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第34話 valentinekiss~Valentineの恋人たち~④

【安西力哉緑川一生】 今年のvalentineは日曜日と言う事もあり 二人でvalentineを過ごすつもりだった 朝から力哉はチョコを作っていた 結構上手く出来て力哉は上機嫌だった 今年のvalentineは……力哉は心に決めた事があるのだ 何時も恥ずかしくて……一生のアレ…… まともに見えなかった 今年こそ、まじまじと見てやろうと想うのだ フェラはした事ある でも……フェラで一杯一杯でまじまじ観察する事は出来なかった 一生のアレを思い浮かべようとしても…… どんなカタチだっけ? 思い浮かべられない それではダメだ 恋人なんだもの 恋人の……アレ……位……覚えておかなきゃ! 少し前に……康太に聞いた 「……康太は……恋人のアレ……しっかり覚えてる?」 真っ赤な顔して勇気を振り絞り聞いた 「おー!覚えてんぜ! エラの張り具合も血管の浮き出たカタチもな 何処を舐めると弱いとか、そりゃぁもう…」 康太はわざと卑猥な言葉を使い力哉を揶揄した そして力哉の耳元で…… 「想像すると……欲しくならねぇか?」と耳朶を舐めた 力哉は真っ赤な顔で……康太を見た 「精液が出る瞬間……口が開くだろ? 真っ赤に熟れた口の中を見てみろよ 自分に感じてるから見られる一瞬だぜ?」 耳元で囁かれ……力哉は泣きそうになった そんなのまだ見れないよ… お風呂だって恥ずかしくて一緒に入れないのに…… そう考えると康太は 「オレは伊織の体躯を洗ってやるのが好きなんだ 惚れ抜いた男の体躯を洗えるなんて至福の時だよな ヌルヌルだからな……挿れたくなったら挿れられるしな って話をオレとしたくて振ったんだろ?」 康太は笑った 一生が応接間に入ってきて力哉を見た 康太に抱き寄せられ真っ赤な顔をしていた そして耳朶を甘噛みされ……囁かれ…… 限界だった 一生は「力哉を虐めるな…」と助け船を出した 康太は一生を睨み付けた 「虐めてねぇよ! おめぇの目にはオレが虐めてると見えるのかよ?」 「………力哉が泣きそうな顔をしていた……」 「もう良い!」 康太はそう言いソファーから立ち上がった そして応接間を出て行った 一生は困った顔をしていた 直ぐにでも康太を追いたいのだろう…… でも力哉の横に座った 「何か言われたのかよ?」 「少しね聞きたい事があって聞いたんだ そしたら僕には刺激が強すぎた……」 一生は安心して力哉を抱き締めた その日から…… ずっと力哉は康太に言われた言葉を反復していた そして今日はvalentine当日 一生は康太がいないから淋しそう でも力哉とvalentineを祝おうとしてくれてるのが解るから嬉しい 今日こそは…… 力哉は気合いを入れた 完璧に覚えるから…… 僕……頑張るから…… valentineの昼過ぎ 力哉は一生にチョコを渡した 一生は嬉しそうだった 「ありがとう力哉…」 「……あまり美味しくないかも知れないけど……」 「美味しいよ 中学の頃に貰ったチョコなんだけどな力哉……」 「うん」 「俺は黒光りするチョコを貰ったんだ」 「………そう……」 力哉は淋しそうに……呟いた 凄く美味しかったって言うのかな? 「そのチョコは康太が愛を込めて作ってくれたチョコなんだ」 「…え?康太だったの?」 「俺は康太がくれたから…とチョコを食った そのチョコは聡一郎や隼人……そして瑛兄さんも食べた そしたらな病院送りになった」 それがみんなが言う殺人チョコなのか…… と力哉は想った 「康太は必死に作ったんだ 俺等はそれを知っていた 昔は慎一もいなかったしな…… 誰も康太に何かを教える奴はいなかった 見よう見まねで康太は作ったんだ」 「………優しいねみんな……」 優しいね一生…… 力哉はそう想った 「結果病院送りになったけど、自分の為に作って貰ったのは嬉しかった ………だから力哉にチョコを貰ってめちゃくそ嬉しい ありがとう……」 力哉ははにかんだ笑みを浮かべた 「………一生……頼みがあるんだ」 「チョコのお礼に何でも聞いてやる」 「見たいんだ!」 