ出来るの?」 「君を手にすれば……出来ます でも君は辛いでしょう? 一度で解放してあげます せっかく魔界に来たのです 閻魔にも逢ってから帰りましょう」 「……青龍……」 「君の体を……味合わせて下さい」 そう言うと青龍は炎帝の体躯を舐めた 尖った乳首は赤く腫れ上がっていた…… 唇は下へと下りていく…… 腰骨を甘噛みしてヘソを舐めた 勃ち上がった性器には脇目も触れず…… 内股に口吻けた 内股から足首……そして足の指まで丹念に舐めて…… 炎帝を俯せにさせた 背中を舐めて…… 口吻けの跡を着けていく 柔らかな……双丘に口吻け するとプルッと双丘が震えた 腰を突き出させて……双丘を左右に開いた 赤く艶めく秘孔が戦慄いていた 酷使した秘孔が赤く艶めいて蠢いていた 榊原は舌を挿し込んで舐めた 舌を飲み込み……蠢いた秘孔が足りないと催促する パクパク舌を飲み込んで……締め付ける 榊原は指を挿し込んだ 指で掻き回すと……腰が揺れた 「青龍……焦らすな……」 炎帝は足を開いて誘った 「焦らしてる訳じゃありません 君を味合わせてって言ったでしょ? 味わっているのです」 「挿れて……」 「焦らないで……」 焦らされて舐められ尽くした 戦慄く秘孔を舐めて溶かして……欲しかっがっても…… 貰えずに堪えさせられた そしてやっと挿入された時…… 感じまくって、青龍を抱き締めた 「……青龍……青龍……青龍……」 炎帝は青龍の名前を呼び続けた 青龍は「愛してます」と囁き…… 炎帝を強く抱き締めて……… 共にイッた 「僕は……ずっと夢見てました…… あの時の不器用な青龍が……君に愛していると伝える日を……」 「夢見てた青龍の顔…… 妬ける程に優しかった…… オレを見てよって想った…… 愛してます……ってオレ以外に言わないでって…… 想ったんだ……」 「君にしか言いません」 「夢の中の自分でも嫌だ……」 「目の前にいる君にしか言いません」 青龍はそう言い炎帝を抱き締めた 「青龍……愛してるかんな! 青龍だけ愛してる」 「君に愛されて僕は幸せです 不器用な青龍も……… やっと君に愛していると言えて安心しました」 「………青龍は誰にも渡さねぇ……」 「君以外のモノになどなりません 僕が愛していたのは炎帝だけ…… 炎帝以外のモノなど……要りません 離れるなら息の根を止めます 僕以外のモノになどさせません!」 「青龍……」 炎帝は涙を流して青龍を見た 青龍の部屋で 青龍に愛してる……要って貰う日なんて…… 未来永劫……来ないと想っていたから…… 「青龍……死んでも良い位に……嬉しい」 「炎帝……僕の為に一日でも長く生きて下さい 魔界に戻ってもそうです 僕と共に生きて下さい」 「青龍……青龍の為に生きる……」 「奥さん、体躯は辛くないですか?」 「辛くなんかない…… おめぇにされて嫌な事なんて何一つねぇ! オレはおめぇに愛されて幸せだ…… ずっと……ずっと………言われたいと想ってた言葉も貰った…」 「僕もずっとずっと……言いたかった言葉を言えました 奥さん、炎帝の邸宅に行きますか? 湯殿で体躯を洗ってあげます」 「ならオレも青龍の体躯を洗ってやんよ」 炎帝はそう言い幸せそうに笑った 後始末をして炎帝の体躯に服を着せた そして青龍も服を着ると、炎帝を抱き上げて家を出た 風馬に炎帝を抱き上げて乗り込んだ 「捕まってて下さいね」 そう言い青龍は風馬を走らせた 天馬がその横を走っていた 幸せそうな顔して風馬と共に走っていた 炎帝の邸宅に着くと、風馬から下りた そして湯殿へ向かい、湯の中に入った 雪がどこからともなく現れて、着替えと浴衣を置いた 着ていた服は雪が洗濯する為に引き上げて 真新しい着替えを置いて行ってくれた 青龍は先に炎帝を洗った 綺麗に体躯の隅々まで洗った そして龍になると鱗の一枚までも綺麗に磨き上げて貰った 「気持ちいいか?