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第12話 聖夜 2015・12・25
12月25日
約束通り対談が行われた
飛鳥井に泊まった榊 清四朗、榊原真矢、榊原笙は康太と共にRisataへ向かった
慎一は村松康三を呼びに行き合流した
脇坂篤史が野坂知輝と共にRisataへ来る頃にはメンバーは全員揃った状態だった
脇坂はテーブルに着くと、ギャラの話を切り出した
「これ程に豪華なメンバーでは……ギャラは支払えません」
一条隼人も康太の横に座っていた
「脇坂、ギャラは売り上げは映画の制作費に当てる
だから買いたくなる様な見出しを出せ!
映画 熱き想いを語るとか見出しは任せる
売れれば売れるほど、制作費が増える事になるなら全員異存はねぇと謂うだろう!
しかも今回の対談は、幾らでOKとか値段は付けたくねぇからな
オレらは値段で出演をOKした訳ではない」
と康太が言うと榊 清四朗も口を開いた
「私も事務所の社長にも通しておきました
この対談は私が出たいと申したのでギャラは幾らでも構わないのです
ギャラではないのです!
映画の話が出来るか、私が望む話が出来るかどうかです
それをお金で換算されるのは心外です」
清四朗が言うと拍手が送られた
静まり返った部屋に拍手が鳴り響いた
康太は音源の方へ向くと、男は深々と頭を下げた
今枝浩二だった
「私も貴方が来ると聴いたので駆け付けました
ハッキリ言ってギャラはなくてもいい
貴方や貴方の悲願達成の手助けを出来るのならば……お金でなどで換算されたくはないです」
そう言い今枝は写真を数枚撮った
康太は笑って今枝を見た
「今枝、クリスマスだと謂うのに悪かったな
家族で過ごしていたんだろ?」
「大丈夫です
娘が貴方を撮りに行くと言うとちゃんとお仕事して来てよ!って送り出してくれました」
「今何歳になる」
「12になります……」
「そっか大きくなったな……」
「娘の将来をくれたのは君です
君の手助けをしろとうちの家族は私の顔を見ると何時も言います」
「今枝、ありがとう」
今枝は何も言わず微笑んだ
村松康三も口を開いた
「こんな対談はこっちからお願いしたい程だ
逆に私がギャラを払ってもいい位です」
とまで言い出した
Risataのシェフ 江口陵二が姿を現して
「取り敢えず席に着きませんか?」と声をかけた
今枝は「店の写真は撮っても大丈夫ですか?」と問い掛けた
「はい!構いません」
今枝はパシャパシャ写真を撮っていた
席に座ると脇坂が
「取り敢えず自己紹介お願いします」と頼んだ
康太が「飛鳥井家真贋 飛鳥井康太です」と名乗りを上げた
榊原が「脚本家 幸田飛鳥です」と名乗った
脇坂は「ええ!伴侶さんが脚本家の幸田飛鳥ですか!」と素っ頓狂な声を上げた
清四朗は笑って「榊 清四朗です!伊織の父だったりします」と自己紹介した
真矢も笑って「榊原真矢です!伊織の母だったりします」と便乗した
笙も「榊原笙です!伊織の兄だったりします」と笑っていた
隼人も「一条隼人です!康太の長男になります」と名乗りをあげた
村松康三は「村松康三です!康太君とは唯一無二の親友になります」と笑顔で言われたら……何も言えなくなる
野坂知輝も負けずと「野坂知輝です!康太君とは井筒屋友達です!」と紹介した
脇坂は……もぉ好き勝手やれよ……状態で……
「対談ですのであまり脱線しない様にお願いします」
レコーダーを中央に置いて話して貰った後に文字にする
今枝は写真を撮っていた
康太は「野坂、そろそろ熱き想い…クライマックスか?」と問い掛けた
「ラストは少し前に書き終えました」と伝えた
村松は「それは楽しみだな、脚本家の幸田さんは作品は目を通しておいでですか?」と問い掛けた
榊原は「はい!連載開始からすっと見てます
何時か……脚本に下ろせる時が来るのを待ってます」と答えた
村松は「何故、熱き想い…なんですか?」と問い掛けた
「もうご存じの通り、僕は榊 清四朗の次男になります
僕は……役者にはなれないと想った日から……
脚本と言う世界で仕事をして来ました
それは何時か父を使って仕事をしたい……
榊 清四朗の代表作は自分の手で作る……そんな想いで書き始めたのです
今は飛鳥井建設の副社長として生きる身ですが……
父の代表作を手掛けるのは僕の悲願でした
それを……妻が協力してくれ実現するかも……と言う所まで来ました……
総ては幸田飛鳥の悲願なのです」
「その悲願、私も協力させて下さい!」
村松は榊原に手を差し出した
榊原はその手を取り、硬く握り締めた
その手の上に清四朗は手を重ねた
真矢も笙も隼人も手を重ね、最後に康太が手を重ねた
脇坂も野坂も今枝も……手を重ねて……
想いは一つになった
今枝は手を重ねたまま写真を撮った
重なった手を収めると……
皆 手を離した
後はそれぞれの想いを伝えて意気込みを確かめ合って、対談は終わりを告げた
村松は始終笑顔で、清四朗も笑顔でいた
村松と解り合えた清四朗は主演を背負う大役を実感していた
康太は衣装は水谷世里奈と友情出演で笹原高志の出演も告げた
村松は瞳を輝かせた
「笹原高志が快諾したね……」
「笹原高志はオレが言えば『諾』としか言わねぇ」
「お知り合いなのですか?」
「あぁ……」
「水谷世里奈って…ハリウッドで衣装を担当してる方ですよね?」
「あぁ、話はもう着いてる」
「凄すぎます……」
「音楽をロバートミラーが手掛ける」
「………それ……決定……ですか?」
「この前電話した時に頼んだら快諾だった」
アカデミー賞の常連の音楽を手掛けている音楽家だった……
あまりの凄さに村松はクラクラになった
「飛鳥井康太の名前を出せばインタビュー位はしてくれるぞ脇坂」
「……え?ロバートミラー氏ですか?」
「水谷世里奈も笹原高志も、だ!」
「良いんですか?」
「映画の宣伝の為に頑張ってくれ!」
脇坂は康太に深々と頭を下げた
インタビューは2時間ちょっとで終わった
インタビューを終えた後にシェフの江口は料理を出した
「ここの料理はめちゃくそ上手ぇんだぜ!」と言いディナーを楽しんだ
ディナーは脇坂や今枝の分まであった
「腹一杯食って帰れよ!
還ったら修羅場なんだろ?」
「康太さん、美味しいです!」
「なら沢山食え!」
康太は笑っていた
がさつだが、マナーはピカ一で誰よりも優雅にワインを飲んでいた
村松はご機嫌で飲んでいた
清四朗も村松と意気投合して笑顔が絶えなかった
新春のビック対談は……予想以上に売れた
脇坂は初めて部数突破で売り尽くすと言う事を味わった
売り上げは映画の制作費というカタチで返還できて……
脇坂は胸をなで下ろした
その後、ロバートミラー氏のインタビューや
水谷世里奈、笹原高志のインタビューも成功して
社長から大入り袋が配られた
熱き想い…
映画化へ向けて始動した瞬間だった
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