27 / 38
第27話 久遠(くおん)の恋人①
側に行きたい…
あの瞳に……
映して貰えるなら
この命……
消えてなくなっても良い……
【序章】
100000万年の遙か昔
天界と魔界が自由に出入り出来ていた時代があった
天使と魔族は仲は良くなかった
その為に小さな諍いなら日々あった
天使は魔族を嫌い
魔族も見下す天使を嫌っていた
そんな時、一人の堕天使が魔界の地に降り立った
堕天使ルシファーは魔界を手中に納める為に
魔族に喧嘩を売った
そして魔族は……
たった一人の堕天使に負けて…
従う事となった
堕天使ルシファー
魔界の地に降り立った
たった一人の堕天使は……
天使を相手取って喧嘩を売った
それが天魔戦争の始まりだった
10000年にも及ぶ戦いで……
天使は壊滅状態になった
魔族も壊滅状態に陥った
天使も魔族も疲れ切っていた
闘いに疲れ……
種族は壊滅状態に陥った
天使は……迎え撃つだけの力は……
なかった
魔族も……迎え撃つだけの力は……
なかった
大天使ガブリエルは友だった男の真意を確かめる為に魔界に降り立った
友が神に謀叛など立てる訳がない
ガブリエルはそう思っていた
魔界の地に降り立ったガブリエルはルシファーに近寄った
たが鉄壁の壁に阻まれ……
素戔嗚尊の刃の鋒に……引き裂かれ
天界に舞い戻った
ガブリエルは無益な戦いに叫んだ
何故だ?
何故殺し合わせねばならぬのだ?
神よ!
この無益な闘いを止めてくれ……
天使に襲撃されたら……壊滅状態は避けられない
魔族に襲撃されたら…天使は…滅ぶ
互いにそこまで追い詰め…
警戒をしていた
魔族は大陸から龍族や四神を迎え入れ魔界を再生し始めた
だがダメージは避けられなかった
脅える日々に……
神々は正常な判断を失った
やられる前に何とかせねば……
追い詰められてゆく
駆り立てられてゆく
神々は集結した
持てる限りの力を合わせ……
乗り切る為に……
その手始めに……
古来の神は集まり禁断の魔方陣を引く事を決めた
どんな天使が束になって掛かって来ようとも
火焔の焔で焼き尽くす魔物を生み出す!
それしか魔界を救う手立てはなかった
かって……冥府に君臨した……皇帝炎帝……
彼を呼び出す
古来の神々は賛同して、十二支天は体の一部を提供した
素戔嗚尊は冥府に渡って、伊耶那岐の骨を拾って来た
骨格は魔界の絶対の力を用いた伊耶那岐の骨
心臓は毘沙門天が半分差し出した
神々が体と力の一部を差し出し
冥府に体の一部を取りに行き
創り出す
それしか魔界が助かる手立てはなかった
それ程に魔界の者達は正常な判断が出来ぬ程に追い詰められていた
筆頭に立ったのは天照大神と夫の建御雷神だった
未だに魔界に絶大なる指示を持つ天照大神
古来の神の代表と言える神だった
彼女に賛同して神々が集まった
転輪聖王、素戔嗚尊、建御雷神は天魔戦争の覇者だった
誰よりも先に闘いに挑み駆け抜けた覇者だった
その転輪聖王が禁断の魔方陣を引いた
禁断の魔方陣の真ん中で
全裸の天照大神が全裸の建御雷神と愛し合いセックスをする
神々の見守る中、二人は体躯を繋ぎ……精液を天照大神の中に放つ
そして子を成すと言う
神々の子は相伝
力を持ち寄り創りし存在だった
裸体を臆する事なく晒し天照大神は魔方陣の中に立っていた
まるでヴイーナスの様に神々しい裸体だった
建御雷神はそんな妻を魔方陣の中で抱いた
転輪聖王が激しく交われと指示を出す
激しく獣の様に妻とセックスをした
天照大神の腹に宿った瞬間
転輪聖王は神々の力と骨格を天照大神の腹の球体に向かって放出した
腹の球体はその力を受け、見る見るうちに膨れあがった
天照大神の腹が臨月まで大きくなる
神々はその光景を固唾を飲んで見ていた
臨月まで腹が膨れ上がると天照大神は苦しみだした
大きく股を開き、出産をする
腹の子は天照大神の産道を通って
血塗れになって……
産まれた
転輪聖王は嬰児を布に包み抱き上げた
「我が名は皇帝神 炎帝」
と産まれたばかりの子が……
喋った
神々は罪を犯したのを知った
神々は……
自らの過ちを……
知った
だが生み出された子は……
莫大な力を秘めていた
消そうとすれば……
こっちが消される
火焔の焔で焼き尽くし……
魔界を“無”にするかも知れない
救世主を求めて……
この世に生み出した
だが…………その子は………
破壊の限りを尽くすかも知れぬ……
恐ろしさに……
神々は……後悔の念を抱いた
天界も魔界に負けずと
化け物を作ろうと動き出していた
創造神は怒りに震えた
愚かな滅ぼし合いは何も残さないのを
何故気付かない?
