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第23話 恋人たち①
恋人たちの過ごす時間
それを少しだけ覗いたら……
不器用な恋人たち
安西力哉と緑川一生
飛鳥井悠太と四宮聡一郎
彼らの日々を少しだけ……
【力哉】
戸浪力哉は何時も孤独だった
母親は体躯が弱く、入退院を繰り返していた
母親が入院している時は力哉は施設に入っていた
力哉と母親だけの、所謂母子家庭だった
時々、男の人が来た
戸浪光星(こうせい)
トナミ海運の社長だった
力哉は解っていた
父親と言う人には家庭があって……
母親は愛人なんだと……
でも戸浪光星は精一杯、力哉を愛そうとした
不憫な……我が子を誰よりも愛そうとした
戸浪光星と力哉の母親である
安西李里奈(りりな)は幼馴染みだった
光星は李里奈を愛していた
妻にするなら李里奈だと決めていた
だが父親である戸浪宗玄に反対されて、名士の家の女と結婚させられた
婚姻で絶対の力を入れる為に………
愛した幼馴染みは愛人になった
それが安西李里奈だった
光星との間に何度も妊娠したが……
バレて中絶させられた
跡目争いの揉め事になると……宗玄が断固として……
外腹の出産は許さなかった
最後の出産の可能性だった……
それを逃せば…一生愛する人の子は妊娠しない
李里奈は出産まで黙っていた
それが自分の寿命を縮めると解っていても……
愛する男の子供を産みたかったのだ
無理矢理……命を削って子供を生んだ
力哉
力 ちからを
哉 かなでる
強い子に………
母を亡くしても……強く生きて下さい
母を……恨んでも良いから……
強く……強く……生きて……
母の願いを込めてつけられた名前だった
力哉が中学に上がる前に……
母親の李里奈は他界した
母親の葬儀の日
戸浪光星は力哉の母親の葬儀をあげた
愛していた
だが親に逆らえず……
日陰に置いた女の最期を見送る為に……
それを聞き付けた戸浪宗玄は激怒して息子を連れ帰ろうとした
「何をしておる光星!帰るぞ!」
腕を掴もうとする宗玄の腕を振り払い、光星は抗った
「……もっと早く…貴方に逆らっていれば良かった!
俺は李里奈しか愛していなかった!
李里奈を妻にしてやりたかった……
何度も何度も……俺の子供を下ろさせて……
李里奈を殺したのは貴方だ!」
光星は父親を憎んでいた
親の言いなりになるしかなった……自分を後悔した
だが幾ら後悔しても……
李里奈は二度と目を開ける事はない……
光星は力哉を強く抱き締めた
「………不甲斐ない父を許してくれ…」
力哉は何の感情もなく…
父親に抱かれて……呆然としていた
「力哉は俺の子だ!
俺の戸籍に入れた、俺の子だ」
「そんな事は許しはしない!」
宗玄は立腹した
だが光星は父親の言葉など聞く耳は持たなかった
力哉を身の立つ様に引き取る段取りをして…
光星は病に倒れた
癌だった
光星は癌を知っていて放置した
倒れて入院した頃には……
手の施しようがなかった
光星は遺言でも力哉の事を頼む………と父親に託して……
息を引き取った
38才だった
あまりにも短い生涯を生き戸浪光星の人生は幕を下ろした
愛するのは子供の頃から側にいてくれた李里奈だけ
妻との間には愛はなかった
光星は妻に振り向く事はなかった
光星が死去すると妻は……
海里と亜沙美を残して……実家に帰って行った
海里と亜沙美は宗玄に育てられた
力哉は施設から引き取られ、マンションに住まわされた
戸浪海里も亜沙美も力哉の存在は知っていた
宗玄に弟だと教えられた
だが、何の感情もなかった
あぁ、そうなんだ……
子ども達に振り向く事のない父親と母親だった
育ててくれた……人間は使用人だった
何時も忙しく家にいない人間に………子供を育てる時間はなかった
親に見向きもされない子供
それが戸浪海里と亜沙美だった
期待するのも……諦めた子供は……
宗玄の教え通りに帝王学を学び育った
それが戸浪海里だった
戸浪海里にとって家族は……
何の意味を持たぬものだった
力哉を目にしても……
何の感情もなく
父親が愛人に作らせた子なんだ……と思うだけだった
マンションに住まわせた力哉の所に家政婦が食事をはこびこむ
季節の着替えは戸浪が適当に見繕って買った
宗玄は力哉に
「海里を助けて生きてゆけ
お前はそれだけしか価値がない存在なのだ!」
と呪文の様に言い…
力哉はそれを聞いて育った
戸浪海里の為だけに在る存在……
呪文は束縛となり
力哉は雁字搦めになっていた
無機質な空間にはベッドと机しかしかない
30畳のワンルームの空間は寒々しかった
戸浪海里の頭脳になる為だけに日々勉強した
学校に行く時間を惜しんで、家庭教師が着いて、勉強した
力哉は東大にいける頭脳だと宗玄に伝えられた
宗玄は力哉が大学を出ると、それなりの地位を用意すると約束した
力哉はそれを………
他人事の様に聞いていた
何をするにしても……逐一宗玄に通達される
日々の生活は見張られている様なモノだった
その癖……力哉を見ていなかった
力哉の身の回りの世話は使用人がする
時々、戸浪海里が来て寸法を測って服を作らせる
総てが義務的に済ませられ……
肉親に感じる情は皆無な日々を送る
何時しか力哉は人の心を忘れて行った
大学を卒業してトナミ海運に入った
戸浪海里の弟として専務に据えられた
……………だが仕事はない
役職だけ与えられて……
仕事はなかった
毎日……仕事もない会社に通い
一日雑用の書類を渡されて判を押す
専務じゃなくても良い
部長クラスでも事が足りる書類を回されて………
一応仕事をする
それすらも回って来ない日もある
そんな日はPCを見て……
勉強して過ごす
お飾りの専務
戸浪海里の腹違いの………
弟……として用意されたポジションは……
いなくても誰も困らない飾りだった
日々……勉強をして過ごした
戸浪海里……
兄を助ける為に……
それなのに……
お前の居場所なんて……ないよ
