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第14話 聖夜 2016・12・24 ②

「………正義……行き先は聞かずに……このプレゼントを貴史に渡してくれねぇか?」 「………解りました……貴史に渡します 康太……アイツは……屈しない男です 相当……手強いと想います」 「だろうな……」 康太はそう言い儚げに笑った 堂嶋は……その顔に言葉を失った そんな儚げな……今にも消えてしまいそうな顔を見せられたら………何も言えはしない 堂嶋はプレゼントを一つずつ運びだし車に詰め込んだ 一生と聡一郎が手伝って運び込む 総てを運び込んでトランクのドアを閉めると 「正義、頼んだ」と一生が声をかけた 「康太は……何であんな決断を?」 「貴史が刺されたろ? あの後から子供達を貴史に逢わせない様にしていた 貴史は日本を背負う政治家にならねぇといけねぇ存在だ 足を引っ張るのは自分でも許せねぇと言っていた ってのもあるし、一番は大学を卒業したら、アイツの逝く道は険しい 子供の為に時間を作らせるの訳にはいかないと想っている だから子供達と貴史と距離を取らせて、今年が最期のクリスマスだと言ったんだ」 「………今年が最期の………」 堂嶋は口を押さえた でなければ嗚咽を漏らしてしまいそうになったから…… 子供達に最後だと告げた康太を想う 本当に康太は兵藤貴史と言う政治家を買っているのだ 兵藤貴史と言う政治家の行く末の邪魔になるなら…… 己でさえ排除しようとするのだ…… 「家族は既に目的地に立った 俺達も正義に託したら伊織と共に立つつもりだ だから今年はクリスマスは飛鳥井には誰もいない……」 「飛鳥井で……クリスマスを祝いたかったです」 幸哉も楽しみにしていただけに…少しだけ淋しかった 「来年は一緒に……迎えてぇな」 「ええ……みんなで祝えるクリスマスが最高に素敵過ぎました……」 「ならな正義、そのプレゼント頼むな」 「解りました」 堂嶋が車に乗り込もうとすると、榊原と康太が駐車場に現れた 「慎一が戸締まりから帰ったら逝くぞ一生」 榊原は車のドアを開けて康太を乗り込ませた そして堂嶋の所へと向かった 「正義さん、辛い事を頼んで……申し訳ありませんでした」 「……アイツの怒りまくった顔を……見たくはありません……」 「それでも、康太は先へ逝く事を選び別離を選んだのです…… それが貴史の為でもあると……決めたのです ならば我らは…その想いの先へ逝かねばなりません」 その台詞に堂嶋は 「康太は決めたなら突き進むしかない それは己が一番知っている事です 俺はずっと…康太の傍に逝く事すら叶わなかった… 俺は康太の為に動くと決めている きっと貴史も一筋縄では逝かない 一応、行き先は聞きません なので解らないを通しますが…あの男は何としてでも屈しないのをお忘れなく」 「正義さん、それを解っているのは康太です」 「………!…やはりちょっと貴方は食えない……」 榊原は笑って一礼すると車へと戻った 慎一が戻って来ると、慎一は堂嶋の車を先に飛鳥井から出した そして慎一が車に乗り込むと、榊原は一生、聡一郎も後部座席に乗せた 「全員乗りましたか?」 榊原が訪ねると一生が横を見た 「おー!大丈夫だぜ旦那!」 「では逝きますか」 榊原はそう言い車を走らせた 駐車場から車を出すと慎一はシャッターをリモコンで下ろした 車は軽快に走りって堂嶋の車を抜かして走り去った 堂嶋は兵藤に電話を入れた 「堂嶋だ!」 『正義さん何か用ですか?』 「今、お前、何処にいる?」 『家だけど? 康太の子供達にプレゼント持って逝く用意してた所だけど?』 「なら一分もしないうちにお前の家に向かうから、駐車場を開けてくれ! お前に渡したいモノがあるんだよ!」 『了解!シャッター開けて待ってるわ』 兵藤が言うと堂嶋は電話を切った 兵藤の家に着くとシャッターが開いていた その前に兵藤が立っていた 堂嶋は駐車場に車を入れると車を停めた 「貴史、お前に託されたモノがある」 「?託されたモノ?それは誰からよ?」 「プレゼントを受け取って見れば誰からか解ると康太は言ってた 手紙を見れば誰からか直ぐに解るそうだ」 堂嶋はそう言うと車から降りた そしてトランクを開けると、中から荷物を取り出した 兵藤はそれを受け取り車から下ろした 大きな荷物がトランクから下ろされた 荷物は全部で7個と段ボール一箱 兵藤は堂嶋に手伝って貰って、その荷物を自分の部屋に入れた 堂嶋は初めて兵藤の部屋に入った 壁には…笑顔のパネル、机には明らかに隠し撮りした写真の数々 何と言って良いやら… 思案してると兵藤が「何も言うな!」と怒った様に言った 兵藤はベッドの上に置いたプレゼントを開け始めた まずは大物から………と大きな四角いパネルみたいなカタチをしたプレゼントから開け始めた 「壁に在るパネルは去年子供達がくれたんだ」 兵藤はそう言いリボンをほどいて、包みをバリバリ破いた すると中から手紙が出て来た 「ひようどう くんへ くりすます ぷれぜんとです あすかい かける」 と、ひらがなで書いたカードの下に捕捉の手紙が入っていた 『翔は貴史の一番喜ぶモノを模索して康太の最高の笑顔を贈ると決めた 今枝浩二氏に頼み、今枝浩二氏は見事に最高の笑顔の康太を撮ってくれた 最期のクリスマスには相応しいプレゼントだと翔は大層喜んでいた一枚だ 受け取ってやってくれ! 