何時か気付くかと黙って見ていれば……
壊滅的な潰し合いで互いを“無”にしようとした
そればかりか………
生み出してはならぬ化け物を、この世に生み出した
神は愚かな行為に怒り
天界と魔界を切り裂き、その間に人の世を創った
魔界と天界は自由に行き来は出来なくなった
そして総ての首謀者として
堕天使ルシファーは創造神の手により
処刑された
“無”に消され…
消滅しようとした瞬間
素戔嗚尊はルシファーの魂の一欠片を飛ばした
崑崙山の八仙なれば、なんとかしてくれる!
そう信じて……素戔嗚尊は最後の力を振り絞り
堕天使ルシファーの魂の欠片を飛ばした
創造神は……
それを解っていて黙認した
欠片を追ってまで……消滅する事はなかった
魔界の神々は………
創造神が天界と魔界を引き裂いた時
炎帝も消滅させると想っていた……
だが、炎帝は消滅する事はなく
天照大神と建御雷神は
自分の子として、誰よりも愛して育てた
【出逢い…】
炎帝は何時も一人だった
友達もおらず
何時も一人だった
兄の雷帝は、そんな弟を気にしていた
雷帝は炎帝が生まれ出る瞬間
傍で見ていた
到底……神が生まれ出る光景ではなかった
だが雷帝にとったら弟だった
雷帝は心に決めていた
この子を誰よりも愛そう
誰よりも大切に見守って行こう
そう心に決めていた
炎帝は生まれて直ぐに喋ったが
その成長は…遅かった
1000年の時を子供で過ごした
子供の容姿で過ごした
この子は永遠にこのまま?
育たないのかも知れない
両親はそう思った
子供のままで良い……
子供のままの方が良い……
他の神に敬遠される事のない容姿でいれば良い……
両親は……そう願った
天魔戦争の諍いも忘れ去られつつ在った
炎帝の存在は……
ある意味脅威でしかない
炎帝は1000年の時を幼児のまま過ごし
後は3000年の時をかけて成長して行った
そして炎帝は普通の神々と変わらぬ成長を遂げた
雷帝は一人で過ごす炎帝が不憫で
友人の黒龍を連れて遊びに来ていた
黒龍は炎帝を何時も気に掛けて側にいてやった
誰よりも炎帝が儚く……脆いのを知っていた
そして雷帝から炎帝の出来た過程も聞いていた
全部知って炎帝の傍にいてくれる存在は……
父と母と兄と黒龍位しかいなかった
ある日黒龍は炎帝を自宅に招待した
金龍と銀龍は炎帝の存在は知っていた
炎帝が出来た工程も……薄々知っていた
天魔戦争の終わりを迎える頃、龍族は魔界へと流れ住んだ
詳しい事は……知らないが……
炎帝が魔族から敬遠されているのは知っていた
黒龍は炎帝を自宅に連れて来た
金龍と銀龍、そして兄弟に炎帝を紹介した
「雷帝の弟の炎帝だ!
仲良くしてやってくれ!」
黒龍はそう言い家族に紹介した
赤龍は「俺は赤龍、ヨロシクな!」と炎帝に声を掛けた
青龍は黙って炎帝を見ていた
地龍は「地龍です!ヨロシク!」と友好的に炎帝に接してくれた
金龍と銀龍は誰よりも炎帝に優しく接した
炎帝は初めて青龍を見た日
恋をした
瞳を輝かせ
炎帝は青龍を見ていた
黒龍は直ぐに解った
炎帝が青龍に恋したのを……知った
だが相手は青龍……
一筋縄にはいかない相手だった
堅物で融通がきかない
いずれ法皇となるべく存在だった
生まれて来た時から四龍の役割は決まっていた
黒龍が光と闇のバランスを司る神なれば
赤龍は愛と平和を司る神だった
青龍は法の番人、秩序と規律を司る神だった
地龍は地脈のバランスを司る神だった
四神の兄妹は生まれる前から力を引き継ぎ存続させる
青龍は誰よりも堅物で寡黙だった
炎帝は青龍に恋して……
黒龍の家に通った
黒龍の家に泊まる日も多かった
その日、炎帝は黒龍の家に泊まった
寝惚けた炎帝はトイレに行って……
黒龍の部屋と青龍の部屋を間違えた
青龍はいきなりベッドに炎帝が潜り込み慌てた
抱き着いて……胸に顔を埋められ……
青龍の理性は……尽きた
青龍は炎帝の臭いを嗅ぎ……
初めて射精した
物凄い興奮に襲われた
こんな興奮は生まれて初めてだった
青龍は朝まで炎帝を抱き締めた
腕の中にしっくりと収まる存在に……
青龍は心を奪われた
炎帝が青龍を見る
だが、青龍は冷たい瞳を炎帝に向ける
それでも良い……
青龍の姿を見られれるだけで
それだけで良い
自分の生まれを知れば……
忌み嫌われる
こんな化け物など……
愛してくれる……物好きなどいない
それは炎帝自身、誰よりも知っていた
【想い…】
黒龍の家へ行っても青龍を見る日はなくなった
ある日を境に青龍は部屋に鍵を掛けた
ある日……
それは青龍のベッドで目醒めた日
炎帝はビックリした
目が覚めたら目の前に青龍の顔があったから……
炎帝はうっとり見とれていた
目を開けた青龍がそれに気付き
「黒龍のベッドと間違われましたか?
