18 / 38

第18話 奇跡の地球(ほし)①

お前と出逢えて本当に良かった この命の尽きる瞬間まで…… お前と共に…… それが俺達の望みだ…… 愛してる 誰よりも…… お前が俺達の命……だから…… 緑川一生 四宮聡一郎 一条隼人 緑川慎一 出逢うべくして出逢った魂を今語ろうと想う ※オマケで兵藤貴史、榊原伊織を書きます 【緑川一生】 緑川一生は赤龍の記憶そのままに 人の世に堕ち、青龍の傍に転生した 赤龍にとって弟の青龍は誇りだった 産まれながらに法皇を継ぐモノとして育てられた そんな弟は赤龍の誇りであり 自慢だった その弟が…… ある日突然…… 人の世に墜ちた 赤龍は幾ら考えても…… 炎帝と赤龍の接点が……見えては来なかった 何一つ信じられずにいた赤龍に黒龍は人の世に堕ちた弟をその目で見て来るが良い!と謂った その日から赤龍は、黄泉の湖にあしげく通った 人の世に墜ちた弟を、映して見る為に…… 女神に頼み時間があれば 赤龍は黄泉の湖に通った 湖に映し出される青龍は…… 穏やかな瞳で笑っていた 愛しい炎帝を見詰め、愛してると言う 赤龍には信じられなかった 「……これは誰だよ…」 湖に映る弟を見て……赤龍は呟いた 青龍の笑顔なんて見た事ない 優しい瞳で炎帝を見つめる…… そんな顔……知らない 赤龍が知ってる弟は…… 何時だって凜として前を向いて立ち向かう凜々しき青龍だった 容赦のない鬼 キツい瞳で射抜かれたら……ちびる……とまで言わしめた男だった 信じられない‥‥ 俺は弟の何を見ていたんだ? 打ちのめされた 何一つ青龍の真髄など見ていなかったのか? 青龍を見れば見る程に‥‥‥ 魔界では見た事もない顔に‥‥信じられない想いは募った 「赤龍……許してやれ…」 黒龍が赤龍に声を掛けた 黒龍は何時も炎帝の傍にいた 赤龍は黒龍と炎帝が付き合っているのだと想った どんな時でも黒龍は炎帝を優先する 何があっても揺るぎない信頼と愛情で繋がってるのだと想っていた 「兄貴は……炎帝が誰を愛してるか知っていたのかよ?」 「……あぁ…炎帝は初めて家に招いた日に青龍に恋をした その日から炎帝は…… 長い片想いをしていた……」 「兄貴は炎帝と付き合ってなかったのかよ?」 「付き合うって恋人だったかと謂う事か? 俺は友達として傍にいた 恋人としては一度もいた事はない」 「………青龍は炎帝と付き合っていたのかよ?」 「……青龍は本心を出さない…… 俺も解らなかった…… でも俺は…炎帝の長い片想いが実って……良かったと想ってる 人の世に堕とされた炎帝に青龍がいてくれて…… 本当に良かったと想ってる……」 「………青龍は如意宝珠を置いて出て行ったんだろ?」 「青龍は何も持たない男になって人の世に墜ちた 青龍なりのケジメだったのだろう……」 「………兄貴……俺は…… こんな青龍……知らなかった…」 黒龍は赤龍を抱き締めた 「俺も……青龍が人の世に堕ちるだなんて想像もつかなかった…… 炎帝の片想いだった筈…だった 何時から互いを愛していたかなんて……俺も知らない」 黒龍は淋しそうに呟いた 「………兄貴……俺は人の世に行こうと想う 傍に行って……確かめたい」 「赤龍‥‥」 「青龍は俺の誇りであり自慢だ それは昔も今も変わっちゃいねぇ…… だから傍に行き知りてぇんだ……」 「親父殿に掛け合ってやろう 行って来いよ……」 「………兄貴……」 「女神も……代替えした お前も辛いだろ?……行けよ」 赤龍は黒龍を驚愕の瞳で見た 「………兄貴……知っていたのかよ?」 「お前が愛した女神は閻魔の妻だ…… 閻魔の傍にいれば……事情は見えて来る……」 「……兄貴……申し訳ない…」 「閻魔しか知らねぇ事だ 親父殿にも言わねぇ……お前も黙ってろ」 赤龍は頷いた 「赤龍、人の世に墜ちて青龍を見て来い…… 俺の代わりに……炎帝を護ってくれ…」 「………兄貴……」 黒龍の想いが痛かった 黒龍が総てお膳出して、赤龍は人の世に堕ちる事となった 黄泉の湖から人の世に堕ちる瞬間…… 「アイツのいない世界は退屈でいけねぇからな、俺も迎えに行く! 青龍のいない四神も成り立たねぇからな四神代表と謂う事で理由なら在る!」 