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第12話

「鳴海さん、顔色悪いですよ。座りましょうか」  近くの公園に入り、促されたベンチに腰を下ろした。日も暮れ人気のない冬の公園は静まり返っていて、外灯が照らす己の顔は余程ひどいものらしい。  心配してくれているアズサに申し訳なく思いながら、怜は大丈夫と返す。ちっとも気分は良くならないけれど。 「えっと……あ、イヤホン付けたままだった」  か細く聞こえる音に漸く気づき、切ってしまわなければと怜はイヤホンを外した。  ポケットからスマートフォンを取り出しホーム画面をタップし停止させると、隣に座っているアズサが「あ……」と声を漏らす。 「アズサさん?」 「あー、えっと……いえ。何でもないです」  何かあったのかと思ったが、アズサがそう言うので怜はそうですかと頷きイヤホンとスマートフォンをバッグにしまう。  どこかぼんやりとしている様子が気がかりだが、窮地を救ってくれたアズサに礼を伝えたくて膝ごと体を向けた。 「アズサさん、さっきはありがとうございました」 「え? あー、いえ。たまたま見かけただけだったんですけど。何となく鳴海さんが辛そうな顔に見えたので出しゃばってしまって。余計なお世話になってなかったなら良かったです」 「そんな……本当に助かりました。一人だとどうにもならなかったです。本当に……ありがとうございます」 「わ、ちょ、鳴海さん! 顔上げてください、ね?」

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