はいー??何を………見たいんだ? 「……何を?」 力哉の視線が……… 一生の股間に注がれた まさか………みたいのコレか? 「………だから……何を?」 「それ………」 力哉はやはり一生の股間に視線を向けた 「………中身?」 「そう……勃起してたら嬉しいんだけど?」 「見たいのか?」 力哉はうんうん!と頷いた 「………取り敢えずベッドに行こうぜ!」 一生は力哉の手を掴むとベッドに向かった ベッドの前に行くと服を脱ぎ始めた 全裸になるとベッドに寝そべった 「好きなだけ見てくれ! 当然、触っても良いぞ? 全部お前のだからな!」 「全部……僕の?」 「力哉のだ」 「………嬉しい……僕……恥ずかしくて何時も訳が解んなくなっちゃうんだ すると……後になって一生のを舐めてやれば良かった……とか、一生の……どんなんだっけ?とか想っちゃうんだ だからエッチに突入する前に見ちゃえば大丈夫かなって……」 その言いぐさに一生は爆笑した 一生は力哉の手を取ると股間に導いた そこは既に勃ち上がっていた 「ほら、触って覚えろ お前の最初で最後の男だぞ」 「一生……」 力哉はムギッと一生の性器を握り締めた 「………うっ……力哉……強すぎ……」 「……あ……ごめん…」 そして力哉はまじまじと一生の性器を観察した 息がかかるまで近くで眺める 一生の肉棒はその刺激に……ビクビク感じていた 皮を捲り……外気に触れた肉棒が力を増す カタチ 匂い 覚えなきゃ! 力哉は見て触って覚えようとした ふるふる……一生の性器が震える 限界…… 一生はイキそうになった それを堪える 我慢すればする程に…… 一生の亀頭の口が広がる 真っ赤な口を開き……中から止め処なく液が溢れていた 康太が言った通り一生の亀頭の口は開ききっていた 真っ赤な口を広げ……精液を零していた これは……感動かも…… 「康太がね、愛してる男の感じる様を見るのは至福の時だって教えてくれたんだ」 「…………この前、真っ赤な顔をしていたのは、そんな訳があったのか? お陰で俺は康太に無視されたまま……口すら聞いて貰えなかった……」 「……ごめんね 康太に逢いに行くんだろ?」 「………行きたい……康太がいない場所で俺は生きたくねぇ 俺が生きてる証は康太だから……無視されたままでいたくねぇ……」 「逢いに行っておいでよ」 「………ありがとう…… それより……限界だ……イッて良いか?」 「ダメだよ 康太は根元を握り締めれば結構楽しめると教えてくれたんだ」 そう言い力哉は根元をギュッと握り締めた 「……うっ……力哉…イキたい……」 「なら、目の前で出して見せて……」 こんな悪趣味な奴じゃなかった気がする…… こんなことを言う奴でもなかった 「………見たいのか?」 「うん……」 「なら、俺が出した後、お前も出せよ」 「………悪趣味……」 「それはお前だろ?」 一生は性器を擦りあげた 扱いて刺激を与える 一生は仰け反り……感じていた 「………んっ……はぁ……はぁ……」 感じる声が艶を帯びていた 力哉の目の前で一生は射精した 力哉の顔に……一生の精液が飛び散った 一生は精液を舐めながら 「次はお前の番な」と言った 力哉は服を全部脱ぎ捨てると、一生の目の前でオナニーを始めた 自分から言いだした事だけど…… 恋人の目の前で始めるのって結構勇気も要るし……恥ずかしすぎる… 力哉は性器を扱き……乳首を摘まもうとした 「乳首の方は手伝ってやる」 そう言い一生は乳首を弄った ペロッと舐められて……呆気なく爆ぜた 力哉は唖然となった 一生は力哉の足首を掴むと足を開かせた ローションを手に取ると、力哉のアナルを解した 緩むまで丁寧に広げる 指と舌とで解した 緩むと力哉は欲しかった 「………一生……ねぇ……早く……」 「なら……言わねぇと……」 「……一生……欲しい……挿れてぇ…」 「何処へだよ?」 