追い出す訳にも行きませんでした
今後は間違えぬ様にして下さい!」
と冷たく言い放った
好かれているとは思わない
嫌われている可能性の方が大きい
青龍のドアは……この日を境に鍵を掛ける様になった
開かれないドアを眺め……
炎帝は涙した
龍は18をもって成人と見なす
青龍は18になると湖の前に居を構えた
青龍は誇り高き金龍の息子として……
敷かれたレールの上を走り続けた
お見合いを何度もした
お相手が決まらぬ中、青龍は炎帝に似た子を抱いていた……
だが誰を抱いても‥‥
あの日……炎帝の匂いでイッたあの時の興奮は得られなかった
あの時の興奮を求めて、青龍は浮き名を流した
だが誰のモノにもならなかった
でも成人を超えて……
龍は婚姻をする
青龍の婚姻も……
そんなに遠くない
炎帝は青龍が居を構えた湖に立って……
青龍の家を眺めていた
ある日炎帝は父、建御雷神と共に崑崙山へ行った
八仙が炎帝を見たいと建御雷神に言ったからだ
父と初めての旅に出た
だが……炎帝は父と過ごすより…
湖から青龍の家を眺めて過ごしたかった
行きたくない……と言う炎帝に
雷帝は「行かなくても良いです」と言った
「お前が行きたくないなら行かなくても良い」
「父者が困らないか?」
「放っておけば良い」
雷帝の言い分に安堵しつつも……
結局は崑崙山へ向かった
父は優しい男だった
むさ苦しい容姿だが……
ゴツくて厳つくて、岩の様に硬い男だった
だが誰よりも優しく
誰よりも炎帝を愛して慈しみ育てた
炎帝が崑崙山に降り立った日
八仙は炎帝を初めて見た
その体躯が秘めた力を目の当たりにした
「………この子の中身は空だな… 」
八仙は言った
中身の入ってないスカスカの蝋人形と変わりがないと……
「この子の果ては果てしない
誰かと巡り会えば……変わるのに……」
八仙は言った
「………誰かと……巡り会えってくれれば……
その想いなら誰よりも強い!
炎帝の生涯を……空っぽで終わらせたくはない!」
建御雷神はそう言い泣いた
「愛しているのだ炎帝を……
我が子じゃ‥‥子の幸せを願わぬ親などおらぬ!」
「お前達の想いがあれば……道は繋がる
だが……この果てしない闇を埋めねば……
破滅に走る……どの道魔界は炎帝の手に掛かっている
この子にこの欠片をやろう!
10000年輝きを放ち続ける悲しき魂を……お前にやろう
この魂はお前しか使えぬであろう……」
そう言い八仙は炎帝に欠片を渡した
欠片を貰っても炎帝は使う気はなかった
だが、青龍の湖に死にかかった白鳥を見付けると
炎帝はその欠片を白鳥の中に入れた
死にかけた白鳥は生き返った
だが……銀色の聖なる妖炎を靡かせ……
群れには帰れなくなった
一人になった白鳥を……
炎帝は引き取って育てた
それがスワンとの始まりだった
炎帝は……
果てしのない長い時間を生きて来て
飽きていた
中身のない傀儡
何時暴走をしだすや判らぬ破壊神
真綿に包んで絞め殺す
炎帝を大事に扱うが……
誰も炎帝を見なかった
炎帝には見られたくはなかった
皇帝閻魔の眼を持つ瞳に見られたくはなかった……
人の罪状を暴き……魔界に君臨した皇帝閻魔
彼の瞳を持つ炎帝の瞳の色は、変わっていた
誰も炎帝を見ない……
それは在るとは……言わない
それを生きてるとは……言わない
存在総てを否定され生きてゆく
それさえに飽きていた
炎帝が生きる意味
それは青龍を見る為
青龍の蒼い鱗を見たい
青龍の蒼い妖炎を身に纏い
秩序と規律の鎧を着た青龍が見たい
好かれていないのは解ってる
炎帝を見る時の……
あの冷たい瞳
絶対に炎帝を見ない瞳……
時々向けられるその瞳に……
ドキドキする
青龍
青龍
愛してる
絶対に愛されないのは知ってる
だが想うのは……
自由だ
【擦れ違い】
青龍は炎帝を見ていた
人気は絶大だった
だが……近寄り難い雰囲気は……
横に立つ黒龍と溺愛兄の閻魔の存在の所為
炎帝を好きだと言う魔族は多い
あの漲る生命力に惹かれずにはいられない
炎帝は何時もつまらなさそうに……
役務についていた
その時の気紛れで暴走する
それを取り締まるのは青龍の役務だった
規律違反ばかりする炎帝を叱る存在はいない
