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第22話

「あ、もうここで大丈夫だよ」 「え、この辺なんですか?」 「うん、あそこのアパート」 「…………」  自分の根幹が揺らいでいるのを、アパートを指差しながら怜はまた自覚していた。  近づき過ぎたくない、そのはずなのに梓ならこのくらいならいいかと思ってしまっている。自宅はここだと教えてしまう程には。  助けてくれた優しさに絆されているのだろうか。自分に苦笑しながら怜が振り返ると、マスクを少し指でずらしぽかんと口を開ける梓の顔があった。 「梓くん?」 「俺の家と近いですね」 「そうなの?」 「俺んち、あそこです」  その指の先、道路を挟んでほんの数十メートル向こうのマンションを見上げて、今度は怜が驚く番だった。

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