28 / 38

第28話 久遠(くおん)の恋人②

今世で…【出逢い】 榊原は親に反抗して市立の小学校に通っていた 笙は幼稚舎から修学館 桜林学園だった 榊原は幼稚舎は桜林だった だが通うのが面倒だと小学校の途中で市立に通うと言いだし……真矢は転校させた だが清四郎は榊原に桜林に通え! と中等部から桜林へ通う手続きをさせた ならば桜林に通うならば寮に入ると条件を付けて、家から離れた 自分は親と同じ役者にはなれない‥‥ その絶望が榊原を頑なにさせた 中等部の入学式の日 榊原は恋をした キラキラと生命力が漲る少年に恋をした 彼とは同じクラスになった 飛鳥井康太 彼は出席番号1番だった 榊原は出席番号2番だった 出席番号順に席を並べた日 榊原と康太は隣通しになった 「オレ、飛鳥井康太!」 康太は榊原に手を差し出した 榊原はその手を取った 「僕は榊原伊織です」 「ヨロシクな!」 ニコッと笑って手を握る康太に…… 榊原の胸は……ドキドキした こんな感情は初めてだった 榊原は飛鳥井康太と謂うドキドキする少年から目が離せなくなった この日から康太と仲良くなった 「榊原ぁ!」 甘えた声で康太が呼ぶ このお口で……伊織と呼ばれたい…… 榊原の胸は張り裂けそうだった キラキラと康太がグランドを駆け回る 仲の良いのは緑川一生と四宮聡一郎 桜林の生徒なら……絶対に近寄らない【悪童】だった 人の弱みを握り… 言いなりにさせる 中等部執行部に入ったばかりの榊原達 生徒会に取っては目の上のタンコブだった 「飛鳥井ぃ~!」 とか 「康太!」 と、声がかかる 康太が歩けば、人が付いて歩く たちまち人が取り囲む そんな康太といると…… 康太を掴んで誰にも見せたくない……と 独占欲が出て来た 榊原は夢の中で毎夜、康太を犯した 「……ゃ…伊織……あぁんあっぁっ……」 と喘ぐ康太を欲望の限り犯し… 翌朝…夢精で下着を濡らしていた その下着を洗うのが嫌で‥‥捨てた事もある 自分が酷く汚く想えた‥‥ 夢の中で康太を犯す 現実と夢と……区別付かなくなって来ていた それが酷く榊原を苛み‥‥康太の傍を離れる事に決めた 「なぁ榊原、榊原伊織って時代劇の榊原伊織と一緒だな」 康太は、そう言い嬉しそうに笑った 榊原は…チャンスだと想った 康太の側にいるのは辛すぎて 離れるチャンスだと想った 離れれば………… この想いは……少しは薄れる…… そう思い榊原はそれを利用した 「僕の名前はそんなに面白いですか!」 榊原は急に怒った 康太は慌てた 「そんな意味じゃねぇ……」 「もう良いです! 君とはもう口も聞きたくないです」 榊原はそう言い康太から離れた 康太は泣きそうな顔をしていた 飛鳥井康太の初恋は…… 榊原伊織だった 中等部の入学式の日 康太は恋をした 榊原伊織と言う男の子に 康太は恋をした 運命を感じて‥‥‥恋をした 高等部の入学式の日 康太は入学式の色に染まるアーチに見とれて 上を見上げて歩いていた そして誰かにぶつかった 「………ごめん……」 誰かは康太を倒れない様に抱き締めてくれた お礼を言い見上げると榊原伊織だった 彼は冷たい瞳で康太を見ていた 「本当に君は落ち着きがない」 康太の横で笑っていた面影はなかった 桜林のエリート集団、生徒会長の執行部に入るのは中等部から決まっていた 「……ごめん……」 「ちゃんと前を向いて歩きなさい それと、ネクタイはちゃんと結びなさい!」 榊原はだらしないネクタイを結び直す 「高等部に上がれて良かったですね」 榊原の口から嫌味が紡ぎ出される 「高等部になったのですから 少しは自覚を持ちなさい!」 