青龍は何時も炎帝を呼び出し注意した
「君には自覚がないのですか?」
閻魔の弟と言う自覚が……
青龍が嫌味を言う
「オレは食えねぇもんは持たない主義なんだ」
炎帝はそう言い笑った
惹きつけて止まない…その瞳に青龍は釘付けになる
青龍はため息をついた
すると炎帝の瞳が傷付いた様に翳った
青龍はそれを見て見ぬフリをする‥‥‥
囚われたら二度と離せなくなるのが解っているから‥‥
ある日、また青龍は炎帝を呼び出した
説教する為だ
なのに炎帝は逃げ出した
逃げようとする炎帝を捕まえ……
青龍は炎帝の薫りを嗅いでしまった
炎帝の薫り
太陽を一身に浴びた様な匂いだった
嗅いでいたら眠くなる
抱き締めて寝たなら……
青龍はその想いを振り払った
苦しげに眉を顰め……自分を立て直す
炎帝……
手に入るなら……君が欲しい……
青龍は苦しい胸に蓋をする
叶わぬ想いだった
誰も……堅物の青龍など欲しがらない
青龍は自分を知っていた
炎帝は苦しそうに……眉を顰める青龍が
自分を嫌っているから……
そんな顔をするだと想っていた
好かれている自身なんてない
産まれた経緯を知れば……
化け物と罵るだろう……
破壊神と言う異名を付けられているのを知っている
中身が詰まっていない傀儡を
好きなる奴なんか………
いない!
青龍が結婚した
お相手は……一族一の美人だと言う女だった
誰もが羨み、羨望の瞳を向けた
中々結婚しない青龍の為に用意した妻だった
炎帝は青龍の結婚式を……
陰から見ていた
…………蒼い龍……
青龍……
誰かのモノになってしまうなら……
嫌われてもいい
この手に掛けて……
共に……息絶えたかった……
青龍は王子の様な龍の一族の衣装に身を包み…
立っていた
龍の一族の婚礼の衣装だった……
黒龍が炎帝を式場に入れた
出席するか?と言う黒龍に炎帝は陰で見てるだけで良いと言った
木陰から……その様子を見ていた
決して自分のモノにならぬ……
青龍をただ見ていた……
青龍は辟易していた
結婚などする気はなかった
だが一族がそれを許さなかった
金龍の子でいようと……
誰よりも想った
だが………欲しいのは……
炎帝
唯一人……
他は要らない
だが一族の期待に……
父を裏切りたくなくて……
挙式を挙げた
つまらない……
横に立つ存在が炎帝なら良いのに……
想いは報われる筈なんてなかった
青龍は……長い片想いをしていた
決して言葉にして言う日はない
誰にも解らぬ……
想いを胸に抱き……
他の人の……夫になった
新婚旅行へ出向いた
魔界一人気のスポットへ出向いた
その夜、初夜を迎える
青龍は乗り気ではなかった
誰を抱いても……
炎帝を想って自慰をするより興奮はしない
誰を抱いても満たされない
青龍は行為そのモノに……希望を見いだせずにいた
初夜
何もしない夫に妻は痺れを切らした
妻は豊満な乳房を青龍に見せ付け
服を脱いだ
青龍の顔に乳房を押し付け
開いた股を青龍に触らせた
「ねぇ、あなた、触って」
妻は青龍の前でヴァギナを開いて見せた
「舐めて…触って…」
青龍の手を持って妻がせがむ
青龍はあまりの気持ちの悪さに……吐いた
気分が優れない青龍の横で
妻はオナニーを始めた
「青龍……ぁんぁぁん抱いてぇ…」
膣を開いて見せ指を突っ込んだ
青龍はそれを穢いモノでも見る様に見ていた
最悪の日
初夜は……青龍に結婚の後悔をさせた
新婚旅行から帰った日……
青龍の妻は実家に帰った
一度も青龍の湖の前の家に足を踏み込む事はなく……
別居となった
妻に触らぬ夫など要らなかった
イライラと感情は募る
炎帝は些細な暴動を繰り返し
青龍は注意するのに疲れていた
炎帝が近寄る
その匂いに……青龍の方が暴走しそうになった
眠ると夢を見る
「……炎帝……ぁぁ……炎帝……」
炎帝を抱き一つに交わり……犯しつづける夢を見る
夢と現実と解らなくなる
危うい感情
ギリギリの理性で踏み止まるが……
何時理性が切れるかも知れない
青龍は炎帝と距離を持とうと想っていた
そんな矢先、炎帝が目の前を歩いていた
イライラと青龍は声を掛けた
「何処へ行くんですか?
ここは私有地です!
