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第11話 聖夜 2015・12・24 ②
康太は寝室に入るなりベッドに座った
榊原は窓の前に立っていた
「ガブリエル、いるんだろ?出て来いよ
遅いなら始めちまうぞ?」
康太が言うとガブリエルは慌てて姿を現した
「始めないで下さいね!」
「要件は?」
「平和協定式典を崑崙山でやる手筈は整えました!」
「なら魔界からは兄者が出るだろ?」
「貴方もご出席下さい」
「天界と魔界と悪魔界との調印式だろ?」
「そうです!
平和条約を結び締結させます」
「式典の前日から崑崙山へ向かう
兄者の元には既に連絡が入っているのだろ?」
「はい!八仙が閻魔の元に向かいました」
「丁度頃合だかんな崑崙山に行けて良かった」
「頃合……ですか?」
「神仙境から子閻魔が還って来るんだよ」
「………神仙境……とは本当に在るのですか?」
「在る!
仙人や能力者や修験者とか力ある者しか逝けぬ秘境が神仙境だかんな!
そこに麒麟がいるんだよ」
「………麒麟……あの伝説の生き物……ですか?」
「伝説じゃねぇよ!
五行の麒麟は存在して役目を果たしているんだよ」
「………貴方は……本当に顔が広い……」
ガブリエルは炎帝の顔の広さに……驚いていた
「人の世の元日
日付が変わると同時に崑崙山でお逢い致しましょう!」
ガブリエルは深々と頭を下げると……消えた
康太は榊原の方を見た
「大人しく寝る気かよ?」
「まさか……恋人たちにある時間ですよ?」
榊原はそう言い康太に口吻けた
「んなら、さっさと犯ろうぜ!」と服を脱ぎ始めた
男らしくて……素敵です奥さん……
榊原は苦笑して服を脱ぎ始めた
康太は服一枚だって嫌がる
素肌を感じられないのは嫌がる
ゴム一枚だって嫌がるのと同じで、何の隔たりもなく抱き合いたいと言う
全裸になると榊原は康太に腕を伸ばした
「奥さん、君のためにある体躯です」
康太は榊原に抱き着いた
そして聳え立つ性器に口吻けた……舐めた
「奥さん、自分で穴を解して……食べて下さい」
榊原に耳元で囁かれて……
康太は真っ赤な顔をしたが……
ナイトテーブルの引き出しからローションを取り出すと、手に垂らした
そしてローションを秘孔に塗りつけると……
指を挿し込み……解した
ベッドに四つん這いになり
お尻を高く突き出し
榊原に見えやすく穴を弄った
蕾が捲れ上がり……赤い腸壁が蠢く様を……
榊原は見ていた
物欲しそうな秘孔がうねうねと煽動を繰り返し
指を飲み込んでいた
榊原はベッドに上がると、康太の乳首を摘まんだ
乳首を弄ると、秘孔が締まった
榊原は康太の指の横に自分の指を忍び込ませた
「手伝ってあげます」
そう言い掻き回される指に……
康太は追い詰められていく
康太の好きな場合を刺激すると、康太の脚はガクガク震えた
榊原は康太をベッドに仰向けに寝かせると脚を抱えた
「そろそろ挿入出来そうですね」
そう言い榊原は康太の中へと……挿入した
執拗な接吻で蕩けさせ中へと押し入る
何度も何度も挿して引いた
「君は挿れられるのも好きだけど……」
そう言い奥まで貫き傘で奥を掻き回し
「抜かれるのも好きですよね?」
肉棒を抜けそうなギリギリまで抜くと……
秘孔が抜かさせないように締まって縋り付く
「ぁ……ゃ……抜ける……ダメ伊織……抜かないで……」
腸壁が榊原に搦み着いて離さない
榊原はゆっくりと奥まで挿し込んだ
今日の榊原の動作はゆったりとして……
ジリジリ康太は追い込まれていく
康太は榊原の腰に脚を搦めた……
康太の手を取ると結合部分を指で触らせた