青龍」 「気持ちいいです炎帝」 龍の髭や鬣を綺麗に洗って磨き上げて貰う 尾っぽは特に念入りに磨いて貰った 炎帝がお湯に入ると、青龍も人の形に戻って一緒に風呂に入った そして体を拭いて雪が用意してくれた服に着替えた 炎帝の家には青龍の服も沢山置いてあった 黒龍が持ってきて用意したのは解っていた 魔界に戻れば夫婦仲良く住めるようにと…… 周りの想いがあればこそ……成立する関係だった 神だとて……雄同士とは……結ばれる事はよしとはしない…… そんな中……皆の理解と暖かい想いが炎帝と青龍を支えていた 青龍と炎帝は着替えると炎帝の邸宅に戻った そこには……当然の顔した奴らが二人を待っていた 黒龍が「今回は早かったやん」と喜ぶと 赤龍が「姫始めやってんだからな犯り過ぎなんだよ」とボヤいた 地龍も「兄さん達夫婦は本当に仲が良い…当てられちゃいます」とニコニコ言った 炎帝は「あんで赤いのがいるんだよ」とふて腐れてた 赤龍は「青龍が龍になって時空を越えたの見たんだよな、朱雀」と言い朱雀の肩を叩いた 朱雀は「龍を追い掛けて赤いのと来たんだよ 今夜は来ねぇかなと飲んでたら来たから驚いた お前ら夫婦は濃いからな」と言い笑って酒を飲んでいた まさか……龍になったのを赤いのと朱雀に見られていようとは…… 閻魔は少し拗ねて 「我が弟は……魔界に来たというのに兄には何の挨拶もない……悲しいです」と嘆いた 炎帝は閻魔を抱き締めた 「兄者……許せ…… 青龍が初夢を見ていたんだ 優しい顔して夢の中のオレに愛してますって言うから……妬けた 魔界にいた頃……オレは青龍とは恋人同士じゃなかったかんな…… 言われたい想いは……ずっとあった……」 炎帝にそんなことを言われたら…… もう何も言えなかった 閻魔はずっと気になってた事を炎帝に問い掛けた 「………私はずっと……人に堕とした時……青龍も一緒に墜ちて……不思議で仕方がなかった 君達は……付き合ってなかった…… なのに……一緒に人の世に堕ちるなんて信じられませんでした……」 「青龍には……妻がいたからな…… でも……オレは青龍に抱かれて……幸せだった 青龍の気紛れで良い……そう想ったんだ 人の世に堕ちるまで四年以上……寝るだけの関係は続いていたけど……恋人じゃなかったからな…」 青龍は炎帝を抱き締めた 「辛いなら……言わなくても大丈夫です…… 青龍と言う男は……不器用な奴でした 誰よりも炎帝を愛していましたが……約束も言葉も与えてやらなかった 愛していたのは昔から炎帝だけだったのに…… だから……あの結ばれた場所で…… 愛してます……と言いたかったんです その為だけに魔界に来ました……」 愛してます…… それだけを言う為だけに…… 魔界に来たと言う…… 刹那かった 静まり返った部屋に健御雷神と金龍が入って来た 「どうした?何かあったのかよ?」 ドカドカと部屋に入って来た健御雷神は青龍の膝の上にいる炎帝を抱き上げた 「顔を見せてくれ炎帝」 「父者…変わらず元気か?」 「お前を遺して逝けるか 我はお前を何者からも護ると決めている」 「父者……」 「魔界に戻ったのなら父に顔を見せておくれ…」 「ん……父者……逢いたかった」 健御雷神は炎帝をギュッと抱き締めて…… 金龍に渡した 「炎ちゃん、元気だったかい?」 「金龍は元気だったか?」 「炎帝、天龍が誕生した今…… 貴方が描く魔界の礎になります まだまだ貴方の為に動ける自分でいたいので 健康管理は怠りはせぬ」 金龍はそう言いガハハッと笑った 青龍は父親の腕から炎帝を奪うと…… 膝の上に乗せて抱き締めた 「………本当に……小さい……」 金龍はボヤいた 青龍はフンッと知らん顔して炎帝に口吻けた 金龍は「地龍が元気に戻って参りました 本当に炎帝にはなんと礼を言って良いやら…」と炎帝に深々と頭を下げた 「金龍、龍族の果ては狂わせはしない! 絶対に、だ!」 金龍は笑顔で応えると、「飲もうではないか!」と言った 金龍は赤いのの前に行くと…… その唇を摘まんで引っ張った 「ん!………んんっ!……」 赤龍は慌てた 「お前の口は……何時か摘ままねぇとならねぇと想っていた!」 