言われてる日々だった
そんな頃……副社長と出会った
副社長は戸浪 宗玄の腹違いの弟だった
戸浪海里を盛り立ててくれと据えられた
だが、戸浪海里はやり手な経営者で……
誰の手も必要とはしなかった
戸浪海里の妹の亜沙美も兄を助け経営アナリストとして手腕を発揮していた
力哉も、副社長も………
トナミ海運のお飾りだった
永遠に………
陽の目の見られない所で朽ち果てるしかない………
それがトナミ海運で置かれた自分達のポジションだった
副社長は力哉に
「日陰の花だって……光をやれば育つだろう
お前と俺は永久に陽の目を見られない……」
「僕は陽の目を見られなくても構いません……
ですが飾られてる日々は……もう終わらせたいです」
「………ならば……トナミを陥れるしかない……
もうその道しか残ってはいない‥‥‥」
「ならば………僕もその船に乗ります」
裁かれよう
何もない僕なんて誰も欲しがらないから……
力哉は死刑執行される日を夢見た
捌かれて……
何もかもなくす日を……
頭脳を駆使して、トナミを裏切る
副社長は敵対する会社へ行く事が決まっていた
その手土産に……
情報漏えい……
トナミ海運のセキュリティを皆無にして……
情報漏えいをさせる
誰かが気付いても……相当腕がなきゃ解らない
裁かれる日が来るのを力哉は待っていた
誰か……僕を裁いてよ
僕なんか……
生きていても仕方ないんだから……
いっそ……心なんてなければよかったら
淋しいとか……
想う……心なんてなければ良かった……
そしたら僕は……
ちゃんとしたお飾りでいられたのに……
僕を裁いて下さい……
力哉は日々願っていた
その日は……
力哉の予想に反して、案外早く来た
飛鳥井康太が現れて……
力哉の張ったトラップを見破った
やっと裁かれる
力哉は終われる瞬間を夢見ていた
戸浪………と言う巨大なしがらみから……解き放たれる日を待っていた
裁かれたら……
会社を追われる
宗玄は激怒するだろう
それで良い
飼い犬に手を噛まれたと想えば良い
総て終わったら……
母さん……
貴方の墓参りに行きます
そしたら総てを終わらせる
疲れました母さん
貴女が死んでから……
僕は心を持たぬ人形になりました…
母さん…
淋しいですか?
向こうで父さんと一緒にいますか?
裁かれる瞬間
力哉は笑っていた
やっと………解き放たれる
総て終われる
そう思っていた
力哉の前に飛鳥井康太が現れた
彼は……力哉に戸浪を捨てろと言ってくれた
そればかりか……
傍においで……
と言ってくれた
「オレの秘書になれ力哉」
そう言って、居場所を作ってた
力哉は飛鳥井康太に着いて行こうと心に決めた
彼との出会いは大きい
何もかも無くした力哉の前に現れて
総てのしがらみから解き放ってくれた
そればかりか……
居場所も作ってくれた
力哉は飛鳥井康太の為に生きようと心に決めた
康太と共に在ろうと……
心に決めた
飛鳥井の家に住むようになって……
一生は何時も側にいてくれた
何も解らない力哉の側に、一生は何時もいてくれた
仕事を覚えて、康太のサポートにつく様になっても……
一生は力哉の側にいてくれた
力哉は一生に思いを寄せた
「力哉、一生はダメだぞ」
康太が力哉の想いを知って……
釘を刺した……
力哉はそれ程に…あからさまに一生を求めていたのか……
と反省した
「力哉、無理すんなよ」
優しく肩を抱かれて……
力哉はときめく
一生が好きだ……
心がそう訴える
そんな恋心にふたをして
力哉は一生を弟と想おうとした…
まともに兄弟と暮らした事なんかないから……
勘違いしてるんだ……
そう想おうとした
恋心を封印して……
力哉は一生の側にいた
康太はそんな力哉を何も言わずに見ていた
力哉……一生を選ぶという事は……一生の荷物も持たねぇとならねぇだぞ……
康太は思案する
「どうしたんですか?康太?」
考え事をする康太の背中を、榊原は抱き締めた
「………力哉……」
「一生を好きですね…」
「見て解るか?」
「………ええ……いじらしい程に…好きになっちゃダメだって……自分に封印してて……可哀相です」
「………一生を選ぶなら……話さねぇとな……」
「……一生も力哉を意識してますね……」
「一生は力哉の優しさに甘えてるんだよ…」
「力哉を好きですね?一生は…」
「………力哉も一生が好きなら両思いか?
両想いなら……話すしかねぇか……」
「……そうですね」
榊原は強く……強く……康太を抱き締めた
力哉をリビングに呼び出し、総て話した
「緑川一生の側にいるって事は……おめぇも一生の荷物を持つ事になるんだぜ?」
力哉には意味が解らなかった
一生と距離を取ろうか……
と想っていた時だから……
康太は全部話した
生い立ち……から
生きて来た境遇から……
…………姉になる亜沙美との事…
康太は全部話した
力哉は静かに聞いていた
そして……一生を想って涙した
夜中まで仕事を手伝ってもらい………
時々一生は気絶した様に寝ていた
そんな時々一生は魘され……泣いていた
一生の中に果てしない闇を見ていた
力哉は一生を抱き締めた
一生……一生………大丈夫だよ
と一晩中……一生を抱き締めていた時もある
目を醒ました一生は何時ものお調子者になるのに……
一人で眠る時間は果てしなく闇に落ちていた
力哉はそんな一生を支えてやりたかった
でも自分にはそんな力はない……
だから何も言わず抱き締めるしか出来ない
一生の眠りを守る様にして力哉は眠っていた
一人で……眠る一生を想って……
力哉は胸を痛めていた
「……康太は何故僕に……一生の話をされたのですか?」
「好きだろ?」
力哉は康太を驚愕の瞳で見た
「…………好きです…
僕の中に……こんな風に誰かを好きになる感情があるなんて……想いもしませんでした」
「好きなら仕方ねぇ……
でも一生を好きになるのは……しんどいぞ
オレはおめぇを幸せにする義務がある……」
「………一生を支えてやって良いですか?
