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第40話

 こっちから願い下げだと言い捨てて、肩を竦めて見せ三条は去ってゆく。  階段を下り、道の向こうへ消えてゆくのをしっかり見届けると怜は力が抜けてしまった。  へなへなとしゃがみこむと、梓が慌てて怜の体を支える。 「わっ、大丈夫ですか!?」 「あ、はは、ごめん……ほっとしたら力が抜けちゃったみたい」 「怜さん……中入ってもいいですか? 俺につかまって」 「へ……え、あの、梓くん!?」  怜に断りを入れてから、梓は怜の膝の下に腕を通していとも簡単に抱き上げた。  思わず首にしがみつき、密着した体に怜の心臓は跳ね上がる。戸惑う怜の心を取り残して、切なくて速いリズムを刻んでしまう。  無理やり下りるわけにもいかず、玄関から短い廊下を通り扉の先のリビングに入ってもらった。  クッションの上にゆっくりと下ろされ、梓も隣にしゃがんで怜の顔を覗きこんでくる。

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