【兵藤貴史】 『よぉ！朱雀！あに不景気なツラしてんだよ！』 太陽の様に輝く存在…炎帝 朱雀は炎帝が神々に創られた存在なのを知っていた 『炎帝…お前……人の世に堕とされるのか？』 『らしいな……仕方ねぇよ オレは全部無にしたかんな…』 『何ともならないのか？』 『オレを嫌ってる奴は多い 存在するな……と言う奴は多い オレは魔界の脅威だかんな仕方ねぇな…』 『……炎帝……』 炎帝は朱雀を抱き締めた 『オレと口をきいてくれてありがとう…… オレは忌み嫌われる存在なのに…… 黒いのと赤いのとお前達は何時も傍にいてくれた…… また飲みに行きてぇが……んな時間はねぇかんな……』 炎帝は哀しげに笑った 朱雀は唖然として……炎帝を見送った 魔界で炎帝を見た……… 最後の姿だった 黒龍や赤龍や玄武、白虎達と良く飲みに出かけた 玄武が何時も負けて悔しくて、またリベンジしたがって、飲みに行く 白虎は玄武に辞めとけ……と言うのに、酒豪を豪語する玄武のプライドに掛けて、リベンジをしていた 今の所……勝ててはいないけど…… 時間が出来ると良く連んで飲みに出かけた 個人的には……仲良くはなかった 一緒に出掛けたり……と言う事は皆無だった 何故なら…炎帝の傍には常に黒龍が着いていたからだ 絶対の存在 絶対の絆 絶対の愛で黒龍は炎帝を護っていた 朱雀は炎帝と黒龍は付き合っているのだと想った だが……… 炎帝が魔界から消えて閻魔の口からの伝令は 『四神　青龍が…炎帝と共に人の世に墜ちました…』 と言う突拍子もないモノだった 「……え？青龍……何故？」 2人は付き合っていたのか？ 朱雀は赤龍に問い掛けた 「おい！赤いの……お前の弟…炎帝と付き合ってたのかよ？」 赤龍に問い掛けても…… 赤龍も青天の霹靂だった 「……嫌……知らねぇ…… 炎帝は黒龍じゃねぇのかよ？」 「…だよな？何故？青龍？」 朱雀は理解不能で、考える事すら拒否りそうになった 赤龍も同じだった 玄武も「……青龍殿を欠いて四神は成り立たぬだろ？」と弱気な発言をした 白虎も「…青龍殿は如意宝珠も置いて逝かれた……とか もう魔界には戻らぬ覚悟なのであろうて……」と嘆いていた 四神の頭……青龍を欠いた瞬間だった 半世紀　四神は青龍をかいた 継ぎの青龍も現れて来ない 青龍こそが法皇になる存在と詠われていた ゆくゆくは青龍こそが法皇になるだろう……と詠われている存在だった 魔界には長年、法王、法皇を欠いていた 皇帝閻魔も冥府に去り……決定的な存在を欠いていた そんな時に産まれたのが青龍だった 崑崙山の八仙は予言した 混沌とした魔界を規律で導く存在が産まれる 魔界を正すは皇帝になれる青龍、その人……だと 青龍の結婚が法皇の条件だった 結婚した青龍は法皇になるべく存在だった だが……その結婚生活に暗雲が立ち籠めた状況で……保留になっていた 青龍は炎帝と人の世に堕ちる時に…… 総ての資格を捨て去った 自分はもう法皇を継ぐ者ではない……と如意宝珠を黒龍の家に弾け飛ばして何も持たぬ存在になり人の世に墜ちた 朱雀は青龍の覚悟をひしひしと感じていた 何もかも棄てる…… 簡単には出来る筈なとない…… 相当の覚悟の末に青龍は決めたのだ 何者よりも炎帝と生きる事を決めたのだ…… 朱雀は泣いた 青龍…… 何時も一緒にいたのに…… 俺はお前の何も見てなかったんだな…… お前には感情すらないのだと想っていた 冷徹な青龍 確実に役務を執行する青龍に情けも……感情もない そう思ってた なのに…… 総て捨ててしまえる程に…… 炎帝を愛していたんだな 俺……知らなかった 多分……黒龍と閻魔以外は……知らなかったんだろうな 誇り高き龍を捨てて 何も持たない男になって良い程…… 炎帝を愛して…… 共に逝ったんだな そんな感情……お前にあるなんて知らなかった 俺達…お前の何を見て来たんだろう…… 玄武なんて寝込む程に驚いていた 「青龍殿を欠いた四神を考えるのが怖い……」 とまで言わしめているのに…… 四神の絶対的存在 四神の絶対的秩序 お前を欠いて……四神は成り立たねぇじゃねぇかよ！ 白虎は青龍を欠いた魔界がどうなるのか……心配していた 「朱雀、我はこの魔界の行く末が心配だ 青龍殿と言う絶対的な存在で護られていた秩序が…… 青龍殿を欠いて……どう狂って行くか……考える事すら怖い」 白虎は魔界の行く末を案じていた 案の定…… 青龍を欠いた魔界は統制が取れにくくなり…… 好き勝手やる存在が増えて衝突は日常茶飯事となった 貴族制度……なんて 炎帝が聞いたら卒倒する様なモノまで出来て来て もう閻魔だけの力だけでは…… 抑えるのも無理になって来ていた 四神の結界も日々弱まって行く 魔界を護るバランスが崩壊するのも……時間の問題だった 閻魔は炎帝を魔界に呼び戻す算段をしていた だが……未だに炎帝の存在は 脅威であり 絶対的な人気もあった 否定する者と 支持する者と分かれていた 朱雀は閻魔に 「俺を人の世に堕としてくれ」 と頼んだ 玄武と白虎も口添えをした 「朱雀を欠いたら……四神は終わったも同然 許すと想いますか？」 閻魔は玄武と白虎の目の前で、そう言った 玄武と白虎が激怒する 朱雀は「それでも聞いて貰わねばならぬ」と談判した 「青龍を欠いて四神事態の存続は無理だ ならば、今すぐ青龍を魔界に連れ戻せ！」 「………それは無理です 青龍が炎帝と離れるとは…想いません アレはどんな手を使っても炎帝の傍にいると想います」 「………今は何も持たぬ人の子だろうが！」 「炎帝と手に手を取って、消滅する算段をされたら…… 私は手を出せない…… 私は弟を魔界に戻す気だ！ 魔界に必要なモノは絶対的な存在 私は炎帝をそこに据える 青龍殿は晴れて炎帝を妻に娶って貰うしかあるまいて！」 朱雀は言葉を失った 白虎や玄武も……言葉をなくした 「……青龍の妻……ですか？」 「………どう見ても炎帝が挿れてる側には見えません……」 「………」 想像したくないんですけど…… 「炎帝の初めての相手は青龍です 挿れて傷物にした責任は取って貰います 我が弟の婿に収まって炎帝を妻に娶らぬと言うなら…… それなりの報復をしてやります！ でも人の世に墜ちたと言う事は両思いなのでしょう？ ならば、弟を妻に娶って貰い、青龍も絶対的な存在に収まるしかあるまて！ 私は炎帝を嫁に出す覚悟は出来てます！ 後は青龍の気持ちを確認すれば、その算段が出来ます ですが……今の青龍は如意宝珠を持たぬから……問い掛ける訳にもいかぬ……」 閻魔は残念そうに言っ 朱雀や玄武、白虎はあからさまな台詞にクラクラしていた 挿れられた……傷物……そんな台詞が閻魔の口から出るなんて想像すらしなかった 閻魔の横にいた黒龍が 「継ぎの転生で確実に弟に如意宝珠を渡す！ そしたら本人に確認して来るつもりだ」 と言い閻魔の肩を抱いた 「黒龍……頼めますか？ 私は炎帝を魔界一幸せな花嫁にしてやりたい……」 「青龍は炎帝と結婚したいと言うに決まってるさ！ 誰よりも炎帝を愛してる弟なら言うと俺は信じてる」 黒龍は閻魔にはそう言ったが…… 相手は融通の利かない青龍だから不安はあった そもそも……炎帝の片想いだった筈だ 何時から付き合っていたのだ？ 確かめたい想いは黒龍とて同じだった 朱雀は閻魔に 「俺を人の世に堕としてくれ 炎帝は転生する頃合に入った 赤龍も人の世に堕ちると聞いた 俺も人の世に堕としてくれ 青龍の真意を……知りたい 青龍が炎帝を妻にするなら、四神は祝福する！ 異存がある奴は四神の敵と見なす！」 「解りました！ 人の世に堕ちて、青龍と炎帝と共に生きなさい そして継ぎの転生に一緒に還って来て下さい！」 「御意！」 朱雀は閻魔の前に膝を折ると忠誠を誓った 湖に出向くと赤龍が湖にいた 飛び込む瞬間 一緒に飛び込み…… 人の世に転生した 飛鳥井の家の裏に産まれた 人の世の名前は 兵藤貴史 政治家の一人息子として産まれた 物心着く頃から…… 飛鳥井康太と共にいた 母親同士は女学校時代からの友だった 永遠の友達と互いを信頼して付き合っていた 趣味も同じで無類の時代劇好き 何時も一緒に観劇に花を咲かせていた 社会人になっても…… だが、村瀬玲香はある日突然……結婚した 家族の反対を押し切って…… 家を出て結婚した 医者として将来を約束されたも同然な秀才だった 家族は家業の医者を継ぐと想っていた なのに……突然……玲香は結婚して…… 美緒の傍から離れて行ってしまった 美緒は叔父の議員の秘書をしていた 三木敦夫、彼の秘書をしていた 婚期を逃してもなんのその 男よりやり手な美緒は政界では有名な存在だった 三木敦夫を 生かすは秘書の美緒だと謳われる程に有名なやり手だった 兵藤丈一郎はそんな美緒の気質は政治家の妻には持って来いだと想っていた 丈一郎は美緒に息子と結婚してくれ！ と見合いの席を設けた 美緒に取って結婚はそんなに魅力的ではなかった 美緒は結婚しても良い その代わりに条件がある と結婚に条件を付けた 結婚の条件と言うのが 「飛鳥井家の傍に家を建ててくれるなら！」 だった 兵藤丈一郎は爆笑した その理由に更に気に入られた 「お前ほど肝の座った奴なら息子を引っ張って行けるな」 丈一郎は危惧していた 昭一郎は押しがなかった 妻となる存在こそ！昭一郎を引っ張っていける存在でなくばならない……と 丈一郎は美緒の条件を飲んで 飛鳥井の家の裏に家を建てた 「玲香！我はやはり玲香と共に海老様を見たいのだ！」 「……美緒！我も美緒と海老様を見たかった！」 硬く交わされた友情の炎は再び舞い上がった 晩婚だった美緒は玲香の4回目の妊娠と重なった 玲香と美緒は仲良く時を同じくして妊娠して 仲良く分娩室のベッドの上に乗って、同時に出産した 腐れ縁はオギャーと生まれた時から始まったと謂っても過言ではなかった それが兵藤貴史と飛鳥井康太だった 物心着く頃から飛鳥井康太と兵藤貴史はいた 貴史は康太が炎帝だと知っていた 綺麗な焔を身躯から上げていたからだ その生命力の美しさに目を惹かれる 康太は兵藤を見てニカッと笑った あの日……ニカッと笑って背を向けた……時の様に… でも聞けずにいた…… 確信はあるのに……聞くのは怖かった 共に過ごす 幼稚舎時代は……嫌と言う程に……悪目立ちした 朝、幼稚舎に行くと待ち構えているからだ…… 「みお！きょうも、うちゅくちいな！」 「あら、康太、解ってるわね！ うちの子になれ康太！ 貴史と変わるがよい」 「たかちがちゅねりゅからな、やら！」 康太はそう言いガハハッと笑う ドナドナされそうになり……兵藤は何時も……またかよ！と想っていた 「たかち！あちょぶ！」 「いゃら！みよこちぇんちぇーにおこられりゅ」 「みよこがきょわくてひるねができりゅか！」 お昼寝は……何時もあるよぉ～ 兵藤は想うが……言い返さない 口では負けるから…… 「たかち、おまえはきだいのちぇいじかになるぞ！」 「……きらいなちぇいじか？ いやら、きらわれものにはなりたくにゃい」 兵藤は逃げて行く それを追い掛けて、追いかけっこになる 一生や聡一郎、慎一も参加して、もぉ何だか解らなくなるのが何時もだった 夕陽に向かう康太の横顔が綺麗でみとれた 康太を好きだと想った 片想いなら…… 遥か昔からしていた 叶わぬ想いなのは知っていた 炎帝には青龍がいるのだから…… それでも兵藤は康太の傍にいたかった 「こうた……ちんちんだしたままあるくなよ…」 給食を零してパンツまで変えられる 大人しく着替えられない康太はちんちんを出したまま暴走をしていた 「たかち！おまえもにゅげ！」 ズボンを下ろされて……ちんちんが丸出しになる 「やめろ！こうた！」 悪ガキに泣きながらズボンを上げる みよこ先生は兵藤のズボンを戻してやり 「康太君！めっ！」 と怒られるのだった それでもへこたれないのが康太だった 「みよこおこりゅな、うつくちいかおがだいなしだじょ！」 