32 / 175
大丈夫、だから
帰宅した帆乃は足音を立てないように家の中を慎重に歩く。
階段を登り切ってホッとし、自室のドアに手を掛けた瞬間だった。
「え、最悪」
「……………っ!」
奥の方から声がして帆乃は固まった。
「こんな時間まで遊び歩いてんだー根暗のくせに。マジでいいご身分だな」
「………ごめん、なさ…ぃ……」
帆乃の自室のドアを暴言の主は強く蹴る。
「俺の視界に入ってくんなよ、クズ」
「ご、ごめ」
「さっさと消えろウスノロ」
帆乃は腹を拳で殴られる。
「ぐぁ……」
「はぁ…マジ気分悪ぃ…」
帆乃は腹を抑えながら自室に逃げ込んで、ドアを閉めたらそのまま倒れた。
「ふぅ…うぅ……」
いつもより強く殴られたので反射的に涙が出てくる。
帆乃の目の前にスクールバッグが転がっていて、帆乃は寝ころんだままバッグの前ポケットに手を突っ込みスマートフォンを取り出す。
ロックを解除してメッセージアプリをタップし、今日新たに追加した友達の名前を見る。
南里 理玖
かずき
すずゆい
それに安心して帆乃は少しだけ笑うことができた。
「大丈夫……俺は…大丈夫………」
ともだちにシェアしよう!