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ネットアイドル「id」2

 教室が近づき、理玖はリュックをおろして学生証を取り出して入室時のスキャンの準備をしていた。 「おはよう、南里」  理玖は横からバカに爽やかな声で呼ばれてそちらを向いた。  そこには茶髪のショートアシメマッシュカットのすらりと背の高い柔和な表情をしたキラキラ王子様がいた。 「(たちばな)さん、おはようス」  このキラキラ王子様は、文学部の4回生で昨年のミスターコンテストでも優勝をした橘 史哉(フミヤ)という、平々凡々なキャンパスライフを送る2人とは接点もなさそうな人物である。 「ちょうど良かったよ南里、このDVDすごく参考になった。ありがとう」  史哉は理玖にDVDを渡し礼を言う。  隣にいた一樹はそのDVDを覗くとパッケージには『モダンバレエ 基礎と仕組み』と書かれていた。 「橘さん、何スか、このマニアックな内容のDVD」 「卒論に迷っててね。欧米の文化や風俗について書こうかなって漠然と考えていたから、バレエやってた南里に相談してこれを貸してもらったんだ」 「へー…てか理玖が今もバレエって……違和感」 「うるせー」  理玖は返してもらったDVDをリュックに仕舞うと史哉は理玖に訊ねた。 「南里、何でバレエ辞めたんだ? こんなに詳細な資料をもっていたのなら、それなりに長く続けてたんじゃないのか?」  それに対して理玖は「あー…」と間延びする声を出し、気まずそうに笑う。 「なーんか、あれっス……えーっと…筋肉固まっちまってー……成長期だったんかなーって」 「そんなことあるのか?」 「あるんじゃないすか?」  史哉にこれ以上の詮索をするなとでも言うように、授業の予鈴が鳴り自然と解散する流れになった。

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