兵藤はコイツ……タラシだと想った 悪ガキでも憎めないのが飛鳥井康太だった 幼稚舎も初等部も一緒に過ごした 飛鳥井康太と共に…… 毎日が大騒ぎだった それすら……兵藤貴史には愛しい日々だった 康太と共にいたい 絶対的な存在、それが康太だった 兵藤の家で遊んだり、家に帰っても何時も一緒だった 距離を取ったのは…… 初等部の5年頃 康太の甘い匂いに…… ちんちんが硬くなった 兵藤に取っては……衝撃だった だが、康太を切り捨てる日が来るなんて…… 本人すら……解っていなかった 中等部に入ると…… 生徒の中に……青龍を見付けた 何処から見ても青龍だった なぜ今世は炎帝と離れているのか……解らなかった 中等部に入ったばかりの頃 康太に問い掛けた 「お前、炎帝だろ？」………と。 「解ってたのかよ？ リアクションねぇかんな知らねぇと想ってた」 「お前、青龍と人の世に墜ちたんだろ？ なら何故青龍はおめぇと一緒にいねぇ？」 「記憶を封印してあんだよ」 「何故！」 「永らくの転生でオレは疑心暗鬼になっていた……」 記憶をなくしても愛してもらえるか…… 知りたかった……と康太は答えた 「榊原が青龍だろ？」 「解るのか？」 「四神の一人を見間違えるかよ」 「そう……榊原伊織がオレの蒼い龍だ……」 愛しい……恋い焦がれた瞳で康太は遠くを見つめていた 「傍にいてくれねぇのに？」 「オレは青龍を見てられれば……それで良い」 「今世は振り向かないかも知れねぇのに？」 「それでも……オレは青龍がいてくれるだけで良い……」 兵藤は康太を押し倒した 強引に歯列を割って舌を挿し込み、康太の口腔を犯した 服の中に手を差し込み…… 立ち上がった乳首に触れた 康太は抵抗した 「……ゃ……やめろ！貴史！」 青龍以外に触られたくなかった 青龍だけしか欲しくなかった…… 振り向かれなくても…… 嫌われても…… 青龍だけしか欲しくなかった 康太はそっぽを向いて……泣いた 「……ぅ……ぅぅ……」 康太の唇から嗚咽が漏れる 兵藤は康太から離れた 「……2度と……俺に近づくな！ 近付けば犯す！厭なら近づくな！」 兵藤は言い捨てた 康太は兵藤から離れて…部屋を出て行った 康太と距離を取った兵藤に美緒は喧嘩でもしたのか？と尋ねた 兵藤は何も答えなかった 美緒は知っていた 兵藤の康太への想いを…… でも、産まれた時から政治家になる道を持つ息子を…… 何も言わずに見守って来た 政治家になれば、男の恋人など論外…… 何時か壁に衝突するのは…時間の問題だった 中等部の2年になる頃には兵藤貴史は生徒会で手腕を発揮していた 2年で、生徒会長に押されて、会長になった 兵藤が生徒会長になる頃 飛鳥井康太の人気も絶大なものになって来ていた 生徒会長になる以上は…… 生徒会と反発する存在と距離を取る 兵藤貴史に取って名目は必要だった 名目があれば……康太に近寄る事もなくなる 距離を取っても忘れられないのは解っていた 兵藤貴史にとって飛鳥井康太は唯一無二の存在だったから… 遥か昔から……炎帝だけを想って生きてきた やはり好きになるのは…… 人の世に墜ちても同じ奴だとは……笑える 兵藤は康太を呼び出した 康太は予感がしていた 兵藤が自分を切る時が来たのだと……解っていた 「俺、生徒会長に任命されたんだ」 「おめでとう」 「だから今後一切、俺に話し掛けるな！」 康太は頷いた 「お前と一緒にいると生徒会長としての品位も落ちる！」 悲しい瞳が兵藤に向けられた 心臓を抉り取られる様な痛みに襲われる 兵藤は康太に背を向けた 愛してる康太…… 愛してる炎帝…… 遥か昔から…… 好きになるのは……お前だけだった だけど、俺には……お前を担えるだけの器はねぇ…… 傍にいて……一緒に飲んだり騒いでいられれば…… それで良かったんだ…… 康太…… これからの時間はお前とは重ならない これからの時間は…… お前を影から見て……行こうと想う だから泣くな…… 泣くな康太…… お前を虐める奴は排除してやる…… それが俺のお前への愛だ 康太…… お前の笑顔を護らせてくれ…… 生徒会のトップに君臨して全校生徒を管理すると言う名目は必要だった 「清家、榊原、3年の生徒会役員が必要以上に四悪童を取り締まってる 行き過ぎると飛鳥井康太が暴走するぜ アレを止めるのは至難技！ ガス抜きは必要だが行き過ぎは暴走を招く 追い詰めるより共存する方法を導き出せ！」 飛鳥井康太に危害を加えそうな輩は早々に排除する 幸い、生徒会には使える輩は多かった 清家静流と榊原伊織はその壮たる役員だった 自分は表には一切出ない 役員を動かして、粛正と秩序を護る 秩序を護るには恰好の生徒がいる！ 秩序と規律を護る青龍以外には考えられなかった 学園の秩序は執行部の鬼が担う 兵藤は、そうして 生徒会を回していた 時々、表に出る時は隙を見せず、完璧な電子頭脳を知らしめる 何時しか電子頭脳とか人間コンピュータと威名を付けられた 笑わない 顔色一つ崩さない 冷徹に物事を見極めて判断する手腕は大人も顔負けだった 生徒会室から窓を見ると…… 愛しい康太が……駆け回っていた 兵藤はカメラを取り出し望遠でシャッターを切った 愛しているのだ…… 美緒は会員制の倶楽部を兵藤に教えた 欲望はそこで抜きなさい……と玄人の女を与えた 将来政治家になるなら乱交淫行はダメージになる 相手もプロなら暗黙のルールは守られる 兵藤はそんな女を抱いて欲望をはき出していた 感情がない？ いっそなくなれば…… こんな想いなんてしない シャワーに打たれて兵藤は泣いた 女を抱いても虚しいだけだった 満たされない…… 抱けば抱くほど虚しく空っぽになっていく 康太…… 康太…… 康太…… お前と離れても…… 辛いばかりの日々しかない お前に笑って貰えないのがこんなに辛いなんて知らなかった 康太…… 康太が榊原と結ばた それ知ったのは…… 高２の夏休みだった 何気なく外を見ていた時 榊原と手を繋いで歩く康太を見掛けた 駅まで榊原を送るのだろう 榊原を見上げる康太は幸せそうだった 榊原も康太を見つめる瞳は……愛に満ち幸せそうだった あぁ……二人はとうとう恋人同士になったのだな…… と解った やはり青龍は記憶を封印したとしても 炎帝を愛すのだ 兵藤は康太が泣いて来た日々が終わって胸を撫で下ろした お前は幸せそうに笑ってろ 誰よりも幸せそうに…… 笑ってろ でなきゃ俺は心配で仕方なくなる…… 康太…… せめて1度…… お前とデートしとけば良かった お前と……在り来たりな時間を過ごしておけば良かった…… 未練だと笑うが…… 疎遠になって…… そんな時間を過ごす事もなくなった せめて…… 想いは募っていた 「兵藤会長！ 