そう言い朱雀まで堕ちたのは……想定外だったが…… 人の世に墜ちて 相馬一生として産まれた 嬰児の身躯に…… 赤龍の記憶そのままの魂が宿っていた 一生は産まれながらに…… 不倫の果てに産まれた子供だと言う自覚はあった 母親の名は……相馬綾香 緑川慎吾の子を、愛人のまま、ひっそりと産んだ 誰にも祝福される事なく…… 綾香は子を産んだ 愛人として…… 人の旦那を愛してしまった 止めようにも止められない想いだった 緑川慎吾は綾香との間に出来た子を【一生】かずき……と名付けた 願いを込めて…… 祈りを込めて…… この世にたった2人の兄妹になれ…… 願いを込めて名付けた 慎吾には本妻との間に既に子供がいた 一生とほんの数カ月しか違わぬ子供だった 学年で言えば同学年 その子供の名は【慎一】 緑川慎一 慎吾の初めての子供 自分の名を一文字取って【慎一】 一生は慎一の名前を一文字取って 【一生】 何時か…… 互いの存在を知って…… 助け合って生きて欲しい そんな願いを込めて 父 慎吾が付けた名前だった 桜林学園 幼稚舎 一生は大人しい子供だった 空気を読む子供だった だが、同じ組の名札の名前 【あすかいこうた】君は…… やんちゃなイタズラっ子だった 今日も一生と顔を合わせると 「かじゅき、あしょぼうぜ!」 と人懐っこい顔して寄って来る 「………いやら、おまえとあそぶと……いっちょにおこられる」 「きにちゅんな!」 ズンズン一生を引っ張って遊ぶ それを四宮聡一郎は何時も見て…… 目を合わさない様に気をつけていた 「あ!そーちいろ!あしょぼうぜ!」 でも何時も見付かって引っ張って行かれる 「たかち!おめぇもあしょぶ!」 飛鳥井家の裏の兵藤さんちの貴史君も一緒だった 「いやだ!おめぇとあしょぶと、みよこしぇんしぇーにカミナリおとされる」 「いくじぇ!」 誰が何を言おうがお構いなし 飛鳥井康太君は…… 我が道を逝っていた それなりに楽しい時間だった 「あ!しんいち!おはよ」 康太が呼ぶと一生は慎一と呼ばれた子を見る 一生は慎一が苦手だった 「こーた、おはよ」 「おめぇ、しけたツラしてんなぁ」 慎一はニコニコ康太がお気に入りだった 康太を中心に、何時も何時も 一生は、聡一郎、貴史、慎一と遊んでいた 組が変わってもお構いなしで康太が連れて来るから 何時も何時も一生は彼等と遊んでいた その関係は初等科に入学するまで続いた 初等科に入学すると生徒は倍に増えた 金持ちの裕福な生徒が通う学園 修学館 桜林学園 一生は何時も想っていた 綾香が朝から晩まで働いて稼いで来るお金では入れない事を知っていた 緑川慎吾から援助を受けているのは…… 否めなかった こんな事までして…… 学校に通いたくなんかなかった…… この頃から一生は康太と距離を取る様になって来た だが康太は何時も変わらなかった 何時も何時も、どこかこっか怪我をして 私生活もやんちゃなんだと想っていた そんなに無邪気にはなれなかった…… そんな子供には……一生はなれなかった 綾香は苦しい愛を選んで我が子を産んだ その日から始まった茨の道を…… 一生は肌に感じて生きていたから…… 初等科の3年の時相馬一生は 緑川一生になった 同じ姓を持つ緑川慎一は桜林を辞めて消えていた 学校から帰ると一生は牧場の手伝いをする 学校から一生の住む家まではかなりかかった 朝一番のバスに乗り電車に乗って桜林の初等科までゆく 子供の一生にはかなり大変な作業だったが一生は弱音一つ吐く事なく通学していた 時々、牧場に康太がやって来る 康太の姿を見ると父と母はペコペコと頭を下げた 「飛鳥井のぼん」父はそう呼んでいた 「慎吾、アスカイテイオウの仔馬はどうよ?」 「ぼん、篠崎と共に調整に当たってます 今月中にはパドックに入れる程には調整は取れてます」 「慎吾、お前の子がお前の意思を継いで逝く……その軌跡を遺して逝け」 「ぼん……我はまだ逝けません… 罪を一生に遺して……逝く訳にはいかないのです」 「お前は罪を作った ……でもそれも定めだ……仕方ねぇだろ?」 「………託しても良いですか?ぼん……」 「………アレを泣かせるのか……」 「……泣いても喚いても…… 真実を教えてやって下さい そして……存在を教えてやって下さい……」 「……慎吾……」 「………口惜しい……この身躯が……見届けれるまで……持ちはしません…」 「気弱になるな…」 慎吾は康太に縋り付いて泣いた 子供の……康太に父は縋り付いて泣いていた 不思議な感覚だった…… 飛鳥井……と言う途轍もない金持ちの息子…… 一生はそれしか知らなかった 中等部に入ると一生は桜林の寮に入れられた 理由も告げられず寮に入れられ 家に帰って来るな……と言われた 一生は親からの仕打ちに……ねじ曲がった 頭は良かった 当たり前だ 赤龍の記憶そのままに生きているのだ どんな問題集も要領させ得れば解けない問題はなかった その頃、聡一郎が学校に来なくなった…… 康太と二人で聡一郎の家に行くと監禁されていた 父親に犯され聡一郎は壊れていた   康太が兄に助け船を求め、弁護士が家の中に踏み込み、性的虐待で保護された 