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第33話 valentinekiss~Valentineの恋人たち~ ③

【四宮聡一郎×飛鳥井悠太】 四宮聡一郎は吐きそうな想いと闘っていた 「………うっ……吐きそうです……」 真っ青な顔をして……チョコを混ぜていた 一生は聡一郎に 「………止めとけ聡一郎……」と声をかけた 「バカズキ、放っておいて下さい」 一生は聡一郎の唇を摘まんだ 「………んな可愛くない事を言う口はこれか? それがパパに言う言葉かよ!」 「………パパ……僕の事は放っておいて下さい」 「……ほら、パパに話してごらんよ? あんでそんなにチョコを辛いのに作ってるか?」 一生が言うと聡一郎は………ゴォォォォォォォ~と炎を背負って……座った瞳で一生を見た 「アイツ……去年貰いやがったんだよ!」 …………話が見えません…… 一生は既に後悔していた 「………誰が何を貰ったというのよ?」 「あの野郎……手作りチョコなんて貰いやがって! しかも……それを持って帰って来やがった そして僕に言ったんだ!アイツは!! 聡一郎は不器用だしチョコ嫌いだから手作りチョコなんて作らなくて良いから………って! クソッ!僕は作ってみせるとも! 吐きそうだか何だか知らねぇけど……耐えて作ってやるよ! 僕の底力を思い知ると良いんだ!アイツは!!」 聡一郎は………相当ご立腹だった 悠太は聡一郎がチョコが嫌いだから、作らなくて良いから……って言ったんだろう なのに……そう言った本人がチョコを貰って来たから…… 聡一郎は怒るわな… 「……で、そのチョコはどうしたの?」 「アイツ……康太にやりがった! 毎年、悠太はチョコを全部兄に献上してるんだとよ! だから貰って来るんだよ!クソッ」 「そう言えば……ずっとそうだよな?」 山積みのチョコを目の前に、康太はかなりご機嫌でチョコを食っていたっけ…… 「アイツ……僕の事を不器用だって言いやがった!」 不器用だから………仕方ないじゃん と一生は想ったが言わなかった 冷静な聡一郎はオールマイティ何でも出来ると想われがちだが…… 相当に不器用や奴だった 料理なんて作らせたら………そのまま放り込んで煮そうな程に…… そして聡一郎は言うんだ 『素材はそのままが1番!』だと……こじつけるのは目に見えていた 「…………悠太……僕のチョコも食べすに献上するのか…… 見たいってのもあります…… まぁ康太に渡すなら仕方ない…… 康太なら諦めます だけど何故……他の奴から貰うんだ? 僕は……それが許せません……」 聡一郎のヤキモチだった チョコなんて貰うんだから……恋人はいない…… そう思ってる奴に横取りされたくない…… 悠太が浮気したら…… 即別れる そして……もう人なんて愛さないんだ…… 聡一郎は色々と面倒くさい奴だった 康太はそれを黙って見ていた 康太は一人で桜林学園へと出向いていた 佐野春彦のいる職員準備室でビーカーの紅茶を飲んでいた 「彦ちゃん…」 「何だ?康太?」 「………恋って面倒くさいもんだな」 「………どうしたよ?一人で学園に来たりしたりするし…」 「……悠太と少し話をしようと想ってな……」 「飛鳥井悠太の恋人は四宮聡一郎なんだろ?」 「…………彦ちゃん……あんで知ってるんだよ?」 「本人が公言してる」 「…………何時頃から?」 「高等部に上がると同時に学園中の知る所になっている」 「なら……あんで悠太は今もチョコを貰って来るんだよ?」 「そりゃぁ悠太は飛鳥井康太の弟だからだろ? 悠太はチョコは総て兄に献上してると公言してる 悠太に渡せば康太へ行くのは常識と化している」 「………そう言う事か……」 「しかし聡一郎は難しい奴なのに悠太もチャレンジャーだな…… そう言えば昔から聡一郎は悠太にだけは甘かったな 誰よりも厳しく怒る癖に、誰よりも甘やかしてるのは聡一郎だったもんな」 「流石彦ちゃん、よく見てるよな」 「悠太は瑛太に似ているからな… ついつい見ちまうんだよな……」 「彦ちゃん…」 「何だ?」 「………愛する人の具合はどうよ?」 「先月退院して来た…… やっと………俺の所へ帰ってきてくれた……」 「大切にな……」 「康太……ありがとう……」 康太は何も言わずに笑った ドアがノックされ、佐野がドアを開けると 悠太が準備室へと入ってきた 悠太は準備室に康太がいて驚いていた 「………康兄……」 「話がある、座れ」 悠太は言われるとおりに椅子に座った 「おめぇ、今年はチョコは貰って来るな」 「…………康兄はチョコ……要らないの?」 「オレは今年はバレンタインには飛鳥井にいねぇからな……チョコは貰わなくて良い その代わり聡一郎のチョコは……食ってやれ 例え……病院送りになっても……食ってやれ」 「解ってるよ康兄 聡一郎はチョコは大嫌いだし…… 不器用だから……怪我したら危ないから…… 作らなくても良いって言ったんだ…… そしたら『お前が貰って来た手作りチョコよりも上手く作ってやるとも!』と宣戦布告された」 康太は笑った 佐野もクスクスと笑いを堪えられそうもなかった 佐野は「聡一郎はプライドが高いからな……」と呆れた言い方をした 「………康兄……俺は聡一郎と決めたんだ なのに……聡一郎は時々不安定な時がある 俺が原因なんだろうけど…… 言ってくれないと解らない事の方が多い」 康太は悠太の頭をナデナデした 「悠太、100の言葉より愛してると伝える方が嬉しい筈だ 見失わなければ、ずっと寄り添っていられる 聡一郎はグルグルと面倒くさい奴だけど、誰よりもお前の事は大切に思っている……解るな?」 「解るよ康兄」 「モテる恋人を持つと結構大変なんだよ悠太」 「…………康兄……俺は貴方や義兄さん程にはモテません… 今も貴方や奇跡の世代の方達の人気は凄いです……」 「???………彦ちゃん、オレってばモテるのか?」 「………お前の傍に行きたい奴は多いな…… 絶対にお前の傍に行ける奴は……いないからな 焦がれるんだろ?