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第11話
「そうなんですね。俺はここで鳴海さんと待ち合わせしてて。そうだ鳴海さん、今日はどこで食べるか俺が決めてもいいですか?」
「え、っと……」
「大丈夫です、鳴海さんの好みもちゃんと考慮して決めるので」
スタジオ以外で顔を合わせるのは初めてなのに、まるでいつも食事を共にしているかのような言い方だ。
三条との良好とは言い難い関係を見抜いてそうしてくれているのだと怜はすぐに分かった。
ここはアズサの芝居に乗ってしまうのが得策だろう。
ありがとうと呟き、もう行こうとアズサの背負っているリュックをそっと引く。
「そうですね。じゃあ俺達はこれで」
アズサは三条達にちいさく会釈をし、怜を出口の方へと促す。
ふらついている怜の足に気づいたのか、両腕に手を添え支えるようにしてくれたので怜はどうにかまっすぐ歩くことが出来た。
何あれ、と揶揄するような女性の声と、三条が鼻で嗤うのが背に聞こえる。気持ち悪い。
口元を押さえながら怜はアズサと外へ出た。
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