聡一郎を父方の祖父に後見人とさせ、父親から離した そんな聡一郎を一生は繋ぎ合わせて抱くしか出来なかった…… 「……僕は穢い…」 と嘆く聡一郎を抱く 「聡一郎は綺麗だ」 と言い全身を飲めて囁いた 聡一郎の秘孔に自分の性器を挿し込み繋がる 二人には……大切な行為だった 一生は寮の部屋で連日連夜聡一郎を抱いた 康太を弾いて…… 二人で……破滅の果てへ逝く それしか考えてなかった 聡一郎の遣りたい事をさせた 聡一郎の為に全ての時間を使った ……頭を駆使し、人の嫌がる事をする 弱味を握り脅すと…… 誰もが言いなりになった 何時しか一生と聡一郎は…… 【悪童】と呼ばれる嫌われ者になった 「一生!」 嫌われ者になっても康太は変わらない 「飛鳥井、アイツ等には関わるな!」 と忠告されても康太は何時も何時も 「聡一郎、一生!」 と声を掛けた 「……一生、康太は変わらないね…… 僕達はこんなに変わったのに…… 康太は何時だってお日様の下にいるのが相応しい… こんな僕達と付き合っちゃいけないんだ…」 「あぁ……アイツは何時も変わらねぇな…… 学園の皆は掌返した様に無関係を決め込むのにな……」 「一生……康太は僕達の側には来たらいけないと想う……」 光り輝く……希望でいてください 想い出のまま…… 何時までも輝いて… いてください…… 聡一郎の願いだった 一生の願いだった 「………なら手を打つか?」 「そうだね! 二度と近寄れなくすれば良い そしたら声なんて掛けようと想わないよ」 中等部2年の時、兵藤は桜林の生徒会長に任命された 光輝かしい栄光を手に入れる代償に… 兵藤は……友を切り捨てた 「今後一切俺に声を掛けるな」 兵藤は康太に言った 康太は何も言わずに頷いた 「お前の存在は兵藤貴史の汚点だからな!」 兵藤が去って行っても……康太は立ち尽くしていた 一生と聡一郎はその光景を目立たない場所で見ていた 「……酷ぇな……」 一生は呟いた 「康太……泣いてない? 榊原にフラれて入院したんでしょ? 大丈夫なの?」 聡一郎は心配していた 「康太はお気楽な奴だから大丈夫だろ?」 一生は考えたくなくて……そう言った 考えたって……もう康太の側にへは行けない 自分達も切り捨てたのだ…康太を…… そして二度と声を掛けさせない為に…… ハメるのだ康太を…… わざわざXmasの日に康太を呼び出した 飛鳥井の親戚のやってる書店に呼び出した 「康太、俺さ欲しい本があんだよ!」 一生が言う 「高値過ぎて手が出ないんですよ」 聡一郎が続いた 康太は二人に呼び出されて嬉しかった また昔の様に……側にいて遊びたかった 一生は聡一郎を立ち直らせるのに康太を弾いた 一生が聡一郎を抱いてるのは知っていた 康太は二人が好きだったから…… それで聡一郎が立ち直るなら……と見守っていた だが呼び出されて…その台詞を聞いた瞬間 永遠に康太を弾く算段なのだと…気付いた 好かれてないのは知っている 寧ろ嫌われてる 兵藤にも切り捨てられた 榊原にも……嫌われた 冷たい瞳で見られて……拒絶されるたび……死にたくなった 今度も……弾かれるのは解っていた 自分なんて好かれる訳がない 「康太、この書店で一番高価な美術書を盗って来てくれ」 一生の台詞に…… 「ゲーム買っちまったからな……盗るしかねぇもんな」 と康太は淋しそうに言った 「……オレは昔みてぇに仲良くお前等の側にいたかったんだ こんな手使わなくても…嫌いだって言えば…寄らねぇのに…」 悲しそうな声だった 一生は康太を見た 聡一郎も康太を見た 泣いてはいなかったが…… 諦めた瞳が哀しげに……翳っていた 康太は書店の中に入って行った 一生と聡一郎は少し離れた所で見ていた 康太は堂々と美術書を持つと……店の外に出て行った 係員が康太を取り押さえて……事務所に連れて行った 一生と聡一郎は呆然として出入り口の近くに座っていた 康太は中々連れ出されなかった 日が暮れて1台のベンツが停まった ベンツの中の人間は車の中から何処かへ電話を入れると通用口から康太は連れられてきた 車の中の男は車から降り、頭を下げると康太を受け取った そのまま帰ると想いきや…… 男は康太を殴った 「何故、こんな事をした!」 男は康太を殴り飛ばして地面に落ちると胸倉を掴み更に殴った 康太の唇から血が流れた…… 顔は腫れ上がり……ボロ雑巾みたくボロボロだった 「オレは信念を貫いただけだ!」 康太がそう言うと男は 「人様のモノを盗むのが信念か!」と殴った 息一つ切らさず男は康太を殴る 「立ち上がれ!」 男に言われて康太は立ち上がった すると即座に男は康太を殴り飛ばした 「立て康太!」 