緑川一生』 兵藤はパネルの上にカードと手紙を置いた 次に大きいのはスケボサイズのプレゼント やはり兵藤はリボンをほどいて、包装紙をバリバリ破いた 中は形状から想像した通りのスノボの板だった 中はカードと手紙が出て来た 「ひようどうくんへ くりすます ぷれぜんとです あすかい ひなた」 字を教えて貰ったのかたどたどしい文字を兵藤は見て……涙ぐんだ 手紙には 『貴史君へ 太陽が君に贈りたいと言ったので用意しました 太陽が心を込めて贈る君へ最期のクリスマスプレゼントです 使ってやって下さい。榊原 笙』 何なんだ? 最期のクリスマスって? 兵藤にはさっぱり解らなかった 兵藤は次に綺麗にラッピングされた長い棒のようなモノを手にした 流石と棒のようなモノの中にはカードと手紙は入らなかったのか、棒のようなモノの上に張り付けられていた 兵藤はその封を開けてカードと手紙を取り出した 『ひようどうくんへ くりすますぷれぜんとです あすかい かなた』 『貴史君へ 大空が君に贈りたいと言い監督に無理言って用意して貰った刀です 君が大空に欲しいと言ったモノと同じモノです どうか最期のクリスマスに相応しいプレゼントを受け取ってやって下さい。榊原 清四郎』 清四郎は敢えて祖父 榊原清四郎と本名で書いた手紙だった 兵藤は刀の包装紙をバリバリ破くと、あの日大空と一緒に見た刀だった 兵藤はその刀を見て『カッコいいな』と絶賛した 大空は『ほちい?』と聞いた 兵藤は『欲しいな』と答えた 覚えていたのにもビックリだが、それをプレゼントしてる子供達の想いに胸が熱くなった その次は明らかに花だった 兵藤はその花を見て 「これは流生だな」と辺りをつけた 堂嶋は「解るのか?」と問い掛けた 「そのスノボもそうだけど、この刀も子供達と一緒の時に『ほちい?』と聞かれたモノだし この花は花が大好きな流生からだと一緒にいれば解る 流生は伊織に温室まで作って貰っている程の花好きだ」 兵藤には子供達と過ごした時間と絆があった 堂嶋は「凄いな……」と口にした 箱を開けると綺麗な薔薇が咲き誇っていた 兵藤にその薔薇に覚えがあった 「トナミ海運のCMの時に背景にあった薔薇だ」 そこまで……堂嶋は言葉をなくした 『ひようどうくんへ くりすますぷれぜんとです あすかい りゅうせい』 『貴史君へ この花は流生が亜沙美さんの所まで行き貰い受けた花です トナミ海運のCMに使われていた花で、亜沙美さんの名前が着いた薔薇です 是非、君の温室に飾ってやって下さい そしたら流生も喜びます 最期のクリスマスに相応しいプレゼントを……とずっと思案していたので……受け取ってやって下さい 緑川慎一』 兵藤はその手紙を読んで堂嶋に 「最期のクリスマスって……何か聞いてる?」と問い掛けた 堂嶋は康太に聞いた話をした 今年を最期に……距離を取ろうとしてる……と話した その話を聞いて兵藤は 「それで納得がいったわ! 最近、子供達に逢えねぇのな 逢いに行ってもスイミングだ塾だ……とタイミングが悪かった タイミング悪かったんじゃねぇんだな 逢わさねぇ算段されていたんだな」 兵藤は納得した様に呟いた 「康太は………お前の為に……」 堂嶋は……そう言おうとした だが……言葉が続かなかった 「解ってるさ、アイツは何時も俺の為、皆の為…… そればかりじゃねぇか!」 そして兵藤は更に小さな箱の包装紙を破いた 箱を開けると……固まった 「なぁ………正義、時計に詳しい?」 「………幸哉が詳しいかな‥‥輸入の仕事してるからな」 堂嶋はそう言うと時計をパシッと写真を撮った そして幸哉に添付してメールした 直ぐ様、幸哉から 『FRANCK MULLER ダブルミステリー ダイヤ 金無垢 クロコレザー メンズ 定価8,802,000円……位だったと想う』 とメールが返ってきた 兵藤と堂嶋はそのメールを見て唖然となった 兵藤が「桁……間違えてねぇ?」と言う 堂嶋は何度も0を数えた そして「桁、間違えてないのか?」とメールした すると電話が鳴り響いた 『正義さん失礼だよ! 僕が間違える筈なんてないよ!』とかなりのお怒りだった 「すまん幸哉……」 『ねぇ正義さん、飛鳥井って留守なの? 僕、飛鳥井にいるんだけど…誰もでないの』 「飛鳥井は留守だ…誰もいない」 『……ラインもメールも繋がらないんだけど……正義さん何か知ってるの?』 堂嶋が困っていると兵藤が携帯を奪った 「幸哉か?飛鳥井にいるなら裏に回って俺んちに来い! 正義もいるし二人して事情を聴こうぜ!」 『解った!直ぐに逝く!』 そう言い幸哉は電話を切った 兵藤は出迎えるために部屋を出て行った 玄関に向かうとインターフォンが鳴らされた ドアを開けると………そこには幸哉が泣きそうな顔で立っていた 兵藤は幸哉を招き入れ部屋へと通した 「お茶は出ねぇ、好きなのを勝手に出して飲んでくれ」と言い部屋に誂えてある冷蔵庫を指差した 「お茶なんて良いよ! この部屋も取り立てて聞いたりしない!」 「それは助かる」 「だから康太君たちが何処にいるか吐いてよ」 幸哉が言うと兵藤は堂嶋を見た 「それはお前の亭主に聞けよ! 俺は正義にプレゼントを届けられただけだ」 幸哉は兵藤の横にある箱に目を止めた 「これ?さっきの写メの時計は?」 幸哉が聞くと堂嶋は「あぁ、そうだ」と返した 幸哉は時計をまぢまぢと見て 「やはりフランクミュラーの時計だよ さっき言った金額の最高級の時計で間違いないよ!」 