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第15話

「んー、じゃあ本当にご飯行きません?」 「え」 「あー……っていうのは、うん、冗談です。鳴海さんは難攻不落だって聞いてるんで」 「な、なにそれ……」 「あ、すみません。揶揄ってるわけじゃないです、むしろ俺はきっぱりとしてて良いなって思ってたし」  誰から誘われても決して食事に行かない事を指しているのだろう。  後ろめたいわけではないがつい眉を寄せてしまうと、アズサは慌てて怜の感じた事を優しく否定する。  渋々ながらも怜がそれならばと頷くと、アズサはほっとした顔を覗かせた。  それにしても、アズサの言う事は確かにそうなのだ。一緒に食事に行く──つまりは誰かと仲を深めることに怜は酷く抵抗がある。  信じれば裏切られるかもしれない、三条がそうしたように。  必要以上に他人を信じない事で怜は自分を守ってきたのだ。

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