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「id 新曲」

 イントロはピアノの綺麗な旋律のみで、30秒ほど聞くと歌が始まった。  ふと 空を見上げれば 雲のない 真青(まっさお)な一面が広がり  吞み込まれそうな 幻覚に堕ちて 頭が痛い  東の方角から 隠れることができない太陽が人を刺し  求めてもいない光と影を 意味出して ああ (いら)つく  手を広げて風を受け止めよう とか  顔をあげて大きく息をしよう とか  そんなの要らないって思う僕は 「歪んでる」のか  容赦なく太陽に包まれる世界は  「幸せ」だと笑わなきゃいけないルールを強いられて  それがとても 苦しくて 生きにくい 僕は悪だから  独りがいい 独りがいい 独りじゃなきゃ  1番が終わるとスネアドラム、ハイハット、バスドラムの3点のみのシンプルなリズム、静かで歪まないベース、1小節後にエレキギターのアルペジオが加わって少しだけ賑やかな2番が始まる。  ふと 水面を(おろ)せば 鏡のように 透明が青を映していて  沈んでしまいそうな 絶望を想い 心がつらい  西の茜色が 間もなくの夜空を告げていて  最後の影が 水面に生まれていて 嗚呼 見たくない  手を広げて風を受け止めよう とか  顔をあげて大きく息をしよう とか  そんなの要らないって思う僕は 「歪んで」しまった  待つことが駄目で抗えない世界は  受け止めて抱きしめなきゃいけないルールを強いられて  みんながとても 生きにくそうで 僕は 泣いたけど  (わら)われたよ (さげす)まされたよ 群れのせいで  サビ終わりの泣きそうなシャウトは切なくて、声も掠れて、だけど響く。バウンドサウンドとストリングスが徐々に重なっていた2番のあとの間奏は大きく奏でられていた。  理玖はそっと目を閉じ想像したのは、自分が多分惹かれた「らしい」トレーディングカードのidの瞳。 (煩わしい、隣に来ないで)  知りもしないidにそう言われて立ち止まってしまう自分を想像した。idはその冷たい瞳を立ち止まる理玖から外すと、夕景に吞まれるように歩き出す。そんな想像。  再びピアノサウンドだけになりidの切ないブレスでサビが始まる。  容赦なく太陽に包まれる世界に  どこに幸せがあるのか教えてくれないくせに  僕がただ 僕を殺すことを 全く 許さないから  許さないなら そっとして 見つめないで  独りがいい  独りがいい  独りがいい  アウトロはなく、和音でもない単音のピアノの音で曲は終わった。  

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