恋人になりたいとか……そんなんじゃなく……
一生の果てしない闇を……だきしめてやりたいです」
「……オレはもう何も言わねぇよ……力哉の好きにしろ」
「………康太……」
「だが忘れるな
おめぇにはオレ達がいるって事を……」
「………はい。」
それが一生に力哉が近付く要因なった
魘され……苦しむ一生を力哉は抱き締めた
「……大丈夫だよ……」
強く……強く…力哉は一生を抱き締めた
一生は力哉の力強い腕に……
惹かれるのを止められなかった
力哉はいじらしく……気持ちに封印しようとしていた
それを一生は知っていた
知っていて………一生は力哉に甘えていた
力哉を苦しめるのは……解っていた
それでも一生は力哉の優しい腕に………
甘えていたのだ
一生は力哉を抱き締めた
「……え?一生……」
「好きだ力哉…」
「……一生……」
「抱き締めてくれるお前の腕に………俺は救われていた
お前の差し出してくれる優しさに俺は甘えていた……」
一生は力哉に口吻た
「………一生……」
口吻は唇をに舌を差し出す込まれて執拗な接吻へと変化を遂げる
生まれて初めての力哉には何が起こったのか…
解らなかった
「………一生……」
「俺に触られるの嫌……か?」
「………嫌じゃないよ」
「お前を俺のモノにする
好きなんだ力哉……」
そう言い一生は力哉の服をまくり上げた
男の体躯に………何をされるのか……
力哉は解らなかった
乳首なんて……乏しいのに……
一生に触れられれば……勃ち上がり……感じるのを初めて知った
「……あっ……あぁん……何?……何なの?……」
力哉は自分の体躯におきている現状を把握出来ずにいた
一生は力哉の服をひん剥くと
綺麗な色をした性器に口吻た
「自分で障った事もねぇのか?」
「……え?……どこを?」
「ココ……ピンク色してる
こんなに綺麗なの見たの初めてだ」
一生はそう言い愛しそうに舐めた
「きゃっ……ゃ……一生……やめてぇ……」
力哉は一生のもたらす熱に翻弄されていた
湿った音が部屋に響いた
「自分で障らなかったのか?」
「……触らない……」
力哉は消え入りそうな声で告げた
一生は「大切にする」と言い力哉を抱いた
大切にしたい気持ちはあった
いじらしく耐えている力哉に……一生は何度も抱き締めたくなった
「……力哉……抱いても良い?」
裸に剥いて、あっちもこっちも舐めて……
お尻の穴も舐めて解して……
一生は力哉に問い掛けた
ズルい……
こんなにしておいて……
聞かれたら……
良いよ……って言うしかない
しかも一生は不安そうな瞳で力哉を見ていた
力哉は一生を抱き締めた
「……良いよ……抱いて……」
後悔なんてしないよ……僕は…
一生に触って貰えるなら……
後悔なんてしない
一生は力哉の中に挿入した
ゆっくりと力哉の体躯を傷付けない様に優しく抱いた
力哉は訳が解らなくなり……
「ぁん……あぁっ…一生……一生…」
と一生に抱き着いた
二人の関係は……
始まった
魘される一生を力哉は抱き締めた
目を醒ました一生は力哉を抱いた
そうして二人は日々過ごして来た
康太は二人が関係を持ったのは気付いていた
でも力哉が幸せなら……黙っていた
「……伊織……オレは……力哉を弄ぶなら一生を切る……」
康太は榊原にそう言った
榊原は康太を抱き締めた
「………一生は常に君優先ですからね……」
「一生の子供が来る……
一生は不安定になっている…」
「……力哉はどうするんですかね?」
「オレの子ならば力哉は受け入れるさ
…………一生はそれを受け入れる……か…だな」
「……距離を取ってますね…」
榊原は力哉を想い、ギリギリ胸が痛んだ
「……伊織……オレは力哉を、力哉だけを愛してくれる奴に与えようと想う……」
「………無理でしょ?
力哉は一生を愛してるんですから……」
「……愛していたら……蔑ろにしても良いのか?」
「康太……泣かないで……」
榊原は強く康太を抱き締めた
「力哉の想いは報われねぇのか?」
「………そしたら僕が一生を殴り飛ばしてやります……」
「……伊織……愛してる……
伊織しか愛せねぇ……
青龍しか愛せねぇ…」
「僕も康太しか愛せません
炎帝しか愛せません
君は僕の愛です……死んでも離しません」
「伊織……オレを離すな…」
「……ええ!絶対に離しません」
康太は榊原の胸に顔を埋めて泣いた
力哉……
そんな辛い愛を………
わざわざ選ばなくても良いんだぜ
それでも一生を愛していると言うなら……
オレは絶対に一生を許さねぇ……
一生の子供が来て……
何とか持ち越した二人の愛は……
一生が不安定になって壊れた
一生は亜沙美に想いを残していた
ならば駆け落ちすれば良い
一生が亜沙美の所へ行きたいと想っているのは知っていた
力哉は一生に別れを告げた
「……一生、別れよう」
「……え?……力哉……寝言言ってる?」
「本気だよ…」
「………俺を捨てるのか?」
「……捨てるのは君だよ
僕を捨てて……亜沙美姉さんと逝きたいんだろ?
ならば行けば良い……」
力哉は預金を全部下ろして一生に渡した
「少ないけど足しにして…」
最後まで………力哉は一生を愛していた
愛してるから……離れてくれるのが解った
一生は言葉もなかった
力哉はお金を残して部屋を後にした
その日から一生は康太の付属品として接して来た
そして………一生は消えた
お金は慎一を通して返された
「力哉、一生から預かってる」
慎一はそう言い力哉に封筒を渡した
「………バカだな力哉は……
別れようとする男にお金なんて渡して……
1番バカは……アイツだな……
側にいてくれる手を離して…」
慎一はそう言い力哉を抱き締めた
力哉は慎一の胸の中で泣いた
慎一は辛そうに……力哉を抱き締めた
「………力哉……泣くならなんで行かせた?」
「一生には忘れられない女性がいる……
逆立ちしたって……勝てないよ……僕じゃ一生の悪夢を癒してやれない…」
「……お前の優しさに気付かねぇアイツは本当にバカだな」
力哉は泣いて……泣いて……泣き疲れて寝た
応接間のソファーに寝かせて、慎一は頭を撫でてやった
そこへ康太が姿を現した
「……悪かったな慎一」
「………俺は本当に腹が立ってます……
アイツを殴り飛ばしてやりたい程に……
もう還って来なくて良い……
アイツは好きな所で生きれば良い……」
慎一は吐き捨てた
「慎一、言ってやるな」
「………何故……側にいてくれて支えてくれた力哉が冷遇されますか?」
「………アイツ……魔界に渡ったそうだ……
全部黒龍が話したと……教えてくれた……
それでどうするか…様子を見ていたら……
知らない街で仕事して暮らし始めた
還る気がねぇのか…解らねぇけどな……迎えには行かねぇと決めている」
「……アイツは何がしたいんでしょうか?」
「……耐えてるんだよ
黒龍に総て聞かせれて……考える時間が欲しかったんだろ?」
「………俺は……許せません…」
「それでも許すんだ……おめぇは……」
「……康太……」
「おめぇに取って血の繋がった唯一の存在だからな……
アイツの存在に救われてるだろ?」
「……なら殴り飛ばしてやります」
「好きにしろ……」
桜の季節が終わり……
飛鳥井家と榊原の家族で北海道まで櫻を追っていった
康太は力哉に流生を渡した
力哉は流生を腕に抱いた
凛々しい眉はやはり面影を残していて‥力哉は流生を抱き締めた
この子を護って生きて逝こう!
