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第30話

 梓はいくつかの店をピックアップしていて、どこか好きなところはありそうかと怜に尋ねた。  中華にフレンチ、少し洒落た居酒屋などと怜が何を好んでもいいようにチョイスしているのがよく分かった。  梓の細やかさに、彼に好かれる子は幸せだろうなんてことを頭の隅で考えながら、怜はその中からパスタが評判らしい店を選んだ。  ファミリーレストランではないが敷居が高いわけでもなさそうな雰囲気が、気軽な店がいいと思っていた怜には丁度良かった。  レコード会社の人と一度来たのだとの梓の案内で、木のぬくもりを感じる内装が特徴的な店内に入る。テーブルにつき早速メニューを眺めていると、梓の視線が自身に注がれている事に怜は気づく。 「梓くん? もう食べるの決まったの?」 「あ、いえ、まだです」 「僕の顔にはメニューは書いてないよ?」 「へ……あはは、そうですね。でもそうじゃなくて」 「…………?」  テーブルにはメニュー表が二つ置いてあるのにと不思議に思ってそう尋ねると、梓はくすくすと笑って続けた。 「今日ご飯に誘うの、実は緊張してて。でも怜さん来てくれたから、思い切ってよかったなってつい浸ってました」 「そ、そっか」 「はい。よし、俺も何食べるか決めます」

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