「………正義……これは五歳児に貰って良い商品じゃねぇな……」 兵藤は時計の上にあったカードを開いた 『ひょうどうくんへ くりすます ぷれぜんとれす  あすかい おとや』 兵藤は手紙を開いて目を通した 『貴史へ この時計は音弥が神楽四季学園長の所へ行って貰い受けて来た時計です どうも音弥は康太と四季さんの話を聞いていたみたいで、時計に目をつけたみたいです 高額な商品でしたが、君に贈るのであれば……と四季さんは了承して下さり、音弥のプレゼントになりました 君に相応しい時計なので身に付けてください 最期のクリスマスに相応しいプレゼントを受け取ってやって下さい 四宮聡一郎』 兵藤は手紙を読むと堂嶋に渡した 堂嶋と幸哉は手紙を見た 幸哉は「貴史君は幸せだね」と呟いた こんなにも飛鳥井の子に愛されているんだもん 兵藤は残りのプレゼントも広げた 画用紙を丸めた様な紙のリボンをほどくと、そこには顔がかいてあった 手紙が入っていて兵藤はそれを読んだ 『貴史へ これは烈が書いた貴史の顔だ 烈がクリスマスプレゼントにする為に一生懸命書いた貴史の顔です 受け取ってやってくれ! クレヨンだらけになって書いていたのだ お兄ちゃん達よりは劣るが……烈の精一杯なプレゼントだったから贈らせて貰った。飛鳥井玲香』 兵藤はクレヨンで書かれた顔をなぞった 「烈、風邪ひいてねぇかな?」 先月見た時、鼻水をズルズルやってゼェゼェ言っていたから気にかけていたが、あれから逢えなかったから……今は治ったのか気になる 兵藤は最期の箱を開けた 箱の中には幾つかのプレゼントが入っていた プレゼントには康太や榊原、飛鳥井の家族の名前が書かれて入っていた 兵藤はそれを全部広げて行った 康太はマフラー 榊原は手袋 一生は財布 聡一郎はデジカメ 慎一は……植木の苗木だった す 植木にメッセージが着いていた 『これはryusaiと言う品種の薔薇の苗木です』 隼人は来月封切りの映画のチケット……30回分 清四郎も舞台のチケット30回分 真矢はCMでやってた商品を! 笙は『sho』ブランドのジーンズを。 瑛太は熱き想いの映画のチケット30回分を 皆それぞれ貴史の為にプレゼントを贈ってくれていた 兵藤は携帯を取り出すと一生にライン入れた そして電話 何をやっても繋がらないつもりなのは確かで……音信不通となっていた 「そっちがその気なら……こっちも腹括るしかねぇな!」 最期? ふざけるな! 兵藤は終わりになんかさせるか!と怒っていた 堂嶋は「引き下がる気はないよな?」と確かめた 「あたりめぇじゃねぇかよ!」 「だよな……で、どうやって探す?」 「弥勒に聞いても言わねぇだろうからな…… なら共鳴してる奴に居場所を聞きに逝くしかねぇでしょ?」 「心当たりはあるのか?」 「約一名、思い付く 俺はそこへ行く!」 兵藤がいうと堂嶋は「俺達は逝ってはダメか?」と問い掛けた 「………俺が逝く所は……この世じゃねぇ場所だが……」 「構わん!あの世だろうが天国だろうが、そんなの構ってられないからな!」 「うし!なら逝くか!」 兵藤はそう言うと「屋上に逝くとするか!」と言い部屋を出て逝った 兵藤は屋上に出ると呪文を唱えた 「正義、幸哉、俺が鳥になったら背中に乗れ」 「了解!」 乗れる程の鳥になるのか? 堂嶋には想像もつかなかった 兵藤は堂嶋と幸哉のいる前で朱雀に姿を変えた 朱雀は鳥に姿を変えると「乗れよ!」と言った 堂嶋と幸哉は朱雀の背中に乗った 羽根に掴まっていると、みるみるうちに飛び上がった 飛び上がった朱雀は時空を切り裂き、歪んだ先へと飛んで逝った 真っ暗な空間に朱雀の光が煌々と光っていた 「ねぇ貴史、何処へ逝くの?」 幸哉は問い掛けた 「伊織は青龍と言う龍で、彼には二人の兄と一人の弟がいる! その兄の一人に逢いに逝くんだよ! 黒龍がダメなら炎帝の兄の閻魔に聞くしかねぇけどな」 堂嶋はギョッとして「閻魔?」と問い掛けた 「炎帝は閻魔大魔王の弟なんだよ」 何か凄すぎる話になって……堂嶋も幸哉も言葉がなかった 暗闇が晴れるとそこは……見た事もない場所だった 「………此処は?」 堂嶋が尋ねると朱雀は「魔界だ!」と答えた 朱雀は黒龍の家まで飛んで逝った そして地上に下りると、黒龍の家のドアを出るまで叩いた 暫くすると黒龍が「煩いよ!叩きすぎだよ!」と怒ってドアを開けた ドアを開けると朱雀が立っていて、黒龍は 「朱雀、煩い!」と文句を言った 「なぁ黒いの、蒼いのの居場所解る?」 「………朝早くやって来て……俺に青龍の居場所を聞くのかよ? お前の方が知っていないのか?」 「消えたんだよ! 行き場所も告げずに消えやがったんだよ!」 「………お前何かやったのか?」 「殴るぞ黒いの!」 「解った……取り敢えず入れ」 「女……いない?」 女癖の悪い黒龍の事だから……全裸の女でも寝てないか……朱雀は用心した 「いねぇよ!最近は寂しく一人寝ばっかりだよ!」 「…………不能になった?」 朱雀が言うと黒龍は朱雀を蹴飛ばした 「いてぇ!」 「ふざけた事を言うなら…潰すぞ!」 「………それだけは許して……」 黒龍は許しを乞いてる朱雀を仕方なく部屋へと招き入れた ソファーに座ると、黒龍は如意宝珠を手にした 「如意宝珠よ! 我が弟、青龍の居場所を映し出す良い!」 と、語りかけると、如意宝珠は青龍の姿を映し出した 映し出された青龍は子供たちと雪遊びをしていた スキーで滑っていると女性に教えてとまとわりつかれ誘われるが、総て無視して子供達の所へ向かう 蹴散らして逝く様は昔と変わってなくて黒龍は笑っていた 「女嫌いは変わってないなぁ……」 「結婚していたってのが嘘見てぇだよな」 「結婚してたって言っても……一度も寝てないって言うしな……結婚してたって言っていいのか?」 「堅物だよなコイツ……」 「言ってやるな……あれでも可愛い俺の弟だ」 「なら止めてやる………これは白馬か?」 「どうだろ?共鳴を使えば居場所は解るけど…… それだと困るんだろ?」 「そう。縁を切ろうとしてる奴らだからな! 奇襲してやろうと居場所を知りに来たんだよ」 「で、そこの人の子は…?」 「俺の師匠と家族だ」 「堂嶋正義?」 黒龍が思い出して言うと兵藤は驚いた顔をした 「何で知ってる?」 