力哉は俯せになり腰を突き出すと指を挿れた そして左右に開き…… 「………ココッ……ここに……挿れてぇ……」 結構凄い事を口にしてるのに…… 普段の力哉はすぐに恥ずかしがる 自分でアナルを開いて誘う 赤い腸壁がうにょうにょと……蠢いていた 一生は力哉に挿入すると…… 力哉の中を堪能するまで貪った 力哉は色んな体位をされて…… それでも感じすぎて必死に一生に縋り付いた 甘いバレンタインの日 力哉は少しだけ勇気を振り絞って 愛する男を角膜に焼き付けた 愛する 愛する恋人だった 愛してるから何でもできる 恋人の総てを瞳に焼き付けるから…… 待ってて一生 今に追いつくから待ってて…… 力哉は恋人の胸に顔を埋めて…… 実感した 明け方 「康太を追いなよ 我慢なんてらしくないよ」と言った 愛する恋人に背中を押され 一生も歩み出し康太の元へと逝く事にした 【魔界 後編】 炎帝は気怠い体躯を起こした 今日は種蒔きがあった 今夜まで魔界にいて、明日の朝には帰るつもりだった 人の世ではバレンタイン当日 二日前に魔界に来たが、ショッピングして デートスポット巡りをしていていたら、あっという間に時間は過ぎた 本当は今宵、人の世に還るつもりだった だけど、黒龍が時間を作れと拗ねるから一日伸ばした 今日は種蒔きに行く予定だった 毘沙門天が迎えに来る 一緒に種蒔きしようと閻魔や健御雷神や金龍達と約束していた 青龍は背後から炎帝を抱き締めて、背中に口吻けを落とした 「起きますか?」 「おう!今日は種蒔きだかんな!」 「では閻魔の邸宅でご飯を食べてから行きましょう」 青龍はそう言い起き上がった 鍛えられた肢体に瞳が釘付けになる 熱い視線を受けて青龍は 「ベッドから出られなくなりますよ?」と耳朶を甘噛みして囁いた 「愛する青龍の体躯だかんな……オレは何時でも欲しい…… でも今日は予定が目白押しだかんな…… 起きねぇと煩い位にドアを叩かれるもんよー」 「…………ですね、では起きますか?」 「………立ち上がったら……… お前のが流れて出て来る……」 「綺麗に洗ってあげます ……と言いたいけど、この家には湯殿はありませんよ?」 「………お前……この家でどうやって過ごしてたのよ?」 「僕の役務室は閻魔の庁舎にありましたからね あそこには簡易シャワーがあるので、仕事を終えたらそこでシャワーを浴びて家に帰ったら気絶するまで飲んでたので……何も必要なかったのです……」 「お前にそんな淋しい想いはさせねぇかんな! これからはオレがいる……」 炎帝はそう言い青龍を抱き締めた 「僕は君さえいれば何も要りません…… そんな事を言われるとベッドから出したくなります…」 青龍が口吻けしようと顔を近付けると…… 玄関のドアがドンドン叩かれた 「今すぐ支度しやがれ! 際限なく始めるんじゃねぇぞ! 始まってるなら今すぐに抜きやがれ!」 と言う声がした 黒龍の声だった 青龍は全裸のまま玄関に向かいドアを開けると 「兄さん、今から支度をしようと想っていたのです」 隠す事なく前に立たれて……黒龍は気まずくなった 「……少しは隠せよ……」 「服着る間も叩くつもりでしょ? スワンが怯えるので止めて下さい」 青龍は部屋の中に黒龍と毘沙門天を招き入れた 青龍は寝室に向かい、処理をして炎帝に服を着せた 炎帝は服を着ると、走って行った 「おっ!黒龍、毘沙門天も! 来てくれたんだな!」 黒龍は怒っていたから来てくれないと想っていた 青龍は服を着ると炎帝を追った 捕まえるとソファーに座らせて髪のセットをした そして……クンっと……匂いを嗅いだ 「大丈夫です!」 そう言い青龍も支度をする 支度が出来ると炎帝は「待たせたな!」とニカッと笑った 毘沙門天は「………新婚してるよぉ……この人……」と青龍に任せっきりで甘える顔を見て……呟いた 何処か炎帝は甘さがないと想っていた こんながさつな奴と甘い雰囲気になるのか? 不思議だったが…… 今の二人を見れば甘過ぎて…… 砂糖にガムシロぶっ掛けて……蜂蜜と黒蜜もかけちゃいました! 