飛鳥井康太が寮を一人で出て街まで出掛けました」 そんな時、生徒会役員から康太が一人で出掛けたと聞いた 兵藤は最後のチャンスだと康太を追って一人で街へと下りていった カフェでアイスコーヒーを飲んでいる、康太の前の席に…勝手に座った 康太は下を向いてて兵藤の方を見なかった 「何でおめぇは今日は一人なんだよ？」 当然の顔をして同じものを頼んだ もう引く道なんてないから…… すると康太が驚愕の瞳で兵藤を見た 「何で貴方が、此処にいるんですか？」 康太は、わざわざ敬語で話した 「お前ぇが、シケたツラして、座ってるからだろ？」 兵藤は不敵に笑った 「オレ…生徒会長の、あんたと相席は嫌なんですけど…兵藤貴史サン」 現生徒会長である兵藤が、康太の前で当然の顔をして珈琲を飲んでいる姿を…… 康太は嫌な顔して見ていた 「俺は、来年違う大学に行く お前ぇとこうしていられる時間も残り少ない」 「あんたは、その頭脳を駆使して日本を変えろ！」 「あぁ変えてやんよ でもな康太、俺と過ごす時間を少し作れや」 「あんたと過ごす時間ない！ あんたはオレを切り捨てた人間だ」 「あぁ…それだけが、俺の学園生活の心残りだ お前ぇが放った言葉が俺の心臓を貫いてる 俺はこのままじゃ…進めねぇ」 康太は兵藤の言葉に……黙った 誰よりも兵藤の執拗な性格は知っていた 言い出したらきかない…… 中等部の頃までは、仲が良かった 兵藤は康太が榊原に恋してるのも見破った男だ だが、生徒会長になる為に 兵藤は、康太を切り捨てた 『お前と、付き合うと、評価が下がる 今後一切話しかけるな』……と 「オレを越えて行く奴に、かける声はねぇ」 康太は吐き捨てた だが、兵藤は切り捨てて行った康太が何時も気になった… こんなに可愛くなって… 「康太…俺にまる１日時間をくれ」 真摯な瞳で、康太を見る 康太は諦めて折れるしかなかった 「それで…あんたが、オレを越えて行けるなら…」 兵藤は康太の手を取り…口付けた 「俺の桜林の心残りだ…明日、お前の時間を１日くれ」 「あぁ…やんよ。」 康太は目を閉じた 兵藤は罪悪感を抱きつつも…… 最後のチャンスだと想って…… それさえも利用しようとしていた 康太と昔みたいに並んで歩いた 少しだけ背伸びして肩に手を置き抱き寄せた 友人だったり、恋人だったり…みたいに、映画にショッピングを楽しみ時間を送る 夜…横浜の夜景を山下公園から見ていた 「康太…俺と来ないか？」 と、断られるのを承知で問い掛ける 「行かねぇよ お前の果てにオレはいねぇ」 「お前をずっと愛してた…」 「戯れ言だ…貴史…」 「お前は本当に昔から変わらねぇな…」 「貴史…オレがお前をずっと見ていてやんよ だから、お前の果てをオレに見せろ」 兵藤は意表を突いたような瞳を康太に向けた まさか……先の約束をくれるなんて想わなかった…… 「俺を見ててくれるのか？」 「おう！オレの果てにはお前はいねぇ オレ等は決して交われねぇ でもな貴史、オレはお前を見ててやんよ　 お前の果てを見届ける人間になってやる だから、迷ったり、行く道が解らなくなったら、オレの場所に来いよ オレがお前を導いてやんよ だから、行け！ お前の道を行け 何時かお前は世の中を変える男になる オレはそれを見届けてやんよ」 兵藤は涙が出そうになった 「それが、お前の真贋か？」 康太は目を反らすことなく兵藤を見た 「あぁ、そうだ！」 兵藤は、康太に手を伸ばし引き寄せた せめて……一時……お前のぬくもりを…… 熱を確かめる様に康太に手を伸ばした 「お前を愛する気持ちを断ち切らないと、俺は前には進めなかった あの時、諦めなかったら、お前は手に入ったのか？」 無理だと解っている… お前の望む者は蒼い龍だけだから…… 「あの時も、今も、これからも、オレはお前に着いては行かねぇ お前とオレの道は、重ならねぇんだよ　 オレはお前を見る事しか出来ねぇ だから貴史、オレの見える場所に来い それがお前の運命だ オレはお前の息が止まる瞬間まで見ていてやんよ だから、行け！もう止まるな」 兵藤は、康太に接吻した 愛してる康太…… 愛してる炎帝…… お前が手に入るなら…… この命なんて要らないのに…… 最期の口吻だと想った 激しい、絡み合う舌が康太を絡める 康太は応えてくれた 最期の接吻だから…… 唇を離すと、最後に兵藤は、康太を抱き締めた 「行けよ！榊原の所へ」 兵藤は、背を向けた 康太は歩き出した 兵藤と離れる為に… 兵藤は康太を見送った 幸せそうに…… 誰よりも幸せそうに笑ってろ！ 幸せそうに お前の幸せだけ祈ろう…… 康太を見守る影が３体いる事に兵藤は 気付いていた 兵藤は、影に近寄った 「やはり、いたか…」 兵藤が、ごちると 一生は当たり前だ…と返した 「俺等はアレと共にある」 兵藤は、納得し…少しだけ恨み言を言う 「榊原伊織では、太刀打ち出来ない アレはずっと榊原なんだな…」 苦笑する 「でも誰のものにもなってない時期はあった 本当に欲しいなら動けば良かった」 「俺はこの世の中を変える 政治家になる身だ、俺は アレを日陰の身に置きたくはない それが、俺の総てだから…」 「胸の棘は…取れたか？」 兵藤は、首をふる 「更に深く刺さった… この棘は刺したまま、俺は生きて逝く それが俺のアイツへの唯一無二の愛の証だ」 「わざわざ…蕀の道を…」 一生は胸を押さえた 兵藤の愛は本気なのを知っているから… 心を棘を刺したまま、愛する心を置き去りに、前へ進むと言うのだ これからの人生で愛は必要ないと…ばかりに… 愛する人は唯一人…… それが兵藤貴史の総てだった 高校3年になって行われる修学旅行を、四悪童をどうするか……何度も議論を重ねた 兵藤は榊原に全権任せた 康太の恋人は榊原だから何とかするだろう…… と想っていた だが……根は深かった 話し合いは平行線で、仕方なく榊原は清家に助けを求めた 清家は兵藤に 「すみません、榊原の所へ行きます」 と告げた 兵藤は嗤った 「四悪童と話し合いが着かねぇのか？」 