「炎帝の為にいる人間の事は何でも把握している とばっちり受けて短命にならないように気を付けてるからな……」 閻魔から言われているのだろう…… 炎帝の傍にいる者の運命を変えてはならない……と。 兵藤は如意宝珠の珠の中にいる榊原の居場所には見覚えがあった 「大体絞れたな!うし!奇襲を掛けるとするか!」 「何処か解るのか、此処が?」 黒龍は良く解ったと感心した 「蒼いのの後ろのリフト、これは白馬の康太んちのスキー場だ! このリフトの色は康太が決めたからな他のスキー場とは違うんだよ」 「ほほう……流石炎帝のストーカー」 「失礼な!俺はストーカーなんかしてねぇよ!」 してるじゃん……これから追い掛けて行くんだろ? そう想い黒龍は笑っていた 「奇襲を掛けるなら俺も参加して良い?」 黒龍は楽しそうに便乗する算段をした 「構わねぇけど、お前、仕事は?」 「少しオーバーワーク気味でな 炎帝が還って来る時は有能な人材もスカウトして還ってかてくれないかね? 堂嶋正義、お主は政治家してるんだろ? 十分、戦力になりそうな人材だな」 「こらこら……四天王が直々にスカウトするなよ……」 「だってさ……本当に忙しいんだよ…… まぁ先の事は置いといて、さぁ逝こうぜ朱雀!」 黒龍に急かされて朱雀は立ち上がった 「正義と幸哉は家に帰るんだろ?」 朱雀に聞かれて堂嶋は幸哉を見た 兵藤は「クリスマスは甘く二人で過ごせよ!」と笑った 幸哉は頬を赤くして「………バカッ……」と呟いた 堂嶋は「康太は貴史に託して俺達は家に帰るよ」と答えた これ以上鳥の背中で移動するのは……ハッキリと言って怖かったから…… 幸哉も同じ気持ちだったのか、うんうん……と頷いていた 黒龍はニカッと笑って 「丁度、親父殿が来てるんだ 龍の背中に乗って還られるとよい!」 それも大概嫌だけど……… 帰り道がそれしかないのなら仕方ながなかった 朱雀は黒龍に「一度俺んちに還るわ!白馬には俺の車で逝くとするわ!」と告げた 「何でそんな面倒くさい事をするのよ?」 黒龍は車と言う乗り物が苦手だった 龍ならひとっ飛びで逝けるのだから……あんな鉄の塊に乗らなくとも………と想うのだった 「…………人間は鉄の塊に乗りたがるのだな?」 「まぁまぁ、そんな事は言うな」 「俺はあの鉄の塊が………苦手だ」 「炎帝の運転よりはマシだぞ?」 「……あやつの運転はそんなに凄いのか? …………あぁ……天馬で壁に激突して骨折しておったな…… あやつは雑いからな…」 雑さ健在に何だか頬が緩む 「雑なんてもんじゃねぇぞ……命が幾つあっても足りねぇ位に怖いわ………あれは……」 噂をされている康太はハクショーンと何度もくしゃみをしただろう…… それで榊原に心配されて抱かれて……暖められ熱い二人が予想される 「それは怖い話だわ」 黒龍は身震いした 堂嶋と幸哉は当たってるだけに笑うしかなかった 部屋の奥から金龍が出て来た 金龍は人間が一緒だったから姿を現すのを遠慮したのだった だが話の流れから自分が送って逝かねばならない雰囲気なので姿を現した 「では、我が送って逝くとするか!」 金龍が言うと黒龍も「親父殿頼みます」と頭を下げた 家の外に出ると金龍は龍に姿を変えた 黄金の龍を目にして 堂嶋は「康太が目にしたら床の間に飾りたがる……神々しさだな……」と呟いた 黒龍は、やはり誰もが同じことを考えるのだな……と笑った 「さぁ乗るがよい人の子よ 乗ったら行き先を念じろ そしたらお主の念じた先へと下ろしてやろう」 堂嶋と雪哉は金龍の背中に乗った そして天高く飛びあがり………消えた 朱雀と黒龍はそれを見送り 「黒いのお疲れみてぇだから俺の背中に乗れよ!」 と言い朱雀は鳥の姿に変わった 黒龍は朱雀の背中に乗り込み 「赤いの悪いな」と謝った 二人は昔から持ちつ持たれつの仲間だった 「飛ぶからな掴まってろよ!」 朱雀はそう言い天高く上昇して、気流に乗って時空の先へと飛び立って逝った 兵藤の家の屋上の上に到着すると、なんとそこには金龍がいた 朱雀は屋上に下りて金龍に 「何で此処に?」と尋ねた 金龍はカッカッカッと豪快に笑い 「上空を飛んでいたら呪文壁を見付けた 呪文壁は一般人が出来る筈などないからな! 此処がお主の家だと目星を着けて待っておった」 と、意図もさらっと言ってのけた 兵藤は「……金龍、ひょっとして一緒に逝くつもりですか?」と尋ねた 「我は魔界に還る! その前に伝言を頼もうと想ってな 閻魔からの伝言だ」 閻魔からの………と聞き兵藤は顔を引き締めた 「ではお聞き致します」 「混沌の夜があけた……それだけ伝えてくれと携わって来た それだけ言えば炎帝には解るとの事だ」 「………カオスの幕開け……と言う事か…… 下手したら魔界はなくなるかもな…… 魔界はなくなり天界も覆される事態になるやも知れない事態が始まった………と言う事か…… 人の世では大量に人が死ぬな……天災か人災か……」 「それを食い止める為に尽力しろとのお達しだ 十二支天が各国の神と連絡を取り目を光らせてるのは……その為か……」 「世界の……いや……この地球(ほし)の危機に面した第一級の指令が発令された……」 となると……近いうちにまた閣下から召集が掛かるやも知れぬな……と兵藤は想った 「解った!伝えます!」 兵藤は金龍にそう言うと深々と頭を下げた 金龍はそれを見届けると龍になり、飛び立って逝った 混沌の夜があけた…… それが何を意味成すか…… 兵藤は胸を押さえた それでも逝くしかない そう!逝くしかない! 「黒いの!奇襲をかけるぜ!」 兵藤はそう言うと屋上のドアを開けて下へと下りて逝った 自分の部屋に戻り子供たちへのプレゼントを黒龍にも持たせて腕一杯に抱えて部屋を出る そして車に詰めると「逝くぜ!」