的な甘さを伺えれて……意外過ぎた 炎帝は「オレは未来永劫、新婚だぜ!」と笑った その頬に青龍は口吻けを落とした 黒龍は毘沙門天を止めた 「毘沙門天……始める前に出ようぜ!」 「………人の見てる前で始めちゃう人たちなの?」 「青龍は何処でもお構いなしだ! 見たくなきゃ……早く急かせ!」 「…………青龍殿のイメージが…… 早く種蒔きしようぜ!炎帝 お前しか場所を知らないんだからな!」 毘沙門天は黒龍の言う通り、急かした 「まぁ待てよ!まだ来ていねぇ……」 炎帝が言うと黒龍が 「え?誰か来る予定なのか?」 と問い掛けた その時、家の外で「炎帝、逝くぞ!」と言う声がかかった 炎帝は立ち上がり玄関を開けて飛び出した 「父者!母者!金龍!」 その声に皆が………え?……健御雷神と天照大神と金龍? と背筋に冷たいモノを感じた 建御雷神と天照大神と金龍の横に、閻魔もいた 炎帝は「全員揃ったかんな行くぞ」と言った 閻魔は「炎帝、お腹空いてませんか?用意してきたから後で食べると良い」と弟を甘やかした 黒龍は「俺は龍になり皆の後を着いていくわ」と告げた 天照大神は「なら妾は浮いて着いていくとしょうぞ!」とプカッも浮いた 健御雷神は「ならわしは雲に乗るか」と雲を呼んで乗り込んだ 閻魔はどうするんだ?と皆の視線が注がれる 閻魔は「私は馬に乗って行きます」と却下した 外に出て天馬に跨ぐと青龍も風馬に跨がった 炎帝は天を仰ぐと「スワン逝くぜ!」と声をかけた すると……白い白鳥が湖から飛び立った その後に……何百……何千匹という鳥が後に続いた 黒龍は「………あの鳥は?………」と問い掛けた 「みんな種を咥えてるんだよ 結構な種の量を持ち運ぶのは大変だかんな 鳥に咥えさせて穴に落としてもらう様にスワンに頼んだんだ」 健御雷神は「なる程!」と納得した 南の開発地区へと馬を走らせる 黒龍はこんな遠くまで来た事はなかった 魔界の全貌を把握しているのは皇帝閻魔位のモノだった 皇帝閻魔は魔界の全部を使って統治していた 広大な土地を、適材適所、配分して棲まわせていた 炎帝のやろうとしているのは……… かって皇帝閻魔が為し得た事だった 今の魔界は……荒れ放題で魔界の全部を使ってはいなかった まだ天魔戦争の痛手を引き摺る魔界が変わりつつある瞬間だった 炎帝は森の奥へ奥へと駆けていった かなり走った頃、歩調を緩めた 明らかに……空気が違う場所に出た 黒龍や金龍が見た事もない場所だった 魔界に………こんな開けて明るい土地があったの? と聞きたくなる場所だった 恵みの光が差し込み祝福された土地…… 炎帝の言葉を思い出した 天照大神は「………綺麗な場所ですね」と感嘆の息を吐いた 健御雷神は「これなら妖精も棲めるな」と辺りを見渡した 炎帝は微笑んだ 「虹色に光り輝く魔界が在った 種族を超えた共存だ かっての魔界は争う心などなかった 天界もそうだ 虹色に光り輝く天界があった…… 永らくの月日に天界も魔界も……光を失い本来の姿を失った 本来の姿を還らねばならぬ時が来た 人の世の終焉を止めねぇとな…… それには安定した世界を作らねぇと……… 人の世は影響を受けて……破滅に向かう 草木も生えぬ…人も住めぬ世界を…… 人は逝くしかなくなる…… それは止めねばならぬと……願って止まぬのは…… この蒼い星を創った神で在ろう そのために魔界は終焉に向かってはならぬ!」 炎帝の言葉を健御雷神も天照大神も金龍も心に刻んだ 「この地は神の領域 許可なく入れば出来ぬ 許可なく進入すれば……消されるだろう…… ゆくゆくは妖精を呼び共存を目指すが、今は時期尚早 オレが魔界に還る日まで護ってくれ……」 炎帝が言うと閻魔は 「魔界は変わらねばならぬ…… 今は変革の真っ只中……賽は投げられた 後戻りが出来ぬ以上は突き進むしかあるまい…… 炎帝、お前が還ってくるまで……我が魔界を護る…」 と弟を抱き締めた 炎帝は呪文を唱えた すると目の前が………開かれた 小人がせっせと働いていた 土地を耕し、木を植える穴を掘っていた 「ビッケ、穴は5000空いてるのかよ?」 