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第23話

「こんなはずじゃなかったんだけどなぁ」 「アニキ? 何かあったっすか?」 「んー……あったような、あったような?」 「あるじゃないっすか」  休憩時間になると怜とノリは、時間が合えば共に屋上で昼食をとるのが日課だ。  持参した弁当を食べ終え、スマートフォンを取り出した怜はメッセージアプリを眺めている。  新しく誰かと繋がったのはいつぶりなのか、もう思い出せないくらい久しぶりだった。  あの夜──梓と偶然会った日──アパートの前でもう一つお願いがあると連絡先の交換をねだられ、断る事が出来なかったのだ。  あれから二週間ほどが経っていて、ささやかながら毎日のように連絡を取り合っている。  一日程度空くこともあるが、今日の仕事はどうだったかなどの簡易なメッセージや、猫がいたとかご飯が美味しかっただとか写真が送られてくる事もある。それに怜が短く返事をするのが常だ。 「何か困ってるなら相談のるっすよ?」 「んー、すごく困ってる」 「え、大丈夫、じゃないっすよねそれ」  ノリは神妙な面持ちで怜にそう言った。困っている、とても困っているのだ。この状況が嫌ではない自分に。  梓とのやり取りがいつしか楽しみになっていて、部屋でひとり笑ってしまうことだってあった。そんな事も随分なかった事だから戸惑っている。  けれど、怜はどう説明したらいいのか分からない。

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