……その生命力に……その強さに人は憧れる…んだろうな」 「………オレの傍にいる奴は結構大変なんだよ? そんな大変な想いをしなくてもいい……とオレは想うけどな……」 康太はそう言い……哀しげに笑った 準備室に榊原が姿を現した 「佐野先生お久しぶりです」 榊原は佐野に軽く会釈すると康太の傍に行った 「一人で出歩かないで下さい」 「駐車場に慎一がいたろ?」 康太は今、ニック・マグガイヤーは連れて歩いていなかった SPの業務が忙しくなり、人手不足でニックも駆り出していた アメリカのセキュリティガードの会社と提携したら、常に腕の立つ人材を日本に回して貰う事になるが、今は……人手不足で康太に付けていられなかった 榊原は康太から目を離さなくなった 離れて失いたくないのだ…… 佐野は「一生はどうしたのよ?」と尋ねた 何があっても一生が康太の横にいると想ったから…… 「一生は飛鳥井にいるぜ? 聡一郎が今不安定だから見晴らせてる」 「…………そうか…お前が命令しなければ一生がお前の傍にいない訳ないよな?」 「どの道今日は悠太と話をしたかったからな 一人で来るつもりだった」 悠太は恐縮して……すみません……と謝った 「オレはバレンタインは不在だなんな! おめぇもバレンタインは学校も休みだし下駄箱封鎖しとけよ!」 康太はそう言いケロケロ笑った 「悠太、帰るか?」 「俺は先週から飛鳥井に仕事に行ってます」 「だったな……なら慎一に乗せて行って貰えよ」 悠太が立つと、康太は佐野に別れを告げた 「ならな、彦ちゃん」 「康太……ありがとう……」 「4月になったら子供達が幼稚舎に入る」 「今から楽しみだ」 康太は佐野を抱き締めると……離した そして背を向けた 駐車場まで行くと慎一が車から下りた 康太は慎一に「悠太を会社まで送ってくれ」と頼み榊原の車に乗り込んだ 「伊織…」 「何ですか?」 運転席に乗り込み車を走らせる 「聡一郎……限界かな?」 「彼は直ぐに自分を追い込みますからね…… まさに今がそうでしょ?」 「………オレ……今夜から魔界だぞ?」 「聡一郎にはパパもいるし大丈夫でしょ?」 榊原はそう言い笑った 飛鳥井の家に帰るとイライラした聡一郎がキッチンにいた 康太は椅子に座ると 「聡一郎、珈琲入れて」と頼んだ 聡一郎は言われるままに珈琲をドリップした 「珈琲豆って人の感情に左右するんだってな イライラして煎れると味が怒ってるんだってな 豆は生きてるからな…… チョコだってそうだぞ、イライラして良いものなんて作れねぇ、そうだろ?聡一郎」 聡一郎は驚愕した瞳を康太に向けた 「今年から悠太はチョコは受け取らねぇ そもそも、そのチョコもオレに渡す為のチョコなのによぉ…そんなに妬かれれば本望だよな?」 康太はそう言い笑った 総てお見通しだった 聡一郎はトリップした珈琲を康太の前に置いた 「オレじゃねぇよ、おめぇが飲んでみろよ おめぇの精神状態が出てるだろうからな」 聡一郎はカップに口を付けた…… 一生は立ち上がると珈琲を煎れた 「康太、その言葉、誰のだよ?」 「この言葉は………父ちゃんの受け売りだ 父ちゃんは珈琲が好きだかんな 父ちゃんは……迷ってたり……決断を出さなきゃいけねぇ時は珈琲を立てるんだよ その時の味で自分の“今”が解るって何時も言ってる だから聡一郎、それがお前の今の精神状態なんだよ」 一生は何も言わず、自分の立てた珈琲を置いた 聡一郎は何も言わず……二つの珈琲を飲み比べていた 康太は立ち上がるとキッチンを出て行った その夜、康太と榊原は魔界に旅立った 飛鳥井の家が淋しくなった…… バレンタイン当日 聡一郎は何とかチョコを作り上げた 今までで一番の出来だった だけど…… 聡一郎は洗面所で吐いて……青褪めた顔でキッチンに戻ってきた 「………もうチョコは作りません……」 本音をポロリ…… 一生は「それで良い、お前らしく生きてけ 無理してるお前は………見てられねぇ…」と呟いた 「ねぇパパ、康太の後を追って魔界に行かないんですか?」 「………バレンタインが終わったら…行く」 一生も想わず本音をポロリ 「バレンタインが終われば帰ってくるのに?」 「一日伸ばすそうだ……」 「なら僕も行こうかな? 甘露酒を大量に持っていけば歓迎されるかな?」 「それよりも、今夜頑張れ!」 一生パパは聡一郎にエールを送った 「………一生……チョコ製作に全身全霊かけてしまった……」 一生は爆笑した 「よしよし!パパが昼飯作ってやんよ!」 一生はそう言い笑ってキッチンに立った 飛鳥井には誰も残っていなかった 皆、チョコが出来上がると恋人の元へ帰って行った 一生に作って貰ったチャーハンを食べて、食べ終えると聡一郎は自室に帰って行った 聡一郎は机に向かって…… チョコを突っ突いていた 「………今年のバレンタインは日曜だからな……」 悠太は部屋にいるだろう 悠太の部屋に行くべきか? …………夜まで待つか 悩んでるとドアがノックされた ドアを開けると…… 悠太が立っていた 聡一郎は悠太を部屋に入れた 「聡一郎君」 「何?」 「俺さ昨日から学校休んでる 正確には金曜日から休んでる 今年からチョコは一切受け取らないと宣言した 俺の下駄箱にチョコを入れてた奴の目的は…… 康兄なんだよ? チョコの中に入ってる手紙は殆ど康兄にへだ」 「康太は人気ありますからね 本人は知らないけど……昔から彼は人を引きつけて止まなかった……」 「俺は高等部に上がる年に…全校生徒に向けて四宮聡一郎が恋人だと恋人宣言した…… 嘘だと言う人が殆どだった 聡一郎が俺なんて相手しないと行って来る教師やOBもいた…… 聡一郎と寝たと豪語した保健医もいた…… そんな奴らに色々と……聞いたけど、それは俺が知ってる聡一郎じゃない もし寝てたとしても……俺は聡一郎の過去は……気にならないと言えば嘘になるけど…… 俺は今聡一郎がいてくれれば……それで良い 俺と…死ぬまで生きて下さい 聡一郎の過去は要らない 聡一郎の未来を…俺に下さい」 悠太は……そう言い深々と頭を下げた 聡一郎は信じられない顔して……悠太を見て…… 悠太の胸に飛び込んだ 「……悠太……僕は……康太の為なら……誰とでも寝てました それを恥はしません…… そんな馬鹿な生き方も僕でしたから…… でも……悠太と恋人になって……もっと綺麗なままでいたかったと想いました…… 僕は初めて……悔やみました…… 僕に……悠太の人生下さい…… 幸せにします…… 僕は……性格が悪い…… 解ってます 素直になれない……僕が可愛くないのは…… でも……僕は君を失いたくない 君を失っても僕は生きられます でも……僕は…もう誰も愛しません 君しか愛したくない ずっと傍にいて…… 僕以外の奴のチョコなんて貰わないで……」 聡一郎は泣いていた 悠太は優しく聡一郎を抱き締めた 「聡一郎しか要らない…… 俺……ガキだから聡一郎をイラッとさせる時もあるだろうけど……大人になるから…… 聡一郎に釣り合うような大人になるから………捨てないで……」 それこそが悠太の本音だった 聡一郎は大人だから…… 3歳も年下の男なんか……役不足に見えたりしないか? 