ビッケと呼ばれた小人が炎帝の前に現れた 「炎帝、6000近く空けときました」 「そっか、ご苦労だったな」 「オイラ達……此処に住んでも良いのか?」 「あぁ、此処に住んで世話を頼むな」 炎帝が言うと奥の方から小人が10人くらい出て来た 炎帝の足首までしかない小さい生き物だった 炎帝は何処かヴォルグに似てるなと想った ヴォルグはもう少し小さいし……彼は小人じゃなく妖精だ 炎帝はポケットから種を出すと 「皆……手を開いて出してくれ」と頼んだ 皆、手を開いて出した その手のひらに種を一つずつ置いた 「願ってくれ…… この種がどんな木になるか想像して…願ってくれ…」 炎帝が言うと皆……握り締めて胸に抱いた 想像した通りの木が生える その人の思いに応える種だった 皆、心に木を思い描いた 風を呼ぶ木 虹を生み出す木 鳥が止まる木 妖精が止まる木 ヴォルグが棲む木…… 心に願った種を穴の中に入れた 「スワン、頼む」 炎帝が言うと鳥たちが口にくわえた種を穴の中に落とした 小人達が種の入った穴に土を被せた 炎帝は天を仰ぐと呪文を唱えた אלוהים הברכות של אלוהים האל הבורא ברכה על כדור הארץ すると………持った土から目が生えた 芽は伸び 蔓になり 木になり…… 葉を伸ばし 枝を広げ 立派な樹木になった 鳥たちは木々の中へ入り枝に止まった 蝶が舞い 花の匂いがした 穴の中に埋めたのは木々だけじゃなく 花や野菜もあった 花は綺麗な花をつけ……辺りに花の香りを放った 天照大神はその美しさに瞳を輝かせた 「土地は枯れた  生命も尽きる時が来た  そんな魔界に……救世主が降り立った……  魔界は変わるしかないのじゃな」 空を見上げて……天照大神は呟いた 「………妾は……長く生きすぎた…… そろそろ……旅立ちたいと想うのじゃ」 「母者、それは無理だ これから魔界の中心にいてもらわないとならねぇんだ 女が魔界を支える 女の底力を見せる時に母者がいなければ……指揮は落ちる まだまだ母者には魔界を支えて貰わねぇとな」 「………妾はまだ逝けぬか……」 「逝けねぇな……楽になりたきゃ母者の後継者を育てねぇとな……」 「……なら頑張るしかないわな」 天照大神は笑った 花が綻ぶ様な笑みだった 慈愛深き笑みだった 「東西南北、使用用途がある 南は果樹園と花を育てる 西は作物を育てて出荷する 魔界の食を西と東で支える事となる 東で畜産をやる 畜産を育てて肉にして出荷する 北で諸々の生産をする 畜産は……北欧の方から助っ人の神を連れて来る 神々が増える事となる 妖精や小人も増える事となる そこには争いではなく、生産と合理性を求めて共存を図る」 黒龍は「………魔界の者は……受け入れるだろうか……」と不安を口にした 「受け入れねぇと魔界の食料は尽きるぜ 確実に近い将来魔界は食料不足になる 土地は枯れて……食料は底を尽きる そうなった時……魔界は統治も難しくなるぜ 暴動が起きて、好き勝ってやる奴はチャンスだと想うだろう そうなったら……魔界は終わる そしたら人の世や天界も影響を受けるだろう…… 核爆弾のスイッチを押させて……人の生きられない死の星になるしかねぇ…… 確実に魔界の闇は人の世に影響を及ぼす…… 人の世では均衡が崩れ始めている 闇が蔓延して……バランスが崩壊し始めている 闇が広がるのは阻止した 悪魔族は今……必死に闇のコントロールしてると想うが……追いつかねぇんだよ…… このまま進めば……終焉は確実に訪れる 天界も魔界も食が尽きるのは時間の問題だ」 炎帝の語っているのは…… もしやの絵空事でない 確実に追い遣られる現実なのだ 「変わる努力をせねばならぬ時が来たのだ」 閻魔は果てを見つめて……呟いた ヴォルグの木は今も成長を続けていた 炎帝はヴォルグの木を見上げた ヴォルグの木は優しい光を放っていた 花が咲き 実をつけたら魔界中に蒔くつもりだった ヴォルグ……お前との約束…… 必ず果たすかんな! 