力哉は心に決めた
一生、お前だってこの子を護ると決めたんじゃないんですか?
一生が戻って来ても……
力哉と一生は中々側に行こうとしなかった
焦れた康太が動いて……
力哉は一生の側に行けた
一生は力哉を大切にしてくれ
一生懸命……愛してくれた
「力哉…」
恋人の様な口吻を受けて……
抱かれる
「……あっ……一生……」
「もっと脚……開いて見せて…」
還って来た一生はエロさに磨きが掛かっていた
誰かとそう言う事をして来たからバージョンアップしたの?
とも聞けない……
翻弄されて一生に縋り付くしか出来ない
力哉はスキルが足らないから……
一生しか知らないから……
どうして良いか解らなかった
脚を開いて一生に見せた
秘孔に指を入れて……開いて見せた事もある
抱かれると理性が尽きて……
一生の言うまま……何でも聞くしかない
一生が挿れてくれると安心する……
一つに繋がった結合部分を一生がなぞる
「ほら、力哉……」
力哉の手を取って…一生はそれを見せた
「……俺と力哉が一つに繋がってるんだぜ?」
「……ぁん……あぁっ……一生……一生……」
愛されて幸せだと想う
一生に抱かれて……
僕は………このままで幸せだと想う
君の側にいられるだけで良い……
多くは望まないから……
側にいさせて
お願いだから……
一生……
僕は君の中に……
どれだけ占めてますか?
少しは君の中にいますか?
ほんの少しで良い
僕を抱く時だけで良い……
僕を想って下さい……
お願いだから……
それだけで僕は良いのだから……
何も望まず育った
何も欲しがらず……
何も期待せず
だけど今は期待したい
望みたい
一生……
僕は君が欲しい……
ほんの一欠片で良いから……
一生と恋人に戻っても
一生は康太第一だった
牧場も出来て忙しい日々が続いた
一生は牧場に寝泊まりする日も出来ていた
帰らぬ一生を待つのを諦めた
でもね……
僕にだって……心があるんだよ?
愛されず
見向きもされず……
日々を生きるのは嫌なんだ
力哉は一生を吹っ切る様に……
距離を取った
そんな頃……康太と榊原が消えた
イライラする一生は何かにつけて八つ当たりをした
慎一に突っ掛かり……些細な衝突をする
一生は力哉の部屋に酒に酔って入って来た
そして当然の顔をして……
力哉を抱こうとした
力哉は一生を殴った
「……僕は君の性欲処理じゃない…」
一生はまさか力哉が抵抗して殴るとは想わなかったから唖然とした
「……恋人……だろ?」
「……誰と誰が?
僕と君が……?」
「違うのか?」
「僕は見向きもしない恋人を待つ事は止めたんだ
君は僕を……何だと想ってるの?
気が向いた時だけ抱いてやれば……それで何も言わない人形だとでも想ってるの?」
一生は言葉もなかった
力哉を放っておいたのは自分だから……
「……僕は……僕だけを愛してくれる人を見付けるよ
君も君だけを愛してくれる人を探しなよ」
力哉は一生に自分の口から別れを告げた
一生は冷や水をぶっかけられた程にショックを受けた
力哉に甘えていたのだ
力哉なら解ってくれる……
そう思い力哉を蔑ろにした
「………力哉……」
「僕はもう君の愛は要らない…」
力哉は告げた
「………僕は……僕だけを愛してくれる人を見付ける……
そう決めたんだ…」
さよなら一生……
力哉は痛み出す胸を押さえた
一生は力哉を抱き締めた
「………お前だけ愛してやれなくて……ごめん……」
そう言い一生は力哉に口吻た
「お前だけを愛してくれる奴を見付けろ……
大切にしてくれる奴を見付けろ……」
一生は力哉を抱き締め……
「……お前の幸せを願ってる……」
と言い、力哉を離した
そして力哉の部屋を出て行った
力哉は床にしゃがみ込んだ
「……ズルいよね一生……
こんなに愛させといて……」
力哉は泣いた
やはり……一生を愛してるのだ
一生だけを……愛してるのだ
一生は康太の仕事を手伝っていた
消えた榊原と康太の仕事を聡一郎と手分けして片付ける
牧場にも出向き仕事をする
力哉は副社長室のソファーに疲れて座る一生を見ていた
別れても一生は変わらず接してくれた
本当に……腹が立つ程に一生で……
想いだけ募った
「一生……寝てる?」
「そう言うお前はどうなんだよ?」
「………無理したらダメだよ…」
力哉は一生の額に触れようとした……
一生と瞳が合い……視線を外せなかった
お互いを見ていた
唯……何も言わず……互いを見つめ合っていた
その時、副社長室のドアをノックされた
ドアを開けに行くと……
総務部の田中一だった
「力哉、今夜どうする?」
気安く田中は声をかけて来た
「あ!行きます…」
「なら待ってるね!」
田中は力哉の肩を抱いて紙を渡した
一生はそれを見て……何も言わずに……
副社長室を出て行った
田中も力哉に伝達だけ伝えると出て行った
力哉は「………妬いてもくれないんだ……」と呟いた
別れたんだもん……
妬いたりしないか……
何故……あの日……
あんな事を言っちゃったんだろう……
力哉は後悔した
一生の傍にいられれば良かった
でも……欲が出ちゃったのだ
愛されたいと……
想ってしまったのだ
……力哉は気を取り直して仕事に掛かった
副社長室を後にした一生は……
親しげな力哉と田中に……
ムカッとした
ムカッとする資格なんてないのに……
アレが、力哉の恋人なのか……
でも………薬指に……指輪があった……
結婚してるのか?
一生は悶々となった
一生は聡一郎に
「なぁ、力哉の所に良く顔出す奴……誰か知らないか?」
と、聞いた
聡一郎はPC画面を見ながら
「本人に聞けよ」
とあしらった
「………聡一郎……本人に聞けねぇから聞いてるんだ…」
「……多分、総務の田中一かな?」
「そいつ……結婚してる?」
「妻と子供がいるな…」
一生は聡一郎を睨み付けた
「僕を睨むのはお門違いだ!