誰の許可を得て入ってるのですか!」
青龍が声を掛けると……
傷付いた炎帝の瞳に出くわした
炎帝は儚い……
そして脆い
誰よりも傷付いてる癖に……
平気な顔して装うのだ
青龍はイライラ任せに声を掛けて
傷付けてしまったと後悔した
炎帝は青龍を見ていた
その綺麗な瞳に青龍だけを映していた
青龍の胸が高鳴る
「湖に何をしに行くのですか?」
「スワンを……」
炎帝の横にはスワンがいた
炎帝に懐き寄り添うスワンがいた
銀色の妖炎を垂れ流すスワンを炎帝は連れていた
「ご…ごめん……入って良いって言われてたから…」
炎帝は謝った
「誰にですか?」
「黒龍に……ダメだった?ごめん……」
炎帝は下を向いた
青龍は炎帝が黒龍や赤龍、地龍と仲の良いのを思い出した
黒龍とは特に仲が良い
その黒龍が言ったのだろう……
ダメだと言う権利はなかった
「黒龍の許可を得てるなら行けば良い」
赤龍は湖に行くのを許可した
だけど気になって……炎帝に着いて湖に向かった
湖の向こう岸から炎帝を見かけた
炎帝を見掛け……
青龍は炎帝にだけ聞かせるピアノを弾いた
炎帝にだけ贈るピアノの演奏だった
スワンと炎帝は水遊びをしていた
キラキラと水飛沫を上げて…
炎帝は笑っていた
愛しさが込み上げて来る
子供の頃……黒龍のベッドと間違えて青龍のベッドに潜り込んだ日
炎帝を想い自慰をした日……
あの日から……青龍は頭の中で何度も炎帝を犯していた
現実と妄想の区別がつかなくなる
炎帝が欲しい
青龍も限界だった
スワンと戯れる炎帝がバランスを崩し
青龍の腕に飛び込んで来た
偶然に……青龍の理性ははじけ飛んだ
炎帝を掴み草むらに押し倒した
そして貪る接吻を贈った
炎帝を見ていた
楽しそうにスワンと戯れる姿を見ていた
なのに不意に青龍の胸の中に飛び込んで来た
青龍の理性は焼け尽きた
青龍は炎帝を芝生の上に押し倒した
「え?……青龍……んっ……」
抵抗の言葉なんて聞きたくなくて……
青龍は炎帝の唇を塞いだ
執拗な接吻で炎帝を翻弄する
人気者の炎帝だから経験がない筈がない
そう思うと胸がチリチリ嫉妬で焼け付く
炎帝は抵抗しなかった
青龍の手で触っても
服を脱がして舐めても……
抵抗しなかった
強引に炎帝の中に押し入って時……
痛さのあまり炎帝は気絶した
その体躯は無垢な誰の手垢も着いていないと……知った
青龍が初めてだと知った
青龍は胸が一杯になった
炎帝……
抜く事なく炎帝を犯し続け……執拗な接吻で炎帝を貪った
その日から……炎帝と青龍の関係は始まった
【逢瀬】
炎帝との関係はその後も続いた
スワンの水浴びに来る炎帝を、青龍は求めた
炎帝の気紛れか?
青龍が求めても炎帝は拒む事なく……
青龍に応じていた
青龍は、柔らかいベッドの上で……炎帝を抱きたかった
だが、炎帝は此処でしか手に入らない……
そう思っていた
他ではダメだが……
此処では炎帝は自分のモノだった
青龍だけのモノに出来た
青龍だけの炎帝
愛が募れば募る程……
青龍は言葉をなくした
唯……炎帝を欲しいだけ……求めた
許されるなら……総てが欲しい
許されないなら……今だけ……
炎帝は青龍の気紛れだと想っていた
こんな痩せた……みすぼらしい体躯
青龍の好みの筈ない
浮き名を流した青龍のお相手は……
男も女も……美男と美女だった
そんな青龍が自分など求める筈なんかない
懲らしめる為?
お仕置き?
青龍の意図が解らなかった
でも良い
気紛れでも良い
青龍が触ってくれるなら……
だが、柔らかいベッドの上で……
抱かれて青龍の背に腕を回したかった
青龍の体臭を嗅いで愛されてみたい
自分にはそんな価値などないのだろう……
だから……湖の前の芝生でしか……体躯を繋げて貰えない
最初は乱暴に……だった
だけど、痛みで気絶すると優しく抱いてくれた
以来、優しく蕩けさせ……柔らかくしてから挿入してくれる
これ以上望んではいけないんだ
これ以上望めば……
青龍は見向きもしてくれなる……
炎帝は膝を抱えて泣いた
青龍……愛してる
自分の中に誰かを愛する感情があるなんて……
不思議だった
こんな傀儡にも……
青龍を想う心があるなんて……
青龍の妻が妊娠した
魔界を駆け巡る噂に……
炎帝は湖に行くのを止めた
幾ら想っても……青龍には妻が居る
忘れていた訳ではない
青龍に愛されてるなんて想ってないから……
でも妻が妊娠した……
青龍は妻を抱いたのだ……
自分を抱いた後に……
妻を抱いた
青龍と4年の歳月……関係を続けていた
夢中になって青龍に抱かれていた
1年経っても
2年経っても……
青龍は何時も湖に来た炎帝を抱いてくれた
だから……もしかしたら……
なんて想ってしまった
遊びなの?青龍……
遊びだったの?