収入もたかが知れてるから欲しいのをプレゼント出来ない事の方が多い 包容力があって 高収入 そんな大人の男は驚異だった…… 「悠太を愛してる 悠太だから愛しい…… 僕は……年上だし口うるさいし…… 嫌にならないか何時も不安だった……」 「……俺……収入もまだまだだし、包容力ないし…… 大人の男になるには……まだ足らない…… 聡一郎に見限られないか不安なんだ……」 本音をポロポロ零して…… 互いを見た 聡一郎は悠太を強く抱き締めた 「悠太はそのままで良い 大人にならなくて良い 何を考えてるか解らない大人になんてならないで…… 僕は悠太を愛してるんだから……変わらなくて良い」 「なら聡一郎もそのままで良い 俺は聡一郎を大切に出来てる?」 「……ん……大切にして貰ってるよ 僕は悠太を大切に出来てる?」 「して貰ってるよ ねぇ、俺にチョコ……頂戴 俺の為に作ってくれたんだろ?」 「……康太にあげる前に食べてくれるのか?」 「康兄にはあげない! これは俺のチョコだから……康兄にはあげない」 悠太はそう言いチョコを食べた そして聡一郎に口吻け 甘いキスを受けて聡一郎は艶然と笑った 「聡一郎……一緒の部屋で暮らしたい…」 聡一郎の隣の部屋は悠太の部屋だった 一生の隣の部屋が力哉だった 一生と力哉の部屋は何時でも行き来出来るように互いの部屋の間にドアを付けた 聡一郎と悠太の部屋にも互いの部屋に行き来出来るドアはあった 聡一郎が悠太に教えずに、ドアの前にサイドボードを置いたから……悠太はドアがあるのも知らなかった 「悠太……僕だってヒゲは生えます!」 知ってる 金髪のヒゲが生えるの知ってる 髪と同じ毛が生えるんだと感心したものだった 「知ってるよ聡一郎」 「オナラだってするし、イビキだってかく」 「聡一郎を人形だと想った事はないよ 人間だもんお腹だってグーって鳴るよ オナラだって出るし、イビキだってするよ 俺……イビキうるさかったら……ごめん」 悠太が言うと聡一郎は爆笑した 「悠太」 「なに?」 「僕と君の部屋は繋がってるの知ってますか?」 「…………え?知らない……」 「サイドボードを動かせばドアは出て来ます 二人で明日移動させましょう」 「聡一郎……凄く嬉しい……」 「僕も……嬉しいです 欲しい言葉も貰った…… 僕の恋人は君だけです」 二人は抱き合い……ベッドに雪崩れ込んだ 互いを求め合い……弄る 性欲が尽きるまで……貪り合った 聡一郎は最高に幸せなValentineの夜を迎えられた ありがとう……康太  生きていたから迎えられたに日感謝した…… 【一ノ瀬聡哉×江口陵二】 聡哉はチョコを成功させ飛鳥井の家から帰った この日、陵二は忙しいのは知っている XmasやValentine イベントは特に盛況になるのはヘルプで入っている聡哉には一番解っていた しかも……江口陵二はシェフだ 料理人相手に無謀にもチョコを作った 5日間通って……一番上手く出来た でも……最初なんて消し炭みたいな味だった それから比べたマシ……程度なのは自分が一番知っていた 聡哉はテーブルに紙袋を置いた 「………美味しくないからな……」 捨てようかな? そう思う 聡哉はクローゼットの中にチョコを隠した お風呂に入って陵二が作っておいてくれた夕飯を食べた 本当は今日は応援に入ってやる予定だった でもチョコを作りたくて… 他の用事を作って飛鳥井に逃げた 陵二はモテる 高校時代からモテていた 男も女も………好き放題手に入る …………聡哉がヘルプで入っていた夜 陵二の元彼女と……元彼氏が来た 付き合っていた……と会話の端々で聞こえた よりを戻したい……とも言っていた 陵二は何も言わなかった それ以来……店には手伝いに入ってない 応援、入れる? 聞かれるたびに「その日は無理」とか 「僕が応援に入らなくてもスタッフいるじゃん」と断り続けていた ………どうせ……日付変わらなきゃ帰らないだろう…… 疲れて寝ちゃうだろう そしたら……Valentineにチョコなんて渡せない なのに……チョコを作りに飛鳥井に行った 食べて欲しい そんな想いで作った でも……無理だ… 陵二に喧嘩を売るつもりで作った…… 聡哉はクローゼットから紙袋を取り出すと…… カードをビリビリに破いた そして紙袋ごとゴミ箱へ捨てた ボスが……聡哉を見てキュンキュン鳴いていた 聡哉はボスに近寄って頭を撫でた 「…………ボス、出掛けようか?」 聡哉はコートを羽織ると………家を出た そして駐車場へ向かい車にボスを乗せた そして自分も車に乗り込んだ 携帯は家に置いて来た 聡哉は家の近くにある公衆電話の前に車を停めると、美奈代に電話を入れた 『はい!一ノ瀬です』 「………母さん……遊びに行って良い?」 『………あんた……今日Valentineよ?』 「Valentineは大忙しなんだ…… 今年は日曜と重なったからね……相当忙しいと思う」 『来なさい!』 美奈代はそう言い電話を切った 聡哉は実家へ帰った 克彦は大喜びした 義弟の茂も喜んで聡哉を受け入れた ボスは一ノ瀬の家で寛いで眠たそうだった 克彦は「聡哉、もう帰らなくて良い!」と携帯を触っていた 美奈代は「克彦……我が家は……勝美と美香子で手一杯だって知ってる?」と怒った 克彦の願いで、美奈代は高齢出産をぶちかましていた 茂の下に勝美、美香子……と双子を産んでいた いきなり双子で、美奈代はてんてこ舞いしていた 聡哉はついつい深酒して……… ふて寝した 一ノ瀬の家の電話が鳴った 美奈代は電話に出ようとすると克彦が立ち上がって電話に出た 「来なくて良い! 