「ほら奥さん、こんなにも繋がって一つになっているんですよ?」
挿し込まれた肉棒は一つに繋がり……戦慄いていた
「伊織……愛してる」
「僕も愛してます奥さん
君しか愛せません
未来永劫、君だけを愛します」
榊原はそう言い康太に口吻けた
終わらない熱を貪って、尽きるまで愛し合う
恋人たちのためにある聖夜を満喫するために……
榊原は康太を強く抱きしめた
シーツの海に溺れて
君と一つに繋がり感じる
出逢えた奇跡に……
感謝して恋人を抱き締めた
【慎一はサンタクロース】
夜も更け
恋人たちは愛の確認に忙しい頃
慎一はサンタクロースになって、我が子達にプレゼントを配っていた
ベッドの横には靴下が吊してあった
和希の靴下は………慎一の靴下だった
「………片方ないと思ったら……」
こんな所で使われていたとは……
慎一は和希の枕元にプレゼントを置こうとした
すると手紙が置いてあった
『サンタさんへ
毎年ごくろうさまです
僕は欲しいのはないので
そろそろ来なくても良いです
父さんや康太君達が買ってくれるので
サンタさんは僕んちは来なくても良いです』
と書いてあった
慎一は複雑な気分になった
和真の方へプレゼントを置きに行くと……
枕元に慎一の靴下が吊してあった
「この靴下……」そう思い枕元を見ると
やはり枕元に手紙が置いてあった
慎一は手にして見てみると
『サンタさんへ
毎年おつかれさまです
僕も欲しいのはないので
来年は来なくても良いです
僕は父さんが大好きです
飛鳥井の人達が大好きです
なのでサンタさんは来なくても大丈夫です』
慎一は読み終えて……
泣いた
涙を拭いて北斗のベッドへ行くと
北斗の枕元にも靴下が吊してあった
この靴下も慎一の靴下だった
「………Xmas過ぎたらはける靴下増えますね」
苦笑しつつも、枕元を見た
やはり北斗の枕元にも手紙が置いてあった
『サンタさんへ
おつかれさまです
僕はご本は沢山買って貰ったので
来年からは要らないです
サンタさんも大変なので来なくても良いです
慎一君や康太君、飛鳥井の人達や榊原の人達が沢山沢山くれるので、サンタさんは自分にご褒美あげて下さい!」
慎一は涙を拭きながら子供達の枕元にプレゼントを置いた
そして出て行こうとすると……
ドアに『サンタさんへ』と書いてある靴下がぶら下がっていた
その靴下も……慎一の靴下だった
その中に硬い容器が入っていた
慎一は画鋲を外して靴下の中身を見た
すると……ハンドクリームが靴下の中に入っていた
ハンドクリームにセロテープで手紙も貼り付けてあった
『サンタさんの手はいつもガサガサで
かわいそうなのであげます!
それをつけて下さい
かずき かずま ほくと 』
と書いてあった
サンタが慎一なのは知っていて……
もうプレゼントは良いのだと……言っているのだ
慎一は目頭を押さえて泣いた
優しい子に育った
人のことをちゃんと思いやれる子になった
離れて暮らしていた期間が長かったから……
恨まれてないか……
不安だった
父親らしい事なんて……してやれなかった
乳飲み子を………施設に入れた……
あの日から……父親になどなれないと思った
だけど康太が……
慎一に子供を与えてくれた
子供を抱き締めれる環境にあるのも……
総て康太がくれた日々だった
サンタは役目を終えてしまうけど……
父親の役目は終わらない
それで良い
慎一は子供達の手紙を胸に抱き……泣いていた
自分の部屋に戻り、サンタの服を脱ぐと子供達の手紙を大切にしまった
後何年……子供達とXmasを迎えられるだろう……
子供の成長は早い……
文句一つ言わず、お手伝いをする
本当に良い子達だ
反抗期……
あるのかな?
反抗期はどんな風になるのかな?
