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第13話

 膝に手を置き、怜は深く頭を下げた。恐縮したようにアズサが制してくるがこれだけでは気が収まらないくらい感謝しているのだ。  けれど参った事に、アズサが乞うように頭を上げることが出来そうにない。堪えていた涙があふれ出し、握りこんだ拳の上にぽたぽたと落ち始めてしまった。 「はは……ちょっとだけ、待ってください」 「っ、鳴海さん……」  息を飲んだ様子のアズサには泣いている事に気づかれてしまったようだ。  困らせたくはないのだが、安心した体はちっとも怜の思い通りにならない。あのままでは本当にどうなってしまっていたか。  きっと逃げる事すら叶わず、嘲笑う三条の気の済むまで尖った言葉を浴びるしか出来なかっただろう。  救い出してくれたアズサには、礼をどれだけ言っても足りないくらいなのだ。

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