兵藤が聞くと清家は……苦しそうに……ええ…と告げた 兵藤は立ち上がって歩き出した 「兵藤会長！！」 清家が止めるのも気にせず会議室に向かう 会議室に兵藤が姿を現し…榊原は息を飲んだ まさか…… 会長自ら…… 生徒会長自ら、現れるのは異例だった その異例を破って兵藤貴史は、やって来たのだ 役員を引き連れて… 生徒会役員は兵藤の後ろに直ると 兵藤は、康太の横の椅子に座った 脚を組み、机に肘を着き、笑う そして誰も見たことのない笑顔で、康太に話しかけた 「何か、楽しそうな事やってるじゃねぇか！康太」 兵藤は敢えて康太と名前で呼んだ 清家は驚きを隠せなかった しかも兵藤は、満面の笑みを浮かべて、笑っていたのだ 親しげな顔に…… 生徒会役員も執行部役員も、見たことのない笑顔で、兵藤貴史は笑っていた 「ちぇっ！貴史が、出て来ちまったよ」 康太も敢えて…貴史と名前で呼んだ 清家が…… 「申し訳ありませんが、お２人は、お知り合いなんですか？」 と、問い質した程だった 兵藤は、清家の質問を笑い飛ばした そして康太を指差し 「コイツの家は建築屋で」 康太も応える 「コイツの家は政治屋で」 兵藤は、笑う 「俺達は、オギャーと生まれた時から」 【友達で、死ぬまで腐れ縁だ】 兵藤と、康太は、拳を合わせ合い笑った 昔からやって来た挨拶だった 「そして俺が永遠の愛を捧げた相手だ。」 兵藤は、康太を指差し見詰めて言った 榊原……少し位……言わせろ お前は……独り占めしてるじゃないか… 康太は言いやがった…と、反り返って顔を覆った その時にYシャツの隙間からキランと光るピアスが光る 兵藤は、とうとう首輪をつけられたか…と笑った 榊原のモノになった証だった それで良い 誰よりも幸せに笑ってろ 望むのはお前の幸せだけだ… 「康太、俺の首１つで、引いてくれねぇか？」 兵藤は、この件を納めるために、自分の首を差し出すと言った 惜しくなんかない 康太の為になにか出来るのなら…会長と言う職など要らなかった 「オレを納める為に、貴史の首１つか…代価が合わねぇ」 「お前になら命だってくれてやる、覚悟はあるさ」 康太は立ちあがった 「貴史、引いてやんよ！ お前の経歴に１つの汚点も着けたくねぇんだよ…オレは 汚点を着けるのが自分自身なら…尚更許せねぇよ それが自分でもな！ そいつ等の処分は貴史、お前がやれ！ 退学なんて逃げ道作るんじゃねぇぞ」 康太が言い捨てると 兵藤も立ち上がり、傅いた 腰を折り曲げ、手を身躯の前にまわし、貴族張りにキザな御辞儀をした。 「君の望むままに」 お前が望む総てならば…… この命だって懸けてやるさ 康太は執行部を後にした 康太が去り、椅子に座ると、表情は一変した 厳しい、付け入る隙を与えない…冷たい瞳に、その場にいた生徒は凍え着いた 「さてと！ 愛する人からの要望もあったし、君達の処分は逃げ道の統べてない、罰にしますかね 飛鳥井康太を傷付ける者は、兵藤貴史の敵だと思ってくれて構わない！」 兵藤は、あの時言ってやれなかった台詞を言う もう自分のモノにはならないけれど… ずっと笑っていられる手助けくらいはしてやろう… それが兵藤貴史の贖罪だった 愛だった…… 共に……そんな想いが…… 離れ難くする 兵藤は他の大学へ進学するのを辞めた 「美緒、俺はこのまま上に進学する」 美緒は予感はあった 「お主の好きにするが良い だが、使えぬ男になるではないぞ！ 日々鍛錬を怠るな」 兵藤は桜林付属大学に入学した 桜林付属大学なら楽勝と想っていた なのに…………… めでたく………この春落第した 「お！貴史！」 落第が解った日…… わざわざ兵藤の家に来なくても…… 応接室でニコニコ笑って…… 可愛いじゃねぇかよ！ 「あんだよ？康太！」 「めでたく落第になった気分はどうよ？」 何だか康太は嬉しそうだった 「…最悪…」 「美緒、今、飛鳥井に来てんだよ もぉな泣きながら……貴史が落第したぁ……と母ちゃんに話してる」 「………あの人……落第で泣かねぇだろ？」 「バレたか……爆笑で笑いすぎて泣いてるんだよ」 息子を食いもんにすんな！ 兵藤は怒った 「………お前……昼間も俺に傷口に塩塗ったよな？ 藤森と同じキャンパスだな……って…… また……落第ネタで虐めに来たのかよ？」 「違ぇよ！呼びに来たんだよ」 「…俺を？」 「そうそう！夜景を眺めがら飯食おうぜ！ あのマンションのラストだ！ 来いよ貴史！」 「何処へでも行くに決まってんじゃん！」 「ほら、行くぞ！」 背を向けた康太を兵藤は、背後から抱き締めた 「……愛してる…… 遥か……昔から……」 「オレは青龍しか愛せねぇ… 請われても望まれても……青龍だけ愛してるんだ」 「知ってる……お前とどうにかなろうなんて想っちゃいねぇよ… 愛してるから誰よりも幸せになれ…… お前が笑ってくれたら……それで良い…… 何も望まねぇ……ずっと、お前の傍で生きてぇ……それだけだ」 「朱雀……愛はやれねぇけどな 一緒に生きる事は出来る… 同じ時を刻む事は出来る…… それで許してくれ…… 望まれても青龍しか愛せねぇんだ……」 「………望んじゃいねぇよ お前の幸せだけ願いたいだけだ…… 何も望まねぇ…… だから笑っててくれ……」 「おう！笑ってる…」 「逝くぜ康太！ ほれ！早くしろ！」 「お前が悪いんじゃねぇかよ！待てよ！貴史！」 兵藤は笑って家を出て行った 康太が後を追い掛けて来る 兵藤は笑いながら走った 　 お前がいるなら生きて逝ける… お前と共に…… それしか望まない この蒼い地球（ほし）で 巡り逢えた奇跡だから…… 必死に生きる 兵藤の頬を冷たいしずくが流れて零れた 共に生きられれば 何も望まない…… お前の存在だけ解れば…… 俺は生きて逝ける 神様…… 巡り合わせてくれてありがとう 「貴史！