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ネットアイドル「id」 7

 若干財布が寂しくなった翌日の午後6時、理玖は代々木公園の近くにあるテナントビルの地下に馴れたように入る。  手にかけたドアには「Dance studio HANA」と描かれている。ドアを開けてそのフロアに入ると受付は無人で、奥からラテン調の音楽が漏れ聞こえていた。  理玖はその音がする重たいドアを開けると、そこは壁3面が鏡とバーがあるダンススタジオで、ラテンの音楽に合わせて1人の女性が踊っていた。 「華笑先生! お疲れ様です!」  音量が大きかったので理玖は声を張って女性に声をかけた。女性も理玖に気が付いて音楽を消し、理玖に近づく。 「南里くん、悪いね、レッスン日でもないのに来てもらっちゃって」 「いえ…今日は特に用事もなかったので……」  踊っていた緩いパーマがかかったアッシュブラウンのロングヘアの女性、華笑はダンスで乱れたポニーテールを結いなおしながら自分の荷物を置いている壁際に移動しながら理玖に指示する。 「とりあえず上の事務所に行こうか。音源とか聞きたいでしょ?」 「はい」  理玖は華笑のあとについていき、スタジオを出てエレベーターに乗った。  到着した4階フロアのドアには「㈱ マックスレーベル」と書かれたシールが貼られてるだけだった。一見するとただの住宅に見えるがセキュリティは万全なようでカードキー認証で出入りする。華笑がカードを通すとドアのロックが外れる。 「どうぞ」 「ありがとうございます」  華笑はドアを開けて理玖を先に入れる。中に入るとなんの変哲もない小規模のオフィスで、カーペットが貼られている床は土足で入って良いようになっている。 「こっちよ」 「はい」  華笑に通された部屋は応接室ようで、6人掛けのダイニングテーブルが置かれており、壁際には冷蔵庫とウォーターサーバー、コーヒーマシンがあった。 「赤い椅子に座って」 「はい…失礼します」  理玖はドア向かいの席に座り華笑を待つ。  数分後、華笑は練習着から彼女によく似合うボタニカル柄のワンピースに着替え、オシャレにステッカーを貼ったノートパソコンを抱えて応接室に入ってきた。 「おっまたせー」と言いながら華笑は理玖の向かい側に座る。  そしてパソコンを起動して華笑は理玖に画面を見せる。 「音源と絵コンテが送られてきてね、それに沿って振付は粗方終わらせてるの。まずは音源を聞いてみようか」 「お願いします」  華笑は「id 新曲」と名付けられたファイルをクリックした。

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