炎帝は心の中で誓った 炎帝は金龍を呼んだ 「金龍、来てくれ」 金龍の傍へとやって来た 「ビッケ、金龍だ! この地の管理を任せた この地には神の施した結界が3層になって張ってある 一層の浅い結界には金龍だけは入る事を許す お前達は金龍に集荷物を渡せ、良いな?」 ビッケは「解った!此処の結界は誰も破れない……オイラ達は許されて此処に住むのだからな」と胸を張って言った こう言った所はヴォルグに本当に似ている 「そうだ、誰も破れない 言葉を話せるのもビッケ、お前しかいないからな お前が担当しろ」 「解った……金龍、オイラはビッケと言う小人だ」 「ビッケ、収穫は定期的に取りに来る 宜しく頼むな!」 金龍はビッケのサイズまでしゃがむと挨拶した 「ならまたなビッケ 後は頼むな」 「了解!」 ビッケは笑顔全開で炎帝を見送った 果樹園を後にして、炎帝はスネークランドまで足を伸ばした そして閻魔の用意してくれた朝を取った 「母者、父者と何か乗ってくると良い 金龍、息子とどうだ? 毘沙門天、おめぇも好きなのに乗ってこい」 炎帝はそう言うとガツガツとお肉に食らいついた 天照大神はスネークコースターなるものに並んだ 並んでいた者が…… 「………天照大神……お止めになった方が……」と言った程の驚きだった 涼しい顔して天照大神はスネークコースターに乗った 青褪める若者を余所に天照大神は……………笑っていた 「楽しいのぉ…」 笑顔で言われて…… 「………天照大神……お強いので御座いますね…」 と……ぶっ倒れそうな者から声をかけられた スネキングにも足を伸ばした スネキングと言うのはバイキングのパクリだった 名付け親は炎帝 炎帝はことごとくパクっていた はしゃいで乗り物に乗る天照大神を見て炎帝は 「………母者は強ぇな……」と呟いた 健御雷神は自分用の弁当持参で来た為、飯を食っていた 「あやつは大蛇を串刺しにして食ったからな 此処で働いている奴も……気が気じゃないわな」 と爆笑していた 「………父者……どんだけお転婆なんだよ」 「あやつはお前よりも強者だ! 騙されがちだが、あやつは腕が立つ そこいら辺の男より男前だ!」 天照大神が楽しんで戻って来ると、一行は帰宅の途に着いた 夜は宴会 炎帝の邸宅で宴会 黒龍は最初からハイテンションで飲んでいた すると朱雀と赤龍と司命が人の世からやって来た 炎帝は…… 「あんで青龍の上に座ってるんだよ!」 と赤龍がボヤく場所に座っていた 黒龍が赤龍を掴んだ 仕方なく赤龍は座った 朱雀と司命がソファーに座ると、炎帝は真ん中に座った 何やらボソボソ話をしていた 部屋の皆は気にする事なく飲んでいた 黒龍が炎帝に近寄ろうとした すると青龍が炎帝の前を遮って立った 「青龍……」 「兄さん、座ってなさい」 青龍が言うと金龍は何かを察して黒龍の手を掴んだ 炎帝は朱雀と司命の話を聞いていた そして封印した闇を渡された 「転輪聖王、この闇の分析出来る?」 『……我を呼ぶか?』 「来い!式神に追わせろ!」 炎帝がそう言うと転輪聖王が姿を現した 転輪聖王は炎帝から闇を受け取ると、痕跡を式神に追わせた 「追跡出来たらどうするよ?」 転輪聖王は炎帝に問い掛けた 「出所は大体予測着いてる…… 目(さがん)が今張り付いてる所へ行くだろうからな 人の世の均衡が何故此処まで狂っているのか…… 闇の影響を受けてるにしても……意図的な匂いがしてならねぇかんな…‥ 人の世の闇は消しきれねぇ程に蔓延しているが…… 人の心にそこまでの闇を蔓延させる程ではねぇかんな ならば…何故そうなったか……調べて禍根は断たねぇとな……」 「キッチリ後を着けてやるから大丈夫だ!」 「弥勒、お前還るのか? 八仙の所にいたんだろ? でねぇとこんなに早くは魔界には来れねぇよな?」 