待ちやがれ！」 「やだよ！待てるか！ 悔しかったら追い着いてみろよ！」 「くそっ！」 康太が本気を出して走った 捕まえられる……その腕の熱さに…… 兵藤は瞳を閉じた 兵藤ver　　　　　 END 【榊原伊織】 『青龍、オレは過去の記憶があるから…… お前に愛されてるのか……解らなくなった…』 永らくの転生で…… この愛は……過去の記憶があるから……愛されるのか？ 解らなくなっていた 『ならば、僕の記憶を封印してみますか？ 僕は封印したとしても君を愛します 必ず君を愛すると想います』 『必ずオレを探して愛せ！ 約束だぞ！』 『ええ……僕は君しか愛せません 遥か昔……青龍として生きていた時も…… 僕は君を愛していました 記憶をなくしても僕は君を愛します！』 『お前の記憶を封印する』 『ええ。』 『オレを愛せ オレだけを愛せ…』 『炎帝を愛します 炎帝だけを愛します』 息を引き取った瞬間 輪廻の輪を抱き合って潜った 永らくの転生で初めてだった 愛する炎帝を抱き締めて…… 熱を感じて逝けた 青龍の意識は……遠くなった 愛してます…… 愛してます…… 愛し…… 誰を？ 墜ちてゆく 墜ちて…… そして無になり…… 転生した 榊原伊織は物心着く頃から、物足りなさを感じていた 物足りない…… 何が？ それは解らないが…… 不完全な自分は… 何かを失って産まれてしまった それだけは解った そして夢を見る 『愛してます…君だけを愛してます』 と囁くと嬉しそうに笑う男が 『オレも愛してる お前だけを愛してる』 と言い口吻る 誰なんだ？ この男は…… 身長は自分の目線の近くにある ……と言う事は低くはない スラッとしているが、ナヨッとしている訳じゃない 　 可愛い顔をした男は満面の笑みを浮かべて自分を見ていた 誰なんだ？ 解らない 何時の記憶なのかも解らない 何故……こんな夢を見るのかも解らない…… 自分はこの人を探して愛さなきゃならないのか？ 解らなかった 現実では……こんな男なんていなかった 榊原伊織は役者になれない自分が家にはいられないと想い 中学に入学すると同時に、修学館　桜林学園に入学して家を出た 兄は幼稚舎から桜林に通っていた だが自分は桜林ではなく普通の幼稚園に通いたかった 父親は桜林に逝けと謂ったが、榊原は桜林には入らなかった だが毎朝……ストライキを起こして登園しない榊原に…… 母親は公立の幼稚園に通わせた 小学校では無理矢理、桜林に入れられそうになり 榊原は行きたくなくて…… 自宅で勉強していた 母親は仕方なく公立の小学校に入れた それが父親の逆鱗に触れて、親子関係は悪化していた 役者一家の中で自分は異端な存在にしかなれない‥‥ そう想い家族と距離を取る為に中学校からは桜林に入った 通学出来ぬ距離ではないが、榊原は寮に入った 桜林に通うから寮にはいります！と謂って一歩も引かなかったから家族は折れるしかなかった 桜林学園　中等部の入学式の日、隣の席の奴に声を掛けられた 「お隣だな！宜しく！ オレ、飛鳥井康太！」 小さなわんぱく少年みたいな雰囲気の子だった 榊原の周りにはいないタイプだった 榊原は康太に手を差し出して 「榊原伊織です！ 宜しくお願いします」 と挨拶をした それが飛鳥井康太との初めてだった 直ぐに仲良くなった 榊原は不思議だった こんなに違和感なく付き合える人間なんていなかったから… 榊原は大嫌いな父親が口煩く桜林学園に入れと謂っていて、反抗していたが、今は感謝したい位の衝撃だった 「榊原、今日さ身体測定あるってよ！」 ワクワクと康太が聞いて来る 飛鳥井康太は小さかった 榊原の目線からかなり下を向かなきゃいけなかった あの男の人とは違うな…… 目線が一緒だった…… 康太はこんなにも下を向かなきゃいけないんだから…… ふと思って、考えを打ち消した 何考えてるんだ……僕は…… 「伸びてると良いですね」 榊原が言うと康太は嬉しそうに笑った 「おう！伸びてねぇかな？」 そう言い康太の腕が榊原に搦み着く 康太はスキンシップを求めて榊原に抱き着いていた 最初は躊躇したが、慣れて今は好きにさせていた 康太の太陽の焦げた様な匂いを嗅ぐと…… 榊原は堪らなく動揺した 欲しい……と言う欲求が少しずつ……現れて来ていた 子供の様な純真な姿だった 自分の欲望で穢したりしてはいけない子…… 榊原は抱き着こうとする康太をスルッと交わした すると康太は傷付いた瞳を榊原に向けた 榊原は苦笑した 自分の中に……こんな欲求があるなんて…… その頃から……毎晩夢を見た 『愛してます』 『……ぁっ……あぁん…イッちゃう…』 搦み着く腕は…康太のものだった 榊原は康太を犯し…… 欲望の限り康太を抱いて腰を揺すっていた リアルな感覚が蘇る…… まるで前世……そうしていたかのように…… 匂いが蘇る 感覚が蘇る 榊原は夢精した 初めての事だった 夢精した下着を…… 寮の洗濯機で洗うのを躊躇して捨てた 榊原は桜林学園の寮に入ってから家には還ってはいなかった 通えない距離でもないのに…… 榊原は桜林学園の寮に入って、以来母から電話があっても兄からラインが入っても無視して孤立していた そんな頃……康太の傍にいるのも限界になって来た 次のクラス替えで飛鳥井康太とは絶対に同じクラスにしないで下さいと申し出た 榊原は康太を切る算段をしていた 自分の欲望で穢す前に…… 康太を遠ざける そのつもりだった 康太の匂いを嗅ぐだけで…… 榊原は下半身が熱くなった 何時かレイプしてしまいそうになる…… そんな時康太はうっとりとして 榊原の名前について語った 康太が無類の時代劇好きなのは知っていた 名前の事を持ち出したから榊原はチャンスだと思った 康太を切るチャンス 案の定、榊原は名前の事で笑った康太に難癖着けて怒った そして二度と康太の傍には行かないつもりだった 康太は寂しそうに…… 榊原を見ていた 知っていたが榊原は無視した 次のクラス替えでは同じクラスになる事は一切ない そして高等部は成績別クラスになる 康太が逆立ちしても、榊原と同じクラスになる日は来ない 解っていた クラスを変わった頃から…… 榊原は生徒会に入った 暇潰しには持って来いだった 暇があれば…… 心は康太を求める 目が康太を追う 心が康太を欲する そんな心を打ち消して必死になれるモノは必要だった 生徒会に入って執行部の役員をやる様になった そんな時、清家静流と出逢った 彼が……あの夢の人？ 