何度も立ち上がり殴られたが……もう立つ気力もなくると康太は動かなくなった 一生と聡一郎は康太の前に飛び出した 「殴らないで下さい…… 俺等が盗んで来てくれと頼んだんです」 一生は地面に頭を擦り付けて謝った 聡一郎も 「康太を殴らないで下さい 僕達が悪いんです!」 と謝った 男は「私は康太が曲がらない様に躾て来た 今までも、これからも康太は曲がらない! 曲がれば兄がそれを正す! 康太は間違った! だからそれを正した」 「康太は悪くない」 一生は叫んだ 「それでもだ! 盗みに行ったのは康太だ!」 「許して下さい…… 罪なら僕達が背負うから……」 聡一郎は泣きながら訴えた 「康太は君達が大切だから、敢えて罪を犯した 康太の遣り方は間違ってる だが、康太はそう言う生き方しか出来ない…… 裏切る気なら、2度と康太の目の前に現れないでやってくれないか? 共に逝くなら2度と間違わないで欲しい 選ぶのは君達だ!」 男は康太を助手席に乗せると、後部座席に一生と聡一郎を乗せた そして飛鳥井の家に連れて行かれた この時、一生と聡一郎は康太の為に生きよう……と決心した 兄に幾ら殴られても二人の名前を言う事はなかった 康太は一生と聡一郎を守ったのだ 一生は飛鳥井康太と共に生きようと心に決めた その日から一生は片時も離れず康太の側にいた 側にいれば康太の事が見えて来る 何時も元気に遊んで傷を作ってたのかと想えば…… 修行で……生傷が絶えなかったのだと……解った 冬の寒さでも…… 夏の暑さでも…… 康太は日々修行の日々だった そんな時……緑川慎吾が他界した 一生には寝耳に水だった 父親が……病気だなんて知らなかった 担任が父親が逝去した事を伝えると、康太が一生を抱えて、聡一郎に車の手配をさせて病院まで連れてってくれてた 病院に来て康太は…… 入り口から動かなくなった 「……康太? 親父の所に行こう……」 一生が言うと康太は首をふった 「オレは……人の生き死には関われねぇんだ オレが行けば跡形もなく…慎吾は消える… だからオレは行けねぇんだ 一生、慎吾に逢いに行け 最期のお別れを言って来い 聡一郎、頼む……」 聡一郎は康太に頼まれて一生を病室まで連れて行った   病室に行くと…… 父親の顔には…… 白い布が…被されていた 「一生、何故来たのですか?」 「…康太が連れて来てくれたんだ……」 「ぼんが……ぼんが連れて来て下さったのですね… 一生、ぼんは?」 「入り口まで一緒に来た」 一生が言うと綾香は走った 一生と聡一郎が慌てて綾香の後を追った 「ぼん!」 綾香はそう言い康太に縋り付いた 「綾香……ご苦労だったな 一生を寮に入れて、慎吾の看病や牧場の仕事に疲れたろ?」 「ぼん……一生が継ぐ日まで……あの牧場は潰せません… あの人の意思を継ぐのは一生です! そして慎一です! それだけが……私と慎吾の願いです」 「後は託された 後はオレが見届けてやる! お前は無理しなくて良い」 「………ぼん……私は許されません…… 私の結婚生活は人の苦しみの上に成り立っていました… あの人達の事を想えば…… 私は許されてはなりません」 「綾香!今更だ!今更言って誰が浮かばれる? それでもお前は慎吾が欲しくて添い遂げたかったんだろ? 罪を作ったのは慎吾だ…… 慎吾は慎一の手で裁かれる日を待っていた… その前に……事切れただけだ オレが見届けてやる だからもう忘れろ……」 綾香は首をふって泣いていた 泣き顔なんて知らなかった 一生の前では母親は気丈な姿を崩さなかったから…… 「ぼん……あの人が……後は任せてしまい本当に申し訳ありません……と泣いて息を引き取りました……」 「解っている 慎吾はオレの所に来たからな… 何時かお前が来るまで慎吾は転生はせずに待つと言ってた」 「あの人が……」 綾香は泣いた 一生と聡一郎はそれを黙って見ていた 「白馬から篠崎が来る 総ては朝宮と篠崎に任せた 葬送の儀に乗っ取って葬儀を終えた後、飛鳥井の菩提寺に慎吾は入れる 異存はないな?」 「御座いません」 「葬儀にはオレは出られねぇ… 解ってるな?綾香…」 「解っております ぼんは、次代の飛鳥井家真贋… 慎吾はもう既に継いだも同然と申しておりましたから……」 篠崎と朝宮が白馬から到着して、康太の姿を見て深々と頭を下げた 大の大人が康太に頭を下げる様を……一生と聡一郎は見ていた 篠崎は康太を抱き締めると泣いた 「青磁…慎吾の意思を子に叩き込んでやってくれ」 「解っております 慎吾が生前から言っておりました… ですが今は……盟友の死を…哀しませて下さい…」 「オレは行けねぇからな オレの分も慎吾に逢ってやってくれ…」 篠崎は康太を抱き締めて泣いた 1番逢いたいのは康太なのに…… 真贋と言う定めに…… 慎吾を見送る事さえ叶わない…… 「解っております真贋… 貴方の分も……私が見送ります」 「後は頼むな…」 篠崎は綾香を支えると慎吾の病室に向かった 康太は朝宮に 「総て頼むな」と声を掛けた 「解っております! 