明かりの消えた青龍の家を何時までも見ていた
あの家に……妻と居るの?
青龍……
青龍……
「今日も朝まで青龍の家を見てる気かよ!」
黒龍が冷え切った体躯に毛布を掛けた
「黒龍……」
「そのうち、ぶっ倒れる……」
「青龍に逢いたい……」
「逢いに行けよ!」
炎帝は首をふった
「来い!」
冷え切った炎帝を掴み歩き出す
黒龍は自分の家に炎帝を入れて暖めた
弟の様に見守って来た存在だった
空っぽの炎帝の中には青龍しかいない……
それを知って応援して来たのは黒龍だった
炎帝は黒龍に抱かれ泣いた
一晩中……泣いて
泣いて……
眠りに落ちた
黒龍は炎帝の髪を撫でた
「………お前の瞳は……蒼いのしか映らないんだな……」
黒龍はそう言い炎帝の瞳に口吻を落とした
「…………炎帝……誰よりも愛してる……」
黒龍は誰よりも炎帝の幸せを願っていた
誰も居ない部屋で青龍は酒を飲んでいた
飲んだくれ…倒れて気絶する
そんな毎日を送っていた
炎帝を想えば…体躯が熱くなる
炎帝を想い……自慰に耽る
炎帝しか欲しくなかった
炎帝だけ欲しかった
だが炎帝は黒龍のモノ
黒龍から奪って……抱いてしまいたい
青龍だけしか見せない様に部屋に閉じ込めようか?
首を鎖で繋いで……閉じ込めようか
それとも自分を見ない瞳を潰そうか……
飛んでいく羽根を毟り取り
足を折ろうか……
そしたら自分だけを見る?
「私は莫迦か……」
酒をかっくらい……止め処ない想いに……
自嘲する
壊れる
壊れてしまう
炎帝……
君がいないと……
壊れてしまう……
想いなら…
誰にも負けない
長い片想いをしていた
炎帝も……
青龍も……
互いを思うのに……
不器用な2人は……
それを言葉にする術を知らなかった
擦れ違う想いは……
互いに気付かせる事なく過ぎてゆく
【別離】
炎帝は浄化を司る神だった
人の魂を浄化する
だが、選別は苦手だった
この命は助かるけど
この命は昇華せねばならぬ
それがどうしても……
出来なかった
ならば総て昇華する
それは人の世のバランスを欠いてしまうと言われても
選別が出来なかった
人の世に大量の死者を出した
天変地異で多くの人が死んだ
炎帝は人の世に降り立ち
魂を選別せねばならなくなった
だが、選別はしたくなかった
何故?
魂を選別する?
助ける魂と
昇華する魂
何故選別せねばならない……
炎帝は……足掻き苦しむ魂の総てを昇華した
悪しき魂も
善良な魂も
幼き魂も
老いた魂も
総て昇華して“無”に還した
人の世のバランスを司る女神は怒りに満ち
閻魔に訴えた
「人の世のバランス崩してはならぬ!
炎帝は選別出来ぬのなら魔界には不要
閻魔、炎帝の処分をして下さい」
日頃から目に余る炎帝を処分しろとの声は
各方面から出て 来た
閻魔は魔界大法廷で炎帝の処分の決議をした
阿弥陀は空っぽな炎帝は脅威だった
他の神も…何時暴走をするか解らぬ炎帝は……
魔界に不要と打ち出した
閻魔は炎帝を人の世に落とす事を決めた
炎帝は閻魔の執務室に呼び出された
「何故呼び出されたが解るか?」
「…(総て)……昇華したから……」
「お前は浄化を司る神
総てを無に還して良いとは想わないだろ?」
「………何故?選別せねばならぬ?
オレはそれが出来なかった
この命は助けて、あの命は昇華せねばならない
それが出来なかった…」
炎帝は……辛い胸の内を話した
閻魔は心を鬼にして炎帝に伝えねばならなかった
「人の世を狂わせた
その罪は大きい」
「解ってる」
「お前は日頃から目に余る暴走をしてきた」
「……解ってる」
「魔界には置いてはおけない」
青龍がいない世界……
それなら昇華された方がマシだった
「お前は人の世に堕とす」
「兄者は甘いな……
消滅すれば良いのに…」
「………兄の情けだ…
今宵は好きな事をして過ごせ
明日お前を人の世に堕とす」
好きな事をして?