恋人を連れて来たら……
絵理……お前の分も泣いてしまうだろうな……
孫をこの手に抱いた日には……
死にたい程の喜びがあるだろう
絵理……お前の子供は……俺がちゃんと育てるから……
『慎一、あんたは何も言わずに立ってれば良いのよ!
そしたら私が慎一に縋り付くからさ!』
絵理が何時も言ってた言葉を思い出した
寡黙な不器用な男にいつも絵理は優しかった
自己表現の下手な男に……
『何も言わなくてもいいのよ』と言い抱き締めてくれた
『慎一がそこにいるだけで安心出来るから……
子供が生まれても君は、見守っていてやれば良いんだからね!』
父親の存在感で見守っていてやれば良いんだからね
何時もそう言ってくれた……愛しき人
お前の分も……
子供を見守ると決意した
絵理……次に生まれ変わったら……
幸せになれ
部屋を出ると廊下に一生が立っていた
「一生、どうした?」
「康太がこんな夜は添い寝してやれって言ったからな」
「え?……」
「サンタやりたきゃ康太の子供がまだまだいるやん」
「………別にやりたい訳じゃない……」
「あと五年はサンタやれるぜ!
瑛智や美智留も入れたら8年はいけるんじゃねぇか?」
「………そんなにはやりたくない……」
「そのうち和希や和真がサンタになるさ」
「………え?……」
「ほら来い!」
一生は慎一の手を引っ張って自分の部屋に連れて行った
慎一は焦った
「力哉……いるんじゃないのか?」
「いねぇに決まってるやん
力哉いるのに……おめぇは連れて来るかよ
旦那じゃあるまいし……見せる趣味はねぇよ!」
一生は怒ってフローリングの上に敷いた布団に潜り込んだ
「ほら、寝ろよ」
慎一は布団に入り込んだ
一生が布団の上から抱き締めた
「おめぇの中には……俺と同じ血が流れてるんだ」
そう言い手を重ねた
「半分だけだが……親父の血が入ってるからな」
慎一は呟いた
「俺は……殺したいくらい憎かった……」
「………一生……死者に鞭打つな……」
「お前の存在を知った時……心底憎くなった……
身勝手にも程がある……あのクソ親父…」
「俺も……思わなかったと言えば嘘になるが……
今は何も思ってはいない……」
「俺はお前がいて良かったと想う」
「俺も……一生がいて良かったと想う」
一生は笑った
慎一も笑った
そして二人は……目を閉じた
互いのぬくもりを感じて……
眠りに落ちた
幸せな聖夜を
送れますように……
星に願いを込めて
メリークリスマス
【後日談】
兵藤は家に帰ってプレゼントをベッドの上に置いた
「まさか…こんなに貰えるなんて思ってもいなかったからな……」
兵藤は驚いていた
小さな箱を手に取った
すると『おとたん』と箱に書いてあった
音弥は入院中でXmasには家に帰れなかった
なのに兵藤にプレゼントをくれたのだ
胸が熱くなった……
綺麗にリボンしてあるリボンを解き、包装紙を破いてプレゼントを開けた
箱の中には……
車に飾るぬいぐるみが入っていた
どことなく………康太に似てるぬいぐるみに……
本当に康太の子供はツボを押さえてくるわ……と苦笑した
兵藤は車に飾る事を決めた
翔からのプレゼントを開けると……
今年も……護符……だった
康太の字で
『翔はお前のために3ヶ月の辛き修業を成し遂げ護符を作った
これを身に付けて持ち歩け!