と言い捨て榊原去って行った 康太は榊原を見送り…… 空を仰いだ 好かれてないのは知っている 榊原は……いつの間にか桜林一のプレーボーイになっていた 流した浮き名は数知れず 一ヶ月持たない 恋人になれても…… 期間限定……長続きはしない 康太は絶対に自分のモノにならない青龍を見ていた 青龍…… 嘘つき…… 記憶を忘れてもオレだけ愛すって言ったのに…… 冷たい その瞳で見られたくなんかない 青龍…… 青龍…… 抱き締めて…… 愛してますって言って…… 康太は涙を堪えた そして目を擦ると…… 体育館に駆けて行った 榊原は急に腕の中に降って来た康太に狼狽えていた 太陽の様な康太の匂いを嗅げば…… イミテーションが色褪せる 誰を抱いても…… 康太を想って自慰する以上の興奮は得られない でも髪の色が似てるだけで…… 骨格が、瞳の色が……声が…… 似てるだけで抱けた 康太を抱いていると想えば……興奮した だが直ぐに褪める… 本物を見てしまえば… イミテーションのメッキはポロポロと落ちてゆく 恋人と長く続かないのは…… その所為だ 一度抱いても……二度は抱きたくない ゴムをしなきゃ……抱けない 一ヶ月……で別れるのは…… 罪悪感で少しは付き合おうとする だが抱いても手も握ってくれない 自分を見ない男に…… 去って行った 榊原は腕に抱き締めた康太の感触を……温もりを抱き締めた 康太…… 愛してます 君だけを愛してます でも君は穢すには…… 輝き過ぎてる 僕なんかが手を出して良い子じゃない…… 想いは募る 愛も募る だが、不器用な男は…… 想いを隠して…… 生きて行くしか術を知らなかった 朝一番に、康太の下駄箱のラブレターを処分する 執行部 部長の肩書きは必要だ 康太に寄り付こうとする虫螻を排除できる 「旦那、今朝もご苦労だな」 緑川一生がそう言い榊原に近寄った 「放っておきなさい!」 「3年の理科の教師が…… 放課後、康太を残して……押し倒そうと計画中だ」 「………え?」 榊原の眼光が光った させるか! 榊原は歯を食いしばった 「榊原、康太が寮に入るぜ 同室者は……康太の寝顔も匂いも好き放題だな」 一生は敢えてその台詞を吐いた 康太の長い片想いを…… そろそろケリを付けてやりたかった また………不器用な青龍の背中を押してやりたかった 愛してるから人の世に落ちたのに…… その唇は… 康太を傷付ける その分榊原も傷付く 胸を押さえて……その傷からは血を流し続ける そんな不器用な青龍を…… 弟を……赤龍は見守るしか出来なかった 女神の泉で……ずっと弟を見て来た 何故?人の世に炎帝なんかと堕ちたのか? 理解出来なかった 恋人同士だったのか? そんな噂聞いた事すらなかった…… 青龍と炎帝を繋ぐ…… 接点が見えなかった だから傍まで堕ちて来たのに…… この不器用な男は…… やはり青龍だった 康太は歩く時、余所見をする 落ち着きなく歩くからぶつかる その日も、空を見ていた 蒼い…… 蒼い…… 空見ていた 青龍の蒼…… 蒼い龍の鱗を想い出す その時、また誰かとぶつかった 前を見ると……榊原の恋人が尻餅を付いていた 恋人の横にいた榊原がため息をついた 「本当に君は前を向いて歩きませんね」 恋人を、引き起こし榊原はその腕に抱き締めた そして肩を抱き締めて……康太の横を…… 去って行った 康太は…… 近寄って来た一生に…… 「…………オレは飛鳥井康太にだけはなりたくなかった……」 と呟いた 榊原が見る空になりたい 壁になりたい 机になりたい 榊原が握る鉛筆になりたい …………だけど、冷たい瞳で見られる ………飛鳥井康太にだけはなりたくねぇ そう思った 一生は康太を抱き締めた 聡一郎も康太を抱き締めた 康太は泣いてはいなかった…… いっそ泣かれた方が……楽だった 「………康太、俺は飛鳥井康太が好きだ……」 康太を抱き締め一生は泣いた 康太が泣かないから……一生は泣いた 「僕も飛鳥井康太が大好きです 僕を照らす一条の光……それは君です」 聡一郎はそう言い泣いた…… 康太が泣かないから……聡一郎も泣いた 榊原は腕の中の恋人が…… 全く興味がなくなった 康太の横を通り過ぎる時に……BVLGARIの匂いを嗅いだ 康太の愛用の香水だ 幾らBVLGARIの香水を付けていても…… 康太の体臭の香水とは違った どんな香水を付けていても…… 康太の体躯からはお日様の匂いがする…… 榊原は興味がなくなった相手から背を向けた 「伊織さん!待って!」 