「司命が甘露酒の差し入れを大量にしたとかで、八仙も甘露酒を飲む相手を探してて呼ばれた」 「……昔から甘露酒には目がねぇもんな……」 炎帝が呟くと健御雷神はコップを差し出した そこに甘露酒を注いだ 転輪聖王は健御雷神の横に座って飲み始めた 「悪かったな……朱雀と司命」 人の世の騒動を収めてきたのは解っていたから、労いの言葉を掛けた 「聡哉はもう大丈夫だ 弥勒と紫雲が結界を張り巡らしたからな」 朱雀がそう伝えた 「何処で闇に囚われたんだ?」 「それは俺には解らねぇ でも聡哉の中の闇は強大な力を秘めていた マイナス思考になるに決まってるじゃん 何とか間に合って良かったと想ってる」 朱雀はホッと息を吐いた 「何処かで闇と接触してる筈だ そして闇はもう一度聡哉に接触を図るだろう…」 とても綺麗な魂を持つモノは狙われる 聡哉は透き通る綺麗な魂を持っていた 闇の大好物 聡哉の魂を闇に染める…… 至福の喜びだろう…… 聞いていた弥勒が「聡哉に近付いたら解るように身代わりの式神を入れておいた」と二度と聡哉を餌食にしない為の策を告げた 「………あの地帯……なんかあるのかな?」 炎帝は思案した 日本の風土には、日本古来の神々が奉られている 聡哉のいる付近に何かあるのか? 何か封印されているのか? 「…………日本の古来の事は……日本武尊に聞くしかねぇかな?」 炎帝は独り言ちた 皆はギョッとした 日本武尊…… 名前だけなら知っていた 毘沙門天は「………そんな神……今は無理だろ?」と呟いた 「いるぜ? 伊邪那美 伊邪那岐だってカタチを変えて存在してるんだからな!」 「………誰よ?それは……」 「伊邪那美と伊邪那岐か?」 「………日本武尊……」 「探せばいるんじゃねぇか?」 教える気がないのが伺えられて毘沙門天は黙った 黒龍はずっと炎帝が遠くへ逝ってしまったみたいで…… 近寄れずにいた 「どの道……今夜は宴会だ ほれ、黒龍、飲めよ」 炎帝は黒龍に酌をした 「友よ!飲もうぜ!」 炎帝は黒龍の首に腕を回して誘った 閻魔が「炎帝、そやつを飲ませるのは止めなさい」と止めた 「兄者……?」 「体調が最悪なんですよ…」 「………なる程……それで黒龍は本調子じゃなかったのか? くすんだ気は体調不良か……」 「炎帝、人の世に連れて行って久遠という医者に診せなさい」 閻魔は人事だから……そう言った 自分が久遠に診て貰うのは勘弁だけど…… 夜明けまで宴会は続き 翌朝、炎帝達は人の世に還ることにした 勿論、黒龍を連れて……還った 人の世に還り黒龍は入院した 康太は「……なんか慌ただしいバレンタインだったな……」と呟いた なんせ黒龍が拗ねてひねて……距離を取ろうとしていたから……何かあると想っていたら体調不良と来た 閻魔曰く ここ数カ月、黒龍は痩せて弱っていっていた 覇気もなく 毒舌もなりを潜めていた 黒龍らしくない 魔界の者なら皆そう思っていた だが、黒龍には言えなかった 黒龍は即入院した 神といえども万能ではない 況してや体躯を持つ神は…… そんなに人と変わりはない 黒龍は飛んでる最中に撃たれたらしく傷付いていた 自分で手当てして八仙に薬湯を貰って何とか治癒させようとしたが…… 怪我は酷くなる一方だった 崑崙山で黒龍と逢った時、黒龍は自分の怪我の薬湯を貰いに来たのだが……炎帝がいたから…… 貰わずに魔界に戻った で、とうとう閻魔の前でぶっ倒れた 閻魔は御殿医呼んで診察させたが……怪我が酷すぎて……炎帝に頼んだという経緯だった 久遠は怒りまくってオペに入った 「麻酔せずに切り刻んでやろうか? 切ったら縫ってやる安心しろ!」 と脅され……観念した 黒龍を撃った犯人は解らなかった ………根が深い事件に発展したのは…… また別の話で…… バレンタインは終わった 今年のバレンタインは甘い時間を送った また来年、恋人と過ごせる為に努力する 同じ日は二度と来ないと解ってるから…… 人は努力して その先へ逝く 愛している人の手を離さない様に…… 愛を確かめる どうか 愛する人の手を離さないで下さい 来年も 再来年も 十年後も 愛してるって 伝えてください            飛鳥井康太

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