そしたらお前に何かある時、身代わりになってくれる
翔の修業の賜物だ!受け取ってくれ!』
その手紙の下に
『あげゆ』とクレヨンで書かれていた
兵藤はそれを見て笑みをこぼした
携帯のラバーの下に入れた
次のプレゼントは『太陽、大空』連盟のプレゼントだった
去年……康太のパネルをプレゼントした強者だ……
兵藤は開けるのにかなり勇気がいった
箱を開けると…………やはり……
写真立てに……笑顔の康太の写真が入っていた
物凄い笑顔だった
慎一の説明の手紙を入れていた
『太陽と大空は康太の写真を兵藤君にあげると言ってました
そのために祖母の飛鳥井玲香に写真立てを特注で作らせたのです……
玲香さんは……孫には甘いので……クリスタルで写真立てを作らせました
そして中の写真は『めちゃくちゃわらっちぇるのちからめ!』と言ったので、めちゃくちゃ笑ってる写真を何枚か撮りました
勿論……隠れてです……バレたら怖いので内緒でお願いします
そして出来たのがこの写真立てです
お受け取り下さい
緑川慎一』
と書かれていた
その下にクレヨンで『あげゆ!ちな!かにゃ!』と書かれていた
兵藤は写真立てを机の上に飾った
手紙の中からガサッと写真が数枚落ちた
『日替わりでお楽しみ下さい』と書かれていた
兵藤はめまいがした
もしかして……と兵藤は玲香からのプレゼントの封を開けた
すると……クリスタルで出来たキーホルダーが入っていた
クリスタルの中に康太が入っていた
「………これは……」
兵藤は言葉を失った
気を取り直して、流生のプレゼントを開けた
箱の中から……手袋が出て来た
同封された手紙を開けると……
榊原の字で
『流生は君に手袋をあげたかったみたいです
康太とお揃いの手袋です
流生のたってのお願いなので叶えました
どうか受け取って下さい
榊原 伊織』
その手紙の下にクレヨンでやはり「あげゆ」と書いてあった
「………康太とお揃い……」
………飛鳥井の皆……怖いわ
と兵藤は想った
気を取り直して一生のXmasプレゼントを開けた
「ん?……何よ?これ?……」
一生のプレゼントの箱の中は……紙切れ一枚だった
『進級祝いの旅行!』と書かれてるだけだった
兵藤は一生にLINEを送った
「このプレゼントの意味するモノは?」
と問い掛けるとすぐに返信はあった
『春休みに進級祝いに旅行行くのよ
で、貴史も一緒に行く券』
「邪魔じゃない?
なんたって新婚だし……」
『今更だ貴史
ベタ甘な新婚との旅行だからな…
部屋は別だが最終日は大部屋で雑魚寝だ
清家とか呼んで騒ぎまくる予定だ』
「その旅行の初日から行く権利か?」
『そうそう!お前にとっての一番のご褒美だろ?』
本当に押さえるところは押さえてくる男だった
「……それには答えねぇ」
『そう言うと想った』
「ありがとう一生」
『どーいたしまして!』
LINEを切ると兵藤は旅行の詳細を書いた紙を見た
そしてニコッと笑った
そして、慎一からのプレゼントを開け……
固まった
「………フォトアルバム……」
怖い……
主に仕える奴が一番怖い……
兵藤は中に入ってた手紙を見た
『兵藤貴史様へ
今回、多数の写真を撮りました
その中の選りすぐりをアルバムにしてみました
記念に貴方に差し上げます
我が主は誰よりも凜として美しい
そして凛々しい
俺にしか撮れない写真をどうぞ!