と助手席のドアを開けて黒龍を乗り込ませた そして自分も運転席に乗り込み、車を走らせた 待ってろ!康太! もう二度と距離なんか取らせねぇからな! 康太は白馬に来ていた 子供達に雪を触らせてやりたい!と言い家族を白馬まで連れて来た 家族は何も言わず康太の言葉に賛同して、白馬まで着いてきてくれた 子供達は雪を見て瞳を輝かせていた 「かぁちゃ ちろい!」 流生が雪の白さに瞳を輝かせていた言った 「ちょちて、ちゅめたい!」 音弥が興奮して雪に触った 「………ちろっぷ……」 翔はシロップをかけると美味しいそう……と雪を見ていた 流石と康太は「………これは食えねぇぞ」と止めた 太陽は「ゆち、ちやけちゅる」と日焼け止めを榊原に手渡した 榊原は「この日焼け止め、どうしたんですか?」と尋ねた 「ばぁたん ぬゅるよろち!くれたの」 榊原はあの人は……と想いつつも太陽に日焼け止めを塗ってやった 大空は雪に自分のカタチをつけるべきドサッと寝転がった そしてその気持ち良さに……眠たくなった 康太は「寝るな!凍死すんぞ!」と大空を起こした 一生は先が思いやられつつ鼻水を垂らしている烈を抱っこしていた ソリを持ってリフトで上まで上がる 榊原や聡一郎、隼人、一生、慎一は女性の視線を一手に集めて……お近づきになりたい女性が 「スキーを教えてください」と言い近づこうとしていた 康太はそれを見て「本当に何処へ行ってもモテる奴等だな」と呆れて言った リフトに乗り中腹まで逝く ソリで子供達と下りると、子供達はご機嫌で楽しんでいた そして……「ひょーろーきゅん……いちゃらにゃ……」と呟くのだった そんな時は少し胸が痛い…… でも時は永遠に止まってはくれないのだ…… 子供達は口にして康太を見てハッとなる 口にはしない約束だったからだ…… 兄弟で約束したのだ 口にした音弥は落ち込んだ 「………ぎょめん……」 そんな時兄弟は「どんみゃい!」と言い兄弟を慰めるのだ 責めたりはしない どんな時でも兄弟は仲良く助け合えと教えられて来たのだから…… ゲレンデで夕方まで遊び、源右衛門が昔住んでたと屋敷に還る 白馬のホテルには飛鳥井の家族専用のラウンジがある だけど家族は源右衛門が住んでいた屋敷の方を選び、こっちで過ごす事を決めた リフォームした屋敷は快適に過ごす事が出来るし部屋なら全員泊まっても余りあまっていた 一生は烈を膝の上に乗せて 「風邪かな?」と心配そうに呟いた 真矢が烈を受け取り熱を確かめた 熱はなかった だが鼻水が凄かった 「熱はないわ……でも鼻水が凄いわね」 そう言い真矢は烈の鼻水を拭いた 鼻水を拭かれるのが嫌なのか、烈は真矢の手から抜け出し康太のお膝に抱き着いた 「烈、還ったら病院に行こうな 飛鳥井の会社の仕事納めには還らねぇとな」 今年も社内一丸となって大掃除のイベントがあるのだ そして昼食を皆で食べるのだ 社員はその弁当がかなり美味で気に入っていた 大掃除の先頭指揮を取るのは榊原伊織 鬼の総監督が指揮を執り先陣を切って逝くのだった 榊原は「今は家族で楽しい時間ですよ?」と他は考えるなと康太を抱き締めた 何時まで経っても新婚な二人だが家族は気にしない 二人は仲良くしていない方が心配だから…… 康太は我が子を一人一人風邪をひいてないか確かめた 「寒かったけど風邪ひいてねぇか?」 鼻水を垂らしてないか 熱はないか 母は何時でも子供達の体躯が心配だった 流生も鼻水を垂らしていた 熱はないかと確め 「お前も病院だな」と呟いた 他は元気……いや………翔が顔が赤かった 康太は翔を抱っこすると熱を確かめた 「伊織、翔の顔、赤くねぇか?」 榊原は翔を持ち上げると、自分の膝に乗せた そして熱はないかと確かめた 「熱はないんですがね?」 何で顔が赤いのか? 他の子はそうでもないのに…… すると音弥が「かけゆ、ひやけろめ、やらにゃきった」と説明した 「………伊織……」 「………解ってます……」 慎一は榊原の膝から翔を受け取ると、持参して来た軟膏を翔に塗った その薬は久遠がスキー場に逝くと聞いて処方した軟膏だった 「久遠先生がこんな事もあろうかと薬を作って下さってます」 康太と榊原は顔を合わせて「完璧だな」と呟いた 玲香と真矢はご機嫌で飲んでいた 清隆と瑛太と清四郎と笙も飲んでいた 便乗して着いてきた神野と小鳥遊も瑛太達と仲良く飲んでいた 京香と明日菜は育児談義に花を咲かせていた 隼人は「………筋肉痛になりそうなのだ……」とソファーに寝そべり悶えていた 聡一郎は「仕方ないなぁ」と湿布を手にペタペタ貼ってやった 悠太は優しく隼人の脚をマッサージしてやった 実に息の合ったカップルだった 「かじゅ、とりゃんぷやろ!」 流生が言い出し子供達は一生とトランプを始めた 力哉もその中に入り…………独走してぶっちぎりで勝ちまくった 子供達は悔しそうに……まけちゃ……と言い 力哉は「人生は試練です!」と既にほろ酔い気分で笑っていた 一生が「手を抜け力哉」と言うと 力哉は「手を抜く方が無礼でしょ?」と一歩も引かず これはこれで……良いカップルだと康太と榊原は笑っていた そこへ、ドアがドンドンとノックされた 出て来るまでドンドンと鳴らす気か? 康太は立ち上がった 「………出迎えて来るわ……」 康太が言うと榊原も立ちあがり 「ですね」と言い応接間を出て逝った 康太は「………まさか……居場所が解るとは……」とボヤいた 榊原は「この気配……兄さんがいますかね?」と兄の気配を感じていた 青龍の兄 赤いのは現世にいるから、いるとしたら黒いのだった 康太は気配を詠み取り「だな黒いのいるな」と呟いた 二人は玄関まで出向きドアを開けた 榊原はピキッと怒りマークを貼り付けて 「ドアを壊す気ですか!」