そんなに気になるなら見張ってろよ」
「………見張ってたらストーカーやん…」
「………なら、定期的にメール入れてもらったら?」
「………お前の悠太みたいにか?」
悠太はどこで何してるか、聞いてないのに逐一聡一郎に送って来ていた
そして返りにコンビニに寄ると必ず
『聡一郎、何か欲しいのある?』
と聞いてくれるのだ
「悪いか?」
聡一郎は一生を睨み付けた
「………悪くない……」
「一生、お前さ、力哉に言えよ」
「………もう俺は言う資格もない……
何度も傷付けて軽く扱って来たからな……
力哉は大切にしてくれる人を見付ける……って言ったんだ」
「………お前……大切にしてやれば良いじゃないか!
お前がこれから大切にしてやれば良い!」
「………もう遅いんだろうな…」
聡一郎は一生を抱き締めた
「遅いなんて言うな!
お前は……何も自分で動いてないじゃないか!
必死に力哉を欲しがれよ」
「………俺は恋愛向きじゃない…」
「バカ…」
一生は聡一郎に絆されて泣いた
そこへ悠太が帰って来た
応接間のドアを開けて
「ただいま聡一郎」
と言おうとして……固まった
一生と聡一郎が抱き合っていたから……
悠太は背を向けて……応接間を出て行こうとした
聡一郎は「悠太!行くな!」と叫んだ
聡一郎は一生を離して、悠太に飛び付いた
「僕を置いて行くなんて許しません!」
「聡一郎……ただいま…」
「僕の好きなジュース買って来てくれましたか?」
「うん聡一郎…」
「なら部屋に行きましょう!
悠太、英語の勉強ですよ!」
「うん聡一郎」
手を繋いで聡一郎と悠太は応接間を後にした
一生はそれを見送って…
聡一郎の必死さを知った
無くしたくないから……聡一郎は必死に悠太を繋ぎ止める
自分は……何で力哉を手放したんだろう……
一生は泣いた
力哉の想いに泣いた
力哉……ごめんな
俺はお前に甘えすぎていたんだ
ずっと傍にいてくれたから……
当たり前になっていたんだ
力哉……
お前の手を……繋ぎ止めたい
お前を掴んだなら……
もう離さない……
康太と榊原が還って来た
力哉とは……
何の進展もなかった
夜遅く……康太と榊原は玄関に立っていた
「何処か行くのかよ?」
一生が聞くと
「力哉に呼び出されたんだよ
居酒屋にいるからな行って来る」
一生は悲しげな顔をして
「気を付けてな……」
と康太と榊原を見送った
二人は手を繋ぎ駐車場へと消えて行った
康太は「………バカだわアイツ…」と呟いた
榊原は「……本当にね…」と苦笑した
力哉に呼び出された居酒屋に向かう
居酒屋に行くと……一色和正と水野千秋もいた
「康太君!」
ウキウキ傍に行こうとする水野を一色は掴んだ
「……和正……痛い……」
「俺以外の男の処へ喜び勇んで行くなよ」
水野は頬を染めた
榊原と康太は笑っていた
康太は榊原の首に腕を回して
「……新婚は熱いな…」
と呟いた
「そうですね!」
と言い康太の唇に口吻を落とした
周りの社員は………
十分……貴方達も新婚ですってば!と心で呟いた
「力哉、大丈夫か?」
青い顔して笑ってる力哉に康太は声をかけた
「康太、僕は大丈夫です!」
力哉はニコニコ笑っていた
康太がいれば生きて行けるから…
康太は一色に
「千秋を壊さねぇ様に大切にな!」と声を掛けた
「壊したりしません!
大切に蕩けさせて挿れてますから!」と返した
水野は「和正のバカァ……」と泣いた
一色は水野を優しく抱き締め、頬にキスを落とした
「ゴメンね千秋…」
「和正…」
二人の世界だった
それよりも強烈なのは………副社長
康太に何もやらせず……用意する
榊原がいなきゃ生きていけなくする……
そして「良く噛んで食べるんですよ」と視線は康太にロックオン!
何かにつけて当然の様に口吻る
そして人が見ててもお構いなしで接吻
一色達のカップルがまだ初々しく見えた
恐るべし榊原伊織……
日々こうして康太をズブズブに愛して溺れさせて……何も出来なくする……
力哉はそんな二人を見ていた
二人は支払いを済ませると出て行った
康太を見詰めながらも……榊原の視線は………キツい
康太を見る時だけ優しいが……
それ以外は……視線で……
死にます!
と言う程にキツかった
力哉は康太と榊原と一緒に帰れば良かった……と思った
居酒屋を出て康太はため息を突いた
「……伊織…」
「何ですか?」
「……そろそろ許してやるか?」
「……ですね……力哉が壊れてしまいますからね…」
「………もう壊れかけてる
やっぱしアイツは……一生を選ぶんだな…」
「……仕方が無いですよ
好きは……止められませんからね……」
「……知ってるよ……伊織
オレはお前を愛せないなら……死んだ方がマシだ」
康太は胸ポケットから携帯を取り出すと
「一生?頼みがあんだけど?」
と電話した
『おう!何でも聞いてやるぜ』
一生は必ずそう言うのだ……
四龍の兄妹の言う台詞は何時も……
自分は後回しだった
「会社の近くの居酒屋知ってるか?」
『おう!知ってる!』
「そこに力哉を迎えに行って欲しい
顔色が悪かったからな…頼めるか?」
『………解った!迎えに行くよ』
「頼むな一生」
『おう!任せとけ』
「一生……」
『あんだよ?』
「………離すな……もう二度と…」
『……っ!………解った!』
榊原が電話を取ると
「榊原伊織が皆さんにお気を付けてお帰りくださいと申してたと伝えて下さい」
『解った!必ず伝える』
「一生、これが最後のチャンスです
もう……君に与えるチャンスはこれで終わりです」
『……解ってんよ!』
「ならば、もう……泣かせないで下さい」
『約束する!』
一生電話を切った
そして力哉のいる居酒屋に向かった
居酒屋に入ると……皆一斉に黙った
居酒屋に入る様な姿に見えなかったのだろう
一生は今風の服に身を包みモデルでも通る甘い顔をしていた
女子社員はざわめいた
近寄って来ると……皆……黙った
飛鳥井家真贋の側近と言える男だったから……
一生は皆の傍に行くと力哉に近寄った
「力哉」
名前を呼ぶと…力哉は唖然とした瞳を一生に向けた
一生はお構いなしで力哉の腕を取った
「荷物は?」
一生は力哉を誘いに来た田中一を警戒しながら力哉に声を掛けた
一色が一生を見ていた
一生は一色を見てニカッと笑った
力哉の荷物を持って姿勢を正すと
「副社長の榊原伊織が、皆さんお疲れ様でしたと、申しておりました
皆さんお気を付けて帰られる様にと申しておりました!