聡哉を泣かさないって言ったじゃないか!」 克彦は泣きながら言い捨てた 美奈代が電話を変わった 「陵二、聡哉は寝ちゃったから…明日にでも家に帰すわ!」だから心配しなくて良い……と言った だが陵二は一歩も引かなかった 『これから行きます!』 そう言い電話を切った 克彦は……後輩の江口陵一にラインで文句を言っていたのだ 聡哉が哀しんでるなら……何とかせねば……と陵一はスタッフとシェフを陵二の店に送ったのだ 陵二は早めに上がれる事に歓喜して家に帰ると……… 聡哉の姿はなかった そればかりか……チョコの紙袋がゴミ箱に捨ててあった 破り捨てられたカードが無惨にゴミ箱に入っていた 日付が変わらなきゃ帰れない陵二に渡しても無駄だと想ったのか? 元彼女と元彼氏が店に来た辺りから聡哉は陵二と距離を取ろうとしていた 店にも来なくなり…… 寝室も別々にされた 聡哉の寝ている寝室には鍵が掛かり…… 陵二はどうして良いか解らなくなっていた だけど……別れたくない 別れたくなんかない…… もう二度と手放すなんてご免だ 陵二は兄に「明日、臨時休業にする」と電話を入れた すると想わぬことを言われた 『聡哉に逃げられたか?』 「………兄さん……逃げられてない!」 『そうか?なら何で聡哉は先輩の家に行ってるんだ? 実家に帰らせて貰います……って奴じゃないのか? 先輩は渡さないって言ってるから……大変だなお前…』 陵一はそう言い電話を切った…… 陵二はゴミ箱へ捨てられたチョコを想った 飛鳥井にチョコを作りに行ってるのは知っていた 聡哉の体躯から甘いチョコの匂いがしたから…… チョコを貰えるとばかりに想っていた まさか……ゴミ箱へ捨てられるなんて…… どんな想いで……ゴミ箱に捨てた? どんな想いで……実家に帰った? 陵二はチョコをテーブルの上に置くと、聡哉を迎えに行くと電話を入れた 出たのは克彦で『来なくて良い!』と一蹴された 手放す気のない陵二は一ノ瀬の家へとタクシーで向かった 聡哉の車がなくボスもいなかった と言う事は車に乗って出掛けたのだから… その車に乗って帰れば良いと陵二は想った 一ノ瀬の行くと克彦は陵二を見て……怒って部屋を出て行ってしまった 美奈代は………「あの人、本当に聡哉を大切にしてくれてるから……それだけは解ってやって…」と言った 「すみません……来年からValentineは定休日にします 二度と……聡哉を寂しがらせたりしない 淋しがらせたりしても……淋しがらせた分 淋しさを埋めてやります ですから……聡哉を返してください」 陵二は深々と頭を下げた 美奈代は「連れ帰りなさい!このままじゃ……哀しすぎるでしょ?……… 聡哉……酔っ払って……チョコを捨てたって言ってた 陵二には貰える人が沢山いるから……渡せないって…… ゴミ箱へ捨てたって…… 酔わないと本音も言わないからね……飲ませたの 元彼女や元彼氏の言い訳をしないのは良いわ でもそれをあやふやにするなら説明しろよ! あやふやにされる方は不安なのよ! 説明出来ない様な未練があるんじゃないか……とか面倒臭く考える子だって言ったわよね?」 怒りを露わにして訴えられて軽率だったと後悔した 「聡哉を欲しいと言う奴は沢山いるのよ! 康太ちゃんに頼んでおけば相手は何時でも見つけてくれる! これ以上泣かせるなら……私も行動に出る! ふざけるんじゃないわ! 三度目の顔なんてないからね!」 美奈代の怒りも至極当然だ 「………泣かせません…… もし……泣かせたとしても……話し合います どうか……話し合わせて下さい 俺にチャンスを下さい……」 「ラストチャンスよ 康太ちゃんに伝えてあるから…… 私は許さないから!」 脅しじゃないからね! と美奈代が言う 陵二は美奈代の性格は、母親の悦子と酷似しているから誰よりも解っていた 悦子も『次は離婚するわ!』そう言い有言実行した女だった 美奈代も変わりはない…… 「連れて帰りなさい! 聡哉をこんなに寂しがり屋にさせた責任は取って頂戴 んとに………犬も食わないの食べたくないわ」 美奈代はボヤいた 陵二は美奈代の頭を下げると、聡哉を抱き上げた 美奈代は立ち上がってドアを開けてやった 玄関を開けて車のドアも開けてやり、見送った キツい言葉で釘を刺しただけなのは、この笑顔で解る 「また遊びに来なさい」 聡哉を助手席に座らせて運転席に乗り込む陵二に声をかけた 「はい!必ず近いうちに遊びに来ます」 陵二はエンジンを掛け、車を走らせた 家へと向かう 聡哉を悲しませるつもりなんかなかった 元彼女………や 元彼氏………とは、今は友達だった 元々は友達だったのだ 一旦は恋人になったが、友達に戻っただけだった 話をしようにも……元彼女や元彼氏と教える方が…… 聡哉が気にすると想って言わなかった 聡哉は……結構……頑固だ 言い訳は聞かない 言っても気にするし 言わなくても気にする どうやって話そうか……思案していた所だった 聡哉に避けられ……そろそろ限界 家に着くと玄関を開けて聡哉を家の中に運び込んだ ソファーに聡哉を寝かせて、車を駐車場に停めた 家の中に入るとオートロックがガチャッと掛かった 先に寝室のドアを開けに行き、聡哉を抱き上げて寝室に向かう ベッドに寝かせると服を脱がした 全裸にして布団を被せた 陵二はチョコを持って来ると、小箱の包装紙を剥がした 中には不揃いだが手作りのチョコが入っていた 陵二はチョコを口の中に放り込んだ 聡哉の手作りなんだから食べたいに決まっている なのに……何故……ゴミ箱に入れたんだろ? 聡哉はどんな気持ちで…… ゴミ箱に放り込んだ? 陵二は胸が痛くなって……押さえた 服を脱いで聡哉の横に入り込み、抱き締めた 聡哉を傷付けて別れてから…… 陵二は聡哉を忘れるために女も男も手当たり次第に寝た 聡哉と犯るような快感は味わえず、食傷気味で性欲もなくなった時…… 傍にいてくれた友が言った 『俺と寝る? 