26 / 93

第26話

 ノリの言う通りなのだろうと、疑う隙すら本当はないと怜はゆっくり自覚する。  窮地から助けてくれた優しさ、すぐに生まれた気安い会話の楽しさ、一日にほんの少しメッセージを送り合う時間を実は待ち望んでいる。  自分はまだ、新しく誰かと関係を結ぶ事が出来るのだろうか。職場の客から友達だとか、ひとつ踏み込んだ親しい仲になってもいいのだろうか。  それを、望んでいるのだろうか。  自分に問うてみると、明確な答えが浮かぶよりも先に、今日の誘いにイエスと答えたいと自然にそう思う。 「ノリくん、僕行ってみるよ」 「ほんとっすか!? アニキがそうしたいならそれがいいと思うっす」 「うん、ありがとう」 「へへ、どういたしましてっす。じゃあほら、返事しなきゃ」 「そうだね、えっと……」  そうと決まったならと怜はメッセージアプリを開き、けれど次はどう返そうかと悩んでしまう。  画面とにらめっこをしながら下を向いていると、自分の事のように隣でそわそわしていたノリが不意に声を上げた。 「あ、梓くんだ。おーい」 「へ……え!?」 「ん? アニキどうしたんすか?」

ともだちにシェアしよう!