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第17話
職場ではない甘えからか、怜は失礼とも取れることを言ってしまったがアズサはものともしない。
それどころかどこか嬉しそうに笑いながら、膝に頬杖をついて少年のように怜にねだる。
「俺の方が年下ですよね。俺、ノリ君と同い年なんで」
「あ、そうなんですね」
ノリは誰にでも分け隔てなく懐っこい性格で、スタジオの利用客たちにもよく気に入られている。アズサもそのようだ。
後輩への親しみのこもった呼び方に怜がひっそり喜んでいると、だから……とアズサは続ける。
「敬語なしにしてほしいです」
「へ? え、いやでも、お客さんだしそれはちょっと」
「お客さんと仲良くなるのはだめ?」
「だめ、って言うか……もう、さっきから聞き方ずるいですよ」
「はは、そうかも。でもよかったら。お客さんじゃない時だけでもいいので」
「お客さんじゃ、ない時……」
「よし、決まりです。怜さん、俺には敬語なしでお願いします」
お客さんじゃない時ってなんだ。こうしてスタジオの外で会うのは今日が初めてで、それも偶然だったのに。
それではまるで、まだこの先も外で会う未来があるかの様だ。
けれど戸惑う怜を置いてけぼりにアズサは勝手に決めてしまった。
困る──だけどきっと、元気づけようとわざとおどけたようにしているのだと伝わってくるから無碍にするのも憚られる。
仕方ないなと頷くと、ふわりと笑ったアズサはそれじゃあ帰りましょうかと立ち上がった。
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