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sky high 3

 控室に入ってから理玖は荷物を置いて、すぐに練習用のTシャツとジャージ、バレエシューズを身に着ける。女子更衣室で着替え終えた華笑と合流し練習用スタジオに入ると、すぐに柔軟運動をはじめる。  スタジオのスピーカーからは「sky high」を薄っすらと流す。  バーを使った準備運動も念入りにして、華笑がパンッと手を叩く。 「さ、1度通して踊りましょう」 「はい」  華笑がidの位置につき、理玖は華笑と向かい合うように位置についた。ここ数日ずっと聴き続けた音楽が流れると、理玖は踊る。 (南里くんは太陽にも月にもなれて、演じることができる。同じダンサーとして嫉妬するほど天才的な表現力……フィジカルの面でも一本の芯が刺さっているようにぶれない。だけど…帆乃くんに呑まれないかしら)  まだidと対峙していない状態では理玖の出来は完璧だった。  だがidを知る華笑は、少しだけ心配になる。 (帆乃くんの形容しがたいidの雰囲気は、全てのものを引き込んで吞み込んでいく……彼のバックボーンが生み出したidの圧倒的な………暗い、黒)  一方挨拶を終えた帆乃と崇一はメイク用に用意された部屋に入り、衣装のチェックなどを行う。 「さっきジョーシンさんも言ってたけど、今回はあのスタジオで映像を投影するからテクリハが長引くと思うけど頑張ろうね」 「はい………」 「帆乃くんの詞に乗せた感情をさっきハナと一緒にいたダンサーさんが表現してくれる……今までと違った感じだけど大丈夫、かな?」  帆乃は上着を脱ぐと小さく頷く。その反応を見て崇一はホッとする。 「じゃあ着替え終わったらメッセージ入れてね。メイクさんに入ってもらう。俺はちょっと出るから」 「はい………」 (帆乃くん少し緊張してる、よなぁ……初めて会う人とMVに出るんだし)  崇一はメイク室を出ると少しだけため息を吐いた。  すると向かい側で音が漏れている練習用スタジオに気が付いて重い防音ドアの丸窓からそっと覗く。 「う………っわ………」  華笑に厳しく指摘されながら理玖が踊っている。  以前映像でさらっと見ただけだった理玖の踊りを、ガラス越しでも近くで見ると圧倒されてしまった。 (は? なんで…⁉ この子はハナの一生徒じゃないのか? OLとか主婦の手習いクラスって言ってたよな? 何だよこれ…) 「プロじゃん……」  元プロダンサーの華笑を知っている崇一は、理玖に対して華笑以上の何かを感じた。 「帆乃くんの(かげ)と……南里くんの光……これは……大変なことになりそうだ」  崇一はその想像だけで身震いする。 「本能(id)をコントロールする自我(エゴ)……人々の感情を、揺さぶる……」  そう呟いて汗がたらりと流れた。

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