俺ならお手頃よ? ダメだったらまた友達に戻ればいいんだからさ』 そう言う友達と寝た アイツの手が震えてるのを…見なかった事にして… 寝た 聡哉と違いすぎて……勃起しなくて…友達に戻った 女の方もそうだ…… 元々は友達だった お試しで良いから… そう言われてセックスした 女にも勃起しなくなった時には…… 自分の体躯……どっなっちまった? と悩んだ でもバイト先に聡哉が入ってきて…… 夢精した 聡哉を見るたびに……欲情した 聡哉にしか感じないと……告げた そして友達に戻った 彼女や彼達の気持ちを無視して…踏みにじった それでも友達としていてくれる人達に…… 陵二は邪険に出来なくて…… かと言って……どうも出来なくて…… 行動に出なかった 元彼女と元彼氏達には聡哉の事を伝えようと想う そして……恋人を泣かしてまで続けられないから…… と距離を持とうと心に決めた 聡哉しか大切じゃない 聡哉を泣かして……やる事じゃない valentineもクリスマスも……… 傍にいてやらなかった でも聡哉は何も言わず傍にいてくれた そんな恋人に報いる事をして来なかった…… 酷い恋人だと想う チョコを捨てさせた……恋人だった…… 渡しても食べないと想ったのだろう 何故?そんな事を想った? それは陵二が聡哉に何も与えなかったからだ…… 陵二は悔いていた 友達も大切だが…… それ以上に聡哉が大切なのだ よりを戻そうと口説かれていた恋人を……… どんな気持ちで見ていた? 失いたくない…… 絶対に……手放したくない 聡哉しか愛せない 離れて…… ずっと後悔していた なら動かなきゃいけなかったのに…… 聡哉の優しさに…甘えて… 問題を先送りにした お前が一番大切なのに……… 陵二は聡哉に口吻けを落とした 聡哉は目を醒ました 目を開けると…………そこは寝室だった 確かに実家に行ったのに…… 聡哉は起き上がって隣を見た 陵二が寝ていた 陵二が連れて帰ったのだろう 聡哉は立ち上がるとシャワーを浴びに向かった 日付は………変わってしまった ………渡したかったのに…… ため息をついて聡哉はお酒を流すように…… シャワーを浴びた 水音に陵二は目を醒ました 隣を見ると…… 聡哉はいなかった 「……聡哉……?」 呼んでも……返事はなかった 水音が止まると、聡哉がバスローブを羽織って出て来た 「聡哉……?」 聡哉は陵二を見なかった 陵二は聡哉を掴もうとした その手を振りほどき…… 「触るな!」と叫んだ 「……聡哉?」 「触られたくない…… 触らないでくれないかな?」 「何で………何で…そう言う事を言うんだ?」 「触られたくないから……」 「………何で……チョコ……ゴミ箱に捨てたんだ?」 「ゴミだったから……」 「………聡哉…… 俺の為に作ってくれたんじゃないのか?」 「………陵二……貰ってたじゃん……」 店と家と聡哉の動物病院は同じ敷地に建っていた 見たくなくても……… 店の様子は見えてしまうのだ 陵二は元彼女や元彼氏達からチョコをもってるのを見た それを見たから……陵二に渡す気がなくなった 「………聡哉……誤解してる……」 「………誤解も何も……何も教えてくれないじゃない 何も聞いてないのに……何も解るわけない 陵二は教える気がないんでしょ? だったら聞く気もないし……かってにすれば? 動物病院は近いうちに移転させるし…… 直ぐとは無理だけど…… 見つかったら出て行くから……」 「聡哉!………何でそんな話になるんだ?」 「もう良いよ陵二 お前は何も話してくれない 僕に昔……そう言った癖に…お前は僕に話してくれた? 何も聞かされてないのに……何が信じられる? ふざけるな!人を馬鹿にするのも大概にして!」 聡哉はそっぽを向いた 「…………日付変わって……渡せないチョコなんてゴミにしかならない……… 渡さないんじゃない……渡せない…んだよ! 帰って来ない人間に………渡せる訳なんてない……」 元彼女や元彼氏のチョコは受け取っていた癖に…… 聡哉は泣いていた 抱き締めてやりたかった だが……聡哉は触られたくなんかなかった 「陵二、仕事だろ?」 「……俺のいない間に……出て行くんだろ?」 「出て行って欲しいんだ?」 「聡哉……話をしよう……」 「今更……何の話をしてくれるの?」 「………聡哉を愛している…… だから俺の話を聞いてくれ……」 「………僕………愛されてたんだ……」 聡哉は呟いた そして……そのまま俯いた 「……チョコ……美味しかった…」 「それはただのチョコだから……」 valentineを過ぎてしまえば…… ただのチョコだと聡哉は言った 「……いや…違うな……それ、ゴミだから……捨てた方がいいよ」 「……お前が作ってくれのに……捨てられない」 「…………そう……」 重苦しい空気が流れた 聡哉は………頑なに……傷付いていた 陵二が追い詰めたから…… 聡哉は傷付いたまま……泣いていたのだ 「………聡哉は……もう……俺は要らないのか?」 「………僕……疲れちゃった…… 少し考える時間が欲しい……」 嫉妬だ 嫉妬した醜い心が……陵二を求めて血を流す 振り向いて欲しくて…… 我が儘を言う こんな自分……嫌われても当たり前だよな きっと……醜い顔してる…… 聡哉は顔を覆った 「………聡哉は俺の傍を離れたら……幸せになれるのか?」 「………なれないよ……なれる訳ない…… でも傍にいると……僕は……醜くなる 嫉妬で正常な思考判断が出来なくなる…… 僕はきっと誰よりも醜い顔してるんだ…… そんな顔……見られたくなんかない……」 聡哉はそう言い顔を覆った 「………一人になりたい?」 「………一人がお似合いだろ? 陵二の傍に寄る奴が憎い…… 寄るなって想うんだ そのうち……離れろ!って摑みかかるかもね…… だから……店に入るのを止めた もう……見たくないんだ…… 陵二が盗られそうで………正常な判断すら出来てない…… そんな奴……そばに置いておくと……後悔するよ……」 聡哉は顔を覆って………泣いていた 店に入らなくなったのは…… そんな理由があったのか…… と納得した 「来年からは……valentineは定休日にする」 「………もう僕は……チョコは作らないから……大丈夫だよ?」 