榊原はそう想った ………が、一緒に仕事する様になって……本能が違うと嗅ぎ分けた 康太を抱く夢は見なくなったが……… 夢の中に必ず自分に酷似した容姿の男が現れて…… 恨みがましく……何も言わずに見ていた 何を伝えたいんだ？ 解らなかった 中等部の2年時、康太によく似た子が交際を求めて来た 榊原は求められるままに…… 交際を受けた 康太を抱いているみたいに……その子を抱いた 夢中に抱いて…… 醒める 康太じゃない……と痛感すれば 色褪せて……抱く気もなくなった その繰り返し その癖、飛鳥井康太に惹かれる 抱き締めてしまいたい衝動に駆られる その心をひたすら隠して…… 四悪童を取り締まる それが桜林学園　高等部　生徒会執行部　部長を作り出していた 高等部　入学式の日 康太は上を見て歩いていた ピンクのリボンのアーチを見ていた 綺麗だな…… と上を見て歩いていた 榊原は転けそうになった康太を咄嗟に抱き締めた 康太のお日様の匂いは変わらなかった キラキラと光り輝く瞳が榊原を見ていた この子は……何年経っても変わらない…… いや……前より可愛くなった あのベンツの男の所為？ 榊原は嫉妬に焼かれそうになっていた 心とは裏腹な……言葉を吐く 「本当に君は落ち着きがありませんね！」 榊原が言うと康太の瞳が悲しげに翳った そんな顔をさせたい訳じゃない… 「高等部進学おめでとう 高等部に入ったのですから騒ぎは控えて欲しいモノです」 榊原は、そう言い康太の傍を去って行った 康太は何時までも榊原を見ていた 振り向けば…康太の恋い焦がれる瞳を見れたのに…… 一生と聡一郎は、それを影から見ていて見守っていた 何かあれば飛び出すつもりで…… 康太は涙を拭うと歩き出した 自分が…… 榊原伊織に愛される日なんて来ない…… そう想っていた 愛してる……青龍 心が叫ぶ 冷たい瞳は青龍の時に嫌と言う程に見られた 辛辣な言葉も 嫌悪する態度も 青龍の時に何時もやっていた 愛されてるとは想えない 青龍…… お前……オレを愛してた？ やはり……奇跡だったのかな？ 康太は青龍を求めて泣いた そして諦めていた 榊原伊織には愛されない……と。 榊原が可愛い男の子の肩を抱く 髪を触り口吻た 堂々と榊原はそれをやる 康太はそれ見て……走った 『炎帝……僕は君の髪が好きです』 そう言って…髪に口吻てくれたのに…… 青龍…… 青龍…… こんなに近くにいるのに…… お前が遠い 何故…… 青龍… 抱き締めて 愛してると言って…… 頼むから…… オレを見つけて…… 康太の想いは届かなかった 榊原は限界だった 幾ら……康太に似てても…… 紛い物は……康太にはなれなかった もう誰も抱く気にはならなかった そもそも……付き合って…… 相当、康太に触れて匂いを嗅がねば…… 止まれない欲求などなかった 付き合ってると勘違いして纏わり付く奴がウザかった 「ねぇ、伊織君、今度遊びに連れて行ってよ」 甘えて纏わり付かれると…… 醒めて……どうでも良くなる 榊原はマメな男ではなかった 「面倒くさい……飽きた…」 と言い、スタスタ歩いて帰って行く 放置された男は……榊原との終わりを知った 突然だった だが突然別れられるのは知っていた 知っていて榊原と付き合いたかったのだ 自分こそが榊原の本命だと想いたかった 何処からともなく緑川一生がやって来て榊原の目の前にいた 不思議な男だった 「旦那、執行部部長おめでとさん 1年で執行部部長かぁ、すげぇな」 「君達が大人しくしてくれてたら楽なんですけどね…」 榊原は嫌みの応酬をした なのに一生は笑って受け流す 「執行部部長の肩書きは必要だもんな」 「………あるに超した事はないです」 そう言い下駄箱に入ってるラブレターをゴミ袋に捨てて片付ける 「この前さ、トイレに行った時、遅いから見に行ったら康太が野郎に……大事な所を掴まれて迫られていた」 「………またですか？」 「康太を狙う奴は多いんだよ 俺さ、康太に恋人を着けようと想うんだよ 交際宣言したら、なくなるかもな 康太もやっとこさ受け入れてたしな！」 榊原の瞳が光った 「相手は？」 「木村康也、期待のピアニスト様だ！ 康太に交際を申し込んで来たからな 康太に受けろと言っといた」 榊原がどう出るか 一生は知りたかった 案の定、榊原は動いた 交際宣言を出す前に…… 相手が消えた 「旦那、木村が…学園からいなくなっちまったんだよ」 榊原は知らん顔して 「そうなんですか？」 と言った 手を回したのは一目瞭然だった 「まぁ良い！他にも候補は何人かいるからな」 「誰なんですか？」 「教えねぇ！候補が消えたら恋人宣言も出来ねぇじゃねぇか！」 榊原は一生を睨み付けた 「飛鳥井をトイレで襲った奴は退学にしときました」 名前を教えてないのに？ 一生は恐るべし……と想った そのバイタリティーを康太の為に使えば良いのに…… 「あ！康太な帰宅途中に車に乗せられそうになったからな… アイツの兄貴が迎えに来る様にしてるんだ」 「………迎えってベンツの男ですか？」 「そう！アイツの兄貴だ 飛鳥井建設の副社長してる」 「……そうですか……」 あのベンツの男が康太の兄で榊原は胸を撫で下ろした それからも、何処からとなく緑川一生は現れて 「康太のパンツがなくなるんだよ…」 と、康太の情報を教えた 榊原の手には…相変わらず…沢山のラブレターを入れたゴミ袋を持っていた 康太が学校でモテねぇ…と言うのは、日々榊原が排除しているからだ 康太は気付いてないが…… 榊原と康太は同室者になっていた 同室者になっても、進展はないみたいだ 「誰が？」 