貴方は……帰られますか?」 康太は頷いた 「朝宮が送って行きましょうか?」 「いい…瑛兄が来てくれるかんな それより一生と聡一郎を連れて行ってくれ」 「解りました」 朝宮は一生と聡一郎を連れて病室に向かった 一生は何度も何度も……振り返り康太を見た 康太は哀しそうな瞳をして…… 一生を見送った 一生は想った 哀しまなくて良い…… 親父の事で哀しまなくて良い…… と、心の中で叫んだ 康太は葬儀には出なかった その変わり康太の兄の瑛太が葬儀に参列した 綾香も篠崎も朝宮も瑛太の姿を見るなり、頭を下げた 瑛太は深々と頭を下げると 「我が弟、飛鳥井康太の名代で参りました!」 と告げて慎吾に康太の分も別れを告げた 一生は……茫然自失でそれらの日々を送っていた 何故? そればかり…… だった 瑛太は葬儀が終わると一生を呼び出した 「君は……慎吾が病気なのを知らなかったでしょ?」 瑛太の言葉に一生は頷いた 「日々弱りゆく姿を……慎吾は見せなかった 癌でした……最期は…面影ない程に痩せ細り…… ですから棺の窓を開けてないのです 康太から預かってます」 瑛太はそう言い胸ポケットから封筒を出した 封筒を受け取ると封を破いた 中を見ると写真……だった 痩せ細り……弱った父親が写真に写っていた 慎吾の手には……一生の写真が握られていた 慎吾は一生の写真を胸に抱いて………泣いていた 一生はその写真を見て……泣いた これは誰ですか? もう……元気な頃の父親じゃなかった 痩せて頬はこけて……… 目は落ち込み 別人だった ………こんな親父見てたら…… 俺は学校を辞めたかもな…… どの道……父親を亡くした今 桜林に通えるとは想ってもいなかった 金持ちの通う学校 修学館 桜林学園の授業料が払えるとは想ってはいなかった 「康太から一生を抱き締めてくれ……と頼まれた」 瑛太はそう言い一生を抱き寄せた 暖かい……その腕に…… 一生は泣いた 何故だか解らないが…… 泣いてもいいんだと許された気分になった 優しく抱き締められ… 号泣した 意識を手放すまで………泣いて 一生は瑛太の胸の中で倒れた 瑛太は綾香に告げて、一生を康太の所へ連れ帰った 飛鳥井の家の康太の部屋に運び込むと、ベッドに寝かせた 「悪かったな瑛兄」 「君は行けません…… 私は君の名代で君の分も見送りました ですから……安心して下さい」 「……瑛兄……」 瑛太は康太を撫でて部屋を後にした 康太は寝ている一生を起こさない様に PCを触っていた 静まり返った部屋にPCのキーボードの音が響き渡った 一生は目を醒ますと…… 見知らぬ部屋だった 一生は周りを見渡した すると康太がソファーに寝そべり、物凄い集中力でPCのキーボードを弾いていた こんな康太は見た事なんかなかった 康太は一生の存在に気付くとニカッと笑った 「久し振りだな赤龍」 いきなり言われて……一生は訳が解らなかった 赤龍……自分の存在を知ってる人がいる…… 脅威だった 「解らねぇのかよ?」 康太はそう言い嗤った 「………誰?……」 「おめぇの弟を奪った奴……」 「………え?炎帝……嘘……」 康太の傍に弟の存在はなかった…… 炎帝と青龍は一緒にいるとばかり想っていた 「………青龍は?……」 「青龍の記憶は今世は封印した……」 「……何故?」 「……オレは永らく続く転生に疑心暗鬼になっていた 前世の記憶があるからこそ愛されてるんだと疑う様になった…… だから今世は青龍の記憶は封印した……」 「……青龍は?」 「榊原……伊織……」 え……青龍が榊原? 一生は康太をじっと見ていた 「……記憶をなくせば……オレは嫌われるらしい……」 康太は儚げに笑った 「弟は!………青龍はおめぇだけを愛してたじゃねぇかよ? おめぇだけを愛して……人の世に墜ちたんじゃねぇのかよ?」 「………今世は……どうなるかオレも解らねぇ……」 一生は康太を抱き締めた 「おめぇの傍に……墜ちて来た 弟の真意を確かめる為に…… 俺は人の世に墜ちたんだ…… だが青龍と炎帝が一緒にいねぇから……解らなかったじゃねぇかよ!」 青龍と炎帝は一緒にいると想った まさか……康太が炎帝だなんて想わなかった…… 何故?気付かなかった?? 