「………興味がなくなりました……」 恋人は唖然として榊原を見送るしかなかった もう声は掛けて貰えない 泡沫の夢を見ていたと思うしかなかった…… 榊原の浮き名は……こうして流された そんな頃、飛鳥井康太が寮に入ると言う情報を耳に入れた 榊原は康太が寮に入るなら覚悟を決めるしかなかった 絶対に……誰にも渡さない 恋人になって親にもご挨拶に行く! そして暗黙と言うカタチで認めさせたら…… 高校を卒業したら一緒に暮らす! 自分の親にも紹介する それで、絶縁になろうとも困りはしない 寧ろ、ラッキーかも 康太と生きて行く上で……例え親でも、康太との仲を関与して貰いたくはなかった 今世で…【恋人】 康太が寮に入ると決定した その情報は執行部の部長をしている榊原の耳にいち早く入って来た 飛鳥井瑛太……OBからの依頼で特別枠として寮に入ると聞いた 榊原は四悪童を監視する側として同室を願い出た 康太の寝顔を…… 他の奴に見せる気なんてなかった 「舎監!飛鳥井康太の監視は僕がします!」 榊原の申し出を舎監は 「同室者は、瑛太さんが決める! 君になるかは……解らない 特別枠としてと……言わなかったか?」 「………はい……聞きました」 「瑛太さんには全校生徒の写真とプロフィール、入寮者の写真とプロフィールを渡してある 瑛太さんは、その中から選ぶと申されてる なので……俺にも同室者はどうこう出来る訳じゃない…」 「………解りました……」 榊原は舎監室を出て行った 榊原は寮の壁を殴った 「クソッ!」 康太が……誰かのモノになるのか? 康太の寝顔を誰かが見て…… 榊原は壁を殴り付けた 「…………他の誰かと……同室になるなら……」 康太の同室者を追い込めば良いのだ…… 他の誰かになど渡す気は………ない! 飛鳥井瑛太は舎監をしてる後輩から、全校生徒の顔写真付きのファイルを借りた 康太の同室者は…… 瑛太が吟味して選ぶ それが……愛する弟へしてやれる……唯一だと思った 瑛太は生徒のファイルを捲り…… 一人の男のページで手を止めた 「………この男……」 康太を迎えに行く時に何時も康太を見ている男だ…… 瑛太を睨み付けて…… 瞳は康太を追っていた 「執行部…部長」 瑛太と同じ役職をしている男…… 瑛太はその男の名を見て…… 唇の端を吊り上げた 「…………榊原……伊織……彼が……」 康太が栄養失調になる程……恋い焦がれた男か…… 瑛太は舎監をしている後輩に電話を入れた 「飛鳥井瑛太です!」 「瑛太さん!どうされました!」 「弟の康太の同室者、榊原伊織にして貰えませんか?」 「榊原ですか? ちょうど本人から申し入れされていたのです 解りました!榊原伊織に致します」 「今回は本当に悪かったですね」 「いいえ先輩!お役に立てて光栄です」 瑛太は電話を切った 榊原伊織の瞳を見れば…… 康太に恋い焦がれているのは解る 康太を汚したくないから……離れたのだろう 榊原の想いが……瑛太には痛い程に解った 康太が清らかであれば、ある程に…… 榊原は康太を遠ざけたのだろう…… だが……その瞳は……康太を求めて……恋い焦がれた そして康太が初めて恋した相手は…… 榊原伊織 これは成るべくして……引き寄せられる運命なのだと思った 榊原は舎監から、康太の同室者になれと言われた 飛鳥井瑛太が選んだ……と舎監は言った 榊原は覚悟を決めた ……康太が寮に来る日 榊原は落ち着かなかった 愛する康太が来るのだから…… ………到着の予定の時間を過ぎると榊原は落ち着きがなくなり…… ドアを開けて見に行こうと思った その時……康太が降ってきた ドアを開けたからドアを持っていた康太が…… 榊原の胸に飛んで来たのだ 康太の匂いに……榊原はドキドキと堪らなくなった 落ち着ける為に…… ついつい冷たい言葉を吐いて…… 康太の瞳が哀しげに翳った こんな顔をさせたい訳じゃないのに…… 不器用な男は…… 心を隠して平静を装った 康太との生活が始まった夜 榊原は寝ている康太の髪をずっと撫でていた 「どうせ…どうせ行くのも地獄、引き返すのも地獄なら、進んでみるしかないか…」 と独り言ち康太に口吻た 「お前がいるなら……僕は……」 地獄にだって堕ちるよ…… 康太と紆余曲折……経て恋人同士になった 初めて康太と結ばれた日 榊原は夢を見た 