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第21話
「漢字は教えてもいいですよ」
「……“木へん”の梓?」
「わ、正解です」
「それ以外にパッと思いつかないよ」
「くく、確かに」
思ったより表情豊かなのは梓のほうだと怜は思う。
スタジオで目にする梓はいわゆる仕事モードなのだろう、年下だろうとは思っていたけれどこんなにあどけなく笑う姿は見た事がなかった。
三条に出会し全身が強張るほどだったのに、今日という日が梓によって楽しかった思い出で染まりそうなくらいに、梓の笑顔に心の底から救われている自分が確かにいるのだ。
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