と怒った 兵藤は「壊す気満々でやってた」と悪びれずに言い捨てた 「俺を置き去りにして楽しもうなんて許せねぇからな! ましてや距離を取ろうなんて許せるかよ!」 兵藤はかなり怒っていた 両手には抱えきれないプレゼントを持っていて…… 榊原は一生に思念を送った 『今すぐ玄関に来なさい!』 近い距離ならうるさい位に伝わる思念 龍は共鳴共闘する生き物だった 如意宝珠を手にした龍は同じ血を受け継いだ者との繋がりは強い 一生が玄関に出向くと 「やっぱ兄貴いたんだ」と口にした 榊原が感じているように一生も同じ血を持つ者の存在を感じていた様だ 榊原は兵藤の手の中のプレゼントを一生に渡す 一生はそれ以上積み上げられない様に 「ちょっと待て!俺一人じゃ無理」と言い応接間に走って逝った 「ドアを開けろ!」と叫ぶと慎一がドアを開けた 隼人と聡一郎も慎一と共に玄関まで出向く 聡一郎は黒龍を見ると「何時まで滞在予定?」と問い掛けた 「取り敢えず浴びる程に飲んで考える」と答えた プレゼントを総て運び込ませると兵藤は 「伝言を携わっている」と伝えた 康太は皆を応接間に逝かせると外へと出ようとした 榊原は「コートを持って来るので少し待ちなさい」と言いコートを取りに行った そしてコートを持って来ると康太に着せた そして肩を抱いて外へと向かった 外に出ると康太は屋敷の庭へと出た そこで呪文を唱えた その呪文は壁を創ると皆を取り囲んだ 「んじゃ、伝言を聞くとするか」 康太が言うと兵藤は「『混沌の夜が開けた』そう言えばお前には総てが伝わると言っていた」と言われた事を伝えた 康太はそれを静かに聞いて………考え込んだ 「………10000年前の再来……災厄が始まったか……」 康太が呟くと榊原は 「………多くの命が……奪われてしまいますね……」 悲しげに呟いた 兵藤は「そうならねぇ為に俺達がいるんじゃねぇか!」と叫んだ 康太はニカッと嗤って「だな!」と答えた 「取り敢えずクリスマスだ! 楽しんで行くとするか! 子供達がお前を待っている……逢ってやってくれねぇか?」 「あたりめぇじゃねぇか! 今後、こんな事をしやがったら許さねぇからな!」 「でもな貴史……時間は止まっちゃくれねぇんだぜ? 嫌でも時は進む……お前は自由になる時間は減るだろ? そうなった時……互いが苦しむ事になる……」 「それでも、だ!康太 それをお前が決めるな! 俺は時間を作るし、作れねぇ時だってあるだろう…… それでも時間が出来たなら一緒にいられる時間は作る そうして生きて逝くんじゃ……ダメなのかよ?」 康太は泣いた ここまでしてくれる兵藤の想いに……泣けて来た 康太が泣き出すと兵藤は慌てた 「泣くな……泣くな康太…… すまん……奇襲を掛けた俺が悪いんだな……すまねぇ…… 謝るから泣くな康太……」 榊原は「康太は君の想いに涙しているんですよ」と教えた 「え?」 「怒っていんじゃなく……… 君の想いに涙が出ているんです 時は止まらない 1万年前に人の世に落とされた僕達が誰よりも解っています 時は止まらない 何時か離れ離れになるなら…… その時が来ても平気でいられる様に……距離をとる 康太は我が子が傷付くのは誰よりも堪えられないのです だから距離を取ろうとしました それが君の為でも子供達の為でもあると想い、そうしたのです でも子供達があまりにも君を恋しがるので……困っていた所です」 榊原の言葉を聞き兵藤は 「自然に流れ付く先に逝けば良いじゃねぇかよ! 俺は時間を作る 子供達も時間を作る そうして生きて逝けば良い 康太、俺はな………お前のいなくなった世界に生きると決めている お前の遺して逝かねぇならねぇ子供達を見守ると決めているんだ だから一緒にいる時間を大切に重ねて逝きてぇんだ じゃねぇとお前がいなくなった時…… アイツ等と時間を重ねられねぇじゃねぇか! 今があるから先へと続くんだぜ? だから俺から“今”を取り上げねぇでくれ」 康太は涙で揺れる兵藤を見た 「………貴史……お前に……そんな荷物……背負わせたくなんかねぇんだよ……」 兵藤は康太を抱き締めた 「解ってる……解ってるけど……… もう決めちまったんだ……だから後へは引けねぇ」 「……馬鹿だ……お前は……」 自らそんな荷物背負わなくても良いのに…… 「お前の傍の奴等はみんな大馬鹿者ばかりじゃねぇかよ? 忘れたのかよ? 遥か昔から俺はお前が望む先陣を切って走って来たじゃねぇかよ?」 それで一度……死なせかけた…… それ以来距離をとっていたのは炎帝の方だった 炎帝は朱雀を死なせかけて……近付くのは止める事にした まさか現世で……出逢う事になるとは思ってもいなかった…… 許されて傍にいられるとは思ってもいなかった 「さっ!子供達に逢わせてくれよ!」 兵藤が言うと康太は兵藤から離れた そして嬉しそうに笑うと遮断した空間を解除した 康太は黒龍を見た 「……黒いの……」 「何も言うな!俺にもお前の子供との時間をくれよ! 次代の赤龍との時間を……楽しませてくれよ」 そう言い康太の髪をクシャッとした 皆で屋敷の中へと入る そして兵藤を隠して康太はドアの前に立った 「翔、流生、音弥、太陽、大空、烈」 名前を呼ぶと一斉に子供達は母を見た 「お前達、貴史に逢いてぇか?」 問い掛けると泣きそうな顔をして 「「「「「あいちゃい!!」」」」」「い!」 と答えた 「そんなお前達の為に貴史が逢いに来てくれたぜ!」 康太は黒龍と共に応接間の中へスタスタ入ってソファーに座った 榊原も康太と共に応接間の中へ入って行った 子供達の瞳は兵藤に釘付けになった 翔は「ほんもにょ?」と呟いた 「本物だぜ翔!」 兵藤は笑って答えてやった 流生が「あいたきったにょ……」と泣きながら言うと 「何時でも逢いに来いよ流生!」