涙目になる程痛いのか…… 炎帝は助け船を出してやった 「金龍、赤いのを摘まむのは止めてやってくれ」 「炎帝、君のお側にもう要らないでしょ?」 「金龍、そう言うな 赤いのは大切な存在だ! 赤いのに……辛い想いをさせた その分だけ幸せにしてやりてぇ……」 金龍は赤龍を摘まむのを止めた 「こんなお調子者なのに?」 「その顔の下で…どれだけの苦悩があるか…… オレは知っている……」 「んとに!コイツは炎帝に大切にされやがって!」 金龍はポコンッと赤龍を蹴り飛ばした 「親父殿……俺何かしましたか?」 「お前は炎帝に甘えすぎだ」 「………それだけですか?」 「まぁ難癖だ……」 「何だよ……それは……」 赤龍はふて腐れた 黒龍は赤龍を抱き締めて 「拗ねるな可愛いだけだぞ」と撫でた 健御雷神は金龍と飲み始め盛り上がっていた 閻魔は静かに飲んでいた 黒龍は炎帝に抱き着いた 「ほれ、飲め」 酒を取ってやって何時もみたいに飲み始める 「黒いの」 「何だ?」 「………また別れたのか?」 黒龍はピキッと固まった…… 「………視るな……」 「ならオレの前に来るな」 「………それは出来ねぇよ」 「なら我慢しろ」 「…………炎帝……」 「お前は相手に何も求めないからな……」 何も求めない 何も与えない 心は与えずに……恋人だという…… それに女は疲れて去ってゆく 「………何も求めない訳じゃない……」 求めても手に入らないモノしか欲しくない…… ずっと護って来た……愛する人 愛する人が幸せなら…… それで良かっただけだ…… 黒龍は炎帝に抱き着いて……弱音を吐いた 「………俺の何を見てんだろ?」 「お前は何一つ見せねてねぇだろ? 見ようがねぇんだよ……踏み込ませねぇからな…」 「全部……なんてやれねぇからな……」 「全部欲しいに決まってるやん オレは青龍の全部欲しい……」 髪の毛や……その笑顔さえも……全部欲しい 「………そう言うモノか?」 「そう言うモノだ」 「………なら俺は恋愛は向いてないな……」 「でも乞われたら与えるだろ?」 「………もぉ……なんか疲れた……」 炎帝の膝の上で……黒龍は酔い潰れて眠りに落ちた 炎帝は黒龍の髪を撫でてやった 「兄者…」 「何ですか?炎帝」 閻魔は静かに飲んで炎帝の方を見た 「黒龍……何時もか?」 「君に甘えてるだけでしょ?」 「そっか……」 「黒いのの事は気にしなくても大丈夫です この男は誰よりも強固な精神力で生きてますからね…… この男が崩れるのは君に甘えてる時だけです 昔も今も……それは変わらない」 「………また黒龍の家、掃除してやってく…」 「それは茶色いのか赤いのに言って下さい」 「兄者……拗ねてる?」 「……炎帝は兄の事より黒いのの事ばかり…」 「オレは兄者を大切にしてないか?」 「炎帝……拗ねてただけです大目にみなさい」 「兄者、拗ねるな可愛いじゃねぇかよ」 炎帝は笑った 「私は誰よりも君の幸せを願っています 我が弟よ……誰よりも幸せに笑ってて下さい」 「兄者、オレには青龍がいる それだけでオレは誰よりも幸せだ!」 閻魔は嬉しそうに笑った 炎帝は地龍に声をかけた 「茶色いの、銘とは上手くやってるか?」 「はい!」 「泣かすなよ!オレの大事な子だからな」 「はい!解ってます」 「茶色いの」 「はい!」 「銘は赤いのと親子の名乗りを上げた 赤いのの大切な娘だかんな……心しろ」 「解ってます……」 赤龍は地龍を抱き締めた 「今後一切無茶すんじゃねぇぞ!」 「……赤龍兄さん……」 赤龍は地龍の頭を撫でた 四龍の兄弟は今日も仲良しだった 夜が明けるまで、皆で飲み明かした 炎帝はちびちびと飲んでる朱雀に目を向けて構った 「なぁ朱雀、クリスマスプレゼント教える気になった?」 「ならねぇよ!」 「ケチくせぇ奴だな……」 「一つだけ教えてやる 俺の車に着いてる熊のぬいぐるみ あれは音弥からのプレゼントだ」 「今度見せてくれ!」 