緑川慎一』
恐ろしすぎる展開に兵藤はクラクラしていた
こんなの……康太に『あに貰ったんだよ!見せろよ』と言われても見せられない……
怖いわ……
弱点バリバリ知られてる……
弱点……
政治家になるなら弱点は持ってはならぬ
例え……親でも斬らねばならぬ時は切り捨てて逝かねばならぬ
解ってる
康太を……
嫌……飛鳥井を擁護ばかり出来ない時が来るかもしれない
そんな時は切り捨てて逝かねばならない
解ってる
解ってるが……
身を裂かれる程に辛い想いをして……
逝かねばならないのだろう
それが自分が選んだ道なのだから……
兵藤は目を瞑った
出来るなら……
ずっとこのまま………
時が止まれば良いのに……
腐れ縁が切れる事なく続けば良いのに……
お前を見る為に……
今世は来た
来世は………お前と共に戦う……
共に……
お前といられれば……
それで良い
何も望まない
何も……望んだりしねぇ
兵藤はラストのプレゼント
隼人からのプレゼントを開けた
中はCDとロムが入っていた
手紙を取り出すと呼んだ
『貴史へ
このCDは桜林の『出て行ってやる宣言祭』の時の康太と歌った歌をディスクに落として貰ったものだ
ロムには宣言祭の時の映像が入っているのだ
このロムはただのロムじゃねぇぞ
お前の部屋に良いテレビに買い換えたと聞いたからな、それで見れるように画像処理してある
兵藤貴史にオレ様から高校時代の思い出をプレゼントする
貰ってくれなのだ
共に逝こう貴史
共に歩こう
共に泣こう
共に笑おう
我が友よ……永遠に共に在ろう
一条隼人』
兵藤は手紙を見ながら泣いた
隼人……
俺は……お前を大切にしてやらなかった
一生程に……親しくもなく
聡一郎程に……解りい合えてもいなかった
慎一程に認めておらず
なのに……
これを俺にくれるというのか……
隼人……
隼人……
一条隼人は変わった
桜林の生徒会長をしていた頃は、一条隼人は目の上のたんこぶだった
規則を金でねじ曲げ生きているやり方に見下した
なのに……お前は俺を友と呼んでくれるのか……
共に在ろう……
我が友よ……
隼人……
共に在ろう……
兵藤はプレゼントを抱き締めて泣いた……
【後日談②】
一生は力哉と部屋に戻った
力哉に口吻けると、それに応えて口吻けは深くなった
唇を離すと力哉は
「一生、今夜は兄弟で過ごしなよ」と言った
恋人同士の夜なのに?
一生は力哉を見た
「何か怒らせた?」
「違うよ、そんなんじゃない
慎一の子供達……サンタは慎一だと知ってる
手紙書いてるの見たんだ……
だからさ……あんな手紙みたら慎一泣くと想う
泣くのに独りだと……哀しいよ、淋しいよ、冷たいよ、寒いよ……
だからさ……康太に話したんだ
そしたらお前から一生に言ってやれと言われた
一生、慎一の傍にいてやりなよ……」
「お前はそれで良いのか?」
力哉は頷いた
その時、ドアがノックされた
力哉はドアを開けに行った
すると榊原が立っていた
「力哉、康太は意識がないので僕が来ました
ちゃんと一生に話しましたか?」
「今伝えたよ」
「なら大丈夫ですね
おいで、一緒に寝ましょう」
力哉は榊原の元へ走って行った
榊原が力哉を引き寄せた
「一生、力哉は添い寝して寝ます
君は慎一に添い寝してやりなさい」
榊原はそう言い力哉を連れて行った
一生は慎一を想った
主の為に生きている我が兄よ……
お前の日々は……主と子供と仲間や飛鳥井や榊原の家族の事しかない……
子供は成長する
子供はお前の背中を見て……
ちゃんと育ってる……
ちゃんと育ってるよ慎一
父さんに苦労かけたくないから……
手紙を書いたんだ
だけど……それをお前は……
哀しく想うなら……
俺が傍にいてやる
お前と血を分けた俺が………
ずっとずっと……傍にいてやる
今世の命が終わっても……
お前は……主に仕えるのだろ?
ならば……来世もお前は俺の兄でいろ
俺はお前の弟で良い……
未来永劫……俺はお前の弟で良い……
決して哀しい思いはさせはしない
一生は慎一の部屋の前に立った
慎一は泣く為に部屋を出るだろう……
そしたら捕まえて部屋に連れて行く
独りでなんて泣かせはしない
力哉の想いだった
力哉……ありがとう
俺は今……慎一を独りにしないで良いと想った
一生は涙を堪えた
慎一を想えば泣けてくる
亡くした愛する女を想い……
泣き言一つ言わずに生きている
我が子を愛して……
独りの長い夜を過ごしている
どんな想いで……
そんな日々を過ごしているんだ?
施設を抜け出し……
想像を絶する日々を生きて来たのだろう……
生きるためなら何でもやった
慎一はそう言った
寝るのは簡単だった
そう言った
誰かと寝るのに……何の感情もない
そんな風になるまで……どんな生活を過ごしたんだ?