今世の康太は小さかった…… 炎帝はそんなに小さくはない それが炎帝の存在を気付かせなかったのか? 「………本当に炎帝か?……」 「だろ?今世のオレは小さいからな……分かり難いか…」 「……あんでそんなに小さいんだよ?」 「前世で死んだ瞬間……青龍と抱き合って輪廻の輪を潜ったら…… 魂が潰れたんだよ……で、今世はこんなに小さい…… まぁ、炎帝はデカくても……青龍には嫌われたてたかんな……」 「愛されてたんだろ?」 「………恋人同士じゃなかった オレは青龍に嫌われていた 抱かれていたけど……愛されてた訳じゃねぇ……」 一生は康太を掴んだ 「青龍は炎帝を愛してるから人の世に墜ちたんじゃねぇのかよ!」 「オレは…青龍しか愛せねぇ……」 「…………あんで封印なんてしたんだよ!」 「封印してもオレを愛して貰いたかった…… オレだけを愛して見つけて欲しかった……」 康太はそう呟き……泣いた 人として……永らくの転生を続けた 幾度生まれ変わっても…… 青龍は愛してくれた でも……その思いは……転生前の想いがあるから…… そう思ったんだ だから記憶を封印した 記憶を封印しても…… 炎帝を見付けて…… 炎帝だけを愛して欲しかった 記憶があるからじゃない…… 愛してるんだと……想いたかった 炎帝の想いが痛かった 炎帝の青龍を愛する一途な想いが……痛かった 「榊原伊織……アイツが青龍なのか……」 「青龍……そのものだろ? 凜として前を向き歩く姿は青龍しかねぇじゃねぇかよ… オレの蒼い龍だ……」 「ならお前を愛すに決まってる! お前を愛さずに誰を愛すって言うんだよ!」 一生は怒っていた…… 青龍は炎帝を愛していたから……人の世に墜ちた そう思っていた…… 「お前は青龍と付き合ってなかったのかよ?」 「恋人として?」 「そう……恋人じゃなかったのかよ?」 「………青龍には妻がいた……」 「……っ!………」 青龍は結婚していた 一族一の美人と謳われた美女と結婚していた 「………ならお前達は……恋人同士じゃなかったのかよ?」 「………赤龍……奇跡だったんだよ…… 青龍が人の世に堕ちる時に現れて……一緒に堕ちてくれた…… オレは……奇跡だと想ってる」 「……奇跡かなんか知らねぇけど! 青龍はおめぇを愛していたんだろ? 愛してます……とお前に告げる青龍を見て来た…… 俺の知らねぇ顔して…… お前に向ける瞳は……愛してる者の瞳だ ………炎帝、俺はお前は黒龍と付き合ってるんだと想っていた……」 「黒龍は、我が友だ! 黒龍は絶対の存在! 愛とか恋とかで換算出来ねぇよ」 「何時から青龍が好きだったんだよ……」 「黒龍が初めて金龍の家に招いてくれた時 一目惚れだ……オレはあんなに美しい龍を知らなかった」 「以来……青龍に恋してたのか?」 康太は頷いた 榊原伊織が我が弟……青龍なのか…… 一生は初めて知った それ以来……何かにつけて青龍……嫌、榊原伊織を見ていた 朝早く生徒も来ない時間に、下駄箱に行くと必ず榊原伊織がいた 生徒会執行部 部長と言う肩書きをフルに活用して 榊原は飛鳥井康太の下駄箱のラブレターを排除していた 「お疲れ!旦那」 一生が側に行くと榊原は迷惑そうな顔をした 「何ですか?緑川」 「康太さ、高等部の奴に目をつけられてさ…… 体育館に連れ込まれそうになったんだよ 本人はリンチに合いそうだと言ってたが……俺はレイプだと想うんだ」 一生が言うと榊原の瞳が光った 「高等部の誰ですか? 風紀を乱す奴は許してはおけません!」 「高等部、1年C組の浅野充って奴」 「解りました!風紀を乱さない様に警告しておきます」 「旦那、今日もすげぇな……」 康太の下駄箱には入りきらないラブレターとプレゼントの山だった   「目に余りますからね!」 名目が必要なのだ…… 飛鳥井康太を必要以上に避けて…… それでいて誰のモノにもならない様に……排除する 榊原も康太が好きなのは伺えた 一生は弟を……唯見ていた 何も言わず……何時も見ていた だから榊原が誰を愛してるか……解っていた だが榊原は認めたくはないのだ…… 康太と擦れ違う 榊原は冷たい瞳で康太を見た 康太はその瞳を見て……傷ついた瞳をした 擦れ違って離れると榊原は康太を振り返る 愛しい……焦がれた瞳で…… 榊原は康太を見ていた 一生は榊原の想いが痛かった 自分の欲望で穢す事を避けて……寄せ付けないているのだ 康太は光り輝く存在なのだ 榊原が康太に似た存在を抱き締める   康太はそれを見て……泣いていた どんなに辛い修行でも泣かない康太が…… 唇を噛み切り……涙を流していた 榊原の………想いは何時も…… 康太に向かうのに…… 榊原が手にしてるのは康太ではなかった 