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第41話
「え、っと、梓くん、近いよ」
「目、赤くなってます」
「あ、うん。泣いちゃったから……恥ずかしいからあんまり見ないで」
「髪の毛ちょっと濡れてませんか?」
「それは……お風呂あがったところだったから」
「それじゃあ冷えちゃってますよね? もう一回温まったほうがいいんじゃないですか? それにさっき外で座っちゃったから服が汚れ……」
「あ、梓くん!」
伝えなきゃいけないことがある、何度言っても足りないありがとうだとか。けれど梓は怜のことばかりで、どこか聞く耳持たずだ。
しゅんと下がっている眉が怜を気遣っていると分かるから無下にはしたくないけれど、一心に優しくされる事に躊躇い遮らずにいられなかった。
きょとんと目を丸くした梓は、とびきり柔らかい声で「どうしましたか?」と問う。
「梓くん、あの、また迷惑かけて本当にごめんなさい」
「もう謝るのはなしだって言いましたよね? 俺、怜さんのこと迷惑だなんて思ったことないですから」
「でも……ん、そっか。梓くんは本当にやさしいね。ありがとう、すごく、すごく助かった」
向けてくれる優しさを否定することはしたくないと、これ以上の謝罪をありがとうで包んで怜は差し出す。
もう三条がここに来る事も、傷ついた心を抉られる事もないような気がしている。それは全て梓のおかげなのだ。
何度伝えても伝えきれないありがとうをまた溢れだした涙に溶かしてもう一度口にすると、梓の指がそっと掬ってゆく。
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