では、失礼致します!」
深々と頭を下げて、力哉を掴む
一生は有無を言わせぬ迫力で、居酒屋を後にした
一色と水野は二人で歩いて帰った
「ねぇ、和正」
「何だ?千秋」
「………力哉君と……あの男の子……恋人同士なのかな?」
「独占欲剥き出しの顔してたからな……そうなんだろ?」
「………力哉君……何時も悲しそうな顔してた……」
「……恋人が頑張るさ
千秋、お前も頑張ってくれるよな?」
「………え?……何を頑張るの?」
「そりゃぁ決まってるじゃん!
俺がイクまで我慢しろ!」
「………え……頑張る……」
水野は顔を染めて…そう言った
恋人のこう言う従順な所が堪らなく愛しくて……
一色は水野を抱き締めた
「千秋愛してる」
「……うん……僕も愛してるよ」
一色の胸に顔を埋め……水野は答えた
一色は水野を引っ張ってズンズン自宅へと向かった
「……正和……酔うと……イクの遅いよね?……」
水野はしまった……と思い出した
お酒が入った一色は中々イカない……
無理だ……
水野は足を止めた
一色は「頑張れ千秋」と言いつつ……
水野を引っ張って歩いていた
イクまで縛られて……鳴かされたのは……言うまでもないかも……
一生は力哉の手を引っ張って歩いていた
離すと……力哉が何処かへ行きそうで……力哉は離せなかった
「……一生……痛い……」
力哉が言うと一生は立ち止まった
「車、近くに停めてあるから…」
「……一生……康太に頼まれたんでしょ?」
だから……来てくれたのだ
「康太は俺にラストチャンスをくれたんだ!」
「……え?……ラストチャンス?」
「そう。お前を捕まえるラストチャンスなんだよ
このチャンスを逃せば俺はもう……お前の傍には行けねぇ…」
力哉は一生が何を言ってるのか解らなかった
「………僕の傍に?
亜沙美姉さんの処へ行きなよ」
力哉はクスクス笑いながら答えた
「……もう俺は要らない?」
力哉は笑いを止めて一生を睨み付けた
「僕を要らないのは一生じゃないか!」
一生は力哉を抱き締めた
「俺はお前に甘えていたんだ
力哉は絶対に……離れない……と想っていたんだ……
力哉……お前を離したくないんだ……」
力哉は泣きながら……暴れだ
「……もういい……一生の傍にいるのは辛いんだ
何も望まないでいたけど……やはり僕だって大切にされたい
恋人に甘えたい……」
「俺じゃ……甘えられない?」
力哉は俯いた
一生は力哉の顎を上げた
力哉は泣いていた
「……力哉……俺には最後のチャンスなんだ……
このチャンスを逃したら……俺はもうお前を掴めない
康太が許してはくれない……
お前を死ぬまで見て……過ごすしか出来なくなる
俺はそれは嫌だ……
力哉……お前の側にいたい……
力哉を抱いて眠りたい……
でも力哉が嫌なら……無理強いはしない
俺は飛鳥井康太の付属品だ!
顔は見なくちゃ駄目だろうけど……
もうお前には……近寄らない…
約束する……」
力哉は一生の胸を叩いた
「僕を大切にしろ!」
そう言い力哉は泣いた
一生は力哉を抱き締めて
「大切にする……
俺の一番は飛鳥井康太……
お前は二番になっちまうけど……もう泣かせない……約束する!
恋人として1番に愛す……それで許してくれ……」
「……ちゃんと抱き締めて寝てくれるなら……許して……あげる」
「抱き締めて寝る……
力哉だけしか抱かない
俺、力哉しか抱いてねぇぜ?
信じてなかった?」
「………一生はモテるから……」
「そこまでの節操なしじゃねぇよ!
恋人は安西力哉
お前だけだ……御前だけしか愛さない」
「なら何時も口にしてよ」
「………ごめん……恥ずかしかったんだよ……
でも力哉を失いたくないから何時も言う事にする
これは俺のラストチャンスだからな……
お前が手に入らなかったら…俺は……お前の横には行けねぇ」
「……一生……僕だけを愛してよ……
姉さんじゃなく……僕を見てよ」
「安西力哉を見てるよ
苦しんでた俺の側にいてくれたのは……お前じゃねぇかよ
ずっとずっと……魘される俺を抱き締めてくれてたのは、おめぇだけだ!
俺は力哉が欲しい……」
一生は力哉の唇に口吻た
そして姿勢を正すと……
「安西力哉さん
俺と永遠に一緒にいてくれませんか?」
と申し出た
力哉は一生を見ていた
目の前が揺れて……一生も揺れた
「返事は?力哉……」
心配そうな一生の瞳が力哉を覗いた
力哉は「はい!」と誓いの言葉を口にした
一生は力哉を引き寄せた
「力哉……抱くぞ」
「……うん…一生のモノにして…」
一生は力哉と手を繋ぐと…駐車場へと向かった
駐車場に停めた車の助手席を開けて力哉を乗せた
そして自分も運転席に乗り込んだ
車を走らせようとバックミラーを見ると………
康太が笑って手を上げていた
榊原が康太を抱き寄せて……手をふった
一生は窓を開けて手をふると……
車を走らせた
康太と榊原はそれを見送った
「……ラストチャンスはモノにしたかよ」
康太は笑った
「奥さん、夜景を見つつ、ホテルに泊まりませんか?」
「良いなそれ」
「僕の愛で染めてあげてます」
康太は嬉しそうに笑った
「伊織……全部お前のモノだ」
「それを確かめに行きましょう」
康太と榊原は闇に消えて……
愛を確かめに行った
一生は力哉を車に押し込めると運転席に乗り込んだ
「何処で抱かれたい?」
一生は車を走らせ力哉に問い掛けた
「……どこでも良いよ…」
「ダメ!プロポーズした日なんだぜ?
