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第34話

 入浴を済ませ、髪を乾かしながらリビングに向かう。ワンルームの窓際にベッド、その横にローテーブルがあってテレビの見える位置のクッションが怜の定位置だ。  腰を下ろす前にバッグからイヤホンを取り出し、今日も相山梓のドラマCDを聴きながら眠ろうとスマートフォンのミュージックアプリを起動する。  時折タオルで髪を拭きながらどれにしようかと選んでいると、突然インターホンの音が響いて怜はびくりと肩を跳ね上げた。  時計を見ると二十三時を回ったところで、こんな時間に連絡もなく来訪する知り合いが思い至らない。  ノリやノリの恋人の加奈がここに来る事はたまにあるが、突然来る子達ではない。かと言って宅配便のはずもないだろう。  息を潜めていると、もう一度インターホンが怜を呼んだ。生憎このアパートには液晶画面や音声で室内から相手を確認する術はない。  もしかすると梓で、忘れものか何かがあったのかも知れない。  怜は立ち上がり、玄関へと向かう。  けれどドアスコープを片目で覗いた瞬間、咄嗟に叫びだしそうになってしまい、怜はそれを辛うじて堪えた。  何故ここにいるのだ。用などないはずなのに。  そこに立っているのは確かに元恋人の三条だった。恐怖に震える体を抱きしめながらしゃがみこむと、怜を呼ぶ声が扉越しに届く。 「怜? いるんだろ? 開けてくれないか?」

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