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第45話
出逢ったのは社会人になって少し経った頃だった。
怜は女性を好きだった事もあったから、きっと自分はバイなのだろうと思っている。男性の三条を好きになって気づいた事だ。
仕事に疲れた体で立ち寄った書店で同じ本を取ろうとしたのがきっかけだなんて、今思えばそんなドラマみたいな展開に夢見る子どものような、或いは疲労を抱えた帰宅時の怜には縋る様な思いもあったのかもしれない。
あっという間に好きになって、三条もそうだと思わせられるような素振りが沢山あって、勇気を出して怜から好きだと告げた。
年上の彼は優しく笑って怜の手を取った。
こうなるのを待っていたよ、と言われた覚えがある。
好きだとは言われなかったのかも知れない。今となっては分からないけれど。
休日は三条のマンションによく行ったものだ。
泊まればいいと言われ、ひとつのベッドで夜を明かして、少し寝不足な体で簡単な朝食を作る。
この部屋に三条が泊まったことは無かったけれど、付き合いだして一年が経った頃、三条のマンションの合鍵を渡されて舞い上がった。
幸せだった、三条も一緒に幸せなのだとばかり思っていた。
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