「流生からは手袋を貰った お前の亭主が流生に頼まれて見繕ったモノだ」 「へぇ、知らなかった」 「お前んちの子は結構怖いプレゼントしてくるからな…気が抜けねぇ……」 「そう言うな 子ども達はお前にプレゼントする為に結構前から下拵えしてるみてぇだかんな それも全部お前が喜ぶためだ!」 喜ぶモノが解られてるのが恐ろしい…… 「赤いのには進級旅行にいく権利貰った」 「おー!三年に進級決めたら旅行にいくんだよ 留年したら……行かねぇけどな!」 「縁起でもねぇ事を言うな……」 「楽しもうぜ貴史!」 「おー!楽しみだな」 旅行にいく日が待ち遠しい 日々楽しい事が増えていく その分……修羅の道が近くなる…… 「さてと夜も明けたし還るか」 炎帝はそう言うと膝から黒龍を下ろした 炎帝の上着を黒龍にかけると雪に 「黒龍は起きるまで寝かせといてやれ」 と言った 雪は頷いた 立ち上がると閻魔の前に立った 「兄者、次に逢うのな崑崙山でだ!」 「あぁ、また逢おう我が弟炎帝よ」 閻魔はそう言い炎帝を抱き締めた 「兄者……ありがとう」 閻魔は何も言わず……炎帝の頬に口吻けを、落とした 健御雷神も炎帝を抱き締めた 金龍も炎帝を抱き締めて別れを惜しんだ 青龍はさっさと妻を抱き締めると、誰にも触らせなくした 金龍は「………んとに……小さい……」とボヤいたが知らん顔していた 「ならな、兄者、父者、金龍、地龍」 地龍は深々と頭を下げた 青龍が龍になると炎帝は頭の上に乗った 閻魔は「どうやって還るのじゃ?」と言った 「青龍が時空を超えて還って行くつもりだ」 「……赤龍も朱雀も行くのは目立つ 女神の泉から還りなさい……」 「ならそうする」 青龍は天空高く旋回すると…… 女神の泉へと向かって飛んでいった その後を赤龍と朱雀が飛んでいった それを見送り……閻魔達は炎帝の邸宅に戻った そして自堕落に……酔い潰れて酔うまで飲み明かした 青龍と炎帝、赤龍と朱雀は女神の泉に立っていた 女神は「飛鳥井の家の屋上に下ろしてあげます」と約束してくれた 一斉に泉の中に飛び込んで…… 輪廻の輪をくぐった 炎帝と青龍は抱き合って……輪廻の輪をくぐった 先の転生で共にくぐった時のように…… 苦しい気圧に…息も絶え絶えに……なっていると…… 目の前が明るくなった すると見慣れた飛鳥井の屋上に立っていた 屋上の鍵を開けて、家に入ると慎一とバッタリ逢った 慎一はビックリした顔をしていた 「………皆そろって……どうしたのですか?」 「ん?魔界にちょっと行ってた」 「寝室から出て来ないので……皆心配していました」 「今、何日?」 「1月3日です」 「元旦の朝早く行って……還ったら3日かぁ……」 榊原は康太を抱き上げて、キッチンへと下りていった 「慎一、何か食べさせて下さい」 「………なんかお酒くさいのですが……」 「……ついさっきまで飲んでました……」 「……そうでしたか……何か用意します」 康太を座らせて、榊原も座った 一生は慎一の手伝いをして 兵藤は一緒に座っていた 瑛太がキッチンへと下りてきて……康太を見つけて抱き締めた 「康太……お正月の間…寝室に閉じ籠もりすぎです」 「伊織を離したくなかったったんだ」 「惚気ですか?」 「惚れて惚れ抜いた男だかんな…… 惚気も言いたくなるもんだ」 「淋しかったです……」 「許せ瑛兄……」 「夫婦仲良くて良かったです」 瑛太は笑顔で康太を離すと榊原を抱き締めて、何時もの席に座った 「瑛兄、今日は菩提寺に行かねぇとな」 「ええ。菩提寺に行った後に食事をしましょう」 「おっ!子ども達も喜ぶな」 笑い声が響くキッチンに玲香や京香、清隆もやってきて、康太を見つけて喜んだ 飛鳥井の新年がこうして終わりを告げて逝く 今年の初夢は忘れられない日になった 忘れられない…… 炎帝の悲しい過去を上書きしてくれた…… 青龍の愛を胸に抱き…… 康太は笑っていた 新しい日々が始まる あけましておめでとうございます 本年もどうぞ宜しくお願い致します

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