ならば想いは一つだった
柔らかいベッドの上で青龍に抱かれたい
それしかなかった
炎帝は閻魔に深々と頭を下げると……
閻魔の執務室を後にした
閻魔は炎帝を見送り……ため息を着いた
炎帝……
兄はお前の幸せを願ってやまない
何も詰まっていないお前の幸せを……
青龍は炎帝が人の世に降り立った時
総てを昇華してしまった話を聞いて……
もしや湖に来るのでは…
と想い、湖に繰り出した
炎帝が湖に来なくなって……かなり経つ
炎帝を抱いていた湖は今も変わりないのに……
炎帝の姿だけなかった
青龍はあれから炎帝を待って毎日、湖に出ていた
炎帝が何時湖に来ても見付かる様に
湖から目を離さなかった
なのに……炎帝は姿を現さなかった
夢中になっていたのは青龍だけだった…
違うと想いたかった
その日炎帝はトボトボと湖に向かい歩いていた
隣にはスワンの姿はなかった
炎帝は湖に立つ青龍の姿に驚いていた
最期に炎帝に起きた奇跡だった
青龍がいた
青龍がいてくれた……
炎帝は覚悟を決めて青龍の名を呼んだ
「青龍……」
名を呼べば青龍の瞳が炎帝を見た
「炎帝……」
炎帝は勇気を振り絞った
最初で最後の頼みを口にした
「青龍……頼みがあるんだ
聞いて欲しい……最後に一つで良いんだ……」
両手を白くなる程握り締め……炎帝は言葉にした
必死の炎帝の頼みだった
「聞いてやるから言ってみなさい!」
「………オレの家に来てくれないか?
オレの家のベッドで抱いてくれないか?」
炎帝の総てだった
その想いを込めて言葉にした
青龍は最期に一つ……の意味を知らなかった
「叶えてやろう……」
青龍は言った
柔らかいベッドの上で……炎帝を抱きたいと想っていたのは……青龍もだから……
炎帝は泣きそうな顔をした
何故?そんな悲しい顔をする?
青龍には解らなかった
今回も甘い処分で終わると……噂されていた
青龍は閻魔の邸宅と建御雷神の邸宅の横に建つ
炎帝の家に招かれた
広い家は調度品で満ちていた
広いベッドは……1人で寝るには大きい過ぎるベッドだった
青龍はそのベッドに炎帝を押し倒した
炎帝の臭いを嗅げば……正気でなどいられない
服を脱がし尖った乳首を舐めた
湖では……触れるしか出来なかった乳首を舐めた
「ぁん……ゃ…そんなに舐めないでぇ……」
痛い程舐められて炎帝は鳴いた
炎帝の股を広げ、硬く閉じた蕾に舌を這わせた
舐めて舌と指で解してゆく
感じすぎて炎帝は鳴いた
青龍の背に腕を回して縋り付いた
「……青龍……青龍……」
炎帝は青龍の名を呼んだ
青龍は夢中になり自我を忘れて炎帝を貪った
一つに繋がり腰を揺する
始終炎帝は青龍に縋り付いていた
離したくない……と炎帝の腕が搦み着いた
幾度も果てて……
抜かずに炎帝の中を犯した
炎帝はそれを総て受け止め…青龍の胸に顔を埋めた
意識を手放す
青龍は炎帝を胸に抱き…
意識を手放した
離したくなんかない
もう離れられない
青龍は炎帝を離せないと想った
離さない
覚悟をした
誰よりも愛している
ベッドの上で炎帝を抱きたかったのは
青龍も変わらなかった
認めるしかない
認めねば……狂う……
炎帝を抱き締める青龍の唇に
炎帝は口吻を落とした
「愛してる…青龍」
眠った青龍に贈る最後の言葉
…夜が明けたら……
炎帝は人の世に堕ちる
青龍はどう思うだろう……
少しは淋しがってくれるかな?
愛されてるとは……想わない
でも嫌われてないと想いたい
抱いてくれるのだから……そう思いたい……
炎帝は抱き締める青龍の腕を外して……
立ち上がった
青龍に愛されたい体躯に……
服を着る
そして青龍を断ち切る様に……
背を向けて……
部屋を出て行った
目醒めると炎帝の姿はなかった
ベッドの炎帝が寝ていたへこみは冷たく……炎帝の不在を告げていた
青龍は起き上がり辺りを見渡した
眠りに落ちた青龍は都合の良い夢を見ていた
青龍に「愛している」と告げる炎帝の声を……
聞いていた
青龍はそれは夢だと想った
夢でも良い
これから炎帝に愛して貰えば良い
青龍は炎帝を離せないでいた
炎帝を自分だけのモノにするつもりだった
服を着て家の中を探した
だが、何処にも見当たらない
青龍は炎帝を探して外に出た
その時青龍の耳に……
「魔界大法廷で決議が決定したんだってな!
炎帝は人の世に堕とされるらしいってな」
そんな声が聞こえた
青龍はその者を捕まえて
「詳しく話せ!」
と問い質した
「……くっ…苦しい……」
苦しむ者を目のして青龍は手を緩めた
ゲホゲホ咳をして青龍に話した
「炎帝が人の世に堕とされるんだよ」
と告げた
「何時!何処でだ!」
気迫の青龍に怯え……
「きょっ……今日だよ!
炎帝は女神の湖に向かって歩いて行った筈だ」
馬でなく?
「何故?馬でなく?」
「馬は青龍の山に眠らせたそうだ
だから歩いて行くしかない…」
青龍は話だけ聞くと、その者を離した
龍に姿を変えて青龍は女神の湖に向かった
間に合ってくれ!