と両手を開いた 翔と流生は兵藤の胸めがけて飛び込んだ 音弥は「…ゆめにゃら……かなち…ちゅぎる……」と信じたくないのか泣いていた 「夢の訳ねぇじゃねぇか! ほれ、音弥、来い!」 音弥は兵藤に向かって走って、腕に飛び込んだ 太陽と大空は「「ひょーろーきゅん……もぉ……あえにゃいとおもちぇった」」と泣いていた 「んな訳ねぇだろ? 逢いたいなら逢いに来い! そしたら何時でも逢えるさ!」 「「いちゅれも?」」 「あぁ、好きな時に逢えるって事さ」 兵藤はそう言い笑うと太陽と大空は兵藤に抱き着いて泣いた 烈も負けずと兵藤の傍へと行き抱き付く 「ひょーひょー」と名前を呼ぶと兵藤は烈を抱き上げた 「烈、風邪か?」 鼻水を見て問い掛ける 「にーにー」 烈は兄達に兵藤がいると訴えて喜んでいた 玲香が子供達をソファーに座らせると、兵藤もソファーに座らせた 「立ち話するなら座るがよい 貴史、あと少しで美緒と昭一郎も来る」 玲香の言葉に兵藤は「聞いてねぇよ」とボヤいた 玲香は笑って 「我がいて美緒がおらぬ訳などないであろう!」 と豪語した 二人は古くからの友達だった そして今も友達だった これから先も友達なのだ そんな台詞に兵藤は「なら行き先を教えてくれても良いのに……」とやはり恨み言を口にした 「貴史は必ず白馬に来る 知らせずとも確実に白馬に来るであろうて! 美緒はそう言っていた 絶対の信頼……美緒は信じて疑ってはおらぬ お主は美緒の自慢の息子じゃ」 何だか照れ臭い…… 兵藤は子供達にプレゼントを渡した 一人一人、プレゼントを渡した 翔にはデカい熊のぬいぐるみを手渡した 「翔、お前は真贋として生きていかねぇとならねぇ でも俺の前では幼稚園児の翔で良いんだぜ? 大きな熊さん好きなのに我慢しなくても良いんだぜ! この前、大きな熊さんみて触りたそうにしてたのに…… お前は我慢して熊さんから離れたよな? 触って良いんだ翔 まだガキなのに我慢なんてするな! 真贋なら我慢しなきゃならねぇなら、それはおかしいって言ってやる! 真贋の前にお前はまだガキでいて良いんだ! だからな熊さん、お前にプレゼントだ!」 そう言い手渡された熊さんを抱えて翔は嬉しそうに笑った 「ぎゃみゃん……ちなくていいにょ?」 「ガキが我慢なんて覚えなくて良い! 修行では我慢が必要かも知れねぇけどな、日々の生活は我慢なんて要らねぇんだよ! お前はまだ幼稚園児だろうが!」 「…………くまちゃん……ほちかった」 翔は心のうちを吐露した 康太は知らず知らずに我慢させていたのを思い知る 我慢させたい訳ではない 修行を終えたら普通の子として生きて欲しいのだから…… だが…それを教えなかった自分に……康太は腹が立った 兵藤だからこそ見える現実なのだろう 「ひょーろーきゅん あいがとう」 翔は礼を言って熊さんに抱きついた 子供らしい顔をしていた 玲香は子供達が兵藤を好きなのは、素でいられるからだと思い知る 誰よりも自分達に近い人を求めていたのだ “自分” を見てくれる人を求めていたのだ 兵藤は翔の頭を撫でると流生の手を引っ張った 「よぉ!流生、元気か?」 「げんちらよ!ひょーろーきゅん ひょーろーきゅんは?げんち?」 「俺か?元気だぜ? さてと流生、プレゼントだ!」 そう言い兵藤は流生の手の上に小さな箱を乗せた 「みちぇいい?」 「良いぞ!ほれ手伝ってやる」 リボンを解き箱を開けると、そこにはキラキラ光るお花のブローチが入っていた 「きょれは?」 「お花の好きな流生の為に作らせたブローチだ 宝石で薔薇の花を型どりコーティングさせたモノだ 流生の好きな薔薇の花だぜ! これを……」 兵藤はそのブローチを流生の服に着けてやった 「ほれ、どうだ? 流生の薔薇のモチーフだぜ?」 「ひょーろーきゅん ちゅぎょく!うれちぃ……」 流生はブローチを握り締め……泣きながら兵藤に抱き着いた 「たいちぇちゅにちゅる! りゅーちゃにょ……おみゃもりにちゅる!」 「流生は優しい子だ 何時もお花を愛で、人を思いやれる子だ そんな流生に今の心を忘れないでくれと言う願いを込めて作らせた流生だけの花だ」 「………りゅーちゃ……ひょーろーきゅんといっちょいちゃい……」 「いれば良いさ! 時間は作るものなんだぜ?流生 時間がねぇなら何時逢うか予定を立てて逢えば良い 逢える努力をする そうすれば何時だって逢えるさ」 「りゅーちゃ どりょきゅちゅる!」 「流生は良い子だ」 兵藤は流生の頭を撫でてやった 榊原は流生のブローチを見て 「………それは宝石ですね?」と問いかけた 「俺は宝石の事は何も解らねぇ 美緒の使わねぇ宝石とすみれが自分の宝石の総てを持ってきてくれたから出来たブローチだ」 竜ヶ崎すみれ……斎王の娘のすみれの宝石と美緒の宝石 一体幾らの値段のつくブローチになっているのか…… 想像する方が恐ろしかった 聡一郎はブローチをじっと眺めて榊原の耳元で何やら囁いた 「………え!!」 「まぁ使わない宝石とすみれさんの宝石ならば構わなくてもよいと想いますよ?」 聡一郎はその台詞しか考え付かなくて、そう言った 榊原もプレゼントなのだからと、考えるのを止めた 兵藤は音弥を膝の上に乗せると、その手に時計をはめた 「お前のくれた時計よりは劣るけどな、その時計は親父に初めて貰った高等部に進学した祝いの時計だ 全部分解して掃除させてベルトを子供用に可愛くあつらわせた 音弥、お前の時計だ お前が成人する時、俺はお前に世界でひとつだけの時計を贈るつもりだ だからその日まで、この時計をつけてろ!」 その時計は兵藤が何時も大切に身に付けていた時計だった 康太は「………その時計……良いのかよ?」