今日は特別なる日なんだぜ力哉!」
「………なら海の見えるホテル……」
「パシフィコ横浜?
ホテルニューグランド?」
「………ホテルニューグランド…」
「なら、予約しねぇとな!」
「………僕が予約する…」
「おう!頼むな」
一生は山下公園に向けて車を走らせた
力哉は胸ポケットから携帯を取りだしてホテルの予約をした
「部屋取れたよ…」
「うし!行くか!」
一生はニカッと笑った
力哉は胸がときめいた
一生に抱かれる……
本当に久し振りだった……
車をホテルの駐車場に入れた
そしてホテルの中に入って行きフロント目指した
力哉が「予約していた安西力哉です」とキーを貰いに行った
力哉は案内は断って一生とエレベーターに向かった
エレベーターに乗り込むと一生は力哉の手を握った
一生は強く……強く………力哉の手を握りしめた
力哉は一生を見ていた
夢のような気分で……
落ち着かなかった
一生は力哉を促して部屋へと向かった
部屋を開けると力哉を部屋に入れた
そして鍵を掛けた
一生は力哉に向き直った
力哉に手を差し出した
「俺の手を取ってくれ力哉…」
力哉は一生の手を取った
一生は力哉を連れて寝室まで向かった
力哉は震えていた
「恐い?」
「………怖い訳じゃないんだ」
「乱暴になんてしねぇぞ?」
「解ってるよ一生……
一生が僕を乱暴に抱いた事なんて一度もないよ……」
レイプ紛いに抱かれた記憶なんてない
何時も蕩ける様に愛撫してくれる
一生の必死さは解っていた
「……震えてる……」
「………何かね夢みたいなんだ…」
「夢じゃねぇよ…」
一生は力哉に口吻た
「服を脱いで……」
一生は力哉に頼んだ
力哉は震える手で…スーツの上着を脱いだ
そしてネクタイを解き……
Yシャツのボタンを外した
一生はそれを見ていた
そして自分の服も脱いだ
力哉は一生の勃起した股間を見て……脱ぐのを止めた……
「……ぁ……」
一生は自分の性器を握り締めた
「力哉が欲しくて……こんなになってる…」
「……一生……」
力哉はYシャツを脱ぎ捨てると……ズボンも脱いだ
そして下着を脱いで……ベッドに寝た
一生は力哉に重なった
優しく口吻を送って……乳首を摘まんだ
「……ぁん…一生……」
「良くない?」
「そんな事ないよ……」
一生は脱ぎ捨てた上着を取ると胸ポケットからチューブを取り出した
「……なっ…何?……」
「塗るとな……理性が飛ぶ……
催淫剤入りの潤滑剤」
「…ゃ……変なの使わないでぇ……」
「力哉を良くしてやりてぇんだ」
一生は掌に潤滑剤を総て絞って出すと……
力哉の性器を擦り上げ亀頭の割れ目に擦り込んだ
そして秘孔に塗り込み解していく
「……一生……ぁん……あぁん……何でこんなモノ……」
力哉は一生に訴えた
「最後のチャンスを絶対にモノにするつもりだった…
お前を手にしたら……感じさせてやりたかったんだ……」
「…他の誰か……じゃなく?」
「……他の誰かなんて要らねぇよ!
魘された俺を抱き締めてくれたお前だけいれば良い…」
一生は力哉の全身を舐め……潤滑剤を撫でつけた
指を……四本咥えていた
「力哉……四本入った…」
「……嘘……ねぇ……一生……欲しい……ねぇ、まだ?」
「俺が欲しい?」
力哉は頷いた
「なら言って?」
「…一生が欲しい…」
「何処に?」
力哉は顔を真っ赤にした
「………意地悪……ゃ……動かさないでぇ……あぁっ……んっ…」
「力哉に言って欲しいんだよ…
なぁ、言って力哉」
力哉は俯せになるとお尻を高く突き上げた
そして秘孔に指を挿し込み
「……ココに……一生のが欲しい……ねぇ挿れてぇ……」
一生はコクンッとツバを嚥下した
「後ろから挿れて欲しいの?」
「嫌……一生の顔が見たい……」
「なら力哉、上に乗りなよ」
「……え?……恥ずかしいよぉ……」
一生は寝そべると力哉を跨がらせた
一生は力哉の秘孔に滾る肉棒を当てた
「ほら、腰を下ろして……」
力哉は腰を下ろした
指を四本咥えていた秘孔が一生を咥えて歓喜していた
「……ぁんあぁん……あんあん……一生…」
力哉は一生に縋り付いた
一生は力哉の中を擦り腰を動かした
激しく貫き……力哉を求めた
力哉に塗った催淫剤入りの潤滑剤が一生も狂わせる
一生は力哉を求めて夢中になった
力哉は一生のもたらす快感に……喘ぎっぱなしで……声が掠れた
魘された熱は……中々引かなくて……力哉を翻弄した
愛されていた
この体躯は……一生に愛されていた
力哉は一生を抱き締めて……意識を失った
一生は力哉の中の精液を掻き出し……抱き締めて眠った
目を醒ました時
一生の顔が飛び込んで来た
「起きた?」
「うん……僕気絶してたの?」
「……昨日は止まれなかったからな……体躯辛くないか?」
「……大丈夫だよ」
「無理しなくても良い……
俺は力哉を無理させたい訳じゃない…」
「……一生……」
「辛い時はちゃんと言ってくれ」
「……うん……」
「起きて支度しねぇと遅刻になるな」
力哉は起き上がった
「遅刻は困る……」
一生は力哉を抱き締めた
「昨日の事覚えてる?」
力哉は頷いた
「俺のだからな浮気はするなよ」
「浮気なんてしてないよ?」
「田中一とか言う奴…親しげだった」
「………彼には奥さんも子供もいるよ?」
「俺以外に無防備な顔すんな」
「してないよ?」
「懇親会の日は迎えに行く」
「良いの?」
「当たり前だろ?
力哉を離す気ねぇから!」
「………嬉しい…」
「愛してる力哉!」
「……僕も愛してるよ!」
「お前のこれからは俺と共に……だ!」
「……うん……嬉しい…」
「さて支度するか
真贋の秘書さん、昨夜と同じネクタイですか?」
「……え?……どうしよう…」
「後でネクタイ持って行ってやる」
「ありがとう…」
「力哉、起きるぞ」
一生は力哉の手を引っ張りバスルームに連れて行った
身支度をして、ホテルを後にする
ロビーに行くと………
康太が笑っても座っていた
「おはよう力哉」
康太に言われて……力哉は真っ赤な顔をした
「沢山愛されたか?」
力哉は頷いた
「一生はラストチャンスをモノにしたんだ
もうおめぇを泣かせたりしねぇだろ?」
「……康太……」
「ネクタイ変えねぇとな!