「元彼女とか元彼氏には縁を切る もう店に来ないでと言うつもりだ…… もっと早く言っておけば良かった」 「陵二は解ってないね…… あの人達は陵二の友達でも繋がっていたかった…… あわよくば恋人に戻りたかった でも恋人になれなかった……… でも……傍にいるなら……恋人になれる日も来ると想っているんだ…… あの人達……陵二の傍にいる時……優越感に浸った顔で僕を見下すんだ…… 陵二に言っても付き合い長いから信じないと想って……言わないけど…… 言っても信じないだろ?」 「………聡哉……俺にはお前しかいない お前しか要らない……だから…アイツ達は切る……」 「………恨まれるのは僕だろうね……」 「聡哉を恨ませたりなんかしない……… 俺が優柔不断だったからいけないんだ 聡哉を悲しませるなら……… 俺は何を引き替えにしてもいい……」 「………疲れた……今は何も考えたくない…」 そう言い聡哉はベッドに潜り込んだ 陵二は聡哉を布団の上から抱き締めた 聡哉が眠りにつくまで…… 傍にいた 聡哉が寝息を立てると、陵二は携帯を取り出した ワンコールで電話が取られた 『陵二、どうしたの?』 元彼女が陵二を呼ぶ 「お前との付き合い…終わりにしたいんだ」 『………陵二、本気なの?』 「あぁ、本気だ! 俺はずっと言ってただろ? 愛しているのはただ一人だって…… 昔も……これからも……その子しか愛さない ずっとそう言ってるよな?」 『………なら……愛する人が……手に入ったの?』 「そうだ……俺はその子と共に生きていく…… だから……お前に期待を持たせるような事は出来ない」 『……友達じゃない! 私達……ずっと友達じゃない…… 後から来た奴に……大きな顔させなきゃ……ダメなわけ?』 「俺は……ずっと……そいつが好きだ お前達と知り合う前から……恋人だった 俺が世の中を悲観して……手放したが…… もう離す気はない……」 『………客として……でもダメ?』 「………客として店に来ても……今後一切俺は顔は出さない……」 『………聡哉……とか言う子でしょう?』 「アイツに何かしたら……お前を生かしておく気はない!」 『……何も望まないって言ったのに…… 友達でいる事すら奪われなきゃいけないのね…』 「……さよなら…」 そう言い陵二は電話を切った そして元彼氏の所へ電話を入れた 『……陵二!珍しいね電話…… 凄く嬉しい……どうしょう……』 電話の相手は感激して……涙声だった 「……もう…二度とお前には電話はしない 店に来ても……俺はもう顔を出す事はない……」 『……陵二……恋人……本気なの?』 「俺にはずっと想っている恋人がいるって言ったよな?」 『……人はいつか忘れる生き物なのに?』 「今、一緒に暮らしている もう二度と離す気はない! だからお前達との付き合いを断つ 曖昧な態度をとってて……すまなかった」 『……友達で良いって言ってるのに?』 「だけどお前は……期待するだろ?」 『………それさえも…許してはくれないの?』 「お前の気持ちに答える気はない 俺は……お前達との曖昧な付き合いをしたまま…… 恋人を泣かせたくないんだ」 『………酷い男だね…』 「こんな最低な奴は忘れて…いい人を見つけろ!」 陵二はそう言い電話を切った 電話を切ると陵二は携帯を床に落として踏み付けた シェフをもう一人雇い聡哉との時間をもう少し作ろうと想っていた 兄 陵一もそう言ってた 恋人をほったらかしにして、待たせて泣かせるなら解決法を見付けるのが優先順位なのじゃないか? と言われていたのに…… 陵二は悔いていた やっと……手にした恋人なのに…… 不本意で手放して…… やっと取り戻した恋人なのに…… 泣かせて……傷付けた 聡哉には常に妬きまくって、束縛ばかりしていたのに…… 聡哉に陵二は与えなかった 与えなかったから…… 聡哉の不安は大きくなっていってしまったのだ…… インターフォンが煩い程に鳴らされた 「どちら様ですか?」 『陵二!話をしてよ!』 『一方的過ぎない?』 元彼女と元彼氏だった…… 「話し合いをするつもりはない 今後お前達とは……関わらないと決めた 帰ってくれないかな?」 『………あの子が言ったんでしょ? 本当に了見が狭い子ね!』 『後から出て来て当然のような顔しやがって…… 何言われたか知らないけど、その子は嘘しか付かない!』 「お前達が聡哉に何か言ってたんだな……… 今後一切聡哉に近付くな! 近づくならず警察に突き出す! お前達と知り合う前から俺は聡哉の事を愛していたんだ 後から出て来たのはお前達だよ? 何かを期待して俺の傍にいるなら……辞めてくれ! これ以上関わって来ようとするなら俺は躊躇なく警察に突き出すつもりだ! もう来るな!俺は会う気もない!」 そう言い陵二はインターフォンを切った あまりの五月蠅さに聡哉は目を醒まして陵二を見ていた 「………五月蠅かったか?」 「………あの人達に何したの?」 テーブルの上の聡哉の電話が鳴り響いていた メールも止め処なく入って…… 陵二は聡哉の携帯を叩き渡った そして警備会社に連絡を入れて、家の前にいるストーカーを排除して貰った 聡哉の顔写真を載せて、交際を求めるような記事を載せたり……受けた嫌がらせは数知れない 勘違いした客が聡哉に襲いかかり……レイプされそうになった 助手の子に排除されて警察に突き出すと、その全貌が明らかになった そのブログやホームページは削除する様に警察から管理会社の方に指示が行き、削除された そして管理会社の方からは違法な行為だと言う事で警告を出した 刑事訴訟一歩手前まで行っていた 手を変え品を変え……続く嫌がらせ 聡哉は辟易していた 外では警備会社の人と揉め合ってるのか…… 何やら喚き散らしていた 「………陵二……何やったの?」 「俺は……聡哉を失いたくない…… 切るとしたら……アイツ達に決まっている……」 「……あの人達……僕に嫌がらせの限りを仕掛けて来たからな…… 今度は……刺されかねないね……やりそうだよ 僕はもう巻き込まれたくない 営業妨害された上に……誹謗中傷……もうご免だ!」 