夢の中の男は泣いていた…… そして……やっと掴まえました……と安堵していた 榊原は欠けた半身を…… 取り戻した思いだった 康太がかけた封印を解いた日 榊原は何日も夢を見ていた 封印した記憶が総て戻って……解った あの夢の男は前世の自分で…… 恋人との約束を果たす日まで…… 榊原の中に想いを残していたのだ 絶対に……未来の自分が違えない様に…… 自分で掛けた愛の証だった 総てを想い出し 手放した如意宝珠も手に戻った 龍である自分を愛してくれるのか…… 不安はあった 炎帝を愛して…… 人の世に堕ちた 人になる自分には不要なモノだと…… 如意宝珠を手放したのに…… 炎帝に愛される人でいたかった 龍の自分など……愛されない そう想っていた 龍族でも……龍の姿は嫌悪する者もいる 種族が違えば…… 難しい事は百も承知だった 炎帝が龍を嫌いなら……炎帝の前では…… 絶対に龍にはならない……つもりだった 愛して欲しい 愛して……欲しい 嫌われたら……生きていけない 失ったら1秒でも……生きる気はない ………炎帝……愛してます 榊原の……いや……青龍の覚悟だった 炎帝はそんな青龍の杞憂など吹き飛ばす程に…… 青龍の総てを愛してくれた 不器用な男を…… 理解してくれ愛してくれた こんなに愛せる人は…… 未来永劫…現れない 炎帝しか愛せない ずっと……ずっと……愛してくれるか…… 青龍にだって……不安はある 「伊織、どうしたよ?」 「……康太……愛してます…」 「オレも愛してるかんな」 「この命が……なくなろうとも愛してます」 「オレも青龍だけ愛してる」 「………龍……でも?」 「おう!オレは青龍程に美しい龍は見た事はねぇかんな」 「………怖くないんですか?」 「おめぇになら噛み殺されても構わねぇ! おめぇがオレに危害を加える訳ねぇだろ?」 「………康太……種族が違えば……受け入れられない部分は出て来ますよ?」 「………オレは化け物だかんな…… …………青龍の方が……御免かもな…」 「僕の炎帝は化け物じゃありません!」 榊原は康太を強く抱き締めた 「………おめぇは……まだ知らねぇからな……」 「……何をですか?」 「…………」 康太は何も答えなかった 康太は……苦しんでいた 何を? とは解らなかったが…… 何時か…… 康太の口から話してくれると信じて 榊原は問い質す事はしなかった 康太と共に生きて逝く それだけを心に秘めて共に生きて逝く 飛鳥井康太を支えて 康太の影になる そうして生きて逝く それしか……榊原は願ってはいなかった 康太は黒龍から、魔界の混乱を聞いた 榊原が寝ている時に黒龍は康太の前に姿を現した 「………魔界では暴動がおきてる このままでは……魔界は崩壊する……」 黒龍は姿を現して……そう言った 「暴動?……魔界で何が起きてるんだよ?」 黒龍は康太に魔界での異変を話した 貴族制度に異議を唱えている輩が暴動を起こし…… 貴族や……知名度のある者をターゲットにしていると…… 「………我が父……金龍も狙われた 母上は……ショックで倒れた……」 「………魔界を沈静化……しろと?」 「………閻魔は……炎帝には言うな……と言っている 俺は八仙に頼んで……お前の前に姿を現しさせて貰っている…… 閻魔の知らぬ所だけは……解ってくれ……」 黒龍は苦しそうに……そう言った 「……沈静化するなら魔界の絶対的な存在がいるな……」 「………炎帝……」 「青龍に話そうと想う……」 黒龍は炎帝を抱き締めた 「………お前が出来た過程を話すのか?」 「………そうだ……オレが本当の化け物だと…… 教えるしかねぇ……他から青龍の耳に入るのだけは…… 御免だ……」 魔界の絶対的な存在になる それは神々が創りし存在だと……知らしめる必要があった 「………オレは元々は冥府の者だ……冥王ハデスの血を組む者だ…… 魔界の神々が……冥府の皇帝炎帝を呼び起こした…… 魔界の神々の手で……魔界に下り立った…… どちらにしても……オレは化け物だかんな……」 「違う!我が弟は……お前を愛している…… お前を化け物などと言う筈などない!」 