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第28話

「はぁ、安心したらすげー笑っちゃった。アニキ、俺さっきはああ言ったっすけど、実はどんなヤツなのか不安だったんすよね」 「ノリくん……そうだったんだ」 「っす。アニキが変なことされないか尾行して見極めようと思ってたし。でも梓くんなら俺心配ないっす!」 「尾行? ふふ、そっか。ノリくんありがとう」  少しだけ物騒な言葉に怜は目を丸くしたけれど、その明るい顔に覚えるのはただただ親身になってくれているノリの優しさだった。それだけノリは怜の事を気にかけているのだ。  ノリに改めて感謝して、梓に食事に行こうと口頭で返事をする。  よかった、とほっとしたような顔を見せた梓にすぐに返信できず悪いことをしたなと悔やんでいるところに、そう言えば、とノリが怜を呼んだ。 「梓くんだったならそんな悩む事なかったんじゃないっすか? だってほら、梓くんって、アニキがよく聞いてるシー、」 「わ、ノリくん! 待って!」 「……へ、梓くんなに?」  何かを言いかけたノリを梓が慌てて遮る。それからノリの体をくるりと反対側に回して、梓は何か耳打ちをしているようだ。  一体どうしたのだろう。目の前で秘密を交わされるのは居心地の悪さがある。  怜が落ち着かないながらも待っていると、振り返ったノリは苦笑しながら頭を掻いた。 「あー、っと。アニキ、さっきのは何でもないっす。俺の勘違いだったみたいで」 「……怪しい」 「ほんとに! ほんと、梓くんとは俺も仲良くしてもらってるんすけど、すごくいい人だから。ね?」 「それは分かるけど……」

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