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sky high 2

「おはようございまーす」  華笑はなれたように受付を済ませ、理玖の分の入館証も貰う。 「マックスレーベル様は第2スタジオです。控室は2階にございます」 「ありがとうございます。さ、南里くんも行くよ」  理玖は受け取った入館証を首にかけて前を歩く華笑についていく。  まず2人は1階の手前にある第2スタジオへと向かう。重たいドアを2枚開けると既に10人ほどのスタッフが慌ただしくセッティングをしていた。 「おはようございまーす。小泉さんいらっしゃいますかー?」  スタジオに入るなり華笑は誰かを呼んだ。するとカメラの隣で何かを指示していたパーマ髪を一つに束ねた男性が華笑のところに駆け寄ってくる。 「小泉さん、今日もよろしく。彼がダンサーの南里くん」  華笑は小泉と呼ぶ男性に理玖を紹介する。理玖は慌てて姿勢を正し男性に挨拶する。 「初めまして、南里理玖です。本日はお願いします」 「おー! 南里くん! いやぁ…動画で見るより実物の方が男前だねぇ!」  男性はなぜか嬉しそうに笑いながら理玖の腕や背中をペタペタと触る。それに理玖が戸惑うと「ははは」と笑われる。 「小泉ジョーシンと言います。普段はフリーで映像やテレビ番組のディレクターや演出をしているんだけど、idの会社の社長とは古い付き合いでidのMVの監督をさせてもらってる。華笑さんともダンサー時代からの友人だから、そんなに緊張しなくていいよ」 「平たく言えばいい歳したフリーターってこと」 「事業主と呼んでくれるぅ?」  華笑のちゃちゃの入れ方を見て2人は本当に気を使わないでいい友人同士だとわかる。理玖は苦笑いをするしかないが。 「すまんすまん、南里くん。んじゃ、今日のMV撮影の説明を………あれ? そういや帆乃(ほの)くんは?」 「今日は崇一(しゅういち)が迎えに行ってるの。さっき連絡があってちょっと混んでるみたい」 「じゃあ説明は帆乃くん待ちだ。2階の控室の向かいにある練習用スタジオも取ってるからそこで準備しておいて」 「オッケー、じゃああとで」 「よろしくお願いします」  一通りの会話を終えて小泉はまた準備をするスタッフたちのところへ戻る。  撮影スタジオは真っ白の背景で囲まれており、いくつものムービングライトとプロジェクターが色や模様を映していた。  小泉に言われたように華笑と共に2階の控室に向かおうと階段を上がろうとすると、受付に誰かがいた。 「あ……帆乃くーん♡」  華笑は誰かを見つけたようで、理玖は聞いたことない猫なで声を出して受付に駆ける。理玖もそれについていくしかなく少しため息を吐いた。  受付にいたのは寝癖が直ってないようなボサボサ頭でフォーマルなジャケットを羽織った男性と、細身で眼鏡をかけた中性的な若い人が背中を丸めて立っていた。 「帆乃くんおはよー! 今日もよろしくね!」  華笑は眼鏡の若い人に元気よく挨拶する。どうやら彼が「帆乃くん」らしい。  帆乃くんは小さく頭を下げて、蚊の鳴くような声量で華笑に「おはようございます」と返した。 「ハナ、テンション高すぎて帆乃くん引いてるから」 「うっさい遅刻魔。あ、南里くん、この人がidのプロデューサーでマックスレーベルの社長の香島(かしま) 崇一(しゅういち)よ」  華笑は理玖にボサボサ頭の男性を紹介する。男性は内ポケットから名刺を取り出して理玖に渡した。 「初めまして、株式会社マックスレーベルの社長をやってます、香島です。そこにいる華笑の旦那です。南里くんのことは華笑からよく聞いてました、本日はよろしくお願いします」 「お……僕の方こそいつも華笑先生にお世話になっています。南里です、よろしくお願いします」 「今日は引き受けてくれて本当にありがとう。それと……帆乃くん」  崇一は背中を丸めた「帆乃くん」を優しく呼んで、理玖の前に立たせた。 「この子がもう一人の演者、idです」  何となく予想はついていたが、あまりにもイメージからは想定できないidの姿に理玖は驚いて声が出なかった。 (え…っと………顔が前髪で、見えない⁉) 「事情があって素性を隠して活動してるから、彼のことは他言無用でお願いしますね」  崇一は優しくお願いして理玖は頷いて「はい」と返した。 「んじゃ、俺と帆乃くんはスタジオで挨拶してくから先に控室行ってて」 「オッケー。じゃ、南里くん行きましょう」 「はい」  理玖は華笑に、帆乃は崇一について行き、いったん別れた。

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