「………黒龍……オレは覚悟はしてるんだ 何時か……青龍に話さねぇと……ってな」 嫌われて…… なくしたら…… 生きていけない…… それでも……炎帝には避けて通れぬ…… 道だった 黒龍は泣いていた 「……化け物なんて言うな! 我が弟は……そんな事は想っちゃいない! 俺もお前の事を……化け物なんて想っちゃいない! 我が友……炎帝よ! 俺はお前を誰よりも大切に育てて来た…… これからも、それは変わらねぇ……」 「………黒龍……」 「炎帝……おめぇは……大切な存在だ! 赤龍だって同じ台詞言うぜ! 青龍は命だって言う筈だ!」 「黒龍……炎帝の噂を魔界に流せ…… 神々が創りし存在だと知らしめろ! 元は皇帝炎帝……冥府の破壊神だと…な!」 魔界の絶対的な存在になり君臨する 兄の守るべき魔界の礎になる それが魔界に呼び出された……炎帝の使命だと想っている ………そしたら嫌でも…… 青龍の耳に入るだろう ……誰かから聞いたのではなく…… 自分の口から…… 嫌われて…… 見向きもされないだろう…… そう想っていた 総てを……青龍に話した 自分の出来た過程 自分の総てを…… 青龍をなくしたら…… その思いは大きい その想いに囚われて…… 雁字搦めになる 榊原に総てを告げた日 康太は死刑執行を待つ…… 囚人のように……脅えていた 自分の命がなくなる瞬間 康太は怖かった 榊原は顔色一つ変える事なく 康太の話を聞いた 途中……健御雷神が現れて…… 切々と息子を愛してくれと懇願された 懇願されなくても愛すつもりだった 誰が何を言おうとも…… 榊原の心は変わらなかった 「何故?今……そんな話をするのですか?」 今まで隠してきたのなら…… 敢えて言わずとも構わない 「……オレは近いうちに魔界に還る そしたらお前も…来るだろ?」 「当たり前です!」 「そしたら間違った事を聞くかも知れねぇ…… それは嫌なんだよ…… なれば……自分の口で告げた方が良い……」 成る程 榊原は納得した 「魔界では今…暴動がおきてる」 え?………榊原は驚愕の瞳で康太を見た 「……お前の父、金龍も闇討ちにあった…… 銀龍はショックで倒れたそうだ…」 榊原はその言葉にカッと頭に血が上った 「………誰が父を!」 「それを知ってどうする? 討ちに行くのか?」 康太の言葉に榊原は一気に冷静になった 「………すみません……取り乱しました」 「………魔界は今、変革期にある 魔界には絶対的な存在が必要だ…… オレは魔界の絶対的な存在になる!」 炎帝の覚悟を…… 青龍は見た 魔界の絶対的な存在になる 自分は化け物だと公表して…… 力で抑えつける そんな力も魔界では必要だった 皇帝閻魔がいたならば…… 絶対的な存在で君臨したであろう だが現 閻魔は絶対的な存在にはなり得なかった 魔界の絶対的な存在 それは炎帝しかあり得なかった 「………オレは元々は冥府の破壊神 皇帝炎帝だ それを母と父が先頭に立ち、古来の神々が終結して創った存在だ…… オレが絶対的な存在になる…… それがオレの存在理由だ……」 「君は青龍の妻になるんですよね?」 「………え?……」 康太は榊原を見た 「妻は夫の帰属です 夫の許可なく使う事は出来ませんよ?」 「………伊織……それでもオレは…… やらねぇとならねぇ事がある」 「ならば、君の想いのままにしなさい 僕は君から離れる気はありません はっきり言って僕は炎帝の魂さえ入っていれば…… ヒヨコでも犬でも……愛せるんです 君の魂さえ入っていれば…… 僕はそれだけで君を愛せます 器は取るに足らないモノです」 「……青龍……オレは化け物なんだ……」 榊原は康太の頬を叩いた 「君は僕の愛する存在を化け物なんだって言ってるも同然なんですよ? 僕は化け物なんて想ってはいません! 愛する君に代わりはありません!」 榊原は康太を抱き締めた 康太の瞳から涙が溢れて…… 零れ落ちた 榊原は零れ落ちる涙に口吻を落とした 「愛してます…… 僕を愛して下さい…… 僕だけを愛して下さい……」 「………青龍……愛してる…… お前だけしか愛せない……」 榊原は康太に接吻して 「僕も君だけを愛してます…炎帝」 神様…… 何も持たない…… 人形として生きてきた自分に… 青龍を与えてくれて…… 本当にありがとうございます… 青龍と知り合わねば…… 今も空っぽのまま…… 破壊と殺戮を何とも想わぬ……破壊神のままだった 康太は榊原の背に腕を回し…… 強く…… 強く…… 抱き締めた 優しく抱かれて泣かされて…… 魂を結んだ久遠の恋人が一つに交わる これは…… 偶然か? 