聡哉は皮肉に嗤った 「聡哉には指一本触れさせない…… 聡哉……頼むから……離れないで……」 陵二は聡哉の手を強く握った 「………俺がアイツ等を付け上がらせたんだ…… 強く出なかったから……お前に嫌がらせし始めた 相談にも行っていたんだ…… どうやったらお前に危害が行かなくなるのか……対処法を聞いたり……でもお前に……敵意が向いた…… 俺のせいだ……ごめん……」 陵二は聡哉の手を握り……その手を額に持って行った 「……陵二……」 「もう俺は……遅いのか? もう……お前を手に出来ないのか?」 聡哉は何か喋ろうとした その時「くだらねぇ事をしてんな!」と怒声が聞こえた 「その石を投げて窓ガラスを割れば本望なのかよ?」 窓の外を見てみると、兵藤貴史が立っていた SPと見られる護衛を引き連れて立っていた 「窓を割れば器物破損、人が傷付けば障害 そしてお前達は一ノ瀬聡哉の名を語り誹謗中傷の数々をやった 誹謗中傷に名誉毀損、そして営業妨害 それら余罪をくっつけて、当分(ムショに)入れる事は簡単だ!」 兵藤が言うと元彼氏と元彼女は「「証拠があるのか!」」と食って掛かった 「俺を動かすは飛鳥井康太! 飛鳥井康太は証拠はなくば動かねぇ お前達の余罪ならバッチリ検挙が可能だから俺を使わしたに決まってるだろうが! おっと!動くなよ! 此処にいる奴らは警視庁からの護衛だからな 俺に手を上げれば喜んで逮捕してくれる! その後は余罪をくっつけて、ぶち込めば良いだけだからな!」 二人は言葉もなかった…… そして更に兵藤は追い込む その横には緑川一生も四宮聡一郎も緑川慎一も立っていた 一生と聡一郎は証拠を突き付けた 「こんな楽しい事をしちゃダメじゃねぇか? 俺がお前にしてやろうか? こう言うのはやられてみねぇと解らねぇからな! 康太がやるなら……生きているの嫌になるまで追い込むぜ? 俺はこの世の総てを敵に回しても恐くはねぇが…… 飛鳥井康太を敵に回したら、即死のうと想う」 一生はそう言い嗤った 背筋が凍る程の冷たい笑みだった 聡一郎も「康太がいなくて、ラッキーだと想いなさい 僕も康太に追い詰めさせるのは気が引けるので、いなくて良かったと想います」と言葉にした すると後ろで護衛している人間が 「………あの方に目をつけられたら……何所へ逃げても…… 無駄ですからね…… 地獄に堕とされても……あの方の瞳からは逃げられません こうしていても……あの方は視てらっしゃるのでしょ?」と………本当の怖さを伝えた 元彼女と彼氏は背筋に冷たいモノを感じていた 兵藤は「今……同調してやるから待ってろ!」と言うと天を仰いだ そして……二人を視ると……その瞳は変わっていた 紅い……瞳をしていた まるで……心の奥まで見透かされているみたいな……瞳だった その瞳で視られれば……逃げられない 二人は……本当の怖さを思い知らされた 「どうするよ? 余罪を全部引っ付けて逮捕されるか 江口陵二には今後一切近付かないと約束して消えるか 選ばしてやる その代わり近付かないと約束して近付いたなら…… この世から消す! 約束は違える為にあるんじゃねぇからな! お前等二人消すのは容易い 無間地獄に堕として……本当の罪の償いをさせられる 何所へ逃げても無駄だ! キッチリ回収に逝くからな! さぁ選ばせてやる決めろ!」 紅い瞳は二人を貫いていた 元彼女は「………今後一切近付きません……」と涙した 「故郷へ帰れ! お前の母親の命は風前の灯火 最期を看取って魂の浄化を図れ そしたら自ずと道は開かれる!」 「解りました……そうします」 元彼女は紅い瞳を真摯に貫き、そう答えた 元彼氏も覚悟を決めた瞳で紅い瞳を見た 「………今後一切近付きません……」と約束した 「今の会社は辞めろ 会社の上司との関係を切れ! お前は爛れた関係に嫌気がさし、それを陵二に逃げているだけだ! 会社を辞めて、もっと楽に生きれるなら 道は開かれる 後輩の作った会社に行けよ お前を誰よりも大切にしてくれる奴が現れる」 そう言うと元彼氏は泣きじゃくった まさにそうだったから…… 二人は憑きものが落ちた様な顔をしていた 「もう大丈夫だな 司命、コイツ等から離れた闇 魔界に持ち帰ってくれ!」 聡一郎は傅いた 「御意!」そう答えると、闇を封印した 兵藤の体躯から……炎帝の気が抜けた…… 兵藤はホッと息を吐き捨てた 「………3日位気絶したい程に……重かった……」 兵藤が吐き捨てると一生が笑った 「気絶してて良いぜ! 魔界には俺等が行くからな!」 「馬鹿言え! 働いた分の報酬は貰わねぇとな!」 兵藤は二人を見た 「もう大丈夫だな」 声をかけると二人は頷いた 「おし!もうやるなよ! お前等の道は今開かれた もう寄り道なんかせずに真っ直ぐ進め!」 二人は何度も何度もお礼を言い帰って行った 兵藤は二人を見送ると、護衛をしている総勢に 「お疲れ様でした 飛鳥井康太には俺から伝えておきます 叔父貴には功労を伝えておきます」 そう言うと護衛の者達は帰って行った 陵二は家から出ると兵藤達に近寄った 「……すみませんでした……」と深々と頭を下げた 「陵二さん、家に招いてくれねぇか?」 一生は陵二にそう告げた 家の中へと招き入れられると……… 何処からか……弥勒が現れた 「………この闇を祓わねば……話にもならねぇな……」 弥勒はそう言うと印字を切った そして闇を祓い、魔を斬った すると陰陽師ばりの衣装を着た紫雲龍騎が姿を現した 「この家と店に結界を張るように康太に言われた 依頼料として我と弥勒が店に行ったら何か食べさせてくれると言うのでな引き受けた」 紫雲が言うと陵二は「食べさせます!」と約束した 「何時でも好きな時に来て下さい どんな満員になろうとも席は常に一組だけ空けてあります なので何時でも大丈夫です」 紫雲は「我等の依頼料は最低でも一本は要る」と笑った 弥勒は「一本ってぇのは百万円だな!」と爆笑した 陵二は「その分心込めて作ります!」と言った 「弥勒、此奴は大丈夫みたいだのぉ…」 「あっちか……闇を吸収したのは……」 紫雲と弥勒は聡哉を見た 紫雲は聡哉の顔を上げさせた 弥勒は聡哉の顔を見た 『闇に囚われているんじゃねぇよ!』 そう言い聡哉に口吻けした 口吻けが息もつかぬ接吻に変わり…… 陵二は弥勒を引き剥がした そして聡哉を抱き締めた 「今の接吻は康太からだ! 闇を斬ってやって恨まれる筋合いはない! 