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第29話
怜がチラリと梓を見上げると、あたふたしているノリを見てくすくすと可笑しそうに笑っている。
やっぱり面白くない、何故かチクチクと胸が痛むくらいに。
けれど同い年らしい二人には、二人だけの話があっても何も不思議じゃない。不機嫌になるなんて年上として恥ずかしいし、ここは飲みこもうと怜は頷く。
それに本当に何か隠し事があったって、ノリが自分を悪いように騙すことはないと信じられるだけの関係を築いてきたつもりだ。
「ま、いっか。じゃあ梓くん、今日はよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
「ぶふっ、やっぱり二人とも面白い」
「ノリくーん」
「ほらまたハモッた!」
気を取り直し、梓へ頭を下げると真似するように梓もぺこりと会釈をした。それをノリが笑うから、二人してじとりとした目を向けてまた同時に彼の名を呼ぶ。
こんな戯れるような会話が愛しいほどに楽しい。
三人でひとしきり笑い、じゃあそろそろ帰るねと手を振るノリを見送ってから怜と梓は街へと向かった。
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