と問い掛けた 兵藤が大切にしているのを知っているからの問い掛けだった 兵藤は音弥からのプレゼントを康太に見せて 「俺は貰ったからな だから音弥に俺の大切な御守りをプレゼントするんだ この時計……正義がめちゃくそ高いって言ってたからな………想わず学園長に聞きに行っちまったぜ……」 返そうとする兵藤に神楽四季は一歩も引かずに受け付けなかった 『音弥に差し上げたのです 音弥は君にプレゼントすると言っていた そのプレゼントを返されては困ります! そんな事をしたら音弥に嫌われてしまうじゃないですか! 音弥がこの学園を継がないって言ったらどうするんです! そしたら君の所為ですからね! そうならない為にもその時計は受け取りなさい! 私はこの学園を音弥に継がせて先へと繋げさせる義務があるのです 私はこの学園を音弥を継がせたら恋でもしますかね 康太は総てを終えたら生涯の伴侶に出逢うと言ってくれました 総ては未来への保険です! 私の人生が一人寂しく終わらない為の保険です だから君はこのまま帰りなさい! あ!それを常に身に付けていて下さいよ!!』 なんと言う言い種…… 兵藤は時計を身に付けた そして自分の大切な時計を音弥に贈る事を決めた ベルトを子供用に可愛くしてもらい、音弥の手首にはまるサイズまで締めて貰った 音弥の想いを身に付けた だから兵藤の想いを身に付け貰うのだ 音弥は兵藤からのプレゼントの時計を見て笑っていた この時計は兵藤が何時も身に付け大切にしている時計だと知っているから…… 兵藤の想いを受け取った感じで嬉しかったのだ 「あいがちょ!ひょーろーきゅん」 「俺もありがとうな音弥」 「にあっちぇる!よかっちゃ!」 「そうか?お前がくれたプレゼントだからな!」 兵藤はそう言い笑った そして太陽の手を引っ張った 「ひな!車の中にスノボあるからな 明日乗せて滑ってやるからな それと、これはプレゼントだ」 「ひょーろーきゅん…うれちぃ」 太陽は嬉しそうに笑って、そしてプレゼントを開けた 太陽はプレゼントに釘付けになった 「………きょれ……」 誰にも好きだって言ってなかったのに…… 康太は「あんだよ?それは?」と兵藤に問い掛けた 「太陽はアンティークなモノに惹かれるんだよ だからなアンティークな自動車の玩具だ 欧州のアンティークだから手に入れるのは困難かと想ったけどな、藤森がアンティークに強くてな格安で手に入れられたんだ」 兵藤は康太に事情を説明した 太陽はアンティークな自動車の玩具を手にして嬉しそうに動かしていた アンティーク好きな真矢は「これはアンティーク過ぎますよ貴史」と兵藤に言った 兵藤は「真矢さん値段の解る人?」と問い掛けた すると、その質問には榊原が返した 「母さんはアンティークが大好きで、家の調度品は総て欧州のアンティークで揃えているのです」 兵藤は“血”がそうさせるのか………と想った 太陽と大空、そして烈は真矢が康太の為だけに出産して託した子供達なのだから…… 真矢は太陽の車を手にして隅々まで値踏みした 「………壊すかも知れないのによく与えようなんて想いましたね……」 真矢が言うと兵藤は笑って 「好きなモノは大切にする子だと知ってるからな」 と答えた 過ごして来た時間があるからこそ言える言葉だった 真矢は微笑んで「………そう……」と言い兵藤にラッピングされた箱を渡した 「貴史、貴方へのプレゼントはもう渡しましたね でもこれはまだ渡してなかったから持って来たのです 貴史に渡さねばと想い……持って来たのです」 必ず兵藤は来ると信じていた言葉だった 兵藤は嬉しそうにその箱を受け取った そしてプレゼントの続き 兵藤は大空を膝の上に乗せた 「かな、お前は静かに本を読むタイプだ お前の父さんも何時も本を読んでいた お前は父さんの子だからな 本が好きみてぇだからな、本がプレゼントだ」 兵藤はそう言いラッピングされたプレゼントを大空に渡した 大空はそのプレゼントを貰い兵藤に「あいがちょう」と礼を述べた そしてプレゼントを開ける 大空のプレゼントは豪華な装丁の絵本だった 「俺の秘蔵の本だ 子供の頃何時も何時も見ていた本だ 俺が読んで来た本を大空に託す 俺もこのプレゼントを貰ったのは大空と同じ年だった 大切にしてくれたら嬉しい」 康太は大空の手の中の本を知っていた 子供の頃、兵藤の部屋へ行くと何時も見せてくれた大切にしていた本だった 「良いのかよ?お前の御守りじゃねぇのかよ?」 「だから託すって言ったじゃねぇか 大切な本だからな、大切に読んでくれる奴に託すんだ そしたら、この本はまだまだ役目を終える事なく受け継がれて逝く それこそ、この本の願いだろうからな……」 「………丈一郎が絵本作家……千房琉月に書かせた……世界でひとつの本だったな……」 「大空なら、この本の心髄まで逝けるだろうからな…… 託すに相応しい人間は本が選ぶ…… その本は認めねば手にした瞬間に消える 大空の手から本は消えてねぇ 本は選んだんだよ」 「………そっか……なら大空のモノだな」 康太は嬉しそうにそう言い大空を見た 「本が好きな所は伊織にそっくりだ」 「両親に似てて良いじゃねぇか! さてと烈、お待たせ! 烈にはこれだぞ!」 そう言い兵藤は大きな袋を烈に渡した 荷ほどき出来ない烈を手伝い兵藤はプレゼントを開けてやった 手にした烈は「きゃっきゃっ」と興奮して喜んでいた 烈が貰ったのは戦隊モノのロボットだった 康太は「それどうしたのよ?売ってるのにしても、そこまで大きくねぇだろ?」と問い掛けた 「美緒の従兄弟がサランライーズの重役をやっててな 展示用の機体を無理言って貰って来た」 兵藤はそう言い大声を出して笑った

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