お前にそんな日々を送らさせたのが……
親父だと想うと……
俺はあんたを許したくなくなる……
目の前にいたなら……
殴り飛ばしてぇよ……
あんたが……奪った日々なんだ
一生は息が止まる程の静まり返った夜に……
黙々と考えていた
静まり返った廊下に……ガチャッとドアが開く音がした
慎一が部屋から出て来たのだ
慎一は部屋の前に立つ一生を見て驚いた顔をしていた
「……一生……どうした?」
「康太がこんな夜は添い寝してやれって言ったからな」
茶化して言う
康太が言ったと言えば慎一は黙るのを知っているから言う
「え?……」
一生は慎一の肩に腕を回した
「サンタやりたきゃ康太の子供がまだまだいるやん」
一生が言うと慎一は複雑な顔をした
やはり……お見通しかと諦めた顔をして……安堵していた
「………別にやりたい訳じゃない……」
「あと5年はサンタやれるぜ!
瑛智や美智留も入れたら8年はいけるんじゃねぇか?」
「………そんなにはやりたくない……」
「そのうち和希や和真がサンタになるさ」
「………え?……」
「ほら来い!」
一生は慎一の手を引っ張って自分の部屋に連れて行った
慎一は焦った
「力哉……いるんじゃないのか?」
「いねぇに決まってるやん
力哉いるのに……おめぇは連れて来るかよ
旦那じゃあるまいし……見せる趣味はねぇよ!」
一生は怒ってフローリングの上に敷いた布団に潜り込んだ
「ほら、寝ろよ」
慎一は布団に入り込んだ
一生が布団の上から抱き締めた
「おめぇの中には……俺と同じ血が流れてるんだ」
そう言い手を重ねた
「半分だけだが……親父の血が入ってるからな」
慎一は呟いた
「俺は……殺したいくらい憎かった……」
「………一生……死者に鞭打つな……」
「お前の存在を知った時……心底憎くなった……
身勝手にも程がある……あのクソ親父…」
「俺も……思わなかったと言えば嘘になるが……
今は何も思ってはいない……」
照れくさくて言えなかった言葉を……
今夜はプレゼントしてやる
「俺はお前がいて良かったと想う」
「俺も……一生がいて良かったと想う」
一生は笑った
慎一も笑った
そして二人は……目を閉じた
同じ血を分けし存在に……心底安堵する
この世にただ独りじゃないと安堵する
お前がいるから……
そんな想いになれる
互いのぬくもりを感じて……
瞳を閉じた
「慎一」
「何だ?」
「今世が終わろうとも……
俺はお前の弟だから………」
一生の言葉が……染みてくる……
「ずっと……ずっと………
おめぇが炎帝に仕える間………
ずっと一緒だから……」
慎一は瞳から熱い滴が流れるのを……止められなかった
「………一生……」
「共に在ろう」
一生は慎一の手を強く握り締めた
「………あぁ……共に在ろう……」
慎一も強く握り返した
互いの血の熱さが伝わる
「切っても切れねぇのが腐れ縁だ
きっと来世も腐れ縁で繋がってる
おめぇと俺は兄弟だ!」
「…………一生……」
「おめぇの子供の和希と和真が結婚すれば子供が出来る……
そしたら血は繋がる……果てなくお前の血は受け継がれる
血はそうやって受け継がれて流れていくと康太は言っている
俺もそう思う
お前の血が受け継がれて流れていくと信じてる」
「………俺を泣かせるな……一生……」
「お前が生きた証は遺る
そしたら俺達と共に逝こう……」
「あぁ………」
後はもう言葉にならなかった
強く…
強く……
握りしめた手は……
互いの存在を確かにしてくれた
慎一は泣いていた
こんなに気持ちよく泣かされて……
涙が止まる事なく流れていった
一生も泣いていた
二人して泣いて……
幸せを噛み締めていた
聖夜にもたらした奇跡の想いを抱き
二人はいつまでも泣いていた…
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