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第49話
「俺は男同士だとか、そういうのに偏見ないですよ。怜さんが真剣だったことも分かるし、その……相山って人が怜さんが元気になるきっかけになったのも凄くいいなって思います」
「ほんと? 何だかさっき、すごく考えてるみたいだったから」
「それは……」
嘘ではないと真剣な声色が怜に教えている。それでも気がかりは拭えずすぐに飲み込めるわけでもない。
梓は怜にとって、ヒーローのようなものだ。優しい梓に、何一つ憂いを残したくない。
「それは?」
「あー……すみません、言えないです」
「な、なに? やっぱり僕変なこと言った?」
「違います! それは断じて! 本当に!」
「でも……ん? 梓くん、顔赤いよ?」
「っ! うわー、すげーカッコ悪い……怜さんこっち見ないで」
「やだ、気になるもん。この部屋熱かった?」
「わ、無理ですって、本当に……」
逸らされてばかりの頬が火照ったように染まっている事に怜は気づく。覗き込めば反対側に逸らされ、追えばまた逃げられてしまう。
けれどすぐに形勢は逆転する。梓の手が怜の目をそっと覆い、どこか色を孕んだ声で囁く。
「怜さん実は意地悪ですね」
「っ、梓くん?」
「落ち着いた大人の人かと思えば、たまに無邪気なところがある」
「あ、あの、梓くん、手どけて?」
甘ささえ感じる声に息を飲み怜はたじろぐ。それにこの声のずっと奥に、何かを感じる。
その正体を掴もうとしても、梓が至近距離にいると言う事実が阻んで手繰らせてはくれない。
鼓動を速める心臓から目を逸らし、頼んでみても塞がれたままの視界が聴覚だけを鋭くする。
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