奇跡か? それは誰も解らない 解っているのは…… 互いの存在は…… 変わりがない絶対的な存在という事だけ…… 【未来永劫】 炎帝は…… 青龍の屋敷の窓に立っていた 窓の外にはスワンが気持ち良さそうに泳いでいた 青龍は背後から…… 妻を抱き締めた 「どうしたんですか?」 「………あの向こう岸から何時も見ていた……」 「………知ってます」 青龍は強く……強く……妻を抱き締めた 魔界に還って、炎帝の家と青龍の家を行き来していた 殆どの生活の拠点は、炎帝の家になるが スワンが湖で泳ぎたいだろうと、役務がない時には青龍の家で過ごしていた 「奥さん 愛してます」 青龍は炎帝に口吻て囁いた 「………人の世は……」 「炎帝……僕達はもう人の世に関与してはならないのです…」 「……解ってる…… 解ってる……んな事……」 「……奥さん……夫を前にして……他のことを考えるなんて……許せません」 青龍は炎帝のガウンを床に落とした 全裸の肢体にガウンを羽織っただけだった 炎帝は月光に…… 肢体を晒し立っていた 「炎帝……愛してます」 「オレも愛してる青龍…」 人の生を終えて 魔界に還って来た 魔界に還って直ぐに盛大な結婚式を挙げた 魔界一の結婚式だと唸らせた 龍族の婚礼衣装に身を包み 青龍は笑っていた 炎帝は純白の姫の婚礼のドレスに身を包んでいた 青龍は「美しいです奥さん」と妻に口吻た 魔界の誰もが、その瞳に留めた婚礼だった パレードをして婚礼を知らしめた 「青龍……」 夢の中にいる様に…… 馬車に揺られて魔界の皆に祝福を受けた 閻魔も、健御雷神も天照大神も笑顔だった 黒龍は泣いていた 嫁に出す……父兄の気分だと…… 泣きまくっていた 赤龍や司命も祝いに駆け付けた 赤龍と司命は遅れて魔界に還って来た 人の世の……我が子達が…… 独り立ち出来るまで人の世にいた 康太を亡くして…… 玲香や清隆は清四郎や真矢は悲しみに暮れ… 瑛太は弟の後を…… 追えずに…… 社長として存在していた 寡黙な男は……更に無口になった 翔は康太の後を継いで真贋になっていた 翔を盛り立てて、流生、太陽、大空、烈がサポートしていた 瑛智は瑛太の後を継いで副社長になっていた 音弥は神楽の養子に入り、学園の後継者として手腕を震っていた 一生……赤龍は 聡一郎……司命は それを見届けて、魔界に還って来た 炎帝は何もいわないが…… 遺して来た子達の事は…… 何時も気にしていた 魔界に還って来た以上は…… もう、人の世に関与は出来ないと解っているが…… 我が子なのだ…… 「炎帝……その気になれない?」 ベッドの上に……押し倒されて 体躯中愛撫されて…… 青龍は炎帝に問い掛けた 「青龍……愛してる…」 「僕も愛してます」 秘孔に指を挿し込まれて……康太は喘いだ 「……あぁっ……もっと……」 「指では限界ですよ?」 炎帝は榊原の腰に脚を巻き付け誘った 「……ねぇ……青龍……」 「欲しいですか?」 「青龍……焦らすな……」 青龍は炎帝を抱き上げると、双丘を開いた 秘孔に滾る熱を埋め込め……抱き締めた 「……あぁん……青龍……青龍……」 「炎帝愛してます…」 「オレも愛してる」 青龍は腰を揺すりながら炎帝を抱き締めた 炎帝は青龍の首に腕を回し……接吻した 共に…… その想いだけで…… 共に生きてきた この先も… 離れる事なく…… 魔界での命を終えても…… 共に…… 未来永劫……君を…… 君だけを愛していたい 青龍の願いだった 炎帝の願いだった 「青龍……共に……」 「……炎帝……共に……」 この命が尽きるまで…… 愛してる…… オレを離すな 絶対に…… 未来永劫、共に その想いだけで生きていく この先も ずっと………             2014/12/11完結

ともだちにシェアしよう!