オレは着替えてから出勤するわ」
「……え?康太……」
「伊織、帰ろうぜ」
「ええ。着替えないと駄目ですものね」
榊原は笑って康太と共に帰って行った
一生は唖然として康太を見送った
「……あの二人……まさか……」
「……みたいだね…本当に仲が良いね」
「俺らも負けずと仲良くしてやろうぜ!」
「……それは無理だよ…」
「………だな……あれ程に熱烈は無理だな」
一生は笑った
力哉はキーを返して清算しようとフロントに行くと、榊原が清算した後だった
全く……あの二人は憎いんだから……
一生は力哉と共に飛鳥井の家に帰って行った
康太の側にいる為に……
君へと続く場所にいく
僕達は離れては生きられない
だから努力して君へと続く場所へ逝く
力哉は笑っていた
幸せそうに笑っていた
そして一生に
「………僕達はあの二人のいる場所に行こう……
あの二人に続く場所へ逝こう」
「おう!俺等の場所はあそこしかねぇからな!
死ぬまで、二人で駆けていこうな!」
力哉は頷いた
もう迷わない
愛されてるって……解ってるから……
「一生、愛してるよ」
「俺も力哉だけ愛してる」
見つめ合い、二人はホテルを出た
そして飛鳥井の家へ帰って行った
共に……
それしか願っていないから………
僕を生かしているのは
康太、君だよ
END
【愛される日々】
力哉は目を醒ました
俯せに寝ていた体躯を引き寄せられ、背中に口吻を落とされた
「起きた?」
振り返ると優しい瞳をした一生の顔があった
昨夜、一生に抱かれて…そのまま意識を飛ばしたのだ
「……僕……気絶した?」
「ごめんな力哉……辛かったら本当に言ってくれ…」
「辛くなんかないよ…
でも気絶ばかりしてたら一生が満足するか……不安…」
「俺は満足してるぜ
力哉と寝れるだけで満足だ」
一生が笑う
その笑顔に力哉は幸せになれる
一生の笑顔が好き
一生の話し方が好き
一生の全部が好き
背後から抱き締められて……一生の熱を感じる
耳に一生の吐息を感じる
力哉は幸せすぎて……一生の方に振り向こうとした
「……ダメ…こっち向いてろ」
「……え?何で……」
力哉は一生に腕を伸ばして気付いた
「…………あ………コレ……」
力哉は自分の左手の薬指を凝視した
「恥ずかしいだろ?……
こっち向いとけ!」
一生は照れて力哉を振り向かせなかった
不器用な男の……
不器用なりの求愛だった
薬指には銀色の飾りが光る指輪がはまっていた
「………一生……」
「俺のだからな」
ぶっきらぼうに一生は言う
一生らしくて力哉は笑った
「ねぇ一生、僕は君のモノだけど、君は?僕のモノだよね?」
力哉が言うと一生は
「………なら印をつけろよ…」
「指輪……はめてくれる?」
「………良いぜ……お前が作るならな…
俺の指輪、外すんじゃねぇぞ!」
虫除けは必要なのだ
力哉はもう俺のモノだと言う虫除けは欠かせない
大人しくて控え目で美人な力哉は人気があるのだ
「……指輪……外さないよ…
僕は君のモノだもん」
「なら、今日の帰り、指輪を買いやがれ!はめてやる」
力哉は喧嘩腰に言われて笑った
「……ぁ……一生……」
笑って気付いた
力哉の中に一生はまだ入っていた事に……
昨夜から……すっと?
だから背後から抱き締めているのか?
力哉には解らなかった
「……昨夜から……」
「……そうお前の中に入ったまま寝てた…締め付けるな……力哉……ぁ……ぁ…」
一生は力哉を掻き抱き肩に噛み付いた
「…ゃ……噛まないでぇ……」
甘い痛みも快感に変えて力哉は喘いだ
「お前は俺のモノだからな!」
「…一生の……僕は一生のだから……もっと擦って……」
力哉の腰が動いて……一生を追いつめて行った
「なら俺はお前のモノになってやる!
お前の男の……モノだ味わえる」
「ぁんあぁん……あぁっ……一生……」
一生は力哉の乳首を摘まんで引っ張った
背後からせわしなく腰を打ち付け……指は力哉の乳首を弄る
「力哉……イクっ……一緒にイケるか?」
「……僕もイクっ……あぁっ一生ぃ……かず……」
力哉は一生の手を取ると舐めた
一生は力哉の中に薄くなった精液を飛ばした
力哉も自分の腹に薄くなった精液を飛ばした
はぁ……はぁ……荒い息づかいが響いた
「下痢するからな洗ってやる」
一生は力哉の中から抜くと、力哉を抱き上げた
そして浴室に向かい、精液を掻き出してやった
一息着くと力哉は一生を洗ってやった
年下の恋人を力哉は甘やかす
一生は良い子して洗って貰っていた
「疲れた?」
「……少し……でも嬉しい疲れだよ」
一生に愛された疲れだもん
力哉は笑った
一生は力哉を抱き締めた
力哉はシャワーを持つと互い体躯の泡を落とした
ついでに悪戯する一生の顔にも……
「こら力哉……」
シャワーで濡れた一生は……
いい男だった
こんないい男が自分の恋人だなんて……信じられない
ボーッと一生の顔を見る力哉に一生は
「どうしたよ?」と問い掛けた
「……何か夢みたい……」
「夢なんかにするかよ!勿体ない!」
一生は力哉を引き寄せた
「夢じゃねぇぞ」
「うん…」
「お前を幸せにする」
「僕も一生を幸せにするよ」
「俺等は離れられねぇんだ
だから二人で築いて行くしかねぇんだよ」
「うん、今夜……指輪買いに行こうね」
「俺に似合うの買ってくれよ」
「うん……僕のだって言う証だもんね
一生に似合うの探すよ」
一生は強く……力哉を抱き締めた
そして湯船に浸かると、浴室を出て支度を始めた
力哉がさっさと着替える
一生も着替えて姿見でチェックする
そして一生は力哉のネクタイを絞めてやる
「力哉、男がネクタイを絞めてやる本意はな、そのネクタイを後で外す為なんだせ!」
一生はキザに言いウィンクした
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