もう離したくはない
もう離れたくはなかった
青龍は風を呼び起こし雨を降らせた
そして気流に乗って女神の湖へと急いだ
逢ったなら……
二度と離さない
共に人の世に堕ちる
青龍の覚悟だった
青龍の愛だった
眠った青龍に愛してると告げて……
その足で人の世に堕ちるのか?
ならば私は酷い奴のままじゃないですか!
炎帝の体躯を抱いて……
一度も柔らかなベッドの上で抱いてやらなかった
初めて柔らかなベッドの上で抱いた朝
人の世に堕ちるというのか?
どんな気持ちで…?
何を想って…?
炎帝!…………もう離しはしない!
青龍は気流を巻き起こし飛んで行った
【久遠の恋人】
炎帝は青龍に抱かれたベッドから起きると
直ぐに青龍の山に向かった
天馬を眠らせる
もう魔界には戻る日はないだろう
そう心に決めて……
天馬を眠らせた
そして青龍が住む地に……呪いを掛けた
炎帝と繋がり求め合った場所に……
呪いを掛けた
草木も生えない地になれ
青龍と過ごした地を……他の誰にも渡したくはなかった
最後の……我が儘だ……
許してくれ青龍……
そして女神の湖に向かった
女神は炎帝を待っていた
「思い残す事は有りませんか?」
「あぁ、もうねぇ……」
「閻魔の許可なくば、二度と再び神としてこの地に降り立つ事は出来ません」
女神は炎帝に告げた
人に堕ちる
二度と神として……魔界の地には降り立てぬ
百も承知していた
「………女神…解ってるから……」
その時……辺りを闇が包んだ
そして降り出しだ雨は激しさを増した
炎帝の目の前に……
蒼い龍が姿を現した
蒼い龍は地に降り、何時もの姿に戻って炎帝を見た
「魔界の問題児が無事人の世に堕ちるか確かめに来たのかよ」
炎帝は強がって青龍に言った
だが青龍は知っていた
炎帝が誰よりも儚くて弱い事を……
「愛してる!は起きてる時に言いなさい!」
青龍は炎帝にそう言った
眠りの中で聞いた言葉は都合の良い夢なんかじゃない
炎帝は泣きそうな顔をして青龍を見た
「さぁ言いなさい!
愛してるって言いなさい
そしたら君と人の世に堕ちてあげます!」
「………青龍……それはダメだ……」
炎帝は首をふった
「目醒めて君がいない生活は御免です!
愛し合った朝に……君はいない
君は私に抱かれて……その足で湖に来たの?
1人で人の世に堕ちる気だったのですか?」
「…オレは愛された記憶だけ有れば生きてゆける……」
青龍に愛された記憶だけ胸に抱き……
1人で人の世に堕ちるというのか?
青龍は胸を押さえた
「愛してるは起きてる時に言いなさい
そしたら共に人の世に堕ちてあげます
さぁ、そのお口で言いなさい!」
炎帝は泣きながら……言葉にした
「青龍……愛してる」
夢のような奇跡
こんな奇跡がおきるなんて想っていなかった……
青龍は炎帝を抱き締めた
「………私も愛してます炎帝!」
炎帝は青龍を見た
嘘……
信じられない想いで……一杯だった
青龍は炎帝を胸に抱くと
「女神、私を炎帝と同じ時代に堕としなさい
今後、私は炎帝と共に逝く
同じ時代に生きて共に過ごす
さぁ、私と炎帝を人の世に堕としなさい」
硬く抱き合い
湖に飛び込んだ
飛び込む瞬間、青龍は如意宝珠を黒龍のいえに向けて放り投げた
青龍の覚悟だった
何も持たぬ者として炎帝と共に生きる
親の期待や、一族の期待を裏切る以上は持ってはいられないとケジメを着けた
人の世に堕ちて……
幾度も転生した
幾度も生まれ変わった
神の頃の記憶はそのまま……
何一つ忘れる事なく転生を続けた
10000年前、女神が言った
『飛鳥井の人間になり生きなさい』……と。
言われ飛鳥井の人間になり
転生を続けた
100年に一度、飛鳥井を軌道修正をする為だけに転生を繰り返す稀代の真贋
家の為に転生を続けた
軌道修正を計る為だけに幾度も飛鳥井の稀代の真贋となった
そして幾度の転生に疑心暗鬼になった
愛されてないとは想わない
だけど青龍が愛してくれるのは…過去の記憶があるから……
今も変わらず愛されているのか……
不安になった
過去の記憶がなくなった時
自分は愛されるのか知りたかった
だから記憶を封印した
記憶を封印する前に青龍は言った
『私は記憶をなくしても君と出逢った瞬間
君に恋いに落ちます!
必ず君を愛します』
そう言い、輪廻の輪を再び渡った
今度は抱き合って輪廻の輪を潜って行った
物凄い圧迫感に……魂は潰れた
潰れて小さくなった
その分体躯も小さくなった
ともだちにシェアしよう!