「隠しカメラは撮ってあんだよ」 そう言い一生は榊原に写真を見せた 洗濯室に忍び込み、洗濯機の中を物色して下着を持って行く写真が撮られていた 榊原は眉を顰めた 「排除します…」 「………コイツ…捨て身に出たら怖いな」 「どんな奴でも排除あるのみ！」 「拉致られてレイプされたら？」 「………っ！生かしておくか！」 榊原は本音を吐き出した 「旦那、そろそろ認めて康太の傍に行きなはれ」 「………そんなに簡単には行きません…… 冷たくあしらってしまいましたからね……」 「それでも……だ！ 無くしたくないなら捕まえろ！」 「努力します」 榊原は一生の前では……本心も隠せなかった 本当に不思議な男だった 康太と結ばれて晴れて恋人になった日 久しぶりに夢を見た 『やっと見付けてくれましたね』 男はそう言い泣いていた あぁ……これは前世の自分のだと……細胞が教えてくれた 愛する者の所へ導こうと……現れた前世の自分なのだ 榊原は無くした半身を取り戻した 『愛して離さないで下さい』 ええ！愛して離しません 榊原は誓った 恋人になって身躯を繋げて 身も心も結ばれてからの榊原は早かった 康太を離したくない 絶対に離さない と言う覚悟で両親を認めさす 隠れて付き合うのは容易い だが、榊原は日陰に康太を置く気は皆無だった 康太の処女を奪った時に着いた鮮血の着いたシーツは処分した 康太の分も洗濯をしに洗濯室に向かい思案する 康太は意識を失っていた 榊原のベッドで寝かせて、その間に洗濯へと向かった 「旦那、どうしたのよ？」 考え込む榊原に一生は声を掛けた 「康太を抱きました」 「お！やっとか！ おめでとう！」 一生は自分の事の様に喜んだ 「康太が帰省する時に一緒に行くつもりです」 榊原が言うと一生は驚愕の瞳を榊原に向けた 「………何、考えてるんだよ？」 「康太を日陰の場所に置く気は皆無なんです 親に認めて貰おうとは想いませんが……暗黙の了解と言うカタチで認めさせ死ぬまで康太の傍にいようと想います」 「旦那…多分飛鳥井の家は反対はしねぇと想う」 「………え？何故ですか？」 「康太は飛鳥井家真贋と言う特別な立場を引き継ぐ者なんだよ もう引き継いだも同然だからな、飛鳥井の家は康太を失えない 康太が伴侶と言うなら男でも認めて傍に置くしかねぇんだ おめぇも飛鳥井家に行けば解る……重責を康太は担っているんだよ」 「榊原の両親にも逢わせます」 「本気かよ？」 「本気です！反対されても告げた以上は反対などさせません！ 暗黙の了解で乗り切るつもりです」 なんともセコい事を考えてるんだよ？ 一生は金龍を想い出した ひょっとして……青龍は親父殿似かよ？ 妻に惚れまくりの父親を思い浮かべた 「俺達はアレを泣かせないなら……どんな協力もする」 「緑川……何故君はこんなにもしてくれるんです？」 榊原が問い掛けると、一生は曖昧に笑って答えなかった 榊原は飛鳥井家に康太を連れて行って、認めさせた 榊原の親にも認めさせようとして…… 康太が殴られたけど…… 榊原の家は、康太の手によって再生された 康太… 僕は君と離れたくないのです 飛鳥井家に請われて、飛鳥井家に住むようになった 康太は婿の様なカタチは取りたくないと言うけど 関係なかった 離れないで良い場所にいられれば、それで良かった 「康太、愛してます」 康太は嬉しそうに微笑んで榊原に口吻た 「オレも愛してるかんな！」 変わらぬ愛を注ぎ込む 尽きない愛を…… 君に贈る 榊原の記憶の封印を解いた日 榊原は長い夢を見ていた 一気に記憶の欠片が押し寄せて来て…… まるでスクリーンを見ているかの様に流れ込んで来た 自分は青龍と言う神だと…… 記憶の欠片が教えた そして繋がったピースが重なり合わさり填め込まれて行った 総ての記憶が戻って来た時 やはり自分は青龍だと実感させられた 記憶を無くしていても…… 青龍みたいに…… 認めたくなくて足掻いていたと言うのか…… 変わらない自分に笑えた 青龍の時に炎帝に恋していた 初めて黒龍が炎帝を連れて来た日に… 青龍は炎帝に恋をした だが、相手は閻魔の弟 人気は絶大だった 本人は周りにガードされて気付かないが、かなりの人気者だった 青龍は堅物の自分など炎帝に好かれるとは想っていなかった 好きになるのは自由だ 想う心は誰にも止められない 青龍は片想いをしていた だが炎帝に気付かせないでいた そんな所まで……自分は青龍だったと……痛感させられた 炎帝は奇跡だと言った 人の世に堕ちる瞬間、青龍が現れて奇跡だと…… 青龍こそ奇跡だと想っていた 欲しかった炎帝が自分の腕の中にいてくれる 好きで…… 姿を見るだけでも刹那くて 思いは募った 誰を抱いても…… 炎帝を想って自慰をする以上の快感は得られない そんな所まで……似なくても良かったのに…… 康太…… 君の傍に行きたかったのは…… 誰よりも僕です 君の傍に行けない自分は…… 何時か……狂って君を監禁したかも知れません 欲しくて 欲しくて…… 止まなかったのですから…… 逢うたびに…… 押し倒したい衝動に駆られた 「康太、僕は君が炎帝の容姿だから愛してる訳じゃありません 僕の魂ならば、どんなカタチ出あろうと愛します」 「……伊織……」 「炎帝の君も 飛鳥井康太も 愛してます 僕は君だから愛しているのです 僕の総ては君を愛する為に在ります」 「伊織……」 康太は涙ぐんだ 「青龍の僕も、榊原伊織も愛してください 僕だけを、愛して下さい」 「青龍だけを愛してる 榊原伊織を愛してる お前の総てを愛してる…」 僕の総て…… 榊原は康太を抱き締めた 抱き締めて……愛を刻む 自分の硬い肉棒で康太に自分を刻む 夢中で求めて愛す 総てが僕の愛だから…… 僕は……青龍を捨てた 父に誇れる青龍でいたかった だが、僕が愛して欲するのは……　 同じ性を持つ男で 破壊神と恐れられた炎帝だった 認めたくなくて……炎帝を傷付けた 何の保証も与えずに抱いた……