我等は康太しか愛さない 未来永劫…愛すはただ一人!」 弥勒は言い捨てた そして手から銀の糸を出した 「炎帝、よいか?」 『おー!何時でも同調出来るぜ!』 康太の声だった 聡哉は「康太君!」と叫んだ 弥勒は呪文を唱えた その後を追って紫雲も呪文を唱えた 銀糸と白の糸が搦まり……… 深紅の糸が更に搦まり部屋中に広がった その糸は壁を越え蔦のように搦まり…… 至る所へと伸びて行った 『聡哉、お前が不安定だったのは、お前の中に闇があったからだ その闇はお前の不安な心を吸って大きく広げて行った 別れようなんて台詞 普段のお前なら絶対に口には出さないよな? それだけお前の闇は……際限なく大きくなって疑心暗鬼を強めてしまっていた 飛鳥井でそれが見れたからな様子を見ていた 総ては片付いた valentineのやり直しをしろよ! もう大丈夫だ聡哉 陵二はお前のモノだ そしてお前も陵二のモノだ 魔界に行ってるオレがお節介焼いてやったんだ 仲直りしやがれ!』 「康太君……ありがとう……」 『お前の心は不安で膨れあがっていた もう不安がらなくて良い これからは不安がるんじゃなく、何でも陵二と話し合え!解ったな?』 聡哉は何度も頷いた 兵藤は「待ってろよ!これから逝くからな!」と告げた 『待ってるかんな!』 笑い声と共に康太の声は消えた 兵藤は「なら後は大丈夫だよな?」と陵二に問い掛けた 「はい!康太さんにありがとうと伝えておいて下さい」 「自分で言えよ どうせ帰ってきたら食いに来ると想うぜ?」 「ならそうします!」 陵二も晴れやかに笑った 紫雲と弥勒はいつの間にか気配を消して消えていた 兵藤と一生と聡一郎と慎一も帰って行った 陵二は聡哉を抱き締めた 「…………もう……ダメかと想った……」 「……ごめんね陵二…… なんか……物凄く……陵二が信じられなかったんだ 哀しくて……どうしようも出来なくなっていた」 陵二は聡哉を抱き上げると寝室に向かった ベッドの上にそっと置くと、その上にのしかかり……口吻けた 「聡哉をなくすかと想った……」 「僕も……陵二をなくすかと想った…… 焦れば焦る程……悪化して行って…… どうしようって焦るんだけど……どうにもならなくて……本当に怖かった……」 聡哉は陵二に縋り付き……陵二のぬくもりを確かめた 陵二は唇で聡哉の総てを確かめた 聡哉の唇 聡哉の乳首 聡哉のへそ 聡哉の臀部 聡哉の性器 そして……聡哉の秘孔 総てが愛しい 聡哉の脚も愛して舐め回した 一つに繋がる頃には聡哉はクラクラだった 陵二の情熱を受け止め 一つに繋がる喜びを全身で味わっていた 尽きるまで愛し合い…… 微睡んだ 「……陵二……」 「何?……何でも言って 想ってる事、全部言って 悪い所は全部直すから……」 「……チョコ……捨てちゃってごめん……」 「あれ、全部食べた 聡哉が俺の為に作ってくれたんだからな 食べるに決まってるじゃないか」 「………あんまり上手く出来なかった……」 「出来は関係ないんだよ聡哉 聡哉が俺の為に一生懸命作ってくれた…… ってのが嬉しいんだから」 「………でも来年は陵二に作って貰おうと想うんだ」 「シェフを増やそうと想っているんだ そしたらお前と過ごせる時間が少しは作れる イベントの時には一緒に過ごしたいと想うからな……」 陵二はちゃんと考えてくれていたのだ…… なのに……いじけて陵二を避けた 「陵二、お店手伝うよ ボスもお店に行きたがっていたし…… やっぱり無理はダメだと想うんだ 一緒にいられる時間がないんじゃない 僕が陵二を避けていたから……一緒にいられなかっただけだよ でも大丈夫! 来年は陵二がチョコを作ってね 再来年は僕が作るからさ 二人でいる時間が作ろうよ 一緒にいられる時間を作ろうよ……」 陵二は聡哉を抱き締めた 「僕の不安だった事は全部言った 最初から言っておけば良かった 元彼女と彼氏なんかにいい顔すんじゃねぇ!って蹴り倒しておけばよかっただけなのにね…… 今はそう思うんだ 僕は弱くない 言いたいことは言うと決めているんだ あの日………後悔した想いは忘れちゃダメなのにさ ……今度、やったら離婚だからね陵二!」 聡哉はニコッと笑って、キツい一撃を陵二に食らわせた 陵二は両手を挙げて降参した 「聡哉だけだ誓う」 「ならvalentineのやり直しだね」 聡哉は綺麗な笑みを浮かべた 見取れる程の笑みだった 幸せそうな笑みをさせてるのが自分だと想うと誇らしい 「死ぬまで一緒にいてください」 陵二は聡哉に哀願する 「康太君風に言うなら、望むところだ!だよね? 死ぬまでなんてケチな事いわないでさ 死んでも一緒にいようよ!」 「………聡哉……」 陵二は感極まって泣いた 「陵二は泣き虫だね 大丈夫だよ 僕との縁は斬りたくても切れないそうだからね 僕が先に死んだら君は生涯僕を愛して過ごしてよ 陵二が先に死んだら僕は君を追える日を首を長くして待ってるからさ……」 共に…… それしか願っていなかった 今更ながらに二人は互いの事を大切に思った 今まで大切に思わなかった訳じゃない もっともっと大切に想える様になったのだ 「チャンスが来たら、僕はキッチリ前髪を掴むからね! 躊躇なんてしてたらツルッと手が滑っちゃうからね 俊敏に見極めていかなきゃダメなんだよ」 「俺も前髪を掴み取る 毟り取る勢いで掴んでやる! 禿げたって知るか! 躊躇したらツルッと滑っちまうからな」 陵二は笑った 聡哉も笑った 二人とも穏やかな気持ちでいられた 「valentineのやり直しだよ陵二」 「チョコは昨夜貰ったし最高のvalentineだ 二人の愛も再確認できたし…… 本当に聡哉を見失わなくて良かった」 「僕も陵二を見失わなくて良かった」 聡哉は笑った 花が綻びる様に艶やかに艶やかに笑った 陵二は聡哉を抱き締めた 陵二の総てだった 「愛してる聡哉」 「僕も愛してるよ陵二」 二人の思いはもう揺るぎない valentineのやり直しだった 甘い 甘いvalentineを二人は過ごした   ~HAPPYvalentine     愛を捧げる日を君だけに~

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