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第91話
「ん? 怜さん?」
「も、いい」
「……? いい、って?」
「そこ、もういいから。早くあずさくんの、ほし」
「っ!」
「こっち、おねがい、あずさくん」
握られた手は、そろそろと怜の後ろへと導かれる。
大胆な行動とは裏腹に怜の頬はいっそう染まっていて、逸らされた視線は梓の指先が噤んだそこに触れた途端にぎゅっと瞑られた。
蠱惑的な光景に梓は目眩を覚えながら呆然としてしまう。
ごくりと喉を震わせ、ベッドの脇に仕舞ってあるローションとゴムへと手を伸ばす。
気が逸り取り落としてしまって、梓はつい舌打ちをした。
キャップを開け、手にたっぷりとローションを纏わせ、落ち着けと深く呼吸をしながら怜の後ろへ触れる。
ぴちゃりと立った音に熱く息を零したのは二人同時だった。
「あずさくん、はやく」
「解すから待っててください」
「もう待てないよ」
「っ、怜さん……優しくしたいから煽らないで」
「激しくしちゃうかもって、言ったのに……」
「そう、ですけど……あーもう!」
梓自身が懸命に押しこめた欲を怜は引きずり出そうとする。
怜の表情や声、全てが梓を煽って兆すそこはもう痛いほどだというのに、他でもない怜にそう言われては我慢の意味が霞んでしまう。
けれどやはり傷つけたくないのだ。
野獣のように呻く喉を怜の乳首を口に含み吸いつくことで誤魔化す。
浮いた怜の背の肌は先ほどより汗ばんでいて、背骨ひとつひとつに爪を立てるように辿ると怜は腰をくねらせながら甘く声を崩してゆく。
「指入れます」
「あっ、あぁ、あずさく、」
淵を丁寧に解していた指を、一本ゆっくりと埋める。
浅いところを広げるようにぐるりと回し、ローションを足しながら奥を目指す。
途中、腹側のふっくらとした部分を掠めた時、無意識なのか怜は腰を揺らしたが、梓はわざとそこを避けた。
解すことだけに集中し、指を増やして丹念に拡げてゆく。
「や、あずさくん、なんでっ」
「何がですか?」
「いじわる、してる」
「んー?」
前立腺に触れずにいる事を言っているのだと分かっているが、梓は知らんぷりをする。
焦らして焦らして、怜をとびきり気持ちよくさせたい。
衝動のまま貫いて揺さぶりたい欲はどうにか抑えられても、たとえ怜が泣いて乞うてもとことん甘やかしてぐずぐずにしてしまいたい欲は堪えられないのだと梓は己に眠る性分に気づく。
それは確かに、怜の言うように“意地悪”になるのかもしれなかった。
「怜さん、ここは我慢して」
「ぐすっ、なんで?」
「いっぱい我慢して、それで……俺のこれでここ擦ったら、もっと気持ちいいかもしれませんよ?」
「あっ、あっ」
「ふ、想像しました? 締まりましたね」
これ、と言いながら、今か今かと待ち受ける怜の尻に猛った自身を押し当てる。
想像したのか「ひっ」と息を飲み、熱を孕んだ吐息が溢れる怜の唇にむしゃぶりつく。
舌を絡ませ上顎を擦ると、また出ちゃいそうと怜は鼻を啜った。
「まだ出しちゃだめですよ。そろそろお尻よさそうだから、こっちで、ね?」
「ん、ん、あずさくん、はぁ、も、いれてほし、」
「我慢出来て偉かったですね。じゃあ、挿れますよ?」
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