康太はそれを見たくなくて背を向ける 一生はそれを側で見て…… やるせなかった 康太が満面の笑みで走る それを榊原は目で追う 康太はベンツの男目掛けて飛び付いた 男は康太を抱き上げ、当然のような顔をして…… 康太の頬に口吻る 榊原はそれを嫉妬の焔を燃やし……見ていた 誰かに盗られる位なら…… 自分のモノにしておけば良かった…… 後悔に苛まれ…… 榊原は余計に康太に辛く当たった 肩で風を切って歩く康太を目で追うのに…… 榊原は康太を傷付けるしか術はなかった 「本当に君は……」 侮蔑の瞳で見られて…… 康太は今世は諦めた……と呟いた 近くに行くのを諦めた…… 青龍の側には……行けねぇ…… 「炎帝……側に行けよ! 封印なんて解いて……愛して貰えよ…」 康太は力なく首をふった オレは青龍に愛されてぇんだ…… 何もかも消し去っても……あれは青龍だ 青龍にはオレなんて必要ないのかもな…… 榊原の前で泣けば……榊原はオロオロになるのに…… 康太は榊原の前では泣かないから…… 辛辣な言葉が……榊原の口から吐き出された 好きなのに…… 康太を誰にも渡したくないのに…… 榊原は心とは裏腹な態度を取る   なんて不器用なんだ…… 一生は青龍の想いが痛くて……泣いた 青龍…… お前……炎帝を愛してるから人の世に堕ちたんだろ? 炎帝しか愛せないって言ってたじゃねぇかよ…… ならは側に行けよ…… こんな二人…… 見ている方が辛いんだよ! 一生は自分の無力さを恨んだ 一生は康太が寮に入るのを聞くと 榊原にチャンスを渡した 「旦那」 迷惑そうな顔した榊原が一生を見た 「何ですか?」 「康太が寮に入るんだってな 康太と同室者になりてぇ奴は沢山いるもんな 康太の寝顔や匂いを嗅げるんだもんな…… 康太は警戒心もねぇしな…… 誰かのモノになるのも時間の問題かもな」 青龍、おめぇ…炎帝を愛してるじゃねぇのかよ? 誰にかに渡しても…… お前は狂わないのかよ? 榊原は一生を睨み付けた 「飛鳥井康太は四悪童 執行部の僕が面倒見る様に総監に言われてます!」 榊原は言い切った その瞳には覚悟が見えた 一生は炎帝の側に行け…と心から想った 「康太の同室者は旦那か 康太を頼むな旦那」 榊原は何も言わず去って行った 赤龍が人の世に墜ちた本来の目的は、青龍の真意をこの目で見る為……   青龍…… そんなに惚れてるのに…… 康太の側に行かないなんて…… お前本当に……青龍だな 青龍は……結婚していた… だが両親は……青龍の結婚は失敗だった…… と落胆していた 青龍とはやって行けない……と離縁状を送り付けられた 金龍はそれを見て…… やはりか……と呟いた そして人の世に墜ちた青龍が、直ぐに…… 魔界に戻って来ると信じて疑わなかった   あの青龍だから…… 誰といてもダメだと……金龍は言った 10000年……人の世で転生を繰り返す……その姿を金龍は見守っていた 口には出さないが…… 青龍は自慢の息子だった 人の世に墜ちた今も…… 金龍の自慢の息子は青龍だった ある日突然……青龍は人の世に墜ちた 追放された訳でもないのに…… 青龍は人の世に墜ちた 閻魔は……青龍は自らの意思で炎帝と共に人の世に墜ちた……と言った 金龍も銀龍も………信じられずにいた 兄弟も親戚も閻魔も……… 何故? 青龍が人の世に堕ちたのか…… 理解不能だった 炎帝と…… 恋人同士だったのか? と言う疑問が常にあった 赤龍も……弟が何故? その疑問は消えなかった 人の世に堕ちて…… やはり青龍は青龍で笑えた 殴りたい程に不器用で…… 青龍だった 康太と同室になっても榊原は煮詰まる一方で一生はヤキモキした 二人が結ばれた日 黒龍が姿を現した 「赤いの!どうよ?弟は?」 「兄貴……俺は何処までも青龍で殴りたくなったよ」 「不器用だからな……あの男は……」 「俺は……何でも器用にそつなくやるのが青龍だと想っていた……」 「………俺もなそう思っていたさ…… 青龍は結婚していた時、妻を抱きもしなかったらしいぜ…… 初夜もしねぇ男なんて要らない……逆上して騒ぎ立ててた 青龍はインポだって、あの女……言ってたのに……青龍の子が産まれたと認知を迫って来ている 親父殿が対応してる」 「………結婚生活は最初から破綻してたのかよ?」 一生は言葉もなかった 「妻の股を開いて観察したのに……勃起すらしなかったらしいぜ…… 炎帝には底なしで犯りまくってるのにな…… どれだけ愛してるんだよ?って話だよな?」 「……不器用だわ……」 「それも俺等の弟だ……」 「青龍は今も俺の誇りだ!」 「どうだ?炎帝は幸せそうか?」 「俺は最初炎帝が解らなかった…… 青龍と共にいるから、そのうち逢えるんだと想っていた まさか……命を懸けて護りてぇアイツが炎帝だとはな…… 俺は炎帝を見ていなかったのかな? 側にいれば……炎帝の本質が見えて来る 俺は魔界にいる時に……炎帝の何を見て来たんだよ?と想って腹が立った」 「炎帝を頼むぞ…… 脆い部分を必死で隠して奮い立ってる それが炎帝だ…… 血を吐いて倒れても炎帝は立ち止まらない…… 炎帝が立ち止まるとしたら……青龍が止める時だけだろうな… 炎帝は青龍と言うストッパーを見付けた その存在は……もう換えがいない…閻魔はそう認識した」 「…そっか……炎帝は閻魔の弟だったな……」 今更ながらに一生は呟いた 「赤龍……」 黒龍は赤龍を抱き締めた 「兄貴……」 「炎帝を頼むな弟よ……」 「おう!炎帝と青龍を見届ける その為だけに俺は来たんだからよぉ!」 黒龍はその言葉を受けて消えた 龍は逢おうと願えば……叶わない事はない 如意宝珠を手にしてれば……の話だが…… 青龍は如意宝珠を魔界に置いて来た 何も持たぬ男として人の世に墜ちた 湖に飛び込む瞬間、如意宝珠を黒龍の家に飛ばした そして人の世に堕ちて行った 龍として……人の世に堕ちる自分を捨てたのだ…… 青龍としてでなく…… 唯の男になって……炎帝と共に逝ったのだ…… 青龍の覚悟だった 炎帝と生きる青龍の覚悟…… 龍を捨てて…… もう魔界に還る気はないのだろう…… 一生は青龍の想いに涙が止まらなかった 康太の側にいる榊原は何時も優しい顔で、康太の側にいた 赤龍が女神の泉で見た…… あの笑顔が間近にあった 青龍としての記憶はない 榊原伊織として接する 記憶の封印を解かなくても良い 間近で……やはり青龍は炎帝を愛するのだと解ったのだから…… 兄ではなく 友として生きよう…… 友として我が弟の果てを見届けよう そう心に決めた その日から…… 見守って側にいた 「一生、どうしたんですか?」 振り返ると榊原が立っていた 「どうもしねぇよ?」 「君が大人しいと……体調が悪いのか気になります……」 「あんだよ?それは」 一生は笑った 「君は倒れるまで我慢しますからね……」 「………ちえっ……」 唇を尖らせると榊原は一生の横に座り頭を撫でた 「こんな風に青龍と話せるなんて想わなかった……」 「………僕は君を嫌ってましたからね……」 「そう!こんな優しいお兄様の事を、おめぇは嫌ってたんだからな!」 「………」 「………おい……黙るな……」 「優しいかは知りませんが、軽薄に見えたんですよ 君が僕の上辺しか見てなかった様に、僕も君の上辺しか見てなかったんですね」 「………俺等は距離を取り過ぎてたのか?」 「僕は炎帝に初めて逢った日に一目惚れしたのです ですが……認めたくなかったので……家族とも距離を取りました…… 金龍の誇れる息子でいたかったのです…… ですから本心を知られる訳にはいきませんでした……」 一生は驚愕の瞳で榊原を見た 「……お前とこんな話し出来るなんて思いもしなかった……」 「僕も君と……本音で話す気はありませんでしたね」 「炎帝を、愛していたのか?」 「ええ……炎帝だけ愛していました…… でも青龍には妻がいました…… 妻を娶れば……炎帝を忘れられると想ったのですがね… 妻を抱く気にもなれませんでした…… 強引に迫られて……女はダメになりました…… 誰も代わりにはなれない…… 誰も炎帝の代わりなんて無理でした……」 「俺は何故お前が炎帝と人の世に堕ちたのか……知りたかった まさか……お前が何もかも捨てて逝くとは想いもしなかったからな……」 「僕は炎帝が手に入るなら……龍で在る自分も要りませんでした……」 「……青龍……」 「炎帝をなくしては生きられないのです 炎帝のいない世界で生きる気はないのです… 共に……それしか願ってません」 「………幸せになれ青龍 炎帝を幸せにしてやってくれ それが炎帝を見守って来た黒龍に報いる想いになる」 「……ええ、解ってます兄さん」 榊原は優しく微笑んだ 「おーい!伊織!腹減った!」 榊原は立ち上がり康太の側に行った 抱き上げて唇に口吻る 康太は嬉しそうに榊原の首に腕を回した 「伊織、愛してるかんな!」 「ええ。僕も愛してます奥さん」 炎帝が幸せなら…… それで良い 青龍が幸せなら…… それで良い 2人を見守って逝くと決めた 2人の側で……2人を見守って逝く 共に在ろう 共に………… 君へと続く場所に逝くから…… 「一生!来いよ!置いてくぜ!」 「おい